表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/6

本編脚本3/4

 日暮、ハッと我に返って杉田のもとへ駆け寄る。慌てて揺り起こそうとする。

日暮「杉田さん、杉田さん!」

杉田「ん………?」

 杉田、不意に飛び起きて周囲を見回し、

杉田「おい、奴はどこだ!? 俺は一体何を……」

 そこまで言いかけて杉田、肉体の痛みに耐え兼ねたかのように苦しそうな顔になり、しゃがんだまま倒れかける。日暮、慌てて支えようとする。


杉田「ぐうぅっ!」

日暮「杉田さん! 杉田さんは操られてたんです、大丈夫ですか?」

杉田「すまねぇ、俺としたことが……」

 日暮、恐ろしそうな表情で背後を振り返る。


 飛んでいったクワガタ・メダル、落ちているDVDの上で止まると、その場でグルグルと回転し始める。辺りに散らばっていたコアメダルが全て浮かび上がって、一箇所に集まっていく。

 クワガタ・メダルを中心に固まったメダルの集団、真下のDVDを宙に浮かび上がらせる。その場に巨大な『セフィロトの樹』が浮かび上がる。

 メキメキと生々しい音が響きわたり、メダルとDVDの集合体が「ともだち」のマスクを被った人間サイズの怪人に変身する。ゆっくりと動き始めるともだちグリード。


杉田&日暮「………!」

 二人揃って驚愕と恐怖で目を見開き、息を呑む。

ともだち「ようやく手に入れた………5ヶ月ぶりだァ!」

 ともだちグリード、周囲に無差別に緑色の電撃を放射する。そこら中の地面で被弾し、数え切れないほどの爆発が起こる。

 杉田と日暮、なんとか立ち上がって対応しようとするが、杉田がダメージで立ち上がれない。

ともだち「貴様らにもう用はない………死ね!」


 杉田、慌てて立ち上がろうとするがよろけてしまって立てない。

杉田「ぐうっ!」

日暮「杉田さん、無理しないでください!」

 突然、ともだちグリードが目の前に突っ込んでくる。

日暮「!」

 日暮、反撃しようとするが、ともだちグリードがあっという間に目の前までやってきて立ち止まる。ともだちグリードのアッパー攻撃。

ともだち「フンッ!」

二人「ぐわあっ!」


 仰向けに吹っ飛ばされる杉田と日暮。間髪いれずにともだちグリードが接近してくる。日暮、胸倉をつかまれて無理やり立たされる。抵抗する間もなく、胴体に左右からブローの連打を食らう。弾き飛ばされる日暮。

 立ち上がろうとしている杉田。ともだちグリードがあっという間に接近する。拳が振り下ろされ、背中に喰らった杉田は地面に這いつくばらされる。直後、無理やり立ち上がらされると、胴体にキックが飛んでくる。吹っ飛ばされ、地面を転がる杉田。

日暮「でああぁっ!」


 日暮、エンジンブレードから電撃を放って、背後からともだちグリードを感電させる。ともだちグリード、全く動じない。

 ともだちグリード、徐に日暮の方を見やる。

日暮「!」

ともだち「アアアッ!」


 突っ込んできたともだちグリード、日暮を捕まえると再び殴打の連発。ぐったりしている日暮。遠くへ投げ飛ばされる日暮。日暮、途中で何とか踏みとどまり、中腰で敵をにらみつける。

 突然、ともだちグリードが掌を日暮に向けて突き出す。掌から緑色のエネルギー光弾が発射されて、日暮に命中して爆発する。日暮、吹っ飛ばされて杉田の横に転がる。


日暮「ぐはぁっ!」

杉田「ぐうううう……」

ともだち「ハッハッハッハァ!」

 ともだちグリード、二人の向こう側に余裕の様子で姿を現す。

ともだち「弱い、弱すぎる。今まで、こんな奴らに手こずっていたのか!」

 ともだちグリード、高笑い。

 日暮、杉田の方を向こうとしながら、


日暮「杉田さん………!」

杉田「……すまない、日暮。俺がしくじったばっかりに、お前までこんなことに巻き込んじまって……」

日暮「杉田さん………」

 ともだちグリード、馬鹿にしたように、

ともだち「ハッハッハ、全くだなぁ。何もかもお前の責任だ。お前が弱くてどうしようもないばっかりに、後輩まで死に掛けている。先輩風を吹かせておきながら、なんとも情けないことだなぁ!」

日暮「貴様………!」

 日暮、キッとともだちグリードを睨み付ける。杉田、悔しそうに、


杉田「………」

ともだち「事実だろう? 全てはそいつが弱かったせいだ」

日暮「うるさい………」

ともだち「杉田、ソイツも表に出さないだけできっと思っているぞ? なんて役立たずな先輩だ、とな。表に出さなくとも、心の底でお前を軽蔑しているに違いない!」

杉田「クッ…………」

 その時突然、日暮が、

日暮「黙れぇっ!」

 杉田、息を呑む。

ともだち「何ぃ……?」


 日暮、ゆっくりと前に進み出て、

日暮「たとえ何があろうとも、この人は俺の先輩であり続ける。この人から、俺がこれまでに受け取ったものがなくなることは決してない。杉田さんを尊敬するかどうか、それを決めるのは俺だ。お前ではない!」

ともだち「フン、ならその幻想と一緒に死ね! 尤も、今のお前じゃ俺に勝てるわけも無いがな!」

 日暮、それでも前に進もうとする。

 突然その腕を杉田が掴む。驚いて振り返った日暮。


日暮「杉田さん!?」

杉田「日暮………奴に立ち向かうならオリジナルでいけ!」

日暮「オリジナル………って杉田さん何言ってるんですか!? 俺にはまだ無理だって―――」

杉田「バカ、さっき成功してたじゃねえか!」

日暮「あ………」

杉田「基本ができてりゃ、あとは応用だ。二重召喚なんて誰にも思いつかん。お前の今までやりたかったことも、今のお前ならできる」

日暮「でも、でも………」


 躊躇いがちの日暮。杉田、それを見て自分の体から何かを探すような動作。やがて、自分の首にかかっていた認識票タグを手にし、もぎ取って目の前に突き出す。


杉田「なら………二次創作でどうだ」

日暮、驚いた顔でしばらくそれを見つめていたが、

杉田「……俺もついてる!」

 その言葉を聞いた日暮、一瞬の間を置いて、杉田の手からそれを受け取ってしっかり握り締め、

日暮「………はい!」


 杉田、無言で頷く。日暮、立ち上がって振り向く。ともだちグリードの方にゆっくりと歩いて近づいていく。杉田、苦しそうながらも立ち上がって、ゆっくりとその背後についていく。日暮の手にはいつの間にか、杉田から渡された認識票のチェーンが巻きつけられている。

 日暮、宙に手を差し出し、宣言。


日暮「………サモン・『アクセルメモリ』!」

 日暮の掌に電子データが発生し、赤い太めのメモリスティックのようなものが出現する。日暮、それを掴むと、片手に持っていたエンジンブレードのスロットを開ける。

 ともだちグリード、正面からゆっくりと近づいてくる。日暮、アクセルメモリをエンジンブレードのスロットに差し込む。待機音が鳴り始め、日暮はゆっくりとエンジンブレードの切っ先を天に向かって掲げる。

日暮「………………変身!」


 日暮、エンジンブレードのトリガーを押す。直後、切っ先で頭上に円を描き、傍らに振り下ろす。

 頭上に発生した円形の裂け目から赤いピストン状の物体が飛び出てきて、回転しながら日暮の体の周りに降りてくる。数秒間その状態が続いた後、日暮の体に粒子が一斉に集合していき、一瞬でその姿が戦闘形態に変化する。


杉田「おぉ……!」

ともだち「!?」

 日暮・戦闘形態の全身各所のアップ。

 日暮、殆んど動じないまま、静かに身構えてともだちグリードと向き合う。

ともだち「………ヌアッ!」

 ともだちグリード、ゆっくりと右手を目の前に掲げ、一気に突き出す。その掌から緑色のエネルギー弾が発射され、日暮と杉田に向かって飛んでいく。

二人「ハッ!」


 日暮と杉田、横手に飛び退ってエネルギー弾を回避。

 杉田、地面を転がって一回転した後、片手を突き出し青色のエネルギー弾を発射する。

ともだち「ヌゥゥゥゥンッ!」

 ともだちグリード、振り返りざまに裏拳でそれを弾き飛ばす。

日暮「てぁぁぁぁ!」

 日暮・戦闘形態がその隙に懐に飛び込み、エンジンブレードで斬りかかる。そちらに気付いたともだちグリード、咄嗟に振り返るが、何度か斬りつけられ、その衝撃で後ずさる。

ともだち「クウッ!」

 ともだちグリード、何発目かでエンジンブレードの刃を受け止め、そのまま日暮・戦闘形態の腹に何発も拳を叩き込む。後ろに転がる日暮。


日暮「ぐわっ」

 そのまま日暮に追いすがろうとするともだちグリード。突然、背後から杉田の放った青いエネルギー弾がともだちグリードの背中に命中する。僅かに前のめりになるともだちグリード。その衝撃で、ともだちグリードの体から赤いメダルが一枚だけ飛び出て杉田の方へ転がっていく。


 ともだちグリード、サッと杉田の方を振り向くが、その隙に目の前で日暮・戦闘形態が立ち上がろうとしている。ともだちグリード、再び日暮・戦闘形態の方に向き直ると、そちらから振り下ろされたエンジンブレードを片手で受け止め、再び掌底を繰り出して日暮・戦闘形態を吹き飛ばす。

 膝を突いた日暮・戦闘形態にともだちグリードが近づいていき、その首を掴んで締め上げる。


日暮「ぐああああ」

ともだち「お前から先に始末してやる……!」

杉田「日暮!」


 杉田、叫んでから自分の足元に転がっていた赤いメダルに気付き、咄嗟に拾い上げる。それから、遠くで首を絞められている日暮・戦闘形態と、手元のメダルとを交互に見る。間もなく、何かを決意したような表情。

杉田「うおおおおおお!」

 杉田、叫ぶ。その瞬間、杉田の体が、持っていた赤いメダルに吸い込まれて消えうせる。地面に落ちるかのように見せて宙に浮いたメダル、ともだちグリード目掛けて飛んでいく。日暮・戦闘形態の首を絞めていたともだちグリード、背後から飛んできたメダルに突然融合され、咄嗟にその手を離す。


 地面を転がる日暮・戦闘形態。喉を押えて苦しそうな動作をするが、すぐに、ともだちグリードの方を見て異変に気付く。ともだちグリード、何故か一人でもがき苦しんでいる。その間、時々映像がモノクロに変わると、ともだちグリードを羽交い絞めにする杉田の姿が見える。


ともだち「グヌウウウウウ」

日暮「杉田さん!」

 狼狽する日暮・戦闘形態。モノクロ映像中の杉田、ともだちグリードを押さえ込んだまま必死に、

杉田「今だ、俺ごとコイツをぶち抜け!」

日暮「で、でも………!」

杉田「お前はもう一人前だ、俺が居なくてもやっていける!」

日暮「そんな、無理ですよ!」

杉田「大丈夫だ日暮。お前ならなれる、お前なら一人前の戦士にな………もう時間がねぇ、早くしろ、日暮ぃぃぃぃぃぃぃ!」

日暮「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 日暮・戦闘形態、サッと立ち上がると、エンジンブレードのトリガーを押す。必殺技音。日暮・戦闘形態、走ってともだちグリードに突っ込んでいく。日暮・戦闘形態がエンジンブレードを振り、跳躍した瞬間、日暮・戦闘形態の体が赤い光に包まれて、横倒しの巨大な『A』の文字に変化すると、ともだちグリードに向かって飛んでいく。

 身動きできないともだちグリードの正面に、巨大な『A』の文字が接近し、その先端がともだちグリードの胸に突き刺さって捻り込むように貫く。


ともだち「ヌゥアアアアアアア!」

 ともだちグリード、仰け反って絶叫。その背後に、エンジンブレードを振り切った体勢の日暮・戦闘形態が再生し、着地してくる。その腕に、気を失った杉田の体を抱えている。

ともだち「ぐあああああああああああああああああーっ」

 ともだちグリード、ゆっくりと地に倒れ伏し、大爆発を起こして砕け散る。広がる爆炎。徐々に訪れる静寂。


 辺りに、色とりどりなメダルが撒き散らされる。そのうちの一枚、公園の隅にあるベンチの下へと転がっていく。公園のベンチ、スーパーの袋を抱えた室長が、のんきに芋羊羹を貪り食っている。


室長「いやー、やっぱり芋羊羹はサイコーだねぇ」

 室長の足元に緑色のクワガタ・メダルが転がってきて靴にぶつかり止まる。室長、ソレに気付いてゆっくりとメダルを拾い上げる。室長、それをしげしげと眺めて、

室長「何だコレ?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ