エピローグ
多少時事ネタを含みますが、大丈夫かなー、と。
……2008年末……
「……ふむ、黒人が大統領に、のう」
新聞を眺め、コンスティチューションは呟いた。
傍らには、あの水兵もいる。
新聞は彼が持ってきたようだ。
そして部屋の壁には、記念航海の際の写真が飾られていた。
彼女の他に、ラメージとハリバートンの姿も写っている。
「私の時代には……いや、ついこの間までは、考えられなかったことよの」
「合衆国の歴史上、初めてのことですからね」
「白人、黒人問わず、この国が……そして歴史が、変革を望んでいるのかもしれぬな」
コンスティチューションは微かに笑った。
「そう、全ては変わっていく。国も、人もな。かつて、私と共に生きた者達が夢見た、本当の自由の国も……遠くないやもしれぬ」
コンスティチューションは新聞を几帳面に畳んだ。
「いつも、すまぬな」
「いえ、構いませんよ、閣下。私は艦魂のことを、もっとよく知りたいので」
「ふふ、いつの時代にも、そういう若者はおるのだな。嬉しいことだ」
「では、失礼します」
水兵はサッと敬礼をすると、退室していった。
1人になった部屋で、コンスティチューションは目を閉じた。
世界は目まぐるしく変わり、
海も、船も変わっていく。
彼女にはもう、変わることは許されないのかもしれない。
しかし、彼女の名が、海に残る限り。
戦いの記憶が、忘れられない限り。
……“古い鉄の船腹”は永遠に、この海を見守るだろう……
…fin…
絹海「こんにちは、伊四〇〇潜水艦艦魂、絹海です」
小夜「夜間戦闘機『月光』の小夜です」
コンスティチューション(以下コンス)「よく来てくれた。私がコンスティチューションだ」
絹海「ところで、作者さんが先に来ているはずなのですが……」
コンス「先ほど、うちの艦魂たちに連行されていった」
小夜「あちゃー。1ヶ月軽く超えちゃったから、そりゃアメリカの艦魂たちも怒るよね」
コンス「特に、待つのが嫌いな国柄だからな……」
耳を澄ませば微かに流水郎の悲鳴が聞こえてくる……
絹海「と、とにかく……コンスティチューションさんは愛された船だったんですね」
コンス「はは、それなりには、の」
絹海「あっ、それと……私の話では、手紙を預かってくれて、ありがとうございます」
コンス「気にするな、艦魂に国籍など関係ない」
小夜「さらりとそう言えちゃうところも、やっぱり200年生きた度量の大きさ…… ? あ、ちなみに上の話については、『伊四〇〇-為せる全てを-』を読んでね♪」
コンス「度量というより、どうでもよくなってしまったという方が正しいな。あまりにも目まぐるしく世界情勢が変わるものでの……私が血みどろになって戦ったイギリスも、二次大戦では同盟国だった。そのようなわけで、敵国とかそういう言葉自体が無意味に思えてきたのだ」
小夜「……なるほど。でもそれも凄い……」
絹海「それにしても今回は、遅すぎましたよね」
小夜「そうだよねぇ」
コンス「次は短編にするらしいがの」
絹海「えっ、そうなんですか ? 」
コンス「うむ、日本海軍最初の航空母艦の話と言っていたが」
小夜「日本最初の航空母艦…… ? あのひねくれ者の作者が、素直に『鳳翔』を書くとは思えない……」
絹海「あ、私、なんとなく分かったような……」
コンス「他に考えている話では、東郷平八郎が登場するそうだが」
小夜「それも、あのひねくれ者の作者のことだから……」
絹海「……素直に日露戦争を書くとは思えませんね」
コンス「さて、そろそろ作者を助けに行ってやらねばの」
小夜「作者は変なところでしぶといから、多分生きてるとは思うけど……」
絹海「それでは、この辺でお開きということで」
コンス「読んでくれて感謝する。ミス・ミカサに会ったら、宜しく伝えてくれ」