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004

「突然だが転校生を紹介する。女髪めかみ自己紹介を頼む」


 担任の男性教師の言葉でその人物は教室へ。

 俺はその姿と見た瞬間、胸がときめいた。

 こんなのは初めてだったがこれが恋と確信した。

 まるで俺の求めている要素を掛け合わせたような姿の彼女。

 アイツらと違った大きな胸。

 いつものアイツらの顔のいいとこどりのような奇跡的に整った顔立ち。

 黒の腰まで届く長髪は磨いた黒曜石のように艶やかで、髪の毛一本一本が輝いているようだ。


 「女髪楓めかみかえでです。よろしくお願いします」


 「スゲー美人」


 「女髪さんは彼氏はいるの?」


 クラスの男どもが質問を我先にと浴びせかける。


 「彼氏ではないですが、許嫁がおります」


 女髪さんは俺の方を向いた。

 まさか俺が許嫁だったりして。

 婆ちゃんが女神だというのが本当なら、その関係者かも知れない。

 女髪と女神読み方はほとんど同じだし。

 淡い期待を持つ俺。


 「ええーマジかよ!」


 む? 女髪さんが俺を見ている気が……まあ勘違いだろう。

 このときめきこいつらには感じた事のない物だ。

 これが恋ってやつか、何故か彼女の姿を見ると3人がちらつく……お前らはそういうのじゃないから。

 きっと今のところフラグはこいつらで埋め尽くされてるからだろう。

 これが運命なら俺はこいつらを捨てないといけない。

 それはそれで心苦しい。

 まぁ彼女が運命の相手だと決まったわけではないからまずないだろうが。


 「好みのタイプは?」


 「許嫁の殿方のような人です」


 「ねえ旦那様、私たちも許嫁みたいなもんだよね?」


 と花咲。


 「語尾にただし妄想がつくけどな」


 「全く恥ずかしがっちゃって旦那様ったら!」


 「俺はまじで言ってんだけど……」


 「何を言ってるのさ! 僕たちが君を逃すわけがないだろ?」


 「そうですわ! 私達と貴方は運命の赤い……違うからね! 運命で結ばれているのが、嬉しいわけじゃないんだから!」


 全くこいつら俺を愛しすぎだろ。

 運命の相手は女髪さんみたいな人だといい。

 さすがにこいつらレベル以下の家事力じゃなければ中の下の普通レベルでいいよ。

 こいつらと過ごして今切に思っている。


 「旦那様お昼は期待してね! さっきのお弁当ご馳走してあげるから」


 「マジで勘弁してくれ」


 チラッともいた感じに黒一色だったからなあの弁当箱。

 考えるだけで恐ろしい。

 

 「じゃあ席は、花咲のとなりでいいな」


 俺が窓際で前が黒石、横が赤星、後ろが花咲だから女髪さんは俺の斜め後方だ。


 「よろしくお願いします皆さん!」


 「よろしく! 俺は夜空、こいつらが花咲と黒石それと赤星だ!」


 「存じております夜空さん」


 む? どういうことだ初対面だと思うのだが。


 ◇

 「旦那様! 旦那様ってば!」


 「なんだ花咲」


 「だってさっきから旦那様、女髪さんばっかり見ているだもん」


 俺の視線は女髪さんに釘付けだ。

 本当に綺麗な人だな。

 今彼女はクラスの男と女子に質問攻めにされていた。


 「そうだよ! 愛妻達は君の目の前にいるというのに!」


 「愛妻えへへへへてれる……なんでもないわ!」


 「さあ、お待ちかねの昼休み! お弁当タイムだよ!」


 「勘弁してください!」


 マジで


 「だーめ!」


 「勘弁してください!!」


 ほんとに


 「「だーめ!!」」


 「勘弁してください!!!」


 勘弁して


 「「「だーめ!!!」」」


 「もう総菜パン買っちまってるら遠慮する」


 「だめだよ! 旦那様それだと栄養が偏ちゃうよ! はいあーん」


 「俺の体を心配するならマジでやめて!」


 花咲は黒い物体を箸でつまみ俺の口へ。

 これは唐揚げだ。

 食いなれている激マズメニュー。

 あまりにも火を通し過ぎたせいで焦げに焦げた真っ黒な鳥の唐揚げの亡骸だ。

 食べられる料理にすらなれなかった命を投げ出された鳥さんが哀れである。


 「だからこのあーんでラブ注入さ! ひまわりちゃんの愛を受け止めたら次は僕さ! ちょっと失敗して台所半壊しちゃたからもう少し後だけど」


 「どうやったら台所半壊すんだよ! やばい薬品でも使ってるのか!」


 「ぐだぐだ言わないで私たちの愛を受け入れな……しゃい」


 赤星がまた噛んだ。


 「そうだよ! 旦那様あーん!」


 「ちなみに味付けは?」


 「コーヒー味! 今回のお弁当はコーヒー味で統一だよ!」


 「どんだけ味付けにセンスがないんだよ! 素材の味無視しすぎ!」


 「大丈夫だよ! 旦那様愛だけはたっぷりだから!」


 こいつらどこに逃げても嗅ぎつけて追ってくるし、隠れても同じ事だGPSでも俺の体に仕込んでるのんじゃないかと思うレベル。

 このあーん地獄は、小学校の時からだこいつらの手料理の最初の一口で俺は、人生でこれ以上の苦痛の味はないだろうと思ったが。

 歳を経る事に味の悪さは悪化していく。

 いくら可愛くても俺にベタ惚れでも、これはないだろう。

 だからこいつらを受け入れるきはない。


 「マジでやめて! お前ちゃんと味見しているのか?」


 「するわけないじゃん! 旦那様の為の料理を、先に食べるなんて愛妻としてできないよ!」


 なにその変わった愛。

 普通美味しい物を食べてもらいたいと試行錯誤するもんだろ!

 こいつなんて残念な奴だ。


 「あーん!」


 「いらん」


 「「あーん!!」」


 「いらん!」


 「「「あーん!!!」」」


 「いらん!!」


 「もう意地張っちゃって! 愛妻のお弁当だよ! レアだよ! 貴重だよ!」


 「レリティは味に還元してもらえませんかね!」


 「そうだよ! ぱくっといっちゃって僕が見ていてあげるから!」


 「食べろ! 食べろ! 食べろ! 食べろ!」


 赤星のキャラぶれぶれだな。

 お嬢様キャラはどこへやら。


 「「食べろ! 食べろ! 食べろ! 食べろ!」」


 赤星の食べろコールに黒石が参加。


 「「「食べろ! 食べろ! 食べろ! 食べろ!」」」


 それに花咲まで加わりやがった。

 この流れ折れるしかないのか……。


 「分かった一口だけだぞマジで!」


 「流石夜空君だね! これで安心して後輩の気持ちを断れるよ!」


 「なんだまた告られたのか黒石」


 「まーね! でも僕は夜空君の嫁だからそんな物受け取れないさ!」


 「実は私も先輩から、でも断るけどね!」


 「私はないわね! でもしてみたい!」


 お前の場合俺にベタ惚れなのが分かりやすぎと、キャラの濃さが学校中に知れ渡っているからな。


 「お前らなんで俺がそんなに好きなんだ、そこまで好かれる理由が分からん」


 「そりゃ夜空君はカッコいいし、なんだかんだで僕たちの気持ちを受け止めてくれるからだよ! 他の男はすぐに僕との体の関係を連想するから嫌いなんだ! 告ってくる奴の大半はそれさ! でも夜空君は別にそういう目で見ていいよ! てかそんな目で見てほしい! 早く赤ちゃん欲しい!」


 安心しろその気は全くない。


 「私はなんだかんだで私たちの料理を食べてくれるところかな。私でも食べられないレベルの物でも、食べてくれるのが嬉しい。後、他の男の人の舐め回しす様な視線は苦手。夜空君はそんなで目でみてこないから、特別だよ!」


 分かっているならそんなもん食わせるなよ!


 「私は全部! 性格も言葉遣いも顔も髪型も! ちっ違うんだからね!」


 「そんなわけであーん!」


 「分かったよ!」


 そんなこと言われて食わないなんて出来ねーじゃねーか。

 卑怯だぞお前ら。

 黒い黒い鳥さんの亡骸を一口。

 苦い、そして火を通し過ぎすぎて肉がパサパサ。

 そしてコーヒーの風味が圧倒的に舌の伝えてくる。


 糞まず!!!!!!


 安定の不味さ。

 あれ女髪さんと目が合ったような。

 勘違いだな。

 ああマジで女髪さんみたいな人が俺の許嫁ならいいんだが。

 家庭力のある女の子は、俺のヒロインではないですかね神様……。


当然女髪はキーパーソンです。

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