001
さて、君たちは運命の相手って信じるだろうか?
運命の相手――実のメルヘンチックでノスタルチック。
本当に小指には見えない赤い糸が結ばれているのか?
そもそもどうゆう基準で選ばれているのか?
何故その相手がいるのか?
そんな感じのツッコミどころ満載なのは目をつぶるとして、運命とは何なのだろう?
と論じた所でその謎が解けるわけもなく。
仮に解けたとしたら興ざめもいい所だ。
運命だとかその相手だとか分からないから面白い。
運命の出会いが綿密に計算された確定した出来事だとしたら人生とは悲しいものだ。
未来は決まっているのと信じる人もいる。
だが俺はその時の行動で幾重にも分岐するものが未来だと思いたい。
行動によって無数に分岐するからこそ人生は――未来は予想しずらい。
だからこそ人生は驚きに満ちている。
今生きている選択の全ては人生と見えない糸で絡み合っていて、どう転ぶかは分からない。
よき出会いもつらい別れも、どこか選択を違えればなかった事にさえなり得る。
それが人生だ。
その中で出会うのが運命の相手で、愛すべき人。
運命の相手との相性はぴったりだというし、ちょっとした人生のサプライズ。
まぁ出会えない事もありえるが、もうしばらくしたら俺はそれが分かるのかもしれない。
前言撤回わかるというのも興味深い。
人間は未知も予定調和にも引かれる欲張りさんなのだ。
爺ちゃんは生前「儂の嫁は女神様で、超絶美人で巨乳じゃ!」というのが口癖で俺の祖母――婆ちゃんの若い頃の一枚の写真を大切にしていた。
その写真に映る婆ちゃんの顔は謎の光で遮られ、顔は分からなかった。
昨今のアニメの大人の光みたいとは爺ちゃんの名誉のために言ってはいけない。
それだと婆ちゃんの顔があれだという事になってしまう。
なんでも爺ちゃんしか見えない様に魔法がかけてあると言っていたが、爺ちゃんの棺に一緒に入れて火葬してしまったので調べる手段はもうない。
結局のところ婆ちゃんの姿は見た記憶がない。
爺ちゃんが言うには俺の父親が生まれると天界に帰っていって、たまにしか会えないそうで結局俺は出会う事はなかった。
真偽はわからんホントだったら素敵だけど。
そんなわけで運命の相手ねぇ。
あいつらが実に好きそうな言葉だ。
爺ちゃんは俺が生まれた時、女神様件俺の婆ちゃんに俺が17歳になったら運命の出会いを果たせるようにお願いしたらしいが、未だ現れてはいない。
ちなみに昨日で高二の17歳。
となれば出会うならそろそろだと思うのだが……。
まぁ運命の相手なんて俺にはまだいないが、逆に俺が運命の相手だと思われているわけで。
しかも3人全員女の子。
それでも運命の相手とはお互いそう思って思想相愛でこそじゃないのか?
それにアイツらの好意は一方通行でそれはまるでない。
これだけ愛してもらえれば男冥利につきるなのかもしれないが。
運命の相手ならお互いの想いってやつが大事だと思うのですが……。
まぁそんなこといっても聞かねーだろうなあいつら。
さてそろそろだ。
家を出て今は丁度三分。
長々心の中で語っていたが、起きてから語っていたのでこれぐらいか。
あいつら俺が家を出でて5分それ以上は超えない。
何がって?
そりゃ――
「おはよ! 今日もいい天気でいい朝だね! 旦那様! いつも通りイチャイチャしようね!」
「おはよう! 今日はいい子作り日和だね! 早速実行する?」
「全く遅いですわ! 昨日より1分6秒も家から出るのが遅いですわ! かっ勘違いしないでね! わわわたしが貴方の行動に興味深々なんてないんだから! わたしは貴方の事す――何を言わせる気よ!」
俺、夜空流の3人の幼なじみの登場さ。




