015
「ってお前ら何する気だ?」
「当然旦那様の家でご奉仕だよ!」
「えっ嫌なんだけど」
当然拒否するが。
「だめだよ。僕たちの成長を見せつけて、僕たちをお嫁さんとして認識してもらうんだからね!」
「そうだよ! りゅー君私達だって成長してるんだからね!」
「そこまで言うならいいけどさ……」
どうせ言っても聞きなさそうだししぶしぶ了承。
なんだかんだでこいつらに甘すぎるな俺。
「むふふふ、頑張っちゃうよ旦那様!」
「そうだね! 女髪さんの事なんて僕たちが忘れさせてあげるよ!」
「これでりゅー君は私達にメロメロだね!」
「あらあらやる気のようですね! お手並み拝見と行きましょうか!」
◇
そして時間は立ち放課後。
いつものメンバーで帰宅。
女髪さんは遅れてくるらしい。
この前の打ち合わせの作戦だとこれが胆なわけだがどうなるか……上手くこいつらが俺を諦めてくれるだろうか?
そんなことを考えていると花咲が口を開く。
「じゃあ旦那様家を出ててね! お掃除するから!」
「じゃあ僕は夕飯を作るよ!」
「じゃあ私お洗濯!」
「大丈夫なのか? すんごい不安なんだけど……」
「大丈夫ピカピカにするから!」
「僕は絶品料理を作るよ!」
「私は綺麗に洗濯するね!」
「マジで頼むお前ら……」
いやな予感がひしひしと。
「もう旦那様ったら私達を信じて!」
「そうだよ! 僕の愛情をたっぷり込めるから! 絶品になるようにね!」
「洗濯ぐらい簡単だって教わったよ!」
「そういうわけだから家を出てね! びっくりさせちゃうから!」
そういって追い出されてしまった。
凄い不安だ。
この流れだと家は滅茶苦茶、フライパンには消えない焦げ跡が付き、洗濯物は泡地獄……。
ガタン! ガタン! 聞きなれた音が響いた。
あいつらもうやったのか! この音には昔から聞き覚えがある。
部屋の掃除を任せるといつも聞こえてくる棚を倒した音だ。
そして漂いだす薄い黒煙。
「どうしよ! ひまわりちゃん! シズクちゃん! 泡が止まらないよ!」
あいつら何も変わってねーじゃねーか!
赤星の声で玄関を開けた。
「お前ら何やって!?」
「旦那様駄目だよ! まだお掃除終わってないよ?」
玄関で出迎えた花咲はいわゆる――裸エプロンだった。
「なんて格好してるんだよ! 服着ろ服!」
「だって奥さんは、裸エプロンでお出迎えするモノでしょ?」
「なんだようるさいなって流君!? 駄目だよ! まだ早いよ!」
「お前もかってことは赤星もか」
花咲に続いて黒石も裸エプロンでお出迎えだ。
となると赤星もだろう。
「上がるぞ!」
俺が家に上がろうとすると。
「旦那様駄目だよ! まだ終わってないから!」
「そうだよ! 待ってよ!」
「黒石焦げ臭いんだが……」
「そうだった火付けっぱなしだ!」
黒石が慌てて台所に向かった所で、俺は家に上がった。
花咲が「ちょっと待って」と止めるが無視して家を確認するまずリビングを確認。
「花咲言い訳を聞こうじゃないか……」
俺の家のリビングの棚という棚が倒され、しっちゃかめかだった……どう考えても掃除の類ではない事は明らかだ。
ここからどうやったら挽回できるか分からないレベルだ。
「ちょっとレイアウトを変えようとして……」
「ひまわりちゃんどうしたの? 呼んでるのにりゅー君!?」
俺の前に現れた赤星は期待を裏切らず裸エプロン。
そのまま洗濯場へ。
案の定泡地獄……。
「赤星言い訳を聞こうか?」
「ちょっと洗剤の量を間違えちゃって」
「どれだけ入れた?」
「一箱……」
「お前な……しかもこれ開封してない奴だし」
「沢山いれればきれいになると思って……」
「はぁ後は黒石だけか……」
ため息を吐き二人が何か言っているが無視して台所へ。
「お前何やってるの?」
「キャベツを炒めてるのさ!」
「お前な……」
黒石はフライパンでまるまるキャベツ1玉を炒めてやがった。
キャベツの表面は黒焦げで中はきっと半生だ。
もうセンスとかの問題じゃねーよ……
「お前ら何考えてんの? 家事力がないとかのレベルの話じゃねーじゃん」
「旦那様もしかして怒っちゃった……?」
「悪気はなかったんだ……これだけは僕たちを信じてくれないか?」
「ごめんね……りゅー君」
「もう呆れて何も言えねーよ……」
「でも僕たちの裸エプロン似合ってるだろ?」
「だとしても――」
「あらあらやはり予想通りですね!」
と女髪さんの声が響いた。




