014
あれから女髪さんとメールをして驚いたのだが、俺と許嫁であることに抵抗はないらしい。
どうやらあれだけアイツらに好かれる俺に興味がわいたそうだ。
それだけで俺を受け入れるのは少し疑問があるが、俺としては普通の嫁がもらえるならそれでいいので深く考えないようにした。
そして明日女髪さんが動くそうだ。
それでどうなるかは分からないが、穏便に事が運べばいいが……
「むメールか……」
携帯の画面にメールの通知音。
それを見ると黒石から。
【明日のお弁当楽しみにしてね】
「こりゃ期待できないな」
いつもそうだそうやって連絡してくる次の日は実に不味い弁当を作ってくる。
何度も期待を裏切られ続けたため。
当然期待などしていない。
今度は何味だ……黒焦げなので苦いは固定だがたまに奇をてらして変なアレンジを加えることがある。
当然のように正解が出たためしがない。
マジで嫁として0点だな。
可愛くても俺にベタ惚れでもこんな嫁いらん。
でも、嫌いに慣れない。
それさえなければいい嫁だろうに。
そしてその日は夕食を食べ明日に備えて胃腸薬を適量飲んで眠りについた。
◇
そして次の日いつものようにアイツらと登校して気づけば昼休み。
いつものように女髪さんは一人で本を読んでいる。
転校当初は沢山の人が女髪さんに話しかけていたが、数日たつとほとんどのクラスメイトが話しかけなくなった。
まるでいないモノ扱いだが、女髪さんはいつもにこやかな笑顔を浮かべているので問題ないらしい。
こんなに美人なのに不思議ではあるが、本人が満足しているなら聞くのは野暮ってもんだ。
「旦那様どこ見てるの! シズクちゃんの愛妻弁当だよ!」
「なあいい加減弁当止めてくれないか? いつも美味しくないし」
「だーめ! 旦那様に進歩を見てもらいたいの!」
「そうだよ! りゅー君私達だって上達しているんだから!」
「全く見えてないんですけどねー」
「まぁまぁさあ君、御所望の黄色い卵焼きだよ!」
「なん……だと……」
まさかの黒石の言葉に黒石の顔を二度見て、黒石の手作り弁当に視線を移す、確かに黒一色の中に黄色い……?
てっ!
「お前これ金箔だろ!」
「あれまもうばれちゃった?」
そう舌を出して黒石がおどける素振りを見せ件の金色の卵焼き? を箸で取る。
まさかと思って聞いてみたがまじだった。
まぁ外見をごまかしても味は安定のあれだろう。
「当然これじゃだめだからな? 俺の既望は黄色い卵焼きだ!」
「分かってるよ冗談だよ! 僕だってそんな大事な事は自分の手でしたからね! これは昔母さんが乗りで買って使わなかったもさ! 食べてもいい金箔だからはいあーん!」
「へいへい」
そのままパクリ。
咀嚼咀嚼ゆっくり噛む。
さくりとした安定の異物感に苦み後味は辛っ!
「黒石何いれたこれ? 滅茶滅茶辛いぞ」
「隠し味に七味唐辛子を一瓶さ! 七つの味で深みが出ただろ?」
「お前らの料理センスの無さには、驚かされるばかりだよ!」
「えへへへへそうかな旦那様」
「照れるなもう」
「えへへへへりゅー君にほめられちゃった」
「褒めてない! 嫌味だよ!」
「そんなことより僕の愛情料理をたっぷり食べておくれよ! はいあーん!」
「ふむこれはまずいですね!」
俺の代わりに女髪さんが、黒石の摘まんだ黒焦げの何かをパクリ。
「ちょっとになにするんだ! 女髪さんせっかく僕が流君の為に作ったのに!」
「そうだよ! 愛妻弁当なんだから!」
「そうだよ! それっめ! だよ」
「仕方ないですね。これが真の愛妻弁当です」
と鞄をあさり布に包まれた何か――弁当を取り出す。
その包みを開けると。
「わあ美味しそう……」
「確かに僕たちのお弁当とは全然違うね……」
「すごいおいしそう……」
「本物の愛妻弁当ですよ! 流さんあーん!」
女髪さんの弁当は、唐揚げにポテトサラダとミニトマトそれに白米というシンプルな弁当だが、実に旨そうだ思えば旨そうな弁当を見たのは、いついらいか……軽く思い返すが焦げた何かしか思い出せない。
女髪さんは唐揚げを箸にとり、あーんの体制これは食う前から旨いと分かるレベルだ。
「僕がいただくよ! さっきのお返しさ!」
と黒石がぱくりしばらくもぐもぐ。
黒石は。
「おいしい僕たちの料理と比べようもない程……」
「ほんと私も食べていい? 女髪さん」
「わたしもー」
「別にいいですよ」
そういわれて遠慮なく弁当の料理を口に運ぶ。
「ほんとだ美味しい」
「うんおいひー」
「これが本当の愛妻弁当ですから」
「女髪さんさっきから何言ってるの? 愛妻は僕たちだよ」
「そーそ旦那様は私達のモノだよ」
「えっへん! 私はりゅー君の愛妻なのです!」
「今まで言っていませんでしたが私は夜空流さんの許嫁です!」
「旦那様どういうこと! 私たちがいるのに!」
「そうだよ! どういうことだい! 僕たちに説明してよ!」
「りゅー君どういうこと?」
俺に詰め寄る3人を手で押し返して。
「俺は普通の料理が出来て、普通に掃除洗濯ができる嫁が欲しいんだよ!」
「そんな旦那様私たちが嫌いなの?」
「流君? そうなのかい」
「りゅー君そうなの?」
うるんだ目で俺を見つめる3人、胸が痛くてナイフでも刺された気分だ。
「嫌いじゃない。だが嫁として0点のお前らと結ばれる気はない!」
「そんな僕たちは君をこんなに愛してるのに……」
「旦那様私は旦那様が何時だって大好きだよ……」
「りゅー君わたしだって大好きなのに……」
「しかし、皆さんはまともに料理できませんよね? それで専業主婦を熱望しておられるとか、それでは流さんを困らせるだけですよね?」
「そうだけど、女髪さんは旦那様が好きなの?」
「今はまだそれほどではありませんが、非常に関心を持っています。愛情はこれから高めればいいですので」
「そんな僕たちはこれだけ大好きなのに横取りするの?」
「それは流さんにいってください。何故そうなされるかご自身でも認識がおありかと思いますが?」
「そうだけど……りゅー君私たちの気持ち迷惑なの?」
「気持ちは嬉しいでも夫婦にはなれない今のお前らじゃ無理だ」
「「「今は」」」
「ちょっと集合ほまわりちゃん暁ちゃん」
黒石が集合した二人に耳打ち。
「わかった旦那様! 私達が妻としてふさわしい所見せて上げるよ!」
何だかんだで相思相愛な4人。
そしてラストハッピーエンドそういう事です。




