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45億年の沈黙  作者: 葉月舟
第一章 優しい男
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-7-

 足がまたもつれる。その拍子に、もんどりうつように転がってしまった。地面に両手をついたが、間に合わず顔面を強打する。


 やはり先ほどのダメージが響いているのだ。

 

 夫の足音が近づいてくる。


 再び立ち上がる。


 すると、暗がりの中を年輩の女が小走りにやってきた。

 敏夫の母親である。時々こうして、無職の息子のことを心配して訪ねてきていたのである。

「美知代さん、どうしたの。まあ、顔が血だらけじゃないの」


 頭から出血しているためなのか、たった今地面に顔を打ちつけたためなのか、自分では分からない。


 美知代はとっさに彼女の背中にすがりついた。

「お義母かあさん、助けて」

「助けてって……。あっ、敏夫。敏夫、あなた手をどうかしたの」


「どけ、クソ婆あ」

 そう言って、母親の手を振りほどく。


 彼女は一瞬息をのんだ。

「敏夫、いったい……。とにかくやめなさい」


 しかし彼はもはや完全に正気を失っていた。


「うるさいんだよ。僕はもう終わりなんだ。あの女を殺して、僕も死ぬんだ。

その前に、お前もぶっ殺してやる。僕が人とうまくやっていけないのも、みんなお前が俺を甘やかして育ててきたせいだからな」


「敏夫……。あなた、母親に向かってなんていうことを」


 その間に、美知代は車に向かって駆けだしていた。

 ドアを開け、急いで乗り込んだ。

 すぐにキーを差し込む。


 しかしエンジンがかからない。

 もう一度。


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