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45億年の沈黙  作者: 葉月舟
第一章 優しい男
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-6-

「お願い、助けて」

 隣の家のドアを激しく叩いたが、反応は無かった。


 こうしている暇はない。

 急いでコンクリート階段を駆け下りた。


 足がもつれる。


 身体が前につんのめったはずみに、三、四段飛び越して、偶然踊り場に不時着した。


「待て」

 敏夫が左手を押さえながら現れた。苦痛に顔をゆがめている。

 彼も裸足のままだ。


 あの様子なら、おそらく腕が折れているのだろう。大丈夫、逃げられる。


 するとちょうどその時、同じ階に住む高校生が上がってきた。

 彼は自分の自転車を後生大事にしていて、いつも抱えて上がっては玄関脇に置いている。その時もそうだった。


「どいて」

 大声で叫ぶ。


 高校生は驚き、急いで自転車もろともよけようとした。

 しかし階段の幅が狭く、やっとすり抜けられた時は、敏夫はすぐ近くまで迫ってきていた。


「どくんだ」

 敏夫に恐ろしい形相で怒鳴られ、高校生はすっかり震え上がっている。


 敏夫は自転車を取り上げると、階段の手すり越しに放り投げた。それは美知代の頭をかすめると、すぐ眼前に落下した。


 はずみで自転車の上に覆い被さるように転倒する。

 猛烈な痛さに襲われ、思わず、うっと唸った。


 ペダルがみぞおちに食い込んでいるのだ。

 しかしそんなことには構っていられない。


 何とか痛みをこらえて立ち上がる。


 手すりで身体を支え、自転車を踏みつぶすようにして、その場を脱出した。

 敏夫がすぐ背後に迫ってくる。


 背後で自転車のガチャガチャいう音が聞こえた。

 おそらく夫が踏み越えていったのだろう。


 大丈夫、逃げられる。

 ようやく一階に辿り着き、外に飛び出した。


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