表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45億年の沈黙  作者: 葉月舟
第一章 優しい男
3/40

-3-

 もう脅しや暴力には負けない――。

「あなたがどう言おうと、私はもう決心したんだから。たとえ裁判に訴えてでも別れてやるわ」


「形だけの夫婦なんてどうでもいいさ。僕はどこまでも君を追いかけていって、一生くっついて離れないからな」


「気持ち悪いこと、言わないで」 

 テーブルの上にあった醤油のペットボトルを投げつけると、相手はさっとそれをかわした。


 敏夫はこちらの隙を見て、さっと右から回り込もうとする。

 すかさず反対側に逃げる。

 今度は左側から回り込もうとするので、またその反対側に逃げた。


 両者で睨み合いになる。

「面白いじゃないか。よおし、ゲームの始まりといこうぜ」

 敏夫は獰猛どうもうな顔で笑う。


 美知代の胸に、これまで抑えてきた感情が噴き出してきた。

 声をありったけにして叫ぶ。


「何故私のせいなの。あなたが働かないでパチンコをしたり、昼間から飲んだりばかりしているのが」


「みんな君のせいだよ。君と結婚して僕の運勢はどんどん下がる一方だ。おかげで僕はこんなになってしまった」

 椅子を高々と抱え上げると、こちらにめがけて力一杯投げつけてきた。


 反射的に身を伏せる。


 木製の椅子は冷蔵庫に激しく当たり、まっぷたつに割れる。しゃがみ込んだ美知代の頭に、その一方がはじけ飛んできた。


 その時にはもう、敏夫はこちらに飛びついていた。椅子の片割れを放り投げると、美知代の身体にそのまま覆い被さってくる。

 確かに肋骨がミシッと音を立てた。


 相手はそんなことには一向に構わず、あろうことか今度は激しく唇を吸ってくる。

 首を振って避けると、また頬を殴られた。脳震盪のうしんとうを起こしそうなぐらいに。


 やがて、夫の両手が美知代ののどに食い込んできた。

「僕がこんなに愛しているのが分からないのか」

 そう言いながら、情け容赦なくどんどん首を絞めてくる。


 このままでは本当に殺される――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ