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45億年の沈黙  作者: 葉月舟
第四章 地中深くにて黙(もだ)す
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-3-

「それで? それで彼はどうなったんですか」


「そしたら親父さん、もっと恐ろしい形相で私を睨むんです。思わず絞め殺されるかと思いましたよ」

 そう言って、自分の首に両手を当てる。


「早くその先を」

 本当に絞め殺したくなる。


「あの男何を考えたんだか、ダッと駆けだして裏手の方に回ったんです。娘さんもすぐそのあとに続きましてね。

 私が行ってみると、窓の隙間から覗いてるんです。それから窓ガラスをガンガン叩くんです。

 それであわてて、何をするんです、近所の人が見てるじゃありませんかと言って止めたんですけどね。

 そしたらあいつめ、いいから見てみろと言って、顎をしゃくるんです。なんて傲慢な奴なんでしょう。

 それで私がその四角いあごの先を見てみると、カーテンの隙間から見えたんですよ。布団から二本の足がはみ出しているのがね」


 そう言ってごくりとつばを飲み込む。



「それで、彼は無事だったんですか」


「いやあ、びっくりしたのなんの。

 お姉さんの方は青くなって、携帯でどこかに電話してるし、私は私で、すっかり腰が抜けちまいましてね。

 もう身体はがたがた震えてくるし……」


「いや、あなたのことじゃない。彼は――、山口君はどうだったんですか」


「すると、あの男がまた目を剥いて怒るんですよ。

 おい、こんな時は真っ先にどうすればいいのか、そんなこともあんたには分からないのかってね」

 自分が喋るのに夢中で、まるで質問に対する答えになってない。


「だから、青年のことですよ。まさか、死んだんじゃないんでしょう」


「まあ、お待ちなさい。ものには順序ってものがある」

 そう言いながら、丁寧に新聞を畳んでいる。


 村山の方はじりじりしながら、その様子を見守った。

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