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「我慢できねえときたか。二億年が聞いてあきれらあ。やっぱり一番辛抱できてねえのは、てめえ自身だな」
「うるせえんだよ、この野郎。とっとと失せろ」
「ふん、さっきからチクショウだの、この野郎だの、お前のボキャブラリーはそれだけしかないのか。大学出の寿司屋さんよ」
「大学出は余計だろう、減らず口ばかり叩いてないで、早く出ていけと言ってんのが分からねえのか。こんちくしょうめ。
いいか、二度とここの暖簾をくぐるんじゃねえぞ」
「ふん、こんな店、頼まれても来るものか。勘定はいくらだ」
村山は立ち上がると、箸箱から爪楊枝を出し、わざと歯をほじくりながら聞く。
これも一志がもっとも嫌うことだった。
相手は両目をカッと見開き、しばらく歯をギリギリさせていたが、やがて吐き捨てるように言った。
「腹切ったつもりで負けてやるよ。たったの一万円だ。貧乏役人だからな、お前は」
「一万円だって……。カンパチの刺身とヒラメとアジの握りしか食ってないぞ。
まずい寿司を食わせる上に、ぼったくりの店だったのか、ここは――。
ほらよ、釣りはいらないからな」
村山は一万円札をカウンターの上に叩き付けると、翻すようにして店を出ていった。
「あっ広治、待てこの野郎――。チクショウ、本当に置いていきやがった。
おい美知代、塩を撒け。
み……、あっそうか。チクショウ、全くどいつもこいつも」
一志はあわててカウンターから飛び出した。暖簾の下から左右を見たが、すでに相手の姿はなかった。




