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45億年の沈黙  作者: 葉月舟
第二章 遠い明日
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-6-

「俺たちの若い頃もそう言われていたぜ」

 酒を一口飲んで、カンパチに箸を付ける。


「ふん。今の奴らは半端じゃない。俺たちとは別の人種と思った方がいい。おい広治、俺はもういい加減いやになったぜ。この店も俺一代で終わりかもしれないな」


「そんな泣き言を言うなんて、一志らしくもない。いい職人を見つけて、みっちゃんのお婿さんにしたらいいじゃないか」


 村山のその一言に、親子は一瞬顔を見合わせた。


「美知代に婿だって?」すかさず父親が首を振る。

「駄目だよ、こんな娘は。親に反抗して出ていったあげくに、刃傷沙汰まで引き起こしてしまったんだからな。そんな女に婿なんか来るものか」 


「刃傷沙汰だって?」

 驚いて聞き返したが、返事はなく黙って寿司を握っている。


 本人が「バツイチですよ」と笑って言うのを聞いたことはあるが、そんな話は初聞きである。


 村山はぷっと吹き出した。

「悪い冗談は止せよ。何のしゃれにもならない」


 すると美知代が声を震わせながら叫んだ。

「お父さんひどい。村山さんに喋ることないじゃない」

 顔が真っ青になっている。


 一志の方はすましている。

「事実を言って何が悪い。人様に恥ずかしいことは何もしてないんだから、胸を張って堂々としていればいいじゃないか。近頃のお前を見ていると、こっちまで陰気になってしまう」


「だったらどうして、そんな(・・・)女なんて言い方するの。従業員がやめたからって、私にまで八つ当たりしないでよ」


「ああ、そうだよ。八つ当たりしてますよ。おまけに今日は女房の命日ってんだからな。ほらよ」

 ネタケース越しに寿司が出る。


 村山は、はっとした。

「そうか、今日はみっちゃん、いや美紀子さんの……」


「なんだって、忘れてたのか? お前も薄情な奴だなあ。今夜はそれで来てくれたのかと思っていたのに」


「いや、済まん」

 カウンターの角に両手をついて頭を下げる。


 そう言われるのも無理はない。大場一志と美紀子、それに村山広治は、学生時代の共通の友人だったのである。

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