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元最強勇者のバイト先が魔王城なんだが、魔族に人間知識がなさ過ぎて超優良企業な件  作者: 延野正行


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第68話 UTAGE(宴会芸編:鯛やヒラメの舞い踊り)

本日は食欲をなくす恐れがあるので、お気を付け下さい。

 俺とフィアンヌは宴や酒が振る舞われていることも忘れて、料理にがっついた。


「コカトリスの卵、うめぇぇええ!! 黄身も白身も濃厚すぎる」

「師匠! ドライアドの根を擂ったものと合わせると、別の味がするです」

「マジか!? よし! 試してみるぞ。嘘だったら、お前の尻尾モフモフするからな」

「な、なんで、です!?」

「――ん? これは?? ……うまい!!」

「やったーです」

「ちょっとくどい濃厚な味が、一気にさっぱりした。凄いな、ドライアドの根」

「すでに商品化も考えてるみたいだけど、ドライアドたちからは猛反対受けてるらしいわ」


 俺とフィアンヌが料理の品評をする横から、エスカが割り込んだ。

 ワインを揺らし、得意げな顔を浮かべている。


 もう酔い回ってるらしい。

 白い顔は赤くなり、目もどこかトロンとしている。


「これとさっきの子ドラゴンの肉と合わせたら、どうなるかな!?」

「フィアンヌは網焼きで食べたい、です」

「てめぇ、子供みたいな容姿をしてる癖に、わかってるじゃねぇか! おい。スケルトン! 子ドラゴンを網焼きして持ってこい!!」


 近くにいた給仕係のスケルトンを呼び出す。

 俺たち以外にも、魔族の注文を受けている彼らは大わらわだ。


 普段なら、こんな時でも労役に付く彼らを哀れんだだろう。

 しかし暴食王となった俺の前では、労働者の涙など通じるはずもなかった。

 むしろ、その対応にモンスター化したいぐらいだ。

 それほど、並べられた料理は魅力的だった。


 危ない薬とか入ってないだろうな……。


 宴もたけなわというところで、声を張り上げたのは、オネェタウロスだった。


 【拡声】の魔法道具を振るう。


「さ~て! ここからは宴会芸のはじまりよ~」


 うふん、とウィンクを参加者に放つ。


「宴会芸?」


 俺はフォークの動きを止めた。

 首を傾げるとともに、何か嫌な予感が背中を走る。


 すると、どこからか音楽が流れてきた。


「まずは鯛やヒラメの舞い踊りよ~」


 と紹介する。


 部屋奥にあった暗幕が上がった。


「げっ!」


 最初に目を引いたのは、網タイツからはみ出たすね毛だった。

 やたらとぶっとい足が、音楽に合わせて動いている。


 大きく丸い瞳。

 手作りのチーズみたいな太い唇。

 内輪のような尻尾が、ヒラヒラと動いている。


 ここまでで何が起こっているか、想像ができる人間ヤツは天才だ。

 しかし、ヒントはオネェタウロスが最初に言った一言。


 鯛やヒラメの舞い踊り……。


 舞台上で踊りを披露していたのは、魚たちだった。

 むろん、ただの魚であるはずがない。


 その魚には足が生えていた。

 履いた網タイツから、びよよ~んという感じですね毛が出ている。


 魚人族――俺たちの間では、サーフィッシャーと呼んでいる魔族だ。


 それが5人。横一列にならんで、一生懸命ラインダンスを踊っている。


 これが鯛やヒラメの舞い踊り、だと……!

 そんなかわいげのあるものか!!


 舞台上で行われているのは、控えめに言っても地獄絵図だった。


「えっほ。えっほ。えっほ。えっほ」


 謎のかけ声が聞こえてくる。

 激しく汗を飛び散らせた。


 おいおい。大丈夫かよ……。

 あいつら、脱水症状を起こすんじゃねぇの?


「いいぞぉ!! いいぞぉ!!」


 俺は白目になりながら、舞台上を見つめる横で、フィアンヌが歓声を上げている。

 魔族達にも概ね好評のようだ。

 やんややんやと手を叩き、一緒に踊っている者もいる。


 あれ? もしかして楽しめていないのって、俺だけ?


 すると、ドタンと何かが倒れる音がした。

 魚人族の1匹が倒れたのだ。


 あ~あ。……言わんこっちゃない。


 俺は額を抑える。


 だが、他の魚人族は踊り続けた。

 溢れるパッションとともに、汗が飛び散らせる。

 すでに舞台上はびしょびしょになって、中には足を滑らせるものもいた。


 ――とまた、魚人族が倒れ、動かなくなる。

 さらに1匹、また2匹と舞台上で蹲った。


 最後の1匹も倒れる。

 そして誰もいなくなった。


 催しは終わりかと思いきや、やってきたのはコック姿の巨大な石魔人。

 一体どこにそんな料理服があるのだとツッコミたくなるほどの大きさのエプロンを着けていた。


 石魔人は1匹の魚人族の尾っぽを持つと、掲げ上げた。


 すでに虫の息の魚人族は、口をパクパク動かしながら呟く。


「煮てよし……。焼いてよし……。……でも、刺身いやぁあ! 痛いからぁぁぁあああああ!」


 石魔人は包丁を取り出す。


 シャキン! シャキン! と音が鳴った。

 普段、緩慢な石魔人とは思えない、包丁さばきだ。


 あっという間に、魚人族は3枚に下ろされる。

 さらに身を切られ、調理されていく。


「ヘイ! オマチ!」


 無機質な音声を上げて、大皿を宴会場に向かって差し出した。

 そこには魚人族の刺身が綺麗に盛られていた。


 たった今、切られた頭まで乗っている。

 黒い目はまだ生きていて、こちらを向いていた。

 うう……。ぐろい……。


 そんなこともお構いなしに、魔族たちは魚人族の渾身の刺身ネタに群がった。

 旨さのあまり悲鳴を上げるものが続出する。


 だが、いくら剛胆な俺の腹も、さすがに反応しなかった。


「さすがに、あれはないわ」

「です、です」


 ダンスの時はノリノリだったフィアンヌも、目を点にしながら見つめていた。


「あんたたち食べないの?」


 皿に群がっていた魔族と同じく、刺身に口を付けていたエスカが振り返った。


 さすが魔王の娘である。

 肝の据わり方が違う。

 というか、流血が苦手の癖して、そういうのは大丈夫なのかよ。


「血抜きしてあるから大丈夫でしょ?」


 すっげーあっさりとしたコメントが帰ってきた。

 てか、いつ血抜きしたんだ……。

 もしかして、サーフィッシャーたちが流していたのは汗じゃなくて、ブラッド的なヤツなのか。

 そのために最初にダンスを披露したとか?


 お、おう……。なんか、そう考えたら、余計食欲が……。


 というわけで、鯛やヒラメの舞い踊りならぬ――魚人族の踊り食い(ヽヽヽヽ)は終了した。


「続いて、ネグネ卿の一発芸です」


 ネグネ!


 あいつ、こんなところに出てきて、芸をするのかよ。

 大丈夫か?


 舞台袖からやってきたのは、ネグネではなくボーイ姿のスケルトンだった。

 荷車を押してやってくる。

 それにはサテンの布をかぶせた箱が載っていた。


 舞台の中央で止まる。


 スケルトンが布を摘まむ。

 するとバッと取り払った。


 現れたのは、ガラスの箱の中で蹲るネグネ。

 やや袖の長い白衣を着たリッチの少女だ。


 急に光を当てられ、ネグネはきょとんとなる。

 瞬間、目から涙がこぼれ。


「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!」


 断末魔かと聞き間違うほどの悲鳴を上げる。


「広いよぉぉおおおおお。……明るいよぉぉおおおおおおお」


 わんわん泣き出す。

 目を剥きだし(片目はすでに剥き出てるけど)この世の終わりかという顔を浮かべていた。


 と今度は、スケルトンは再び布をかぶせた。

 すとんと嗚咽が止む。

 しかも、何故か「でへへへ」という赤ん坊の声みたいな笑いが聞こえてきた。


 すると、またスケルトンは布を外す。


「ぎゃああああああああ!! 広いよ~。明るいよ~」


 布をかぶせる。


「ぐへへへ……」


 布を外す。


「ぎゃああああああ――」


 以下略。


 何度かやると、スケルトンは布をかぶせたまま、荷車を押し、舞台袖へはけていった。


 どっと笑いが起こる。

 魔族たちが舞台上を指さしたりしながら笑っていた。

 しかも大ウケだ。


 俺は――。


 え……えっええええええ~~~~~~~~え……。


 さっぱり笑いの壺がわからん。

 だがしかし、横に座ったフィアンヌも大爆笑していた。

 腹を抱え、尻尾を振り、舞台上を指さしている。


「ふぃ……フィアンヌ……。い、今の何が面白かったんだ?」

「ぷくくくく……。師匠は面白くなかったですか? あははは……」

「あ、ああ……」

「なんていうか、そうです! “いないいない、ばあ”みたいで面白いじゃないですか!」


 赤ん坊か、己は!


 魔族たちはというと……。


「今回もネグネ様、最高だな」

「萌え~」

「やっぱ1年1回は、あの悲鳴を聞かないとな」

「今日の悲鳴が気合い入ってたな」


 ぐふふふ……と笑みを浮かべながら、納得していた。


 一際、笑っていたのがエスカで。


「ネグネ卿、最高よ。やっぱあの顔と声の高さが絶妙だわ。ぷははは……」


 笑い転げていた。


 俺は、ただこめかみの辺りを指で掻くしかなかった。


「それでは、最後お待ちかね。ドランデス様の登場です」


 ど、ドランデス!?


 オネェタウロスのアナウンスを聞いて、俺は背筋を伸ばした。

 そう言えば、ずっとその姿を見てなかった。

 まさか宴会芸の舞台に上がるとは……。


 すると会場の明かりが落とされる。

 舞台上に精霊光球の強い光が当てられた。


 騒がしかった魔族たちも静かになる。

 体格が人と似たゴブリンやオークといった魔族は、何故か正座を始めた。


 しかし、肝心のドランデスはなかなか出てこない。

 オネェタウロスは舞台上に上がる。

 袖の方へと行くと、何やら声が聞こえてきた。


「ちょーと……。ドランデス様、早く出てきていただかないと進行が進まないんですけど」

「オネェタウロス。こ、今年はいいのではありませんか?」

「今さら、何を言っているんですか?」

「でも、この格好は――」

「心配しなくてもお似合いですよ。ささっ」

「ちょ! 押さないで――――キャッ!」


 少女みたいな悲鳴を上げて、ようやくドランデスが現れた。


 その姿を見て、俺は言葉を失う。


 ドランデスは――――。



 【本日の業務報告】

 魚人族があらわれた。

 魚人族は舞をおどった。

 元勇者にはきかなかった。

 魚人族は倒れた(脱水症状)

 魚人族は舞をおどった。

 元勇者にはきかなかった。

 魚人族は倒れた(脱水症状)


 以下略。


 まものはぜんめつした。

 元勇者の経験値0。0エン手に入れた。

 魚人族の刺身が落ちていた。

 しかし、元勇者はお腹と胸が一杯で拾わなかった。


怒濤の評価ラッシュのおかげで、

日間総合187位まで戻ってまいりました。

(ここまで戻ってきたのは、作者史上はじめてです)


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