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第10話 魔王城の清掃員ってどんな仕事をするの? はい、クソです。

大変お待たせしました。


今日だけで8000PVを超えました。

1万いってほしいな。

読んで下さった方、ありがとうございます!

 魔王城でのアルバイト3日目。


 当然のことだが、今日は遅刻しなかったぞ。

 なんせ始業時間という概念が、魔族にはないらしいからな。

 明け方まで飲んで、昼に出社してやった。

 なんか偉くなった気分だ。

 時間に縛られるのが嫌いな俺にとっては、この職場は合ってるかもしれない。

 ……この職場って、魔王城だけどな。


 ご機嫌な俺は、口笛を拭きながら、ロッカー前をモップがけしていた。

 玄関口だから、すぐに足跡やら唾やら、何かの食べかすやらで汚くなる。


 だから俺の仕事は、まずロッカー前を磨くことから始まる。

 ロッカールームは、アルバイトの大本営みたいなもんだしな。


 ある程度磨くと、石畳がピカピカになる。

 なかなか気持ちいいものだ。

 家ではあんまりやらないのだが、たまに掃除してやるのもいいかもしれない。


 額についた汗を拭った。


「さーて、次は何をスっかな」

「ブリードさん」

「うわあ!!」


 思わず悲鳴を上げながら、反転した。

 おかっぱの頭に2本の角。

 キュッとしたお尻から太い尻尾が伸びている。


 四天王の一角――嵐龍ことドランデスです。

 俺の上司だった。


 相変わらず鎖付き眼鏡の奥から、紺碧の鋭い光を放っていた。


「すいません。びっくりさせてしまいましたか?」

「べ、別に謝ることじゃないですけど、背後から突然ってのは――」

「わざとやってるわけじゃないんです。これは癖でして」


 癖って……。

 お前、暗殺者にでもなるつもりかよ。

 まさか元勇者の寝首を掻こうとか考えているのではないだろうな。

 それなら、俺はさぞかし良い練習相手だろう。

 なんてったって、俺が元勇者だしな。


「ところでなんかようですか?」


 すでに嫌な予感がしていた。

 業務中に、ドランデスが声をかけるなんてことは、何か特別な仕事をやってほしい時だからだ。


 それは昨日うちに、学習済みだった。


「実は今日もお願いしたいのですが」

「まさか――」

「はい。そのまさかです」


 ――マジか……。


 がっくりと肩を落とした。


「それも業務のうちですか」

「残念ながら、そうなります」

「わかりました」


 仕事と言われれば、仕方がない。

 こっちは雇われた身だ。

 たとえ履歴書の欄に、「経歴;元勇者」「長所;魔王とか倒せること」とか書いてても、俺は部下、向こうは上司。命令は絶対なのだ。


 ドランデスが歩き出す。

 俺は道具を持ってその後ろに付き従った。


「で? 今度はどこです? まさかまたオーガじゃないですよね」

「今日はケンタウロスの部屋です」


 ああ。なるほど。ケンタウロスね。


 俺は得心した。


 今からやるのは、糞尿の処理だ。

 つまり、魔族どもが出したう○ことおし○こを片づけるのである。


 魔族のヤツらは、清掃の概念がないどころか、糞尿の処理すらまともに出来ないらしい。

 そもそも便所という発想がない。ありとあらゆるところに糞や尿を垂れやがる。昨日、俺のロッカールームに盛大に聖水(ヽヽ)をかけやがった輩もいたぐらいだ。

 業務妨害と見なして、人誅を食らわしてやろうと思ったが、ドランデスに事情を聞いて、拳を引っ込めざるえなかった。


 で――。

 昨日はオーガ。今日はケンタウロスというわけだ。

 はあ……。憂鬱だ。

 せめてケンタウロスのう〇こが、オーガよりも小さいものであることを祈る。


「この扉の奥です」


 ドランデスは扉を開けた。


「――――!」


 俺は絶句した。


 ケンタウロスが山盛りのう○この中で、競馬をしていたからではない。

 むしろ、そっちの方が健全だろう。


 部屋の中にあったのは、大量のネバネバとしたものだった。

 それが地面だけではない。壁にも天井にも貼り付き、垂れ下がっている。


「な、なんだ、こりゃ!」


 おいおい……。

 ケンタウロスのう○こってこんなにビチビチでベタベタなのか。


「間違えました」


 ドランデスは何事もなかったかのように扉を閉めた。

 次の部屋へと行こうとする。

 俺はとりあえず後に従う。


「今のって……」

「スライムです」

「なんであんなところに? 相当な量に見えましたけど」

「時々、スライムの駆除依頼が人間側からあるんですよ。なにせ1匹いたら、千匹いるというぐらい繁殖能力が高いですからね」


 なにそのゴキブリも、真っ青な理論。なにげに笑えんぞ。

 あと、スライムが繁殖じゃなくて、増殖だからな。


「殺してもいいのですが、火や高熱を伴う手段ではないと倒せませんからね。森とかにいると、今の時代――おいそれと炎を使うわけにもいかないですし」


 そうだな。

 昔、魔族と戦ってた時は、容赦なく使ってたけど、俺。

 おかげで、森の妖精やら精霊やらから、抗議の手紙が山ほどもらったぜ。

 直接いえよ。お前らこそ、資源の無駄遣いしてるじゃねぇか。


「だから、一時的にあの部屋に閉じこめて、溜まったら火で焼いています。主に私がやっているのですが」

「こういうのもなんですけど、罪悪感ないんですか?」


 一応、魔物とはいえ、スライムも眷属の一種だ。


「人間は必要であれば、小さな昆虫を殺したりしますよね」

「ゴキブリとか?」

「それと同じです。感覚的に」


 俺はゴキブリを眷属なんて思ったことねぇけど……。


「さて、この部屋です。お願いしますね」

「わかりました」


 なるべく嫌々感を出さないでおこうと思ったが、ドランデスは敏感に察したらしい。


 少し顔を曇らせると、扉を開け放った。



 ◆



 それは静かに、そして本能に従い、増殖を繰り返していた。


 単純な作業ではある。


 手始めに中の緑色の核に切れ目を入れる。

 半透明の細胞体を伸ばし、両方から引っ張るように動かすと、切れ目から核が割れる。さらに引き伸ばすと、今度は細胞体が割れ、1個の個体が生まれるというわけだ。


 それを延々と繰り返す。

 そうすることによって、彼ら(ヽヽ)は増殖していく。


 増殖するたびに個体は小さくなるが、栄養をとれば問題ない。

 栄養はなんでもいい。

 石にこびりついた塩。埃や食べ物のクズ。なんでも食べる。

 特に排泄物などは大好物だ。


 そうして増殖を繰り返すうち、ある時人語を解するものが現れる。


 大戦時は、そうした個体は発見されることなく燃やされてしまうのが常だった。

 しかし、今は違う。魔王城という魔族の領内にいる。ここにいるならば安心だ。


 そう思った矢先。


 彼ら(ヽヽ)は不吉なことを聞く。


『だから、一時的にあの部屋に閉じこめて、溜まったら火で焼いています』


 なんと言うことだ!

 安全だと信じていた場所が、彼ら(ヽヽ)の焼却場だったのだ。

 どうりで灰や燃え滓が落ちているわけだ。


 このままでは殺される。

 焼かれてしまう。

 逃げ延びねばならない。


 彼ら(ヽヽ)は扉を見た。

 頑丈そうだが、どうやら鍵がかかっていない。

 あの龍の女、閉め忘れたらしい。


 逃げるなら今しかない。


 彼ら(ヽヽ)の総意は固まった。


 溜まりに溜まった彼ら(ヽヽ)は、次なる新天地を目指す。

 そして扉に殺到するのだった。



 【本日の業務報告】

 魔族のふんを使ってみた。

 しかし、何も起こらなかった。

 元勇者は鼻にダメージを受けた。


日間総合119位まで来ました。


二桁まであと少し!

ブクマ・評価をいただいた方ありがとうございます。

更新頑張ります!

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