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異世界で手に入れた等価交換の力で俺がこの村を発展させてやる!!  作者: 松原太陽
異世界で過ごした一週間
7/76

作業開始

 村長の家を出て数分、リーナ率いる女性陣は百人ぐらい余裕で入れる村で一番大きな建物の前に集まっていた。ちなみにこの建物は主に村人達の集会所として使われている。


 「それでリーナちゃん私達は何をすればいいのかしら」


 確かに男性陣は始めから何をするか大体分かっていたが女性陣は何をするか全く分からないだろう。そもそもリーナも最初は分からなかった。


 「みなさんにはこの中でタオルというものを作ってもらいます」


 「たおる? それって何なの」


 「えーと確か汗を拭ったり水浴びした後体を拭いたりする布です。実物はこんな感じです」


 昨日カケルに貰ったタオルをみんなの前に広げる。


 「へーこれがタオル?」


 「はいそうです」


 前にいる女性達は興味本意に手触りを確かめてくる。


 「あら中々触り心地が良いわね」


 「えっ! ホント」


 一人また一人と自分も触ってみたいと後ろからバァーと押し寄せてくる。


 「おっ押さないでください! 後でみんなに回すから押さないで~」


 そして数分後やっと落ち着いたので説明に戻る。


 「えーこのタオルは王都で売る予定の物らしいのでみなさん頑張っていきましょう!」


 「「はぁ~い」」 


 男性陣に比べれば少しやる気は無さそうだがここにいる以上とりあえずやってはくれるはずだ。


 「それでそのタオルはどうやって作るの?」


 「あっその説明はこの中で話すので入ってください」


 そう言いながらみんなを連れて中に入っていく。

 中に入ると三十人近くもの感嘆の声が聞こえた。それは何もなかっただだっ広い集会所の中に見たことない道具がたくさんおいてあったからだ。


 「それではこれからタオルの作り方を教えるのでまず三つのグループに分かれてください」


 わらわらと近くの人同士が組みあっという間に十人弱の一グループが出来上がった。


 「それで分かれたけど……これに何の意味があるの?」


 「分けた理由はたしかグループごとに役割分担をしてもらうから……だっけ?」


 たぶんカケルはこう言っていたはずだとリーナは曖昧に説明するが大丈夫自分を信じてと自らを鼓舞していく。


 「それでは一グループごとに担当の場所とそのやり方の説明しますので他のグループは待っていてください」


 一グループを連れて説明に入ろうとしたとき私は自分の手に出てきた手汗の量に驚き、かなり緊張していたことに気付く。

 

 ――大丈夫大丈夫落ち着け私。カケルが教えてくれたことを思い出せばいいだけなんだから


~~~~~~~~~~~~~~~~~


 「いいかこれからリーナにはここにある道具の使い方を全部覚えてもらうからな」


 「は、はい!」


 見たことのない道具が多かったが自分は記憶力はいいほうだと思っているので何とか覚えきれるはずだと無駄な自信を持っていた。


 「正直に言うが第一歩の村発展に重要なのはこの作業だから頑張ってくれよ」


 何でこうプレッシャーをかけるような言い方をするのだろうか。でもカケルにばかり負担をかけないためにも頑張らなきゃいけない。


 「うん。分かったよ」


 「よしじゃあ順番に説明するからな。ホントはこういうのは自動でやるものなんだけどここには電気がないから手動でやるものしかなくて……」


 そのまま聞いていたリーナはかなり混乱していたと思う。聞きなれない言葉がでたり材料は俺が用意するけどいずれはこの村でとか後半はもう右耳から左耳に聞き流していたかもしれない。


 「……というわけだけど分かったか」


 「ごめんあんまり分からなかった」


 「まぁこればっかりはしょうがないか。よし今度は実際にやりながら説明するから」


 そう言ってカケルの指導のもとリーナは集合時間ギリギリまでやったが全部覚えたかというと曖昧でどちらかといえばうろ覚えレベルだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ――あれこれ私ダメかも 


 あまりの自分の不甲斐なさに落ち込みたくなる。


 ――そうだ! 確かカケルがもしダメなときはこれを読んでくれって渡した紙があったんだ


 何で今まで忘れていたんだろうと思いながら急いで左ポケットに入れた紙を取りだし読んでみたらとんでもない悲劇が待っていた。


 ――嘘。読めない……


 カケルから渡された紙には見たことのない文字が書かれていた。恐らくカケルの世界の文字なのだろう。


 ――あーもう何で最初に確認しなかったのよ私は


 このままではカケルの足を引っ張ってしまうと思ってしまうと怖くて体のいうことが聞かなくなりそうだった。

 だがカケルに任せてって言った以上自分が何とかしなければならない。


 ――こうなればもうぶっつけ本番よ。なるようになれだわ


 若干なげやりな感じになっていたかもしれないが行動しないことには始まらない。

 こうしてリーナは三十分近くかけ全グループに説明し終えると作業を開始させた。



==================================================



 リーナ達が作業を開始し始める同時刻、鍬など農業の道具を持った男性陣は少し歩いた所にある川の近くまで来ていた。


 「男性陣のみんなはこれからここで野菜を育ててもらうんだけど何か質問がある人はいるか」


 「できた野菜はどうするんだ」


 「できた野菜は全て村人全員で分けるつもりだ」


 端からカケルは野菜を売るつもりはない。

 そもそも食糧が足りていない時点で売るわけがなかった。


 「なら女共は何をしてるんだ」


 「女性の人にはリーナの指導のもと、とある販売物を作ってもらっている」


 この販売物に関しては朝食が終わった後三時間ぐらいでリーナに作り方を教えているからあまり上手くはいっていない可能性もある。


 「昼飯はどうしたらいいんだ」


 「昼食は時間が来たら俺がみんなに水分と一緒に配りますんで心配しないでください」


 これに関しては先程の大男に言っている以上与えない訳にはいかないだろうからな。


 「もう質問はないなー」


 ぐるっと周りを見てカケルは誰も質問がないことを確認する。


 「じゃあ早速始めてください。出来れば今日中に種を蒔きたいと思っているのでそのつもりでお願いします」


 男性達は野太く気合いの入った返事をするとあちこちに散らばり作業を開始する。

 移動の間に役割分担をすでにしていたのかというぐらいスムーズに作業を進めていく。さすが農業経験者達だ。


 「この調子なら農業の方は大丈夫だろうな。問題はリーナ達だけど大丈夫かなー」


 どちらかといえば村の発展の作業をリーナ側がやっているから様子を見に行きたいところだがリーナに任した以上彼女を信じなければならない。


 「まあ昼食を届けに行くからその時確認すればいいことだけどな。ん、あの男は……」


 様子を見ていると作業をしている人達の中にあの大男を見つけたカケルは真っ先に賛同をしてくれたお礼が言いたかったため大男のとこまで移動する。


 「おーい!」


 「ん? おぉあんたか、俺に何か用か?」


 「いやまあ、用って言うかそのお礼が言いたくてな」


 「お礼? 何の」


 歳は三十あたりだろうか身長が二メートルぐらいある筋肉質の褐色大男は元々目付きが悪いのか普通の会話でも睨み付けるように話してくる。


 「ほら俺の提案に賛同してくれたことだよ」


 「ああそのことか」


 大男は短く刈り上げた白い髪を右手で掻きながら溜め息をつく。


 「別に礼を言われる筋合いはねぇよ。俺はこのままちんたら暮らしていくのが嫌だったから賛同したまでだよ」


 「でもそのお陰でみんな賛同してくれたんだありがとな。えーと」


 握手しようと右手を出すが冷静に考えるとカケルはまだリーナ以外の村人の名前を知らない。


 「おっとそういえばまだ俺はあんたに名前を言ってなかったな。俺の名前はサザン・アルフレド。サザンと呼んでくれ」


 サザンはそう言うと俺の差し出す右手を握る。


 「ああ分かったよサザン。これからも一緒に村の発展のための力を貸してくれ」


 「おうそのつもりだ」


 こうやって話せば目付きが悪くても怖い人ではないと分かる。


 「じゃ俺は作業に戻るから何か用があったら気安く声をかけてくれ」


 「了解。邪魔して悪かったな」


 言いたいことを言い終わるとカケルは作業している近くの広場で今日使ったお金と今後の村人に出す食費の計算をし始める。


 「えーと小型ドラム整経機が十台で百七十万……」


 頭の中で計算するとおかしくなりそうなのでスマホの電卓機能を使って計算をしメモ機能も使って書き込んでいく。


 「合計三百九十万か……さらに一日に村の人達にあげる昼食の代金が三万ぐらいか……これ大丈夫か」


 昼食代に限っては今後の作物の収穫量で変わるがタオルを作るための出した道具の出費分の回収はリーナの腕にかかっている。


 「まあ大丈夫か。念のためリーナには取り扱い説明書を渡したし……ん? 説明書?」


 説明書という単語を口にした瞬間、何故だか分からないが凄く嫌な予感がする。この言い様のない不安感は何なんだろうか。


 「……あ、ああぁぁぁあーー!」


 しばらく考え込むと肝心なことを見落としていたことに気づいたカケルはつい叫んでしまった。


 「おいどうしたんだよ急に叫んでよ」


 発狂したカケルを心配しに様子を見に来たのはサザンだった。


 「サザンかちょうどよかった。俺はこれからリーナのとこに行くから戻ってくるまで俺の代わりを頼む」


 「えっ、あっああ分かった」


 「それじゃあ」


 軽く右手を上げ別れるとカケルは重い足取りでリーナのとこに向かう。


 「俺としたことが完全にしくじった」


 落ち着いて考えれば分かっていたはずだった。

 きっと物事が上手くいって油断していたのかもしれない。


 「リーナは絶対に日本語読めないだろ普通」


 リーナだけではない。この世界の人なら誰だって読めない。なにせ世界が違うのだから。


 「リーナの奴、説明しているときも結構はてなマーク浮かべていたからなー。あーもう嫌な予感しかしないぜ」


 今日から限られた資金三億円を使っている。万が一にも不注意で壊されたとあっては村発展どころではない。


 「くそー。俺が行くまで何も起こるなよ~」


 泣きそうな気持ちを押さえカケルはリーナのいる建物に進んでいく。

 重くなる足取りの中、カケルはリーナのいる建物に着く。不安な気持ちで扉を開けたカケルが見たものは道具が壊れ大混乱になっている……光景でなく狂ったようにタオルを作り続ける村の女性達の姿だった。


 「嘘……だろ。何だよこれは」


 「どうどうみんな凄いでしょ」


 隣ではみんなの頑張りを誉めてと言わんばかりにリーナが嬉しそうな顔でぴょんぴょんしている。


 「あのーリーナさん」


 「ん? 何カケル」


 「これは一体……」


 ある程度のことは覚悟していたがさすがにこの状況だけは想定していなく動揺を隠せない。


 「あのねカケルの言う通りに教えたらみんな夢中になっちゃって」


 「もしかして俺の説明したことを全部覚えてたのか」


 それならカケルの中のリーナ印象が大分変わるのだがリーナはわざとらしく目をそらす。


 「えーと実はあんまり覚えてなくてちょっとだけ適当に……」


 「本当は?」


 これだけわざとらしく目をそらすんだ絶対に誤魔化しているはずだ。


 「……ごめんなさい。ほとんど覚えてなくてかなり適当に言いました」


 まさかとは思っていたがやはり覚えていなかったか。だがそれなら何故みんなはこんなにも順調に作業が出来ているのだろうか。


 「なあ適当ってどれくらい適当に言ったんだ?」


 「えーとこの絵を見ながらこんな感じかな~って」


 そう言って見せたのはカケルが渡した取説だ。

 取説には所々作業している図が載っていたためそのお陰で何とか上手く説明出来たのだろう。


 「ごめんね。速めに気づいて言うべきだったんだけど私この文字読めないの」


 「うん、それに関しては俺が悪かったすまない」


 ホントにそれに関しては申し訳ないと思い頭を下げる。


 「にしてもこんなに出来るなんて思わなかったな」


 既に完成しているタオルの数は三百枚近くあり一部の人はバスタオルまで作っていた。


 「まあ結果こうしてタオルが出来ているんだありがとなリーナ」


 「エヘヘへ」


 嬉しそうに照れるリーナを見てるとどうしてもドキドキしてしまう自分がいる。


 「けど今回は上手くいったけど次からは分からなかったらちゃんと俺に言えよ」


 そう言いながらカケルはリーナの額に軽くデコピンをする。リーナは両手で額を押さえその場に蹲る。


 「はぁーい」


 若干、涙目でこちらを見るリーナも可愛く見えてしょうがない。


 「そんな目で見るなって別に強くやったわけじゃないんだから」


 カケルは右手を差し出しリーナはその手を掴み立ち上がる。


 「もうすぐ昼食にするから切りの良いとこで止めてくれ」


 「うん、わかったよ」


 キラッと笑顔を作るリーナを見てるとまたドキドキが止まらない。一体自分はどうしたというのだろうかと不安になる。カケルには心に決めた人が居るのになんでだろうか。


 「どうしたのカケル? ぼっーとして」


 「あ、ごめん少し考え事をしてただけだから」


 「そう。じゃあ私行くね」


 リーナは軽く手を振るとみんなの作業を止めにいく。


 「ホント俺の心はどうしたんだろな」



==================================================



 昼、それぞれ作業を一時中断しカケルは昼飯にコンビニのおにぎり三つを配った。

 みんな初めてのコンビニのおにぎりの袋を開け方が分からないためカケルとリーナが手分けして教えていく。

 初めて食べるコンビニのおにぎりに村の人達はリーナと同じような反応をしていた。


 「ふぅ~やっと俺も昼飯が食べれる」


 「私もだよ~」


 カケルとリーナは近くの木で一緒におにぎりを食べることにした。


 「モグモグ、ゴクン。はぁ~やっぱりこのおにぎりは美味しいね」


 「そうだな」


 どうやらリーナはコンビニのおにぎりをかなり気に入っているらしい。このおにぎりでここまで美味しく魅せる食べ方が出来るのはリーナぐらいだろう。


 「それにしても畑の方はかなりの範囲耕せてるね。これなら今日中に種蒔きができるね」


 「そうだな。みんな思ってた以上に頑張ってくれたからな」


 この調子ならあと一時間ぐらい続ければ種蒔きを始めれるだろう。ちなみにこの畑が完成したらこの時期にはもう無理かもしれないが田んぼも作る予定でそれが完成したら荒野とその気温を使ってタオルの材料となる綿の栽培を始めるつもりだ。

 いつまでもカケルがこの世界に居るとは限らないためカケルが居なくなってもやっていけるようにちょっとづつ準備をしている。


 「そういえば……そっちは材料の方、大丈夫か?」


 「うん。カケルが大量に用意してくれたから」


 このペースでいけば明日には、千枚は出来るはずだ。なら次にカケルがすることといえば。


 「なあリーナ」


 「ん、何カケル?」


 「ここから王都までどれくらいあるんだ」


 そうタオルができたのなら次にやることといえば王都に赴きタオルを売ることだ。そう村発展のための資金を作らなければならない。


 「そうねー。徒歩で二日かなー」


 「ふ、二日!?」


 徒歩で二日ってなら毎回そんな距離を行ったり来たりするリーナのお父さんは何者なんだろうか。いや今はそんなことを気にしている場合ではない。


 「と、徒歩以外に他に移動手段はないのか」


 「王都にならレンタル馬車とかがあるけどこの村には馬なんていないからな~」


 そうですよね。薄々そうじゃないかなーって思っていたよ。さすがに等価交換の力で生き物を交換をするのは不味いだろうし。でも馬がいるなら他に移動できる異世界特有の動物が近くにいるかもしれない。


 「なあこの村の近くに馬の代わりになるような動物はいないのか」


 「馬の代わり!? そんな動物いたかな?」


 二つ目のおにぎりを食べ終わったリーナはうーんと腕を組考える。


 「あっそういえば昨日馬みたいなシルエットを見たの」


 「てことは東側の荒野あたりってことか?」


 「うん。夢の通りに英雄を探しよる途中で見たから」


 なら早くそいつを捕まえることが出来れば足を確保できることになる。


 「よし。リーナ俺は今からその馬を捕まえにいってくる」


 「ふぇ!」


 三つ目のおにぎりをくわえたリーナは驚きの声を上げる。


 「一人で行くの?」


 「ああそのつもりだけど……」


 カケルはここで察した次にリーナが何を言うのかを。


 「私も一緒に行くわ」


 ――俺の予想通りのことを言ったな。まあ土地勘がない以上リーナがいるのは心強いな


 「分かった道案内頼むな」


 「うん。あっでもまだ私おにぎり食べ終わってないから少し待ってね」


 「大丈夫だから落ち着いて食べろよ」


 その後、カケルはサザンに事情を説明し数種類の野菜の種を渡してリーナと共に村の外に出た。

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