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魔女との共闘

 カケルは自らの心臓に迫るナイフを見て人生で二度目の死を覚悟していた。

 トラックに轢かれる時と同じように後悔がカケルを包む。


 ――せっかく神様が救ってくれた命のに……村の発展も満足に出来ていないのに……!


 自分の死が近いせいか世界がゆっくり見える。

 じわじわ近付いてくるナイフ。殺すことに成功と喜ぶ二人の暗殺者。悔しそうに睨むサザンとルービス。助けようと魔法を詠唱するメル。


 いろんな人の表情から自分の死が覆らない絶対のものだというのを告げている。

 それは神様からの救いも期待できないことだ。


 ――さすがに二度も助けるほど神様はお人好しじゃないよな


 触れなくても心臓の鼓動を感じれる。気持ちは死を受け入れても体はそうではないということだ。

 けど、この状況はもう変えれない。変えることはできない。この距離と速度では避けるのは不可能。メルの魔法が間に合うこともないだろう。

 つまりどう足掻こうが詰んでるのだ。詰んでるのが分かっているからみっともない抵抗をするつもりもないし、死を受け入れられる。


 ――元々、無くなる命だったんだ。それが少し延びていただけなんだ。そう、これが本来俺が辿るべき道なんだ。結局、俺は早い段階で死ぬ運命なんだ……


 異世界に来て短い期間で色々あったがここでカケルの役割は無慈悲に終わる。

 最期ぐらいこの世界の風景を目に焼き付けようと辺りを見回すと涙を浮かべ哀しげに手を伸ばしているリーナの姿が目に入った。


 ――リーナ……悪いが後は任せた


 いつも勝手な事ばかりで今回も勝手に責任を押し付けてしまうのに申し訳なさを感じながら死を受け入れるため目を閉じる。すると、まぶたの奥から熱い何が溢れてくる。

 

 一体何がと思い、目を開けるとそれは涙だった。カケルは何故、自分が泣いているのか分からなかった。トラックに轢かれる時には涙は出ていないのに何故、涙が出るのか分からない。

 死ぬのが怖くないと言えば嘘になるが泣くほど怖いというわけでもない。ならどうしてこんなにカケルは悲しいのか。


 気付くとカケルは無意識にリーナに向かって手を伸ばしていた。どうして届くはずのない手を伸ばしていたかすぐには理解できなかった。

 自分が涙を流しながらリーナに手を伸ばす理由。カケルは一つだけ思い当たる節があったがそれは信じるに信じれないものだった。


 ――もしかして俺は……俺はリーナと離れるのが嫌なのか……


 この考えは自分自身を疑うほど馬鹿げていた。それはトラックに轢かれる瞬間、彼女に思いを告げれぬ後悔はあったが涙は出なかった。それなのに何で今は涙が出るのか。

 そう。カケルはこの異世界をリーナと共に過ごしているうちに自分が気付かないぐらいリーナはカケルにとって仲間(パートナー)以上の特別な存在になっていた。


 ――俺は彼女が好きだ。それは紛れもないことだ。なら俺はリーナの事をどう思ってるんだ……


 カケルがリーナをどう思っているのか。それは考えるまでもなくリーナの事を彼女もしくはそれ以上に好きだということになる。だが、その好きが異性つまり恋愛感情としての好きなのかそれとも妹のような家族として好きなのかまでは分からなかった。

 しかし、今はその考えはどうでもいいだろう。今重要なのはカケルが死を受け入れていた心がまだ生きたいに変わったことだ。


 ――そうだ。こんなあやふやな状態で死ねるかよ。俺はまだ彼女に思いを伝えれてねーし、リーナと約束した村の発展も成し遂げれてねーだろが!


 生きたい。そう思うだけで全身から力が沸き上がってくる。が、問題はこの状況をどう打開するかだが、カケルには既に策はあった。いや、策と言うにはあまりにも無謀で賭けに近いものだった。


 それは重心を右にずらし、ナイフの刺さる場所を心臓ではなく脇辺りにするというものだ。

 幸いカケルはナイフに向かって走ってる状態。完全に避けるのは無理でも急所さえ外せば生きるチャンスがある。しかし、あくまでも急所を外すだけでナイフは必ず体の何処かには刺さる。それは今までの人生で味わったことのない痛みだろう。生きるために苦痛を強いられるのは辛いが生きたいと思った以上、カケルはナイフの痛みを覚悟した。


 ――どれだけいてーのか分からねーけど、上手くいけばまだ生きるチャンスはあるんだ


 急所を外しナイフの痛みに耐えるだけでいい。それだけで生きれるのだ。カケルにとって辛い選択だが、カケルには迷いはない。覚悟を決めたカケルは徐々に重心を右に反らす。

 ナイフとの距離は後、数センチ。上手く急所は剃らせたかもしれないが心臓に当たるか当たらないかの紙一重の可能性がある。

 こうなると後は運に任せるしかないがカケルはトラックに轢かれるあの時から立て続けに面倒後とが起こり、不幸な目にあっている。それゆえカケルは自分は運が悪いと思っているから運に任せるのは嫌なのだが今はそれ以外どうしようもできなかった。


 ――神様! 俺に村の発展をしてほしければ運を俺によこせー!


 神様なら心の声が届くだろうと空で高みの見物をしていそうな神様に向かって念じる。

 神様に念じている間にナイフはもう服に触れ、二秒も経たないうちにナイフはカケルの体に刺さるはずだった。

 ブスリという肉を刺すような音もなければ痛みもない。だからといって何もなかったわけではない。

 それはカキーンと金属を弾いた音と共に起こった。魔族暗殺者の仕込みナイフが根本辺りからポッキリと折れ、宙に舞う。


 銀色のナイフが光を反射しながら宙を舞う中、美しい金色の髪がカケルの目の前でなびいてた。

 青い装飾が目立つ鎧に振り上げた手にはレイピアを握る女性をカケルは知っている。そしてカケルはその女性を知っている。

 その女性はさっきまでカケルが捜していたのに全然見つからなかった人物で、こんな形で見つけれるとは思わなかった。見つけたかった彼女の名は――


 「アーシア……ッ!」



==================================================



 アーシアが魔族暗殺者のナイフを折り、そのナイフが地面に落ちるまでの間、その場にいる全員が一言も喋らずただ驚き傍観していた。

 暗殺者側が黙っていたのは詰みの一手になるはずだった攻撃を突如現れた人物に妨害され唖然としているからだろう。

 カケルも同様に刺さると思っていたナイフが刺さらず捜し回っていた人物に助けてもらったなどの何に反応していいか分からなかったからだ。そしてリーナ達は帰ったと思われていたアーシアが帰らず、更にあんなことがあったのにも関わらず、カケルを助けたことに驚いているようだ。


 「お怪我はありませんかカケル?」


 「服がちょっと切れてしまったがお陰様で無事だよ」


 「そう。それならよかったわ」


 迷いの無いビシッとした立ち振舞いは最初に出会った時とは別人だった。


 「戻ってきたらいきなり襲われていて驚いたけど私が来たからにはもう怪我人は出させないわよ」


 「それってどういう事だ?」


 「そんなの私が皆さんを守るということ以外にないでしょう」


 はっきりとした物言い。アマトと違い、アーシアの言葉はどれもこれも安心して信頼できるのは不思議だった。


 「さっ、戦いの邪魔になりますから後ろに下がってください」


 「でも、大丈夫なのか? さすがに三対一は……」


 「大丈夫ですよ。あの程度の相手なら一人でも十分です。……それにここにはもう一人頼れる仲間がいるじゃないですか」


 カケルはアーシアの言うもう一人の頼れる仲間が誰なのかが分からなかった。言い方からしてカケルも知る人物のはず。アマトはまだ王都に居るはずだ。なら他に誰が――。


 「魔女……じゃなくてメ、メル!」 


 急に名前を呼ばれたメルは呆気に取られ「えっ、私?」と驚いている。


 「三対一でも私は敗けるつもりはないのですが一人でカケルを守りきれるか不安なので後方から魔法での援護を頼めますか」


 「……ッ! あなたが私に頼みこどなんてどういう風の吹き回しですか」


 こんな緊急事態な場面でもメルはアーシアに対して疑いから入る。それを分かっていたのかアーシアは怒らず落ち着いた口調で答える。


 「この場で皆さんを確実に守り抜くためにはあなたの魔法が必要なんです。私もあなたの魔法に関しての能力の高さは一目置いているのよ」


 「ですが、あなたは魔女の力を借りるのが一番嫌いじゃないですか! それなのに何で――!」


 感情が高ぶりすぎたのかメルは涙を浮かべるがそれを流さまいと堪えている。


 「あなたの言いたいことはよーく分かるわ。あれだけ侮辱をしておいて急にあなたの力を求めるなんて虫の良い話だと思っているわ。でも気付いたの私が間違っていたんだって」


 「えっ……」


 「正確にはそこにいるリリエラーナの言葉に気付かされたってところですかね」


 チラッとリーナの方を見てアーシアは微笑む。その顔には怒りも憎しみも何もない純真な笑顔だった。

   

 「私は魔族や魔女が嫌いです。それは私が自分と異なる種族が怖かったから」


 話すアーシアのレイピアを握る手が震えている。暗殺者達は襲ってはこなかったが警戒しながら隙を見ていつでも襲える準備だけはしていた。


 「でも少し……ほんの少しだけですが怖いという気持ちを押し殺して魔族や魔女のことを知ろうと思っています。だからメル……まず最初に私と……と、と、……」


 頬を赤らめ言葉を詰まらせたアーシアは軽く一呼吸置いてメル以外の全員にも聞こえるように叫んだ。


 「と、友達になりませんか!」


 いきなりのアーシアの友達になりましょう宣言に暗殺者達はポカーンとしている。当の宣言されたメルはどのように反応して良いのか分からずあわてふためいているが何故かリーナは嬉しそうにしていた。


 「と、友達って……私とあなたがですか! じょ、冗談はやめてください」


 「冗談じゃないわよ! 私だって色々と考えて義兄様のためにも変わらないとって思うともうあなたと友達になるしか方法がなかったのよ」


 「そんな理由で友達になんて私が嫌ですよ! 友達になりたいならまずアマトは置いといてください!」


 アーシアもメルの言っていることが正しいと思っているのか言い返せずに項垂れている。これはまた拗ねるのかとカケルはひやひやしたがアーシアは顔を上げ、暗殺者達を睨む。


 「なら友達から始めるのは後にして今は目の前の不届き者を二人で協力して倒すところから始めましょうか」


 「…………そうですね。話は後でも大丈夫だけどこの状況は後回しには出来ないからね」


 目元に溜まった涙を袖で拭ったメルは、杖を構え直す。


 「話が早くて助かるわ。ほら、カケルは早くメル達の所まで下がってください」


 「お、おう……気を付けろよな」


 これしか掛ける言葉が無かったカケルはそそくさとメル達の所まで走る。


 「ふぅ……これで心置きなく戦えるわ。さてと随分待たせてしまいましたが犯罪者であるあなた達なら別に構いませんわよね!」


 ダンッと強く一歩を踏み出すと同時にアーシアは一気に間合いを詰める。


 「なっ!?」


 あまりの速さに反応の遅れた暗殺者達にアーシアは目の前に居るゴブリンに間髪入れず顔面目掛けてレイピアをまっすぐに突く。 


 「ハァッ!」


 「グギャァ!」


 レイピアの尖端はゴブリンには当たらずナイフで身を守りはしていたが威力までは守りきれず後方に吹き飛ばされる。


 「マジかよあの強さ。この世界の騎士とかは皆あんなのかよ」


 格闘技系統を見たこともなければやったことの無い一般人のカケルでもアーシアの動きは常軌を逸している。

 なにせアーシアが動き出してからゴブリンを吹き飛ばすまでの動作をカケルは目で追えていない。


 「そんなわけないでしょ。騎士が全員彼女と同じぐらい強かったらとっくに魔族なんかを倒し終わっているわよ」


 「そうだよな……言っててなんだけどそうだよな……」

 

 「そんなことよりも一旦これを返しますのでカケルはリーナと一緒にサザンの治療を」


 押し付けるようにメルが渡したのはカケルのタブレットだった。


 「その中に治癒に関する書籍があったのを覚えています。等価交換で道具を出せば完璧には無理かもしれないですが応急処置だけは出来るはずです」


 「確かにそれがサザンにとって一番いいのかもしれないけど……」


 問題はこの傷を応急処置の知識しかないカケルが無事に出来るかどうかだ。


 「カケル、私もサザンを助けたいから! 精一杯手伝うから何でも言って!」


 「ぼ、僕に出来ることがあれば何でも言ってください!」


 二人がこんなにもサザンを助けたいと頑張ろうとしているのだ。サザンには今まで何度も助けてもらっている。他人の命が懸かっている状態の応急処置は怖い。失敗すれば元気に皆を引っ張ってくれるサザンを見れないかもしれない。

 けどこのまま放っていても容態がよくなるわけがない。それどころかどんどん悪化していくだけだ。


 「よし。今から助けてやるから待ってろよサザン」


 もはや答えを返す気力すら無くなっているぐらいサザンは衰弱している。すぐにでも手当てに取り掛からないといけない。


 「本当は安全な場所まで避難してほしいのですが……あいつらの狙いがカケルである以上、下手に距離を取ると彼女の負担にもなりそうなので……」


 「分かってる。アーシアが三人相手でも大丈夫だろうけど全員に距離を置かれれば倒せる相手も倒せないよな」


 「はい。ですが一応私がここにいます。私が責任をもってカケルを守りますので安心してサザンを治してください」


 「おうサザンは俺らに任せとけ」


 と言ったが近くでドンパチされると気になってしょうがないのかもしれないがそこは気にしない方が良いに決まっている。

 

 「早速、手当てに移るから二人ともサポートよろしくな」


 「うん!」


 「任せてください!」


 カケルがタブレットを見ながら手当てを開始したのを確認したメルは自分の役割を全うすべく暗殺者達とアーシアの方に意識を向ける。

 ゴブリンを吹っ飛ばした後、アーシアは残り二人も同時に片付けようとしたのだが思ったよりも魔族暗殺者の実力が高いようでもう一人の男性暗殺者が援護に回っているせいでアーシアも押されているようだ。


 「くっ……不届き者の癖に中々やりますわね」


 「フンッ、月光騎士団団長の実力もこの程度か!」


 見た感じスピード負けをしているようではないのだが魔族暗殺者が新たに出した二本のナイフによる連続攻撃に防ぐのが精一杯で反撃を試みようとしてももう一人がそれを邪魔し反撃すらできずに押され続けている。息の合った連携だが始めからこの動きはおかしい。まるでアーシアの動きを最初から知っているような戦い方だった。


 「まさか彼女にも暗殺の依頼が……」


 アーシアはウザいぐらい真面目で悪は絶対に許さない性格でまだ王都の王様の闇を知らない。そんな彼女に王様が暗殺依頼を出すとは思わない。なら独自で調査を進めていた可能性の方が高い。

 でも今は確証のない考察をしても無意味。今、メルがすべきことはカケルを守り抜く事と苦戦するアーシアの援護の二つだけ。


 「私はまだあなたに気を許したつもりはないけど……あなたがここでやられたらきっとアマトは悲しんで私に八つ当たりをするわよね」


 それだけはごめんだ。自分の事で文句を言われるのならまだ我慢出来るが他人の事で文句を言われるのだけは我慢出来そうにない。


 「ふぅー……久々に私も本気を出しましょうか」


 腰に掛けている本を取りパラパラとページ開き、用のあるページまで開くと杖を掲げ、魔法の詠唱に入る。


 「"猛き炎の力よ 悪しき者を紅蓮の炎で包み 世界を浄化せよ"」


 メルの足下に赤い色の魔方陣が一つ二つと現れる。

 

 「ん? なんだ?」


 戦っていた暗殺者達もメルがより強力な魔法を詠唱しているのに気付いて一瞬、攻撃の手を止めるがすぐに立ち上がったゴブリンに妨害を命令する。


 「ヒャヒャヒャ! 二度も同じ手をやらせるかよ!」


 一直線に突進するゴブリンにメルは動じなければアーシアも無視をしていた。


 「共闘とか言っていたのに助けにはいかないんだな」


 「エエ、助けにはいかないわよ」


 「フンッ、所詮は人間。口だけか」


 鼻で笑う魔族暗殺者。そんな暗殺者にアーシアは反論せずに微笑むだけだった。

 既にゴブリンは無防備なメルに飛び掛かりナイフを突き立てようとするが、


 「言っておくけど別に魔女じゃない……メルを助けないのはメルがあの程度の相手に邪魔されるわけじゃないって事よ」


 「何ッ!?」


 魔族暗殺者が「まさか」とメルを見るとメルは詠唱を続けながら本を持つ左手の人指し指を立てて空中に何かを綴る。


 「攻撃を止めろ!」


 「ハァア? 何言ってんだよ! 詠唱中の魔女なんて余裕だ――」


 ドガーンッ!

 ゴブリンは最後まで喋りきれずに空中で起きた爆発に巻き込まれる。


 「グキャァァア!」


 「一体、何をしたんだ。まだ詠唱は終わってないはずだろ」


 爆発に巻き込まれたゴブリンは体の右半分を失ったゴブリンは地面でのたうち回った後、動かなくなった。

 呆気ない仲間の死に男性暗殺者が呆然とする隙をアーシアは見逃さず突きを入れるが魔族暗殺者が突き飛ばし直撃だけを避けた。


 「油断するな!」


 「けどあいつが……あの魔女は何を……」


 男性暗殺者は混乱しているが魔族暗殺者は平静を保っている。つまり魔族暗殺者は何があったのかを知っている。


 「気付いたかもしれないけどメルは魔法の詠唱中に簡単な魔法なら同時に詠唱出来るのよ。まぁ簡単なと言ってもメルにとってで普通の魔法使いからすれば上級魔法なのよ」


 「まさかあの魔女の実力がそこまであるとは……」


 「おいどうするんだよ。これじゃあ依頼が――」


 アーシアに聞こえない声で会話しているがアーシアはメルの詠唱を聞いてそろそろかなと判断し、魔族暗殺者に向かって愚直にレイピアをまっすぐに突く。


 「何を今さら!」


 カキィーンとアーシアのレイピアを上に弾くがアーシアは予想通りと言いたげな表情でその反動を使い、二人の足を払う。


 「小癪な真似を!」


 モーションも見え見えで後方にジャンプして避ける二人だがこれが全部罠だと気付いた時にはもう手遅れだった。


 「さっ、見せ場を作ってあげたからミスはしないでよメル」


 「まさかあなたが本当に協力してくれるとは思いませんでした。…………ではしっかりと決めさせてもらいますよアーシア」

  

 「しまったこれは――!」


 二人が着地する場所は遮蔽物もなく周りには建物もない開けた場所でちょうどメルと対角線上に位置している。

 つまり最初からアーシアは押されながらもここまで誘導していたのだ。全てこの瞬間のために。

 

 「"全てを燃やせ フレイムテンペスト"」


 杖の先からレーザーのように放たれた火炎は暗殺者の真上まで行くと一気に急降下して炎が嵐のように二人を包む。


 「ぐあわぁぁぁあ!」


 「ぎゃぁぁぁああ!」


 早く炎の嵐から抜け出したい二人だが炎の勢いは強く、その場から動けなかった。

 そんな光景をアーシアも手当てをしていたカケル達もこの世の光景とは思えない表情で見詰めていた。

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