レストラン
リーナに道案内を任せ、この村唯一のレストランだった場所に向かうカケル達。この村に来てからそのような建物を見たことがないカケルは普通の一軒家みたいな形をしているから見逃していたのだと思っていたのだが……。
「着いたよ。ここが元レストランだった場所だよ」
そう言って見せられたのは木造二階建ての家で他の家同様、傷みはあるものちょっとやそっとでは壊れないという頑丈さだけは見るだけでも分かる。だがこれ程までに立派な建物を今の今まで見逃していたのだろうか。それは単純な話、このレストランの場所と村のある場所が離れているからだ。
歩いていて気付いたのだが村からここまで来るのに何一つ建物が無く殺風景なのだ。この間にある程度建物があれば気付いていたのかも知れないが、ここまで建物が無いと村の外れにポツンと置かれているだけでは気付くわけがない。
「ここがアタシの新たな拠点……」
嬉しそうに建物を見上げるフェルは背中の羽と連動してピョコピョコしている。
「ちなみにこの建物って全く手入れはしてないのか?」
「ううん。定期的にだけど村の人達が交代しながら掃除はしているの。いつかこの建物を使う人が来るかもしれないからそのためにって」
ならこの建物の中はある程度は綺麗になっているということだ。イメージではドアを開けた瞬間、ゴミが流れてくると思っていたのだが村人達が定期的にとはいえ掃除していたのだからその点は心配ないだろう。
「入ってみていいか!」
「うんもちろんだよ」
言い終わる前に建物に入るフェルは数秒後「キャアアア!!」と悲鳴を上げたのでカケルとリーナは慌てて入る。
入ると昼間なのに真っ暗だ。どうやらカーテンで閉じられているらしく、リーナは魔法で壁に掛けられている燭台の蝋燭に火を灯し明かりを点ける。次々に火を灯していくとだいぶ部屋全体が明るくなってきた。
「どうした何があったんだ!」
部屋が見えるようになりやっとフェルに声を掛けたのだが肝心のフェルは何の事みたいな顔をしている。
「二人ともどうしたのそんなに慌てて?」
「それはフェルが悲鳴を上げたからよ」
「悲鳴?…………あーそういうことね」
一人で勝手に納得しているがこちらは全然納得出来ない。
「ごめんごめん。多少傷んだり汚れたりしてるけどあまりにも素敵な建物だからつい嬉しくてね」
「つまりあの悲鳴は喜びの声だったということか!?」
そう聞くとフェルはてへッと舌を出し自分の頭を軽く叩く。
紛らわしい悲鳴にツッコミたかった二人は無駄な体力と気力を使い、そんな気分にもなれない。
「そ、それで建物方はどうかな? 何とかしたらまだ十分使えると思うんどけど……」
「そうだね。傷んだ所の修理は無理かもだけどここをピッカッピカにすればすぐにここで下ごしらえが出来るわ」
それを聞き、良かったと安堵するがフェルのピッカッピカが何処までなのか分からず嫌な予感しかしない。
「ということで早速、掃除をするわよ!」
今更、嫌だとも言えない空気に二人を力無くおぉ~と手を上げる。
その後、十人の選ばれた村人達も来て十三人で大掃除をしたのだがその日の夜のギリギリまで掃除は掛かり下ごしらえは明日からとなった。




