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王都から村へ

 これは非常にまずい事態だ。アマトとメルがしばらく戻れないということは、アマトとメルが乗ってきた移動式屋台も王都に置いていかなければならないということだ。


 「あ、でもアマトはともかく私は二日程で帰れるかもしれないからその時に屋台は持って帰るから」


 カケルの考えていた事が分かったのかメルは少しでも安心させる用に屋台の件について言ってくれた。


 「変に考え込んでもしょうがないか……王様に呼ばれたんじゃ」


 「でも何で王様に呼ばれたの?」

  

 「それはまだ分からないわ。何せ急なもんだったから」


 だがメルの事だから薄々、王様に呼ばれた理由は察しているのかもしれない。それにカケル自身、呼ばれた理由が自分にあるのではないかとも思っている。


 「でもねアマトは『どうせ呼ばれたんならついでにハンデル村の事を話してやる』って意気込んでたの」


 「えっ! あのアマトが……!」


 「ええ、あのアマトがよ。まあアマトはああ見えても責任感だけはあるからね」


 どうやら少しだけアマトの事を誤解していたのかもしれない。メルの言う通りアマトの責任感は権力も相まってここぞと言うときに頼りになる。


 「だから私達は私達に出来ることをここでするからカケル達はカケル達に出来ることをしてて」


 「ああ、そうするよ」


 移動式屋台がしばらく一台減り、タオルの売り上げは落ちるかもしれないが王様との話し合いと料理という新たな挑戦、この二つがあればハンデル村は大きな発展をとげれるだろう。


 「ということだから私はこれから戻るから……忘れないうちにこれを渡してと……」


 そう言ってメルは机の上にチャラチャラと音が鳴る袋を置いた。


 「はい、今日のタオルの売り上げ。一応全部売れたから」


 「おおー、ちゃんと二人で出来たんだな」


 「フフ~ン当たり前よ。私を誰だと思ってるのよ」


 嬉しそうに腰に手を当て胸を張り胸を張るメルは滅多に見たことがない。それぐらい頑張ったということなのだろう。


 「ほへ~、完売なんて凄いな~」


 「さすがだねメル」


 リーナとフェルに誉められ照れくさそうに顔を背けるメルの頭にカケルは手を置き優しく撫でる。


 「ありがとなメル。俺らも二人に負けないくらい頑張るからな」


 「な、な、な、何をするんですか!」


 顔を真っ赤にして手を払い除け、数歩下がったメルは撫でられた場所を両手で抑えていた。


 「あれ、何でそんな反応をされるんだ? 俺はただ誉めただけなのに……」


 訳の分からない反応をされ、リーナに何でだろうか聞いてみようとしたがリーナはさっきまでの嬉しそうな顔から怒っているような顔をしていた。


 「え、リーナもどうしたんだ?」


 「知らない。胸に手を当てて考えてみれば」


 「え、えーと俺何かしたっけ……」


 考えてみるがリーナに何かした記憶がなく、あっても数十分前に冷たい水入りペットボトルを背後からこっそりとうなじに当てた記憶しかない。


 「まさかペットボトルの事、まだ根に持ってるのか!?」


 「さーてどうでしょうねー」


 一向に答えを出してくれないリーナにカケルの中でモヤモヤが止まらない。


 「そうだ! フェルは何か分かるか」


 こうなればフェルに聞くしかないと判断し、聞くとフェルは苦笑いで答えた。


 「アタシから言えるのは女心が分からないカケルが悪いってこと」


 「はぁ~あ! どういうことだよそれ」


 結局、自分が悪いとフェルから言われ何が何だか分からなくなり混乱するカケルの頭にコツンと何かが当たった。


 「イテッ」


 後ろを向くとメルが右手に杖を持っていたためそれで頭を叩いたのだろうと理解した。


 「これで半分は許してあげる」


 「あ、どうも……えっ、半分だけ!?」


 全部ではなく半分しか許してもらえず、どうすれば許してくれるんだと思ったらメルは腰のベルトに挟んでるタブレットを取り出す。


 「このタブレットを私が王都にいる間、ずっと貸してくれるなら許してあげる」


 不敵な笑みを浮かべ、どうすると聞いてくる。


 「それで許してくれるなら安いもんだな。いいぜ、貸してやるからちょっと待ってろよ。今すぐ携帯用充電器を持ってくるから」


 「あ、別に充電器は要らないから」


 「え、何でだよ。充電器なしでタブレットがずっと使えるわけないの知ってるだろ」


 メルには度々、タブレットを貸しているためタブレットは充電しなければ使えないのは話している。それなのに充電器が要らないとはどういうつもりなのだ。


 「もちろん充電しないと使えないのは知ってる。でも私、雷属性の魔法が使えるからそれで充電出来るの」


 「……マジ?」


 「マジだよ。だって私、何回かそれで充電したときもあるから」


 初めて知った魔法の新たな使い方にビックリだった。ていうか本人の了承なしで勝手に変な充電法をされたのには文句を言いたかったが電池代が浮いたため良しとする。


 「言いたいことが色々とあるけどもういいや。タブレット貸してやったからもう許してくれるんだろ」


 「もちろん許してあげる。だからリーナもカケルを許してあげて」


 「……メルがそう言うなら私も許してあげる」


 何だろう、二人の圧倒的な上から目線の発言は。ここまで言われるほど自分は悪いことをしただろうか。


 「カケルの将来って嫁の尻に敷かれてそうね」


 フェルからも慰めよりもトドメに近い言葉を言われカケルの心はズタボロだ。


 「さてと、話も終わった事だし私はアマトの所に戻るね」


 「バイバイメル。またね」


 身なりを軽く整えたメルに寂しそうに手を振りながらリーナは別れを言う。


 「またねリーナ」


 二人みたいにしんみりした別れかたが出来ないカケルとフェルは軽く手を振るだけで、メルもそれに対して同じ様に手を振る。

 こうして別れを済ましたメルは人混みの中に消えていった。


 「……行っちゃた」


 メルが見えなくなる最後まで手を振っていたリーナの顔は寂しそうだった。


 「そう寂しそうにするなって。メルが言ってただろまた会えるって。だから今は俺達に出来ることをしようぜ」


 「……うん」


 寂しくなる気持ちは分かる。アマトとメルが来てからの三週間はとても楽しいものでしばらくの間とはいえ居なくなるのは寂しいものだ。


 「暗くならないうちに村に戻るか」


 「……リュオも待ってるしね」


 いつまでも落ち込んでられないと自分に渇を入れたリーナはパンと両手で頬を叩き立ち上がる。


 「よしッ! 早く帰るよ。時間はいくらあっても足りないんだからね」


 勢いに任せてリュオの所まで走っていく。


 「意外とあの子強いのね」


 「ああ見えてリーナはしっかりしてんだよ。だからリーナの事も頼っていいからな」


 「そうね、そうさせてもらうわ。カケルより頼りになりそうだからね」


 ひどい。最後の一言は絶対に言わなくて良かったのに。これは文句を言わなければと思ったがフェルは既にリーナの後を追っていてこの場にいなかった。


 「ったく、あいつも結構我が強いな」


 改めてフェルの性格を把握したカケルは遅れたらいけないと思い、メルから渡されたお金を持って広場まで走っていく。

王都から出て約一時間、カケル達はこれから王都領土から無法地帯に入る所だった。



==================================================



 「それにしてもハンデル村って遠いのね」


 ずっと御者台に座りぱっなしのフェルは退屈そうに足をブラブラさせる。


 「ごめんね。遠い村で」


 「別に気にしなくて良いわよ。ただ何となくで言っただけなんだから」


 こんな他愛もない会話を繰り返すフェルとリーナだがカケルはそれどころではなかった。


 「そういえばさっきから黙ってどうしたの?」


 「な、何でもない。ただ考え事をしただけだからな」


 何故カケルが黙っているのかは考え事をしているだけではなかった。それは御者台の両サイドに女性がほぼ密着している状態だからである。

 こうなった理由は折角リーナが右側を空けたのにも関わらず、フェルがカケルの左側に座ったのが原因で、そのせいでカケルはリーナに引っ付かなければ座れない状態になったのだ。


 「へぇ~、何を考えてたの?」


 「そ、それはだな……」


 話を聞こうとカケルに体を寄せ付けてくるフェルの胸がカケルの左腕に当たり、気が散ってしょうがない。


 「あ! もしかしてこれからどうするのかを考えてたとか」


 まるで助け船のように出してくれたリーナの言葉にカケルは遠慮なく便乗することにした。


 「そう、そうなんだよ! フェルの料理をどう活かすか考えてたんだよ!」


 「何か誤魔化しているような気がするな……」


 疑うような目付きで見てくるフェルの視線を外そうと右側を向くとリーナがじっとこちらを見ている。


 「顔赤いけど大丈夫?」


 「大丈夫、大丈夫だから」


 あれだけ顔を近付けられた緊張して見れるもんも見られず視線を真正面に向ける。


 「……? どうしたの?」


 わざとに視線を外しているカケルの気も知らないでリーナはずっとカケルを見る。


 「……それで私の料理をどう活かすのか考えれたの?」


 「え……あ、ああ少しはな……」


 フェルの急な話題の切り替わりに戸惑うも、きっとこれが本当の助け船と信じ話に乗る。


 「それでフェルの料理を活かすためにあたって……何個かフェルに質問したいんだが……」  


 「いいわよ。何でも聞いてちょうだい」


 そう言うと体を離し背筋を伸ばし、羽をピコピコ動かしながらこちらを見ている。

 やっと解放された左腕を擦りながら、カケルは聞きたいことを頭の中でざっとまとめ質問する。


 「えーっと、まず一番最初に聞いときたいのはフェルが作れる料理が日本料理だけなのかなんだけど」


 「というと?」


 「例えば、中華料理やファーストフードとか……」


 そこまで言うと自分のは考えの無い発言に後悔した。それはまだフェルに自分が異世界から来たことを言っておらず、今言った料理に関しても自分の世界の物ばかり。仮にフェルがこれらを知ってたとしたら確実にまた疑いの眼差しを向けてくるはず。


 「どうしてそんなにアタシの作れる料理の種類が分かるの?」


 予想通り疑いの眼差しを向けられ、何と言えば良いのか悩んでしまう。だが今の発言でフェルの作る料理が自分で考えたのではない可能性が上がってきた。

 そこまで考えれたならカケルの言うべき事は自ずと決まっていた。


 「……その料理が俺の世界の料理だからだよ」


 「え……!」


 賭けで直球に言ってみたがどうやら上手くいったようで、フェルは驚くばかりで何も言おうとしない。


 「あの時に俺の事も言っておけば良かったんだが……俺はこことは別の世界から来た人間なんだ」


 「細かく言うと神様にハンデル村を救ってくれって言われてカケルはこの世界に来たんだよ」


 隣で補足説明をしてくれたお陰でだいぶ伝わったと思うがまだ自分に関することで一つだけ言ってないことがある。


 「そして俺は神様から村を救うための力として等価交換の能力を授かったんだ」


 口だけでは信じてもらえないのは分かっているためポケットから百円玉を取りだし掌に置く。掌に置いた百円玉をギュッと握り広げると百円玉は等価交換の力でコンビニのおにぎりに変わっていた。


 「これが俺の全部だ。話すのが遅れて悪かった」


 一通り自分について話終わるとフェルは真剣な表情で聞いてきた。


 「もしかしてカケルの来た異世界の名前って……地球っていう名前?」


 「なっ……!」


 まさかここで地球という単語を聞くとは思わなかった。これで間違いなくフェルはカケルの世界について知っている。


 「ちきゅう? それってカケルの世界の名前と一緒だよね」


 「やっぱりそうだったのね。どうりでカケルはアタシの作った料理を見てもあまり驚かなかったのね」


 今の言い方からしてフェルは地球について知っていると肯定したと言っても問題ないはずだ。なら次にカケルが聞くとするならこれしかない。


 「フェルは一体、どうやって俺の世界……地球について知ったんだ」


 まさか彼女が実はカケルと同じで地球から来た転生して来たとでも言うのかと思ったが、全然違っていた。


 「アタシは師匠に……カケルと同じ地球から来た人に教えてもらったの」


 「俺と同じ地球から来た人……」


 信じるに信じれなかった。この世界に自分以外の地球から来た人がいることなんて。


 「私はその人から料理を教えてもらったの。日本料理に中華料理、フランス料理……他にも色々な料理を教えてもらったわ」


 懐かしむように話すフェルを見るととても嘘をついているようには見えず、自分以外のもう一人のこの世界に来た人を信じるしかなかった。


 「その人から他に何か聞いたりしたのか?」


 「料理以外なら地球って所がどんな所なのかを教えてくれただけで自分のことについては全く話してくれなかったわ」


 余程自分について知られたくないのだろうか。だがそいつの話を詳しく聞いたところでカケルが知っている人物ではないはずだ。


 「……その師匠の名前は分かるのか」


 聞いても意味の無いことかも知れないがもしかしたら村発展の力になってくれる機会がこれからあるかもしれないため名前だけは確認した方がいい。


 「師匠の名前……? 確か……五月雨颯斗(さみだれはやと)だったはず……」


 「五月雨……」


 名前を聞いてもやはり自分の知っている人物ではないと分かったはずなのだが、五月雨という苗字が頭の隅に引っ掛かる。


 「その人は今何処にいるのか分かるか」


 知らない人物。そのはずなのに何故か会わないといけないそんな気がする。


 「普段は魔都にある私の家にいるんだけど……今は多分、新たな食材を求めて旅に出たからしばらくは帰ってこないと思うわ」


 「た、旅に!」


 今の言い方からするとハヤトという人物はちょくちょく旅に出ているみたいで、カケルと比べて随分とアグレッシブな人だ。


 「フフッ、その人まるで私のお父さんみたいだね」


 「……確かにそうかもな」


 リーナの父親も村のためにという理由であちこち歩き回っているため案外、似た者同士かもしれないな。


 「えーっと、整理するとフェルはそのハヤトから料理や地球について教わったってことでいいんだよな」


 「それで構わないわ」


 「作れる料理の種類は多いのか?」


 「師匠には劣るけど割と多い方よ」


 今までの話をまとめるとフェルの作れる料理の中には手軽に食べれるファーストフードも作れるはず。なら最初はそれを活かすのがベストなはずだ。


 「よしッ、大体分かったから次は今後についての話をするぞ……」


 ある程度の情報が集まり、カケルの頭の中で様々なシミュレーションをし次に何をするのか導き出す。


 「まず一つは村に着いたら村人全員を集めてフェルを紹介すること」


 まずこれは最初にやらなければならないのはやはりフェルの紹介だろう。これなしではフェルに協力してくれる村人を集めるのが苦労しそうだからな。


 「次に二つ目はファーストフードを今日と明日で大量に作り二日後、魔都に売りにいくこと」


 「あれ、魔都になの? 私はてっきり王都に売りに行くと思ってたんだけど……」 


 隣でそう意見するリーナ。確かに王都に売りに行くという事も考えたのだが今は駄目な理由があるため魔都にしたのだ。その料理は……。


 「王都の人達が魔族の作った料理を食べるとは思わなくてな。それに王都ではアマト達が頑張ってくれるはずだから俺達は魔都の方で頑張ろうと思ってな」


 「仕方ないけどカケルの言う通りだわ。王都では無理かもしれないけど魔都なら食べてくれる人はいるはずだわ」


 悔しそうに言うフェルだが、いずれは王都の人達にも食べてもらうという雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。


 「最後に三ッ目は……」


 「あ、ちょっと待って!」


 テンポよく話していたカケルは止められ不快な気分になる。


 「待ってって……どうしたんだ」


 「さっき二日後に魔都に売りに行くって言ったけど……タオルの販売はどうするの?」


 「あー、なんだその事か。実は三ッ目の内容がそれについてだったんだが……」


 「え、そうだったの! ごめんね変に話を遮ってしまって……」


 特に何でもない内容だったことに安心したカケルは気を取り直して三ッ目を話す。


 「それで三ッ目はタオルの事だけど……これはリーナと村人の誰かに行ってもらおうと思うんだ」


 「え……」


 タオル販売をリーナと村人に任すと言ったとき、リーナはなんでと言いたげな表情をしていた。


 「そんな顔をするなって。ちゃんと訳があるんだから」


 「うん……」


 話すに話せない気まずい空気にカケルは嫌気が射したが今さら変更することが出来ないので話を続ける。


 「リーナをタオル販売に任せたのは単に村人だけじゃ不安だからなんだよ」


 一度もやってないタオル販売を村人に任した場合、何も出来ずにぐだぐだな展開になる可能性が高いため一人でも経験者がいればマシになると思ったためリーナに任すのだ。

 カケル自身もリーナに任せるのは心苦しい。だが今、村の中で頼れるのはリーナしかいない。


 「俺は誰よりもリーナの事を頼りにしてるんだ。だから任してもいいか」


 「私もそれが良いと思うわ」


 何処から取り出したか分からないがフェルはヤスリみたいな物で爪を磨きながら喋り続ける。


 「もしリーナが魔都に来るんだったら絶対にこのユニコーンも付いてくるでしょ」


 「ユニコーンじゃなくてリュオだよ」


 素早くリュオだと訂正するリーナにごめんと一言謝る。


 「まあ確かにリュオは付いてくるかもだが何か問題でもあるのか?」


 別にカケルの考えではリーナをずっと王都に張りっぱなしするつもりがなく、アマト達が戻ってきたら魔都に連れていくつもりでいたのだ。


 「問題も問題、大問題よ」


 そこまで大袈裟な事だろうかと思うがまだ口を挟む理由もないためそのままフェルの話を聞き続ける。


 「魔族の中にはユニコーンを欲しがる輩が多いの。もしリュオを魔都に連れていってそいつらに見られでもしたら一生狙われ続けることになるのよ」


 「それは……大問題だな」


 早めにこの情報を知れて良かった。もしフェルに会わなければリュオを連れて魔都に行ってることになっていたはずだ。


 「そういうことなら私はリュオと一緒に王都に行った方がいいね」


 リュオの事を一番に考えているリーナは今の話を聞いて王都に行ってくれることに納得してくれた。


 「悪いなリーナ」


 「別に大丈夫だよ。寂しくないって言ったら嘘になるけど村の発展のためだからね」


 あくまでも二日後に別れるわけで今すぐ別れるわけではないのだがリーナがああいうもんだからカケルも寂しい気持ちが沸き上がってしまった。


 「いつもありがとうなリーナ」


 この気持ちが少しでも治まればいいと思いカケルはポンとリーナの頭に手を置き撫で撫でする。


 「エヘヘ……」


 メルとは違い嬉しそうな反応をするためカケルも嬉しくなってくる。


 「ごちそうさまでーす」


 隣でニヤニヤ見ていたフェルにそう言われカケルは撫でていた手をスッと戻す。


 「あれ、もう終わりなの? もうちょっと二人のイチャイチャする姿を見たかったんだけどな~」


 「うるさい……」


 ただの話し合いだったのに妙に疲れがどっと押し寄せカケルは前屈みにぐったりする。

 村に着くまでの時間がまだあるなか気付けばカケルは無意識に目を瞑り、眠っていた。

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