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異世界で手に入れた等価交換の力で俺がこの村を発展させてやる!!  作者: 松原太陽
異世界で過ごした一週間
18/76

リーナは寝起きから既にテンションが高いようだ

 四日目の朝。カケルは自然に目を覚ましスマホで時間を確認すると七時ちょい前だった。


 「やべーな。毎朝リーナに無理矢理起こされてきたからだいぶこの時間に起きるのに慣れてしまったな」


 割りと目も冴えているから二度寝する気もなく取り合えずダイニングキッチンに移動しようとしたとき、横を見るとリーナはまだスヤスヤと眠っていた。


 「珍しいなリーナがまだ寝ているなんて」


 カケルは肩を揺すって起こすかどうか悩んだが、リーナには昨日の朝からタオルの準備や御者、売り子等をしてもらいカケルよりも疲れているはずだ。


 「このまま寝かせといてやるか」


 立ち上がり、ささっと着替えを済ませるとそのまま部屋を出てダイニングキッチンへと移動した。


 「よくよく考えてみればリーナはいつも朝食を作ってから俺を起こしていたからかなり早い時間に起きてるんだよなぁ」


 そんなリーナがまだ眠っているのは昨日は余程疲れたということだ。


 「……今日は俺が朝食を作るか」


 リーナの作る朝食のメニューから考えて、卵料理を作ろうと決めたカケルは早速材料の確認に移る。


 「たしかここら辺に……おっ、あったあった」


 食糧の場所はリーナから聞いていたため薄い緑色の殻をした卵と野草を必要分だけ取る。


 「後はベーコンとかあったら完璧だな」


 そう言いながらカケルは一パック分のベーコンを等価交換で出し、次はどうにかしてコンロに火をつける作業だ。


 「さて、これが一番の最難関の場所だなぁー」


 この世界では魔法を使って火をつけているため、魔法の使えないカケルは一人ではコンロに火をつけることも出来ない。だが今回は違う。何故ならカケルはこの時のためにある道具を準備してある。


 「……これがあればつくかな」


 そうカケルが準備した道具はマッチだ。

 このマッチを使えばきっとこのコンロに火をつけれるに違いない。

 カケルは箱からマッチ一本を取り出すと、箱の側面についている赤い面にマッチの先端を擦り火をつける。


 「頼むから上手くいってくれよ」


 恐る恐るコンロに火のついたマッチを近づけると一瞬でコンロに火がつき、マッチについていた火が消えていた。


 「……よ、よし少しビックリしたけど何とか火がついたぞ。これで料理が作れる」


 コンロの火が消える前に急いで朝食を作り始める。

 


==================================================



 「よし完成っと」


 約三十分で作った、緑色の目玉焼きに焼いたベーコンと少し茹でた野草を同じ皿に盛り付け、最後にパンを小皿に置きテーブルに運ぶ。


 「……よしッ、後はリーナが起きてくるのを待つだけだな」


 だがさすがに八時になっても起きてこなかったら可哀想だが起こしに行かなければならないだろうと思っていたら急にリーナの叫ぶ声が聞こえてきた。


 「うわぁぁああ! 完全に寝坊した!」


 「おっ、どうやら起きたようだな」


 これで起こしに行く手間が省けたなと思っていたが、リーナはまだ部屋から出るどころか部屋の中で暴れているようだった。


 「あぁヤバイこんなに眠ってたなんて。しかも朝食も作ってないし……。あっ! 後カケルも起こさないと、ってカケルがいない!」


 「起きたばかりなのに騒がしいな」


 毎朝リーナにテンション高く起こされるからてっきりリーナのテンションが上がる瞬間がカケルを起こすときだと思っていたが、どうやらリーナは起きてから既にテンションが高いようだ。


 「急いで朝食の準備をしないと!」


 部屋から出たリーナは急いで朝食を作ろうとしたのか走りながらこちらに来ていたが、テーブルの上に用意されている朝食と椅子に座るカケルを見て目を丸くしていた。


 「おはようリーナ。よく眠れた」


 「えっ、あ、うん、おはようカケル」


 慌てて着替えたのか服と髪が乱れていた。


 「朝食は俺が作っといたから早く食べよーぜ」


 「えっ、う、うん」


 寝起きのせいで頭が回ってないのかリーナはいまいち状況が掴めてないようで、首を傾げながら席に座った。


 「それじゃあ、いただきます」


 「……いただきます」


 こうしてカケルの異世界生活四日目の朝を向かえた。

 自分の作った朝食をパクリと一口食べてみるとかなり旨かった。異世界の食材を使っていたから上手く出来たか少し不安だったが無事上手く作れていて良かった。 

 

 「ねぇカケル」


 朝食を食べているとリーナは手に持っていたパンを置き、割りと真剣な眼差しでこちらを見ていた。


 「ん? 何?」


 「何で私を起こしてくれなかったの?」


 「あーその事か」


 どうやらリーナはまだカケルが起こさなかった理由(わけ)が気になるようだ。


 「あまりにもリーナが気持ち良さそうに寝ていたから起こすのが可哀想だなって思って」


 「……それだけ?」


 「それだけだけど」


 素直に本当の事を言ったはずなのだが何故かリーナはすぐに信じてくれなかった。


 「……あー、そうだ! リーナ、今日の朝食はどうだ!」


 この謎の重い空気に嫌気の射したカケルはわざとらしく話題を変えていく。


 「えっ、とても美味しいけど」


 「それならよかった。今日作った目玉焼きは上手く焼けたから自信があったんだよ」


 「へ~、これって目玉焼きはっていうんだ」


 そう言いながらリーナは箸を持ってツンツンと黄身の部分をつつく。


 「その目玉焼きはこの世界の卵で作ったものなんだぜ」


 「えっ! ホントに!」


 やはりこの世界では目玉焼きという料理が存在していないようだ。いやもしかしたらリーナがスクランブルエッグしか作っていない時点で卵焼きも知らなそうだ。


 「そうだぜ。リーナがよければ今度作り方を教えてやるけど」


 「ホントに!? なら今晩作り方を教えてくれる?」


 「あぁもちろんいいぜ」


 「ウフフ、ありがとうカケル」


 やっと笑顔になったリーナを見て話題を変えて良かったと心の中でホッとしたカケルは残り半分となった目玉焼きを食べる。


 「それで話は変わるけど今日は何する?」


 リーナも朝、何故起こさなかったかということを忘れているようで、これからカケルが話そうとしたことを聞いてきた。


 「俺は今日は一人でみんなの様子を見るから、リーナはリュオの世話でもしていてくれ」


 「ダメだよそんなの。それじゃあカケルに負担がかかるじゃない」


 ムスッとした顔でこちらを睨むリーナに、怖いという感情よりも可愛いという感情が沸いてきてしまい、何を思っているんだ俺はと頭を震わす。


 「俺は一人で大丈夫だから。それにリュオには昨日かなり頑張ってもらって疲れているだろうから、少しでもリーナの手でその疲れを癒してもらえないかと思って」


 本当はリーナには今日一日休んでほしかったが、リーナの性格上休むはずがなかったからリュオの世話という名目上、少しでもリーナにも疲れを癒してほしいのだ。


 「確かにカケルの言う通りかもね。……分かった、私は今日はリュオのお世話でもしてるね」


 何とか納得してもらいよっしゃぁ! と心の中でガッツポーズを決める。


 「あぁよろしく頼むよ」


 「うん。じゃあ早くごはんを食べないとね」


 「そうだな」


 その後、大体十分ぐらいで朝食を済ましたカケルとリーナは、二人係で食器の後片付けを終わらすとリーナはリュオの所に、カケルは最初にタオルの量を確認するためにタオル製作所に向かい、約一時間ぐらいかけてタオルの枚数を確認した。


 「昨日作ったタオルの数は大体千枚ぐらいか……なら今日出来た分を含めたら明日王都で売る枚数は二千枚ぐらいか……」


 タオルとバスタオルの比率も六対四ぐらいでかなりいい感じになっていた。


 「後は夕方にタオルを全部屋台に積めればなんだけど……全部積めるか?」


 千枚ぐらいなら余裕で積めそうだが二千枚となると無理な気がしてしょうがない。


 「……ここで考え込んでもしょうがないか。畑の様子を見ながら全部積む方法でも考えようか」


 何人かの女性村人がちらほらとタオル製作所に集まって来たため、等価交換で材料の追加をしてカケルはさっさと畑に行くとこにした。


 「まぁ畑を見に行くつってもあんま意味ない気がするけどなぁ」


 純粋に見に行くのが怠いという理由もあるのだが村発展のためだ、村人のやっていることは全部把握する必要がある。


 「仕方ない、行くか。……ん?」


 畑に向かおうと足を踏み出そうとしたとき、遠くから誰かがカケルの名前を呼ぶ声が聞こえ、声のする方を見るとこちらに駆け寄ってくる男性村人の姿が見えた。


 「た、大変ですよォ~! カケルさん。大変ですよォ~!」


 なんとも気の抜けた声で駆け寄ってくる細い体型の男性村人はカケルの所まで来るとゼェゼェと息を切らしている。


 「カ、カケ、ル、さん。……た、大変、なん、です……」


 「おいおい一端落ち着け。何言ってるのかさっぱりわかんねーよ」


 「す、すみま、せん」


 息を切らす男性村人はスー、ハァーと深呼吸を繰り返し息を整える。


 「落ち着いたか?」


 「は、ハイ、なんとか」


 「それで何があったんだ?」


 「実は畑の近くに見知らぬ男女の二人組が来て『この村にいるユニコーンを出せッ!』て言ってるんですよ」


 「それは本当かッ!」


 「ほ、本当ですから揺らさないで」


 いきなりの発言に驚いてしまい、つい男性村人の肩を掴んで揺さぶってしまっていた。


 「わ、悪い。それで何でそいつらがリュオじゃなくてユニコーンを出せって言っているのか分かってるのか?」


 「すみません。僕はサザンさんにカケルさんを呼んでくるよう言われてここに来たので詳しい事は知りません」


 「となるとそいつらを今サザン一人で相手しているのか?」


 「ハイそのはずです」


 それなら早く行ってサザンの助けに行かなければと思ったが、先ずこの事をリーナに言うべきかどうか迷っていた。

 もしもリーナがリュオと一緒に散歩とかで偶然ばったりそいつらと出会したりしたら、話がややこしくなる気もするがさすがにそんな偶然が起こることはないと思い、リーナには後から話すことにした。


 「……よし、また走らすことになるけど早くサザンの所に連れていってくれ」


 「は、ハイ。任せてくださヒ」


 男性村人はもう一度深呼吸するとサザンの元を目指し走り出した。

 それに続くようにカケルも多分だが異世界に来て初めてまともに走った。

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