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異世界で手に入れた等価交換の力で俺がこの村を発展させてやる!!  作者: 松原太陽
異世界で過ごした一週間
15/76

販売開始

 「着いたよカケル。ここが王都の広場、出店エリアだよ」


 「ここが広場だって!?」


 リーナが案内してくれた場所はカケルの思っていた広場とは全く違っていた。

 カケルの頭の中では大きな広場に三、四店ぐらいの出店があるのだとイメージしていたのだが、実際は丸く、大きな広場で道の端や中央辺りに様々な店が並ぶように開かれており、それを買いに来た人の数もかなり多かった。


 「リーナ……この世界では店の集まる所を“広場”って言うのか?」


 「そうだけど。えっ、カケルの世界では違うの?」


 「あぁ、俺の世界では店の集まるこの状態を“市場”って言うんだ」


 「市場か……意味はよく分からないけど広場よりはしっくりきそうな言い方ね」


 とりあえず一人で納得しているリーナを余所にカケルは店を開けそうな場所がないか探している。

 何処もかしこも一杯で中々スペースを見つけることが出来なかった。


 「くそぉ~。何処も空いてないじゃねーか~」


 「……あっ! ねぇねぇカケル」


 「ん? どうしたんだリーナ?」


 「あの場所なんてどうかな?」


 どうやら途中からリーナも場所を探してたらしく、リーナが指している場所は中央で並ぶ店の横だった。

 

 「ん~? おっ! ホントだ。奇跡的に一つ空いてるぅんん!?」


 だがよく見ると空いている場所は一つではなく店三つ分空いていた。

 

 「何で三つも空いてるんだ?」


 「さぁあそれは分からないけどあの場所ならリュオも伸び伸び出来るよ?」


 確かにリュオは見た目で客を惹き付けてもらわないといけないから出来るだけ伸び伸びとさせてやりたい。それに他に空いている場所がない以上、この場所を選ぶしかないだろう。


 「仕方ないか……リーナあの場所に移動してくれるか」


 「分かったわ。リュオあの場所に行ってくれる?」


 リュオは上手く人混みを避け空きスペースに移動し停まると、リュオと移動式屋台だけで二つ分のスペースを取ってしまった。


 「停まっていてなんだけど……いいのかなぁ?」


 「別にいいんじゃないの? 誰も店出そうとしてないし」


 平然な顔をしながらリーナは御者台から降り、リュオの側まで行くと頑張ったねと優しく撫でていた。


 「この世界では遠慮とか罪悪感てきなものはないのか?」


 だが停まってしまった以上あれこれ考えるのは一旦辞めようと決めたカケルは移動式屋台に掛かってる白い布をガバッと取り外した。そこから現れたのは“ハンデル村”と大きく書かれた看板に、カウンターテーブルに横一列に七枚ずつ積まれたタオルだ。因みに他のタオルはカウンターテーブルの裏に棚があるからそこに大量に置いているからすぐに補填出来るようにしてある。

 それよりも何故俺がわざわざこんな大袈裟にこの白い布を外したかというと、単純に目立てば客が何だ何だと来るに違いないと思ったからやったのだ。


 「おーし何処も傷んでないな」


 ここに来るまで色々あったから壊れてないか心配で表裏上下隅々まで確認したが何処にも傷んでるような箇所は無かったので俺はカウンターテーブルの前に立ち、ホッと一息をつくと最後の仕上げに足下にある上げられた階段を降ろし、お客さんが簡単に登り降り出来るようにした。


 「おいなんだよあれ?」


 「ハンデル村ってどっかで聞いたことのあるようなぁ~?」


 大袈裟に布を外したお陰なのか早速何人かの人が集まってきた。


 「ねぇハンデル村って中央にある領土のないあの村のことかな?」


 「たぶんそうだろ。けど一体何しにここに来たんだろうな」


 「バァーカそんなの何かを売りに来たに決まってんだろッ!」


 「けどあの村に何か売れるような物なんてあるのかよ」


 だが集まってきた人の殆どはハンデル村と知るや完全に馬鹿にしたような会話をしている。


 「カ、カケルあの人達の言ってることなんて気にしなくていいからね」


 心配そうにカケルの元に来るリーナだが、どちらかといえばリーナの方があの人達に言われたことを気にしていそうだ。


 「別に気にしてはいないけど」


 「えっ、そ、そうなの?」


 「ここまで来たんだからあんな言葉一つで気にしてたらしょうがないだろ」


 カケルはカウンターテーブルの裏に回り薄ピンクと若緑のエプロンを二つ取り出すと薄ピンクの方をリーナに渡した。

 

 「速く着ろよ。時間は限られてるんだからな」


 「わ、分かってるよも~」


 カケルも若緑のエプロンを着る。リーナも着終わるとカウンターテーブルの裏に回り俺の隣に立つ。


 「準備はいいか」


 「う、うん。少し緊張はするけど……」


 「隣に俺が居るんだ緊張する必要はないぜ」


 きっと後からこの台詞を思い出すと恥ずかしさのあまり悶えそうだが、そういう点はリーナを見習った方がいいのかな。


 「ありがとうカケル。私頑張るよッ!」


 「あぁ頼りにしてるからな」


 カケルはコンビニでバイトしたときの事を思いだし、そして今朝タブレットの電子書籍に入っている『猿でもできる簡単接客本』を読んでリーナと一緒に練習したことを思いだし、カケルとリーナは大きく息を吸い込んで叫んだ。


 「「いらっしゃいませー!! ハンデル村特製のタオルは要りませんかぁあ!!」」


 さて早速どれだけの人がこれで食い付くのかなと期待しているとあちこちでザワザワと周りの人達が会話していた。

 

 「おい、たおるって何だ?」


 「さぁー。俺も初めて聞いたよ」


 屋台の周りに集まっていた人達はタオルという言葉を聞いて少なからず興味を示していたように思える。ならここは休まず叩き込むべきだろう。


 「さぁさぁ皆さんッ! タオルについて知りたければこちらに来てください! タオルの素晴らしさについてお話ししますよ!」


 本の内容では『まず第一に笑顔で、そしてしっかりと声を出す。』と書かれており、カケルは可能な限り出せる声を出す。


 「き、聞くだけはタダなので少し覗いていきませんかぁ!」


 少し恥ずかしそうだが、リーナもしっかりと本の内容通りに声を出せているし、カケルよりも笑顔で頑張っている。


 「とりあえず聞いてみるだけ聞いてみようぜ」


 「そうね。聞いてみなければ分からないものね」


 次々とタオルについて知りたい人達が階段を登り、カウンターテーブルの前に集まっていく。


 「思っていたより集まったな」


 数分も掛からぬ内に横一杯に人が溜まり、後ろにも何人かが人混みの隙間から顔を覗かしていた。


 「ではでは集まってくれたお客様。今からタオルが何なのかを具体的かつ簡単に説明したいと思います!」


 「思います!」


 そう言うとカケルは今朝、空のペットボトルに入れた川の水を、リーナは商品でない私物のタオルとこの世界でタオルの役割を果たす掌サイズの体布(ていふ)を取り出す。


 「タオルとは簡単に言えば顔や体についた水分や汗を拭き取るものです!」


 「それって体布じゃダメなの?」


 「その言葉を待っていました」


 カケルは待っていた返しの言葉を聞いた瞬間、盛大に水をテーブルに溢した。


 「「わあぁぁあっ!」」


 「おいおい兄ちゃん何零してんだよ!」


 正直タオルをいい感じにアピールするにはこの手しか思い付かなかった。

 だがこれは見た感じ印象が悪く、客が離れる可能性があったがまだ客は誰も離れていない。


 「安心してください。今からタオルの素晴らしさを見せるのでしっかりと見ていてくださいよ! じゃあリーナよろしくな」


 「うん、任せて」


 カケルはささっと一歩下がり、リーナに場を譲る。


 「皆さんよーく見ていてください。今からこの水を右手に持つ体布と左手に持つタオル、同時に拭くのでどちらが凄いか見てください」


 リーナは体布とタオルを隣同士くっ付け上から下にスッーと拭き取ると、体布で拭いた方はまだ大量の水が残っていたが、タオルの方はしっかりと水を拭き取っていた。


 「「おおぉぉーッ!!」」


 タオルの脅威の吸水力を目の当たりにしたお客さんは感嘆の声を上げていた。


 「これはスゲーな!」


 「ねぇねぇこのタオルっていくらなの?」


 「バッカ! これほどの優れものだぞ高いに決まってんだろ!」


 客が勝手にカケル達がやろうと練習したどこぞの通販番組のやり取りをやられ少し予定と違ったが一応、このまま値段を言った方が良さそうだった。


 「大丈夫です。このタオルの値段はなんと二リベルです!」


 「嘘だろ! たったの二リベルだと」


 「それなら私欲しいわ!」


 「そんなの俺だって欲しいに決まってんだろ!」


 タオルの値段を聞いた瞬間、客はタオル欲しさに一気に詰めてきた。


 「皆さん落ち着いてください。ここにいるお客様の分はちゃんと在りますので並んでくださーい!」


 「ご協力お願いします!」


 あまりの勢いにリーナをカウンターテーブルから外に出てもらい、客を二列に並ばせてくれるよう頼み俺は、そのまま商売を続ける。


 「因みにタオルは今使ったこの大きさのものと体全体を簡単に拭けるバスタオルの二種類あります。バスタオルの方は四リベルとさせていただいておりますが、数に限りが在りますのでお一人様三枚までとさせていただきます!」


 リーナの指示通り、きちんと二列に並んだお客に俺は次々とタオルを捌いていく。途中からリーナも戻ってき二人係でタオルを売り続けていく。

 この調子ならサザンの言う通り、すぐに完売するだろう。

 だが俺らは気を抜くことなく、笑顔を絶やさずに接客を続ける。

 油断するとろくなことが起こらないのはここに来る途中で嫌というほど思いしったからな。



==================================================



 販売し始めてもう三十分が経とうとしていた。

 客は居なくなるどころかますます数が増えていき、長蛇の列になっていた。


 「バスタオル二枚とタオル一枚ください」


 「分かりました。えーッと、合計で十リベルになります」


 カケルはコンビニでのバイト経験があり、こういうカウンター系の仕事は慣れているがリーナは接客業自体が初めてなのでどうなるか不安だったが、だいぶ慣れてきだし手際も良くなっていく。


 「おう兄ちゃん。タオル三枚くれ」


 「有り難う御座います。合計で六リベルとなります」


 今の客で既に六百枚持ってきたタオルは五百枚になり、二百枚持ってきたバスタオルの方は百五十枚になっている。

 このペースでいけばまず間違いなくバスタオルの方が売り切れになる。


 「リーナ、リュオの方は大丈夫そうか?」


 「うん。カケルのお陰で誰にも疑われずにいるよ」


 リュオの方を見ると、リュオは無邪気な子供達の遊び相手になっていた。お陰で母親達も集まるし、安心してこの列に並んでくれる母親もおり、リュオも移動の足だけでなく商売にもしっかりと貢献してくれていた。


 「でもあれ大丈夫か?」


 一部の子供がリュオを叩いたり蹴ったりしており、カケルの世界でよく見る着ぐるみにイタズラする感じの光景になっている。


 「大丈夫みたいだよ。リュオも子供は嫌いじゃないからこのぐらい平気らしいし」


 「そ、そうか。それならいいんだけど……」


 子供のイタズラに度が過ぎて怒りで暴れまくるといった展開になるのが一番恐ろしいが、確かに見た感じではリュオも楽しそうだ。


 「あの~、そろそろいいですか?」


 リュオの方に気をとられ、ついうっかり客を待たせてしまったカケルはすぐに接客モードに入る。


 「あっ、スミマセンよそ見してしまって……」


 下げた頭を上げたカケルは自分の目を一瞬疑ってしまった。

 何故なら今目の前にいる女性客の格好はこの世界の一般的な服装でもなければ貴族みたいな装飾だらけの豪華な格好でもない。黄緑色のミニスカワンピースに膝ぐらいの長さもある先が二又の黒いマント。頭にはマントと同じ色をした黒いとんがり帽子。腰辺りに巻いてある茶色いベルトと服の間に挟まれた紅色の宝玉のついた杖に分厚い本。身長はリーナよりやや低く、短く切り整えられた黒色の髪に、半目から覗かす赤色の瞳でジト~ッとこちらを見る目付きのせいかかなりクールな感じがし、まさにザ・魔法使いな姿をしていた。

 カケルは初めて見る本物と思われる魔法使いを目の当たりにして少し心の中でテンションが上がってしまい、かなり彼女のことを見てしまっていた。


 「ん? どうしたのですか? 私の顔に何か付いているのですか?」


 首を傾げ不思議そうにこちらを見る女性にカケルは慌ててまた接客モードに入る。


 「あっ、いえいえ何でもありません。ちょっとボーッとしてしまいまして……それでどのタオルが欲しいんですか?」


 「そうですね……ならタオル二枚とバスタオルを一枚ください」


 「ありがとうございます。合計八リベルとなります」


 女性は腰にぶら下げている小袋を取るとその中から八リベルを取りだしカケルに渡す。


 「では少しお待ちください」


 「あぁちょっと待ってください」


 カケルが後ろに置いてあるタオルとバスタオルを取りに行ったとき女性が急に声をかけてき、カケルは女性の方を向く。


 「はい。一体何のようですか?」


 「あのユニコーンについて聞きたいんですが……」


 バシッと女性が指差す方は子供と遊ぶリュオにロックオンしていた。


 「あ~、あれはユニコーンではありませんよ。あれはただの白馬ですよ」


 「白馬! けどあの角はどういうことですか?」


 どれだけこの質問をされただろうか。だがこれを聞かれるのは想定済みなので用意したあの台詞で答える。


 「あの角は俺らの村で石を削って作った物を着けているだけですよ」


 そうこの台詞さえ言っとけば何とかなるんだ。たぶんだがこの世界の人達のほとんどは実物のユニコーンを見たことがないはずだ。それにあれほど立派な角を作れる村の商品ならかなり出来の良い物と思われるはずなのでハンデル村の技術力の高さを知らしめることも出来るということだ。


 「……そうですか。答えてくれてありがとうございます」


 「いえいえこちらこそ商品を買ってくださってありがとうございました」


 持ってきたタオルを丁寧に女性に渡したカケルは深々と頭を下げる。


 「すいません無駄な時間を使わせてしまって。それではまた」


 まるで近い内に再会するかのように去っていく女性。その姿から行動まで終始魔法使いな女性はあっという間に人混みに紛れ込んでしまい見えなくなってしまった。


 「あの女性は一体何だったんだろう」


 「どうしたのカケル。ボーッとして?」


 手が止まっているカケルの顔を除き混むようにこちらを見てくるリーナ。


 「あーごめんごめん何でもないよ。さっ、とっととやりますか」 


 気持ちを切り替えるためカケルは自分の頬をパンパンと叩く。


 「お待たせしてスミマセンでした。どのタオルが欲しいですか?」



==================================================



 「あ買い上げありがとうございました」


 あれから三時間近く経ち、カケルはタオルを買ってくれた客に頭を下げ、次の客に向けてタオルの在庫確認をしようとしたら既にタオルもバスタオルも一枚も無かった。


 「カケルもうタオルが無いよ?」


 「あぁそうみたいだな」


 リーナも相手していた客に対応し終わり、カケルと同じようにタオルの在庫確認に来ていた。


 「仕方ないか。今並んでいる客には悪いが今日はもう閉店だな」


 太陽も少しずつ沈みだし、閉めるなら今しかないという気もしてきた。


 「そうだね」


 客の列は未だに長く、折角並んでくれた人達に今日はもう終わりですと言って帰すのは心苦しい。


 「スミマセン! もうタオルがないので今日は終わりです!」


 「えーッ! 折角並んだのに~」


 「チェッ! しかたねー帰るか」


 どんどん崩れていく列の中であちこちからため息や不満の声が聞こえてくる。

 流石にこの状態のまま帰られると今後の商売に支障が出そうなため、カケルは声をあげる。


 「二日後にまたここでタオルを売るので良かったらその時にまた来てくださーい! 今日よりも多めに持ってきますのでー!」


 一瞬ざわざわとした空気がピタリと静まり返る。もしかして何か間違ったことを言ってしまったのかと焦り、頬から汗がたらりと地面に落ちる。


 「……わかったよ。二日後にまた来るからしっかりと準備しとけよ」


 「次来るのを楽しみにしてるわ」


 「ちゃんと今日よりも多めに持ってこいよー」


 批難の声が聞こえてくると思っていたがまさかの激励に近い言葉をかけられるとは思っておらず、キョトンとした顔で立ち尽くしてしまった。


 「やったねカケル。こんなにも私達が作った商品を期待してくれている人がいるんだよ」


 「あぁそうだな。こんなに期待されたのは初めてかもな」


 いや初めてではない。彼女だけはカケルのことを無駄に期待していた。


 「これも全部カケルのお陰だよ」


 隣で嬉しそうに目を輝かすリーナを見て気づいたことがある。それはもう一人自分のことを期待している人がいたということだ。


 「リーナ、何度も言うようだけどここまで上手くいったのは俺一人の力じゃないんだぞ」


 「でもそのきっかけを作ってくれたのはカケルでしょ?」


 「……! ったくお前はよくそんな事を本人の前で言えるよなぁ」


 だがリーナはどういうこと? と言った感じで首を傾げている。


 「ヒューヒュー熱いねお二人さん」


 「若いって良いわね~」


 「なっ!?」


 「えっ?」


 どうやら今のやり取りを近くにいた人達が見ていたらしく、あからさまな冷やかしをしてきた。


 「「別にそんなわけじゃ、あっ……」」


 完全にハモってしまい、周りから余計に冷やかしの声が上がる。


 「ハハッ、かなり仲が良いじゃねーか。ったく羨まし~な~」


 「あ~あ私にも好いい人現れないかな~」


 「あーもーこれはしばらく収拾つかないぞ」


 それから十分以上周りの人からいじられ続け、心身ともに疲れきったカケル達はそそくさと後片付けをし、ハンデル村に帰ることにした。


 「ふぅ~、んじゃとっとと帰るとしますか」


 「うんそうしようか。それじゃあリュオまたお願いね」


 リュオはまたゆったりと歩きだし王都の門に向かい出す。

 ゆっくりと動いていく移動式馬車に乗るカケルとリーナだが隣で手綱を握るリーナは朝の時のような元気がだいぶ無くなっているような気がする。


 「しんどいなら今日は王都に泊まってもいいんだぞ」


 「ううん私は大丈夫だよ。それに私達が帰らないと村の皆が心配するかもしれないでしょ」


 「ん~まぁそうかもな」


 でもリーナが無理してるのも分かるし一体どうすれば……。


 「本当に大丈夫だから。もし駄目なときはちゃんとカケルに言うから、ね?」


 あからさまな作り笑いでこちらを見るが、リーナがそこまで言うなら信用するしかないだろう。


 「分かったよ。でも少しでもヤバイと思ったら言えよ。倒れてからじゃあ遅いんだからな」


 「分かってるっても~。カケルは心配しすぎだよ」


 逆にこんな性格の人間を心配するなという方が無理な気がするが、確かに心配し過ぎなのかもしれないな。


 「……ったくならハンデル村までよろしくな」


 「ハイハイ、任せといて」


 長いようで短かった王都の街中を見ながらカケル達は皆が待っているであろうハンデル村へと帰っていく。皆で掴み取った二千リベルを持って。

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