三日目の朝もリーナのテンションは高かった
「カケル起きてー! 朝だよー!」
「うおぁああぁぁあ! 何だ何だ」
跳び跳ねるように起き上がると隣でリーナがニコニコしながらこちらを見ている。
「おはようカケル。中々起きないから心配したよ~」
「あ、あぁそれは悪かったな」
どうやらカケルを起こすために耳元でかなり大声を出したのだろう耳がじんじんして痛い。
「もう朝食出来てるよ」
「そうか。じゃあ俺は着替えてから行くから先に行っといてくれ」
「うん分かった。先に行ってるから早く来てね」
部屋を出ようとリーナがドアノブに手をかけたとき何か思い出したかのようにカケルの方を向いた。
「あっ! 二度寝してたら今度は叩いて起こすからね」
それだけ言うとリーナはドアを開け部屋から出ていく。
「こえ~。この世界では俺もう二度寝出来ねーな」
リーナが怒って戻ってくる前にカケルは昨日、等価交換で出した千五百円位のパジャマを脱ぎ一日目に出した異世界の服に着替える。
「よしこれでいいだろう」
着替え終わったカケルは部屋を出てリーナの待つダイニングキッチンへ向かう。
「ちゃんと来たねカケル」
「当たり前だろ、あんなこと言われては」
昨日と同じようにリーナの向かい側に座り机を見る。朝食は昨日と同じ物ばかりだ。まあたぶん配られている食糧が同じならしょうがないのかもしれないが。
「いただきます」
両手を合わせ早速リーナの作った朝食を食べ始める。味も昨日と同じだったが別に嫌いな味ではないため三週間近くなら食べ続けれそうだ。
「昨日も思ったけどカケルって」
急にリーナが話しかけてきたためカケルは顔を上げパンみたいなのを食べながらリーナの方を見る。
「朝弱いの?」
「いやまあ否定はしないけど……俺の世界では割りと普通な方なんだぜ」
「へぇ~そうなんだ」
カケルとしてはそんなに朝からテンションを上げれるリーナが羨ましい。
「俺もリーナに聞きたいことが何個かあるんだけどいいか?」
「うん別にいいけど」
リーナにはこの世界の通貨のこととか聞きたいことがまだまだあるが今知りたいのは凄く個人的な内容だ。
「俺も昨日から思っていたけどリーナって今着ているのしか服ないのか?」
「えっ?」
そうリーナが着ている服はカケルがあげた服によく似ており、もしかしたら一着しか持っていなかったのではと心配なのだ。
何故心配かだってそんなの決まっている年頃の女の子が昨日着た服をそのまま着続けるのは匂い的にいや違う衛生的にどうかと思うからだ。
「もしかして私が服を洗わずにそのまま着てると思ってるの?」
「う、うん」
「そ、そんなわけないでしょ。確かに服はこの服と寝るときに着るあの服しかないけどしっかり洗ってるんだから」
言われてみればリーナの着ている服はどこも汚れておらずどちらかといえば洗い立てのような感じがする。でもそれなら。
「一体いつ洗っているんだ?」
「水浴びの時に一緒に二着とも洗うのよ」
それなら朝には今着ている服は乾くのかもしれないがパジャマはそうはいかないはずだ。
「でもすぐには乾かないだろ?」
「何言ってるのよ。洗った直後に魔法で服を乾かしているからすぐに乾くのよ」
そうだった。ここは異世界でどちらかといえばファンタジーよりの世界なんだ。カケルの世界の常識が通用するわけがない。
「どうしたのいきなり机を叩いて」
「わ、悪い少し自分の間抜けさにイラッとしてしまって……」
これ以上この話を続けると自分がどんとん間抜けに思われてきそうなので話題を変えるためにゴホンとわざとらしく咳をする。
「他に二つほど聞きたいことがあるんだけど……」
「うん、別にいいけど……」
我ながらなんて不自然な話題の変え方なのだろう。
確実にリーナに気を使わせてしまった気がするが折角リーナが気を使ってくれたんだカケルがそれを無駄にするわけにはいけないだろう。
「えーと……この世界の通貨のこととリュオの様子を教えてくれないか?」




