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明日の事を言えばゴブリンが笑う

犬を書きたかったので書きました。毎日更新します。短いですがどうぞよろしくお願いします。

 生まれ変わったら、何になりたい?


 とか、聞いたり言ったり考えた事ない?誰だってあるよね。

 女じゃなくて男に生まれたかったとか、来世でもお母さんの子どもとして生まれたいとか、そういうのまで含めたら誰だって考えた事あるでしょ。

 また人間に生まれたいと思う人もいれば、人間以外の動物になりたいと思う人もいるし、動物じゃなくて植物とか物になりたいと思う人だっているじゃん。


 アタシ?犬。


 分かってるよ、猫の方がいいでしょ、ってよく言われた。猫は自由気ままに、好きな時に好きな事をしてれば可愛がってもらえるし、贅沢な暮らしできるもんね。

 まあ、いいと思うけどね。でもそれはそれで大変かなーって思わない?アタシは思った。

 例えば、今から好きな事していいですよ、って言われて寝る人ってどれぐらいいるの?ガチな話ね。ガチで寝る人は猫でいいと思う。ガチで寝ない人は猫じゃない方がいいんじゃない?あと「今から」だからね。「今」からずっと寝るの?無理じゃない?寝たら起きるよ?そこんとこ分かってる?起きたらどうするの?自由に、好きな事していいけど、何するの?そんな自由ってツラくない?


 で、アタシは他者ありきの犬が最高だと思ったワケ。飼い主のため、もしくは群れのために動いてりゃ幸せ、って単純すぎて最高でしょ。周りが自分の行動を決めてくれて、その通りにやってりゃ喜んでもらえる。いいね。自分で将来を考えたり決めなくていい。これぞ真の自由じゃない?

 依存とか言うな、分かってるよ。



 そう思ってたはずなんだけどなあ。


 なんとアタシは生まれ変わった。そう、転生だ。誰もが夢見る転生。人生を新たにやり直したい!できればチート付きで!もち剣と魔法のファンタジーな世界で!ってね。分かる。アタシもよく思ってた。

 もう一度繰り返すとね、剣と魔法のファンタジーな世界でチート付きの新たな人生を歩み直したいワケ。異世界じゃなきゃヤダ。チート付きじゃなきゃヤダ。人間じゃなきゃヤダ。人生イージーモードで超幸せに。モブじゃなくて主人公な人生を。俺TUEEEEEEEしてハッピーエンド。コレ異世界転生の絶対条件でしょ。

 つまりね……生まれ変わったら、人間じゃなきゃ、嫌だったんじゃん、って。今さら気づいたわ。


 あ、アタシ生まれたわ、っていうのは何となくわかった。手足が満足に動かなくて、感覚もハッキリしなくて、周りにされるがままに動かされて、本能のままに勝手に動いちゃう。あー、ついにきちゃったかー、アタシが主人公の物語始まっちゃうかー、って思ったよね。

 ただ、なーんか変だなー、とも思ってた。声を出せばピーピー言う。周りにたくさんもぞもぞ動いてるヤツらがいる。ん?これは人間か?って思うよね。さらにはよく小突かれる。舐められる。首根っこつかまれる。おや?人間の扱いじゃないな?ってすぐ気づくよね。あと会話が無い。ちょっとー、言葉覚えさせてー、とか思ってたけどさ、会話しない人間っているの?


 ああ、アタシ、人間じゃねーわ、って確信したのは目が開いてぼんやり周りが見え始めた頃。屋外だった。ザ・自然。ぼんやりと青空と土と緑が見えた。そして肌色は見えなかった。なんか……茶色?黒色?のデカい塊がいた。周りには似たような色の小さい塊が何個もあったし、おっぱい飲んでるときにその塊もアタシの隣に並んで飲んでるっぽかったし、ていうかおっぱい争奪戦あったし。ときどき同じような色をしたデカい塊が赤色をした塊を持ってきてた。


 で、だんだん視界がハッキリしてきて、よーく理解した。アタシは犬に転生した。


 どうしたもんかと思ったね。たしかに犬に生まれ変わりたかった。覚えてる。たしかにそう考えてた。大真面目に考えてた。しかしまさか実現するとは思ってなかったし、実現してみてこんなに後悔するとは思わなかった。いや、犬に生まれ変わりたいと思ってたから犬に転生したのかどうかなんてわからないけど、とにかく後悔した。


 思い出してみよう。転生するなら剣と魔法のファンタジーな世界で、チート付きで、新たな人生をイージーモードで主人公の俺TUEEEEEEE。コレ異世界転生の絶対条件。

 まず新たな人生云々は無理。犬だし。人じゃないし。それだけでハードモードだわ。じゃあ異世界なのか?分からない。犬って剣使わないし、魔法って使うの?使えるの?とりあえず剣も魔法もスキルもレベルアップもモンスターもステータスも見てないし聞いてない。最後の頼みの綱、チート様は?分からない。チートな才能あるのかな?知識はあるけど、いや、知識っていっても専門的な知識はないし、チートできるとは思えない。犬の知識チートもどうかと思うけど。とにかく、何かしらの才能があることに賭けるしかない。

 まじかよ。


 主人公したかった……モブは嫌だ……モブですらねーよ……これオブジェクトレベルだわ……超背景……圧倒的空気……アタシYOEEEEEEE……。


 とりあえず犬として頑張って生きるよ。群れのために、ファミリーのために己を律して生きるよ。ブラザーズやシスターズとおっぱい争奪戦して、すくすく成長して、じゃれあって、乳離れしてきてママンが口からオエェってグロテスクなものを吐き出してブラザーズやシスターズが食ってるのを見た時はドン引きしたけど、頑張った。頑張って大きくなった。ブラザーズやシスターズと毎日よく食べてよく寝てよく遊んだ。

 超健康的。圧倒的犬。素晴らしきワン生。慣れないことだらけだけど、犬に生まれ変わるのも悪いもんじゃないね。いつから狩りに参加できるのかなー。アタシとブラザーズとシスターズでこの群れを支える日も遠くないね。めちゃくちゃ活躍してやるんだから。そして次の世代へバトンタッチ。いいねえ、種の存続、繁栄が目的。生きるために生きる。うむ、単純明快でよろしい。このままワン生を謳歌しようではないか。はっはっは。



 ホント、アタシ、頑張ってたんだけどなあ……。


 モンスターの群れに襲われた。緑色のアレ。小柄で毛皮の腰巻でブサメンのアレ。棍棒とか弓とか、魔法のアレ。ゴブリン。どうやらこの世界は異世界だったみたいだ。こんな知り方は嫌だったけど。

 でもまあ、ゆーてゴブリンじゃん?モンスターとしては最弱レベルのヤツっしょ?ファミリーの大人達に任せてりゃいいよね?って思ってたんだけど、大人達は唸って尻尾巻いて後ずさるばっかりで、もちろんブラザーズもシスターズも尻尾巻いててチビってて、アタシも気づけば尻尾巻いてて、ゴブリン達の一斉攻撃が始まった。


 ゴブリン、超強かった。魔法もバンバン撃ってた。大人達がどんどん吹っ飛んでった。あ、詰んだ、って思った。どんどん大人達が肉片になっていった。パパンらしき犬も動かなくなった。ファミリーの血の臭いで鼻が利かなくなってきた。あとはアタシとママンとブラザーズとシスターズだけになった。間違いなく詰んだ。

 ママンが先頭にいたゴブリンの腕に噛みついた。空いた手で殴られて吹っ飛んだ。棍棒でトドメをさされた。動かなくなった。ゴブリンがこっちを向いた。

 アタシ、生まれ変わったら人間になりたい。絶対に人間。人間じゃなきゃヤダ。そう強く願って、果敢に唸るブラザーズやシスターズの後ろで目を閉じた。


 すごい爆音が聞こえて、耳が潰れるかと思った。走り回る音、叫ぶ声、ドサドサと落ちる音、それらが遠くで聞こえた。遠く?なんで?何事?目を開いたらゴブリンの群れが壊滅状態。誰が助けに来てくれたんだ?いや、助けられたとは限らない、もしかしたら新たな敵が……?

 カチャカチャという金属の音と、話し声が聞こえて、すぐに人間だと分かった。助かった、アタシのワン生終わってなかった、喜ぶべきかな、まあ喜ぶべきだよね、やったー!嬉しいーー!!

 のは私だけだったみたいで、ブラザーズやシスターズは相変わらず尻尾巻いて唸ってて、アタシだけ尻尾ブンブン振ってた。一番後ろにいてよかった。会話をしていた人間達が、うん、ちゃんと人間、人間みたいな別の生き物じゃない、人間が、男女2人ずつの4人組がアタシ達に気づいて近寄ってきた。


「-- ------」

「---」

「--- ------- ------」

「---------- ----------」


 ですよねー、何言ってるか分かるワケ無いですよねー。どうしよう、ブラザーズとシスターズは唸ってるけど、ここで人間達について行かなかったらもう死ぬしかないよね。ついて行っても死ぬかもしれないけど、でも弓を背負った茶髪のポニーテールの女の子が顔を赤くして黄色い声をあげてるから、絶対に悪く思われてない。ついに、知識チートを使う時が来たか……くらえ、媚びる!!


「------------------------- -------------------------」


 ふふ、存分に撫でまわすがよい、ほら、お腹だって触らせてやろう、ほーれほーれ、あ、ちょっと、撫でるのうまくない?やだ、嬉しくなってきちゃった!もっともっと!


「--- --- ---------」

「--- --------」

「----- ---------」

「-------- -----」

「--- ----------」

「------------」


 何を話してるかは分からないけど、とりあえずポニーテールちゃんに抱きかかえられている。いいね、この抱き方、迷いを感じない。これでアタシのワン生は安泰かな?


「-- ----- --------」


 ん?アタシに何か言ってる?言葉分かんないんだけどなあ、でも表情は曇ってる……ちょっと待って、アタシを連れて帰ってくれるんだよね?置いてかないでよ?


「-- --------」

「----- --------------------」

「------------------」

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「------」

「------------ ----------------------------」

「-」


 んー、ちょっぴり嫌な空気だなあ。何を話し合ってるんだろう。あ、地面に降ろされた。


「-- -------- -------」


 ポニーテールちゃん、何か悲しそうだけど、アタシ言葉分かんないって。泣かないでよー、連れて帰ってよー。顔ペロリするからさー、元気出してー。


「-- -------------」

「------------ ----------」

「--------------------」

「-- -------」

「-------」


 お、ポニーテールちゃんに笑顔が戻った。また抱えられた。うん、いいね、しっかり抱きしめてくれてる。今度こそ連れて帰ってよ?


「----- ------- ---------------」


 ああ、ポニーテールちゃんの優しい笑顔、いいね。撫でられる、いいね、最高。ていうか、疲れた……寝よ……。


「- ----」

「--------- ----------」

「-- --------」


 おやすみなさい。

このような拙作をお読みいただきありがとうございます。最後までお付き合いいただければ幸いです。

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