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廃人×魔法=面倒事  作者: あうあい
第一章 廃人×魔法=面倒事
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第五話 リアル弾幕してたら失明した、損害賠償しやがれ

新しい登場人物

Sleme (Selveris)〔スレム・セルヴェリス〕:どうやら魔法なるものを使えるようである。スライムに魂が宿って出来た。海蛇を短くした形で浮遊している。人探し中。

 えー。現状を説明すると。

 宇宙空間にて漂流中。何故だか死んでいない。

 そして、スレムという名前の可愛らしいスライムに攻撃されているのを、ひたすらによけている途中でもある。いや、元々は捕まえてみろという命令じゃなかったっけ?どうしてこうなったし。

 という訳で、かなりアクロバティックな運動をしている。人間ってやれば何でも出来るんだね。そうと分かったらさっさとリアル東○を開発すべし。真面目に頼む。


「 なかなかよけ続けるね、キミ 」

「そうかな。どうだか。それと光莉って名前があるからそれで呼んでほしい」


 大体十五分くらいたったところか。スレムが何か褒めてくれた。

 スレムの方はというと、分身体で弾幕を張っている。


 てかこれ、移動出来ないからかなりきつい。宇宙空間に反作用を求められるかってんだ。キセノン出している訳でもなし。その場を動くことしか出来ない。ルナティック越してインフェルノだな。足を背中の方から頭につけているくらいだし、今。体が柔らかくてよかったぜ。


 「あ」


 危ない危ない。髪の毛に弾幕が当たるところだった。もうちょっときつく纏めようかな。流石にここまで伸ばすと切るのも躊躇われる。もしかしたら髪の毛に関しては、面倒以外の何かあったかも知れないし。簡単に思え出せない何かが。


 それから暫く、リアル○方に苦戦していると、ふとスレムが攻撃をやめて、こうこぼした。


「 ……光莉 」

「何?」


 続きを促す。


「 ここまで避けきった人を見たのって初めてだよ…… 」

「人間やれば何でもできるからな」


 一万時間理論なんてあるけど、そんなの寝なければ一年とちょっとで終わるくらいにはヌルい。いや、それまでに死んでしまうのか。緩くなんてなかったぜ……。

 スレムはそれでも、という風に「ううん、反射で避けるなんて出来ない程濃い弾幕なのに……」だなんて続けた。


「そうだっけ?」


 どうやら自分の脳は人間を辞めたらしい。脳じゃなくて神経系がと言うべきかな。

 スレムが半眼を向けてきた。これでこそ魔物だな。可愛さしか伝わらない時点で、魔物に値するかどうか疑問も湧かないでもないけど。 いや、でも魔物だな。可愛い魔物もいるはずだ。人化しないかな。


「 出鱈目だよ、全く 」


 いやいや溜め息つかれてもどうも出来ないし。自分凄くない。今でこそスクールカーストなるものでは上位に入っているらしいのだが、昔は散々な言いようだった。

 ぷよぷよのどこが悪いって話だ。男子って本当に馬鹿である。自分も男子なのだけど、それはそれは耐え難かった。いっその事、女子に加担しようとまで思った。()めたけど。加担する理由もないし。


「 まあいいけど、それよりもそろそろどこか大気のあるところに行かないと、私持たない 」


 あ、ここ宇宙だったな。どうやって自分を連れ出してきたのか、どうして自分はまだ生きているのか疑問だけど、それ以前の問題としてスレムが危なさそうだな。水分がどんどん飛んでいくんだろう。


「だったらさっきまで図書室にいたからそこがいいかも」

「 座標は? 」

「えっと? 天の川銀河、オリオン座渦状腕、太陽系第三惑星、日本列島沖縄諸島みたいな感じでいいのかな?」

「 うん 」

「それじゃ、沖縄諸島中部青藍高等学校中学校図書室になるかな」

「 オッケイ! 」


 そういうなりスレムは「バラメンティスロ、ヱラウ」とか呟いた。呪文かな。

 シートベルト着用とかを言わない辺り、


「 じゃあ行くよ? 」


 意識がまた飛んだ。その前に、確かにスレムが「 やった! 見つけた! 」と嬉しそうに叫んだのを聞き逃さなかった。



 ここはどこ? 君は誰?

 有名なフレーズである。

 しかし自分の場合は、ここは保健室かな?して、そこにいる君は深谷だな、となる。そもそもの話、状況分析能力をなくした時点で相手に頼るのは、いい判断ではあるが、それでも自分でやろうよという発想しか出てこない。

 だがしかし、それは正常な目も頼った時だけだ。周りの情報を得る手段が耳と肌だけになった瞬間、自分もここはどこ? 君は、、、声からして深谷だな、くらいまでにはレベルが落ちる。

 時間を少々掛ければ、今の居場所も保健室だと分かるのだが、敵の陣中ならばまともには動けないし、絶対に安全とは言えない。深谷しかいない事が耳で分かったから、今回は許された。

 それよりもどうしてこうなった。さっきまで図書室にいて、そこから倒れて、そしたらここにいたというわけだから、途中の重要な話が丸っきり抜けている。どういう訳だ? 抜け過ぎにも程があるだろうに。

 さて、思考の時間はこれくらいで良しとして、問題は今にも何かをしてきそうな深谷である。まぶたが開かないことをいい事に何をしようとしてるんだか。息遣いがすぐそこに感じられるんだけど。


「深谷、何してる?」

「(ビクッ!)先輩、起きていたんですか?」


 何だ、その残念そうな声は。


「おはようございま~すッ」

「自分としては扶桑姉様の方が遥かに好きですが、一言言っておきます。○これプレイヤーは死んでください」


 ぜかまし嫌いなのかな。そういう自分も好きではない。かといって嫌いでもない。性能がいいくらいにしか思ってない。


「でもそれブーメランじゃ」

「気のせいです」

「――まあいいや。んでそれよりもまぶたが開かなくなったんだけどどうすればいいんかな?」

「はあ? どういうことですか、そりは」


 今頃心配した顔なのやら、それとも……。


「文字通りだ。一応はまぶたを通して光が漏れてくるから視覚は残っているんだよね」

「……」


 何も見えないから何をしているのか分からない。珍しく不安になってきた。もしや、深谷、目に何をしようと、


「えい」

「痛い(棒読み)」


 やっぱりまぶたを強引に開けようとしてましたね〜。ある意味予想通りだけど、斜め下だった。まあでも、寧ろ助かった。


「って、痛い痛い痛い痛い、爪切りやがれ」

「イタイイタイ病でも患ったんですか、先輩? 全く、何しているんだか」


 言うと思ったわ、このアマ。うーん、いや、後輩。人は罵ってはいけない。誰かが知らなくても天と地は知っている。

 しかしそれでもこれは言わねばなるまい。


「普通に痛いんだよ、カドミウムの要素はどこにもない!!」

「チッ」


 何の舌打ちなのか敢えて聞かないでおこうか。今ので力技では開かないことも分かっただろうし。

 ここでわざと明るくつとめよう。


「あーあ。傷痕出来てないかな」


 これは後で確かむべし。


 そしてこれで分かった。かなり困ったことが分かった。視覚は使わなければ劣ってしまうらしい。赤ちゃん猫の目をずっと覆っていたら、目が見えなくなってしまうように。或いは鉱山の地盤が落ちて余儀無く光の届かない生活を強いられた鉱夫さんがたのように。

 後者の方は地上に無事生還したのちの今でも苦しんでいるらしい。それだけ闇に慣れて、錐体細胞が衰退したようだ。

 これが、千鶴ならまだ少しは良かったかもしれない。いや、盲目にいいも悪いもないのだけど、てか外界の情報の九割は失われてしまうけど、そうなると動画作成と投資ができない。つまり収入が八割がたなくなる。かなり困る。


 ふと。


(何か思い出せていないことはないのか?)


 そんな声が脳内で響いた。

 すぐにスレムのことを思い出した。そう言えばあのスライムが魔法だの何だの言い始めたのだ。一緒にテレポートしたのなら、恐らくついてきている筈。でも出てこないと言うのなら、何か事情があるのだろう。人払いすっかな。そうするべきなのかな。


「あ、そうだ深谷そこにいる?  今から家に帰ろうと思うんだけど、鞄を取ってきてくれる? お願~い」


 思いっきりお姉ちゃんの声を真似してみた。深い理由はない。我ながら完璧だ。


「……先輩」

「何?」

「女だったんですか?」

両声類(りょうせいるい)です」


 少し声を裏返せば出るってのが便利。結構の頻度で宗教勧誘が家に来るから、子供の声を出して追っ払うのによく使える。言ってて思ったが理由が悲しい。

 暫し沈黙が部屋を埋めた。


「……?」

「………………」

「……あの?」

「――!! 取ってきましょう、3DS」


 こりゃ絶対考え事をしていたな。祐俐のことかな? 女子も惚れるほど可愛いしな、一応は。

 ……ここで間違えても、深谷が自分のことを想っていたとは絶対に思わないでおこうと念じた。

 しかし反抗しないのか。てっきり「あの量の荷物を?」だとか何とか嫌がると思ったが。


「……何はともあれお礼お礼!ありが千匹ありがとお!」

「気持ち悪いので蟻用のスプレーで殺しておきますね」


 冗談がスルーされた。

 カーテンが開閉する音に続いて、ドアが閉まる音。それと同時に


「 ぷは~、漸く出てこれた~ 」


と緊張感の感じられない声。


「うんまあお疲れ」


 適当にあしらってもいいかな。スレムも意外と対応に疲れる人種かも知れない。


「それで、」

「 しっかし、今の子すごいね。 情報技術系の上位互換の量子力学系の魔法にかなり合いそう。 んで、なになに? 目のこと?」

「観察してたのか、深谷のこと。その間に追っ払うなり何なり出来たんじゃないの?」


 口は少し悪いが、本音を言えばこうである。

 対してスレムの返事は、


「ああ、うん。それはちょっと難しいかな」


と少々歯切れが悪かった。


「どういうこと?」

「 それは~ 」

「貯めんな、速くしろ」

「 次話に続く! 」

「おい!」

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