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廃人×魔法=面倒事  作者: あうあい
第二章 廃人×魔法=紛争
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第二話 分身体のミス

 ふう、やったぜ。久しぶりの我が家だぜ。

 魔法は随分と便利なものだ。今更か。とりまフェリシア流の魔法は必須だな。

 それにしてもこの部屋は、相変わらず電気の消費が無駄に多い。

 デスクの上に置かれた計二十三台のパソコン。そのうちの1st、2nd、4th、5thマシーンの四台がうなっている。


「メフェスチ:ヘーモポラージュ ヨシノカドル レーヨ」


 ちょっとどういうことか分身体に訊こう。この一か月間は故郷の沖縄にもいなかったし、どうやらクラッキングしているようだし。テレパシーを送る。


『もしもし分身体よ』

『もすもす終日のたりかな。オスミウムなさ~い』


 さては授業中に寝てたな。流石は分身体。寝起きの挨拶もちゃんと弁えている。というかその元素ネタ分かる人いないよ、絶対。


『おい寝るな、話を聞きやがれ。パソコンを使って何しているのかおせーて頂戴な』

『ん? 見れば分かるじゃん。五角形のアレ。えっとペンタゴンのクラッキングしてる』

『何それズルい!!! ちょーたのしそう!!!』


 楽しそう!!!!


『めちゃんこ楽しいじぇい? さあ! 本体よ、一緒にアルゴリズム解析をしようではないか!!』


 あ、これ、分身体の野郎、悪魔の笑いを浮かべているだろ。絶対そうに違いない。


『ぐぬぬぬぬぬ……!! でも、魔法の体系化、めっちゃ責任が重いんだよなぁぁ……!!』

『んなっ!!』

『ペンタゴンのクラッキングと異星での魔法の体系化……! どっちもやりたい!!! 分身体よ、どっちを優先すればいいのか!!?』

『本体は明らかに魔法の体系化を進めるべきなんじゃ』

『くっ……! 何てこった……!』


 思い返せば素晴らしく頭の悪い会話である。大国の機密事項をペラペラ喋るのは感心しない。どうせ気付くのはかなり後だし、直接被害を被る訳じゃないんだからいいんだけど。

 しっかし、分身体の癖にけしからん。本体の許可を得ずに楽しいことをするなど言語道断だ。羨ましい。


『まあいいとして、学校はどんな感じ? 落ち着いてる?』

『東風平先生絡みのこと? それなら大丈夫。東江先生のお陰で』

『なら良かった。程よくネネミーさんを見張っておいてよ? 暴走したら前みたいなことになるから』

『大丈夫。お姉ちゃんに丸投げしてるから』

『あー、なら安心だな』


 お前、分身体の命はともかく。今更だけど、分身体でも分身体同士でお姉ちゃん呼びするんだな。


『そんじゃ寝るぜ』

『うん、おやすー』


 テレパシーが切れる。

 よし、色々分かった気がする。

 今回、イールド星に向かうにあたり、一番の障害となったのが地球での活動をどうするかだった。その結果が分身体を置くということだったが、まさかペンタゴンクラッキングを試そうとしているとは。

 まあ、ネネミーさん――東江先生が暴走しないのなら、それで一先ずは安心か。


 さて、一か月前にイールド星に行くことにしたのは、何も魔法が使えるようになってカッコ良さそうだからだけではない。いざという時に守りたいものを守るための力が足りないから、魔法を習得する目的もある。

 やばい、言ってみたかった台詞っぽくなってる、そういう意味じゃないんだけどなぁ。

 ともあれ、一か月前の話になる。

 東風平先生の中身は魔法の体系化に反対する過激派の手下だった。それだけならまだ良かったのだが、お姉ちゃんとクラスメイトの文音に手を出した。この時点でやり返すことにした。

 幸いにも肉弾戦なら負けない自信がある。無駄に体力と筋力はあるしね。こうして折角の中国への帰省の旅も面倒事に巻き込まれた。

 流石に向こうの警察の世話になるのはたまらないので、程よく手加減したけど、逆に仇になった。魔法の対処法なんて知らないので、苦戦した。急に血は吐くわ、視界は奪われるわ、何だかんだで死にかけた。

 何とか梅河口から沖縄に追い返すことは出来たのだけど、何らかの負い目を感じていたらしいネネミーさんは半分暴走して、東風平先生にトドメを刺す寸前まで迫った。

 命を奪ってしまうのはマズいので仲裁に入ると、今度は自分が攻撃の的にされた。勘弁して欲しい。暴走にも程がある。スレムがいなかったら全身複雑骨折ものの怪我をしていた。かすり傷七つと切り傷四つで済んだのは、運が良かったと言ったところか。

 先ずはせめて自分の身を守れるようになろうかなどと柄にもなく思い、今こうしてネットがないことを後悔しながらイールド星にいる。


「さて、収入の確認をしようかな」


 3rdマシーンを起動する。

 普段ならすぐにOS起動画面に移行する筈が、BIOS画面で衝撃的な一言をディスプレイが映していた。

『Not found』――ハードディスク上から全てのデータが削除されている。

 つまりそういうことだった。

 ……。


「クラッキングミスりやがったなテメー、これどうすんだよ!!」


 恐らくペンタゴンに気付かれて、報復としてデータが削除されたのだろう。救いだったのが、3rdマシーンだけは直接日本のプロバイダーを介していないことと、IPアドレスが海外の物であるということか。アドレス検索でもアフリカとしか出ない。日本からの攻撃とはすぐにバレない。


「……大丈夫、か」


 少なくともすぐには戦火は起きない。

 ただ、そう考えると残りの四台のパソコンが気になる。見た所、連携してうまいこと深部まで潜り込んでいるようだ。アルゴリズム解析も速い。ダミーもどこかしら置いていそうなものを何故なのだろうか。

 過ぎたことは気にしても仕方がない。バックアップファイルを焼いたBD(ブルーレイ)を探しますか。どうせ動画はないしもう何でもいいや。

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