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旭日の西漸 第1部 極東の騒乱篇  作者: 僕突全卯
第1章 列強との邂逅
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海戦後、世界の反応

護衛艦「いずも」 医療区画


「う・・・う・・・。」


ガバッ


「はっ!!」


整備兵ランバルは目を覚ますと、いつのまにか青い色をしたベッドの上に寝かされているのに気づいた。体を見ると白い布のようなものが至る所に巻かれている。


「先生、23番の患者が目を覚ましました。」


横から誰かを呼びつける声がする。


「・・・?」


軍艦アシュールに響き渡った大きな爆音、彼にはその先の記憶が無い。周りを見ると負傷した帝国兵たちが同じようなベッドに寝かされている。

しばらく呆然としていると、彼の前に白く長いコートの様なものを着た男が現れた。


「ここは?」


ランバルはその男に現在地を尋ねる。


「日本軍の艦『いずも』の中だよ。少し心音を診させてくれ。」


そういうと医官 柴田友和 一等海尉/大尉は両耳に聴診器を装着する。


「ニホンの艦?・・・て、帝国軍は!?」


「アルティーア帝国の艦隊なら殲滅されただろう。覚えてはいないか?君たちは有り体に言えば捕虜って訳だ。」


艦隊の全滅、ランバルは最後の記憶のその先を認識する。


「全滅・・・それじゃあ、竜騎兵隊は!?」


「飛んで来た竜は全て戦闘機の餌食になったよ。ミサイルをまともに食らったんだ。まず生きてはいない。」


親友の死。その一言を聞いたランバルは一瞬にして顔色を変える。


「よくも・・・、ドルサを!!」


ランバルは柴田に飛びかかろうと上体を起き上がらせる。しかし負傷により体力を失っていたためか、柴田に軽くおでこを押されると、力なくベッドに押し返された。


「うっ!」


「寝てろ、まだ回復も不十分だ。」


「くそ!」


病床の上でランバルは悔しさと怒りのあまり、拳を握りしめる。彼の目線は恨みをもって柴田に向けられていた。その様子を見た柴田は興奮するランバルを諭すように口を開いた。


「・・・君は今さぞかし我々を恨んでいるんだろうが、それは逆恨みって言うもんだ。そもそも、君たちは剣や大砲や武装した竜を引き連れてここへ何しに来た?観光旅行でもしに来たのか?」


「!?・・・何だと・・・!」


柴田の帝国軍を侮辱するような言葉にランバルはさらに憤りを深める。


「そうだよ。違うよなあ、戦争しに来たんだろう!」


「!?」


真意をわかりかねているような顔をしているランバルに、柴田は“戦い”というものについての持論を述べ始めた。


「戦争とは自らが属する陣営の目的を達するために敵を殺すものさ。それに今回の戦いで戦端を開いたのは君たちの帝国の方だろう。先に剣を抜き、相手を殺しにかかるときには自分たちも死ぬ覚悟を伴うのが筋じゃないのか?

ろくな覚悟も無しに自分より弱いと見下していた相手に戦をふっかけて、情けなく負けたらその相手を恨むなんて、随分身勝手だと俺は思うがね。」


「な、何を!」


言い返そうとするランバルに対して、柴田は口を挟ませないように言葉を続ける。


「そ・れ・に、君のそのドルサという友は前線で戦う竜騎兵だったのだろう、彼は戦場においてそういった覚悟がないヤツだったのか?」


「・・・!」


柴田のこの問いかけに、彼はドルサが艦から飛び立つ直前に残した言葉を思い出す。


『—死ぬ覚悟は出来てるってんだよ!—』


「そ、それはちがう!彼は死を恐れない誇り高い騎士だった!」


「・・そうかい。」


少しの沈黙の後、再び柴田が語り出す。


「今述べたのはあくまで俺個人の考え方さ。別に深く考えなくて良い。

・・・ただ、今何かを恨むのなら、先に剣を抜きながら力及ばずに負けた自分たちを恨め。俺たちは自分たちに降りかかって来た火の粉を払っただけなのだから。」


「・・・。」


柴田の持論、ドルサの最後の言葉。この2つはランバルの心に大きな楔を打ち付けた。


「話は終わりだ。心音を聞かせてくれ。」


柴田はランバルの診察を始める。


その日の夜、ランバルは病床にて柴田の言葉を頭の中で反芻していた。


『戦には死ぬ覚悟を伴う』


「アルティーア帝国軍はここ数十年、勝てる戦しか続けて来なかった。そのうちに戦場に出るための志を忘れてしまったというのか・・・?」


〜〜〜〜〜


ショーテーリア=サン帝国 首都ヨーク=アーデン 皇帝の居城


「なに?それは真か!」


皇帝セルティウス=ミサル=アントニスは帝国宰相コンティス=アルヴェオリスの報告に驚きの声を上げた。


「はい。極東洋に侵攻したアルティーア帝国軍は、ニホン国が軍事支援を行った極東海洋諸国連合軍に大敗しました。」


「うーむ、ニホン国よりノーザロイアを経て我が国に入って来る未知の品々、それらを見て彼の国には何かあるとは思っていたが、まさかアルティーア帝国を蹴散らすほどの軍事力まで持ち合わせていようとは・・・。」


「やはり我々の目に間違いはなかったようですね。ニホン国に忍び込ませた密偵の報告内容、また今回のことも含め彼の国の国力、軍事力、技術力は確かなもののようです。またこの海戦を端として、ニホンとアルティーア帝国は間違いなく正式に開戦するでしょう。」


「この戦争の結末次第で、我が国はニホンとのつきあい方を決めねばならないな・・・。」


皇帝セルティウスは未来を見据える。


〜〜〜〜〜


ノーザロイア島 イラマニア王国 首都アリナー


「聞いたか、ニホン軍があのアルティーア帝国軍を叩き潰したんだってよ!」

「ああ、聞いたよ。何でも帝国軍が手も足も出ないほど強かったらしいじゃねえか。」

「そりゃ、ニホンがいれば極東世界はずっと安泰だな!」


市民の間ではロバーニア沖海戦の話で持ちきりになっていた。



王の居城 王の執務室


「ロバーニアに侵攻したアルティーア帝国軍はほぼ全滅し、生存者は1%ほど。一方、極東海洋諸国連合軍の戦死者は0。以上がロバーニア沖海戦の結果となります。」


「その報告は真か、お主が嘘をつくとは思わぬが・・・。」


宰相ソマートの報告に国王ギルガ5世はその真偽を尋ねた。


「・・・ニホン国の軍事力はアルティーア帝国をもはるかに凌駕しているようです。」


「彼らが侵略戦争を自ら禁止しているというのは本当なのだな?」


「はい。それは彼の国の条文に明記されているのを確認済みです。彼らから他国に宣戦することは無いとのことです。」


「それならば安心だが・・。彼らが友好国で良かったな。」


国王ギルガ5世は日本が平和主義であることに安堵する。


〜〜〜〜〜


アルティーア帝国 首都クステファイ 皇帝の居城


「何だと!」


極東洋での大敗の一報に、皇帝ウヴァーリト=バーパル4世は唇をふるわせ怒り狂っていた。


「も、申し訳ありません!!」


剣幕に気圧されながら、玉座の間にて軍事大臣シトス=スフィーノイドは極東洋での敗北を詫び続ける。


その後、今後の方針を協議するため、閣僚会議が急遽開かれることとなった。


〜〜〜〜〜


元老院 閣僚会議室


「軍事大臣、これは大失態ですぞ。帝国が極東の後進国に敗戦したなど、他の七龍国家の笑いものだ。それに属領・属国に知れ渡るのも時間の問題、奴らを焚きつけることになる。さらにこの見出し!」


彼は懐から世界魔法逓信社の号外紙を取り出した。


「『アルティーア帝国、極東海洋諸国連合相手に完敗!東方世界の勢力図に大きな変化!』、これはすでに世界中に出回っています。全く恥さらしもいいところだ。」


シトスを弾劾する宰相イルタ=オービットの発言に、海軍長クラウゼ=サイロイドが手を上げる。


「残存の3隻からの報告によりますと、極東海洋諸国連合にはニホンという国の援軍がついていたとか・・・。何でも、島の様に大きい船に空飛ぶ鉄の甲虫、そして竜を遙かに凌駕する速さを持った空飛ぶ巨大な剣を操り、圧倒的な力で我が帝国軍を殲滅したと。」


その報告に会議の場にいた全員が騒ぎ出す。


「ばかな!そんな兵器が常識としてある訳がない。」

「そもそもそれはゴルタが寄越した報告内容だろう?」

「あの臆病者のことだ。気でもふれたか、少しでも言い逃れが出来るように考えた奴の妄想の産物だ!」


会議が騒然とするなか、外務大臣カブラムは腕を組んで何かを思い出していた。


「ニホン?確かどこかで聞いたような・・・。」


〜〜〜〜〜


閣僚会議後、外務局 カブラムの執務室


「あった、これだ!」


書類入れから見つけた外務局極東課の局員が提出していた報告書、それには確かに日本国という国の使節を名乗る一団が、外務局を訪問したと書かれている。辺境国の分際で対等な国交、公正な貿易などやたら高次的な主張をしてきたと局員が愚痴をこぼしていたので、強く記憶に残っていたのだ。


「早く皇帝陛下にお伝えしなければ!」


カブラムは皇帝の居城へと馬車を走らせた。


〜〜〜〜〜


首都クステファイ 皇帝の居城


「・・・ニホン国?」


皇帝ウヴァーリト4世は、カブラムにその国の名を聞き返した。


「はい、それが極東洋での戦いにおいて極東連合に与し、アルティーア帝国が東方の覇者たる道を阻んだ敵の名です!」


「聞いたことの無い国だな・・・。一体どこにあるのだ?」


「1月程前に入国した彼の国の使節の話に依りますと、ノーザロイア島よりさらに東、世界の東端と言われている海上に位置する島国であるとのことでございます。」


「なに!?では我が帝国は極東の島国一国ごときに敗れたと言うのか!」


予想外の屈辱的な事実を聞かされ、皇帝ウヴァーリトは愕然とする。


「はっ・・・、現場の指揮官や兵士たちに慢心や油断があったのかも知れませぬ。いずれにしても軍事局の失態という他ありませんが、所詮は大陸から外れた未開国であります。ニホンには、その身をもって自らの行いの愚かさを思い知らせなければ、帝国の威信に関わります!」


「では、どうするのだ。」


ウヴァーリトはカブラムの真意を問う。


「ニホンへ侵攻致します!陛下、軍派遣の許可を頂きたい!」


少し間をおいて、皇帝ウヴァーリトは口を開く。


「・・・・無論だ。」

いまいち柴田が伝えたかったことを上手く書けなかった感じがします。

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