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旭日の西漸 第1部 極東の騒乱篇  作者: 僕突全卯
第1章 列強との邂逅
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初戦闘 ロバーニア沖海戦 壱

いよいよ戦闘です。軍事知識がかなり浅い私が書いたものなので、ところどころおかしいかも知れませんが・・・。

12月10日 ロバーニア王国 首都オーバメン 港


 この日、ロバーニア王国との国交開設の際、日本のODAによる建設が取り決められていた在ロバーニア王国日本貿易港が開港した。元々王国の湾港施設が日本の船舶が着港するには脆弱だったために建設したものだったが、今回の戦闘において日本の軍事拠点として使用することが決定したのだ。


「なんと巨大な船なのだ!」

「これがニホンの軍艦・・・。」

「見ろ!船から鉄の怪物が次々港に降りて来ているぞ!」

「あれは鉄の羽虫か?」

「これらすべてが我が国の味方となるらしいぞ!」


 港に接岸した輸送艦や護衛艦、そしてこれらからロバーニアの地に降り立つ戦車と装甲車、空を飛行するSH−60K哨戒ヘリコプターを王国民は驚きと感激の目で見る。


「これはなんとも荘厳な・・・。」


 国王アメキハも、丘の上にある王城のテラスから、唖然とした様子で港を見つめているのだった。


 今回の軍事支援に投入された戦力は次の通りである。


 護衛艦・輸送艦 10隻

「きりしま」「たかなみ」「おおなみ」「てるづき」「いずも」「まや」「しらぬい」「いかづち」「あかぎ」「おおすみ」

 シーホークSH−60K 4機

 F−35C 10機

 ホークアイE−2D 1機

 10式戦車 5輌

 89式装甲車 3輌

 コブラAH−1S 11機


〜〜〜〜〜


2025年12月25日 ロバーニア本島北西部 海上


 アルティーア帝国の軍艦がロバーニア北西部の水平線上に出現した。帝国の首都であるクステファイからロバーニアまでの航路上にある極東連合の一国 アネジア王国はすでに征服されたという。

 ロバーニア王国は極東連合諸国の人口の半分が集中し、軍事力も最大であった。この国が落ちるということは極東洋全体がいずれは帝国の手中に落ちることを意味する。

 今回ロバーニア北西部沖に集結した極東連合の総兵力は、全長20mほどの軍船が478隻、兵数42,200名である。対して帝国が派遣してきた総兵力は、50m超級の軍艦が324隻、兵数68,000名である。第三国の誰もがこのとき、極東連合の大敗を疑わなかった。

 そんな極東連合の小舟の軍団の端に場違いな150m超級の護衛艦8隻が並んでいるさまは、何ともいえないシュールさを出していた。また極東連合軍が集結している北西部沖に面した海岸には、F−35Cを搭載した「あかぎ」が、ロバーニア本島を隔てて反対側の首都オーバメンの港には、輸送艦「おおすみ」が停泊していた。


 「あかぎ」は2025年3月に就役した戦闘機搭載型護衛艦(DDA)であり、戦後初の航空機の離発着を主目的とした護衛艦である。一般的な分類としては正規空母に属している。

 日本が空母を所有することとなった背景には、2019年に勃発した「日中尖閣諸島沖軍事衝突」がある。人民解放軍により南西諸島の一部有人島に艦対地ミサイル攻撃を受け、死傷者が出たことを重く見た日本政府は、右傾化していく世論の煽りも受け、防衛指針として中国を仮想敵国として認定し、主に対中国対処を目的とした先制攻撃能力・防空能力・遠隔地攻撃能力の強化を行うため、その年のDD計画を大幅に改訂した。また2021年には憲法9条の改正も達成された。

 そして2025年に完成したのが戦後初の正規空母「あかぎ」である。

 さらにF−35A戦闘機の配備を進めていた日本政府は「あかぎ」、また2014年より「マキン・アイランド」視察などで計画が上がり、軍事衝突後の2019年10月に配備された強襲揚陸艦「しまばら」、そして後に竣工することとなる「しまばら」型艦・「おが」「こじま」の計3隻で運用する艦上戦闘機として、F−35B及びF−35Cの追加購入を決定。2025年にはF−35A/B/Cの計100機導入が完成することとなった。

 しかし本題の「あかぎ」については、建造中の2022年に新中・北朝鮮と日本を含む周辺諸国との戦争(東亜戦争)が勃発。日本政府は作戦投入を目指して完成を急いだが、米国の本格参戦、及び戦争末期の印露の参戦を経て2024年3月に東亜戦争は終結を迎えた。対中国戦投入という当初の最大目的を失った建造中の「あかぎ」は、計画のみに終わり太平洋戦争で日の目を見ることがなかった超大和型戦艦になぞらえて「平成の紀伊」と揶揄された。

 建造中止も持ち上げられたが、すでに8割方完成していたためその後も建造を続行。2025年1月に就役したのである。また「あかぎ」とは1年遅れで建造を開始したもう1隻の戦闘機搭載型護衛艦は未だ建設途中である。


「これらが此度ロバーニアの請願に応じ、我ら極東連合に手を貸したというニホン国の軍艦・・・。」

「鉄でできているし、帆もついていない。一体どのようにして海の上に浮かび、進むというのか。」


 各連合国の武官たちはそれぞれ自国の軍船の甲板から、あまりにも巨大な護衛艦をただ見上げていた。



 「いずも」からシーホーク(SH-60K)4機が飛び立ち、帝国船団の方へ飛行する。そして各機に取り付けられた拡声器から帝国の兵士たちに対して警告を行う。


「こちらは日本国軍である。此度ロバーニア国王の請願を受け極東海洋諸国連合の助太刀に参った。貴殿らの船はロバーニア王国の領海を侵犯している!直ちに立ち退きなさい!繰り返す、直ちに立ち退きなさい!」


 突如現れた鉄の甲虫から聞こえる、ニホンという国の軍隊を名乗る集団による大音量の警告に帝国の兵士は恐れおののいていた。


・・・


極東洋侵攻軍 旗艦「アカイメネス」


「なんだろう、あれは?」

「龍でもないぞ!まさか敵の新兵器か!?」

「極東連合軍の船団を見てみろ!なんだ、あのばかでかい船は!?」


 甲板に立つ兵士たちに動揺が走る。巨大な羽虫が発する羽音が彼らの腹の底に響き、それが益々彼らの不安を煽っていた。


「ニホン?聞いたことのない国だが・・・、ふざけたことをぬかす。」


 極東洋侵攻軍の指揮官である将軍サトラフ=アペンディクスは、吐き捨てるように言った。


「みな恐れるな!所詮極東の未開国の兵器の力などたかが知れている。いずれこの東方世界の覇者となるアルティーア帝国がこの極東洋で負けることなどありはしないのだ!」


 指揮官の鼓舞に兵士たちが動揺を断ち切るように呼応する。将軍サトラフ率いる極東洋侵攻軍は、シーホーク(SH-60K)の警告に耳を貸すこと無く、ロバーニアへ足を進めていた。


・・・


シーホーク(SH-60K) 機内


「『助太刀に参った』って・・・っ!時代劇の見過ぎだよ、若いのに。くくくっ!」


 警告を担当した航空士の言い回しがやけに時代掛かったものであることに、副操縦士は笑いをこらえながら突っ込みを入れる。


「んな!つい口に出してしまったんです!笑わないで下さいよ!」


「はいはい。」


 緊張感を欠く2人のやり取りに主操縦士が注意を入れる。


「お前たち戦闘中だぞ、任務に集中。見ろ、敵が攻撃してきた。」


 主操縦士が目線をやった方を見ると、敵艦の甲板から哨戒ヘリコプターに対して兵士たちがクロスボウを放っているのが確認出来た。


「『いずも』に帰還する。あちらさんはウチに帰る気はさらさら無いらしい。」


 主操縦士は操縦桿を傾ける。彼らが乗る機に続き、他の3機も母艦である「いずも」へと帰って行った。


〜〜〜〜〜


ロバーニア支援軍海上部隊 旗艦「あかぎ」 艦橋


「やっぱり帰ってはくれないか・・・、当然と言えば当然だよねえ。」


 海上部隊旗艦「あかぎ」にて、今回、支援軍総司令の職を任された鈴木実 海将補/少将はシーホーク(SH-60K)の報告を聞き、残念そうにつぶやいた。

 彼は海の向こうに目をやると、側に立っていた「あかぎ」艦長の安藤忠一等海佐/大佐に命令を下す。


「敵はガレオン船だな。17世紀の軍隊を相手にする様なものか・・・各艦に伝えて、必中距離に入り次第攻撃開始せよ、とね。」


「了解しました!」


 安藤一佐は敬礼を以て、指揮官の命令を受け取る。異世界に転移して初の戦火が、切って落とされたのだ。

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