無間序曲
何も投稿しないのも寂しいので、久しぶりにアップします。細かい齟齬などあるかもしれませんが、書き上げてはおりますので、とにかく完結まで日々更新していきます。お付き合いいただけましたら幸いです。
名前だったか、番号だったか、わからない。
ただ、自分が呼ばれたことはわかった。
独房から出され、手錠と腰ひもをつけられた状態で歩かされる。
いよいよ時が来たのだ。
死刑。
裁判所によって決められた運命だ。
周囲には刑務官が何人もいる。暴れたときに取り押さえるためだ。
恐怖はある。しかし、そこまで理性をなくしてはいない。
ある部屋に通された。
部屋の両側では、何人もの制服を着た人間が椅子に座って、こちらを見ている。
視線の先の壁には祭壇があり、中央に仏の絵が飾ってある。
具体的にどんな仏かは知らない。
祭壇に向かい合う椅子に座らされた。
すると、誰かがお経を唱え出す。
自分は神を信じていないと言って、止めさせた。
今度はいかめしい顔をした男が、祭壇にある菓子を指さし、好きなだけ食べなさいと告げる。
首を横に振った。今は腹が減っていない。
もう一人、柔和な顔の老人が近づいてきた。
何か言い残すことは、と問いかけてくる。
くそくらえ。
答えるとすぐに、袋のようなものを顔にかぶせられた。
そして、腕を抱えられ移動させられる。
立ち上がらされた。
両足を誰かが押さえている。
縄が首にかかった。
もうそろそろだ。
あと少しで、死刑が執行される。
こんなふうに人生が終わることに、後悔はない。それだけのことをしてきた自覚はある。
ただ、もし生まれ変わることがあったとしたら、そのときは真人間になりたい。
憎しみを持たず、恨まれることもなく。人のために生き、笑顔に囲まれた毎日を過ごす。
まっとうな人間になりたい。まっとうな人間になりたい。まっとうな人間に――