0章-3「いつもの登校」
朝ごはんを終え、登校のために家を出たのが「7:50」
いつも通りの登校時間だ。
アパートを出たところで、坂の上を眺めながら待つ。
10分程経過したところで1人の少女が坂を下って歩いてきた。
「河合伊那」
僕らの生まれる前から両親が親友同士でありご近所さんという、
僕から見たら幼馴染のテンプレートの様な2次元設定少女。
僕自身も好意を持っていないかと聞かれたら「No」と答えると嘘になるかもしれない。
「はるちゃーん。おはよー。」
「おはよう。」
軽く返事を返して、そのまま2人で登校する。
傍から見たらカップルがいちゃついている様に見えるらしいが、
本人たちには全くその気がないから、文句を言われても正直困る。
僕らがこんな関係になったきっかけは9年前、とある事件の後からだ。
伊那のお父さんはその日、僕のお父さんとお酒を飲む約束をしていたらしいのだ。
約束の「17:00」になって伊那と両親の3人でが僕の家に来ると、
両親と姉はおらず、小学生の僕が1人、傷だらけでリビングに倒れていたらしい。
もちろんその場で警察に連絡し、事件として捜査されたが、未だに事件は謎のまま。
両親と姉は事件の被害者と加害者両方の可能性があため「特異行方不明者」として捜索されたが、
3人とも痕跡すら見つかっていない。
「ステータスが更新されました」
それを知らされた僕は、家族に捨てられたのだと思ってしまった。
そんな中、警察の方から孤児院に行く話まで出て、自分でもどうすればいいのか分からず、
考えることを放棄しようとしていた。
「じゃあ、うちに来るかい?」
そう言ってくれたのは伊那のお父さんだった。
その時の僕は何もわからないまま、頷いた。
そのまま月日が経過し、伊那とその家族や周りの人々によって、
僕の心は普通の人と変わらない程に回復していった。
そして7年が経ち、両親と姉が正式に「行方不明」から「死去」となった時には、
既に心が受け入れる準備は出来ていた。
実家は売り払い、遺産と保険金で1人暮らしをするつもりだったのだが、
受験生ということで伊那のお父さんに
「受験が終わるまで出ていくことは許さないよ?」
と優しく叱られてしまったため、高校受験が終わるまで、お世話になってしまった。
保険金を受け取ったときに、お世話になったお礼と思って渡したのだが、
伊那のお父さんは受け取らず、しかし最後には僕に根負けして、
「預かっておくね」
と金庫に仕舞った。
その後もたまに食事に呼ばれるため、せめてもの恩返しにと行事の時などは、
仕事を手伝わせてもらっている。
なので、僕の伊那への思いは、
7年間一緒に暮らしたことによる家族愛半分、伊那のお父さんへの敬愛半分、と言ったところだろうか。
そんなことを考えながら僕らは学校に向けて歩き始めた。
「更新されたステータス」
氏名:河合 伊那
職業:幼馴染
パラメータ:筋力:E 耐久:E 敏捷:E 幸運:C 直感:A