転機
掃除を終え、日常生活に必要なものを買い揃える。この街の情報雑誌も買った。これで少しはこの街のことがわかるだろう。
家に帰り、情報雑誌開く。なかなかに量が多く、読むのは大変だろうが、これから暮らす街のことである。
まず、街の区画分けについてだ。
東西南北に大門があり、そこから大通りが内城壁まで続いている。この内城壁から先は貴族区、さらに奥には王城がある。
次に大通りについて、北は通称鍛治通り。理由は北門の方面には鉱山があるため、鍛冶屋が集中しているためである。南は通称商業通り、露店通りとも呼ばれている。これは商業ギルドに申請すれば誰でもできるもので、世界中の品が集まっている。最後に西と東である。西と東は通称ギルド通り。冒険者ギルドや商業ギルドがある。冒険者ギルドは幾つもあるが商業ギルドは共通のものだけである。
次に騎士団。騎士団は貴族区の先の王城周辺に本拠地があり、日々訓練している。その騎士団に一応属している治安兵団。治安兵団は内城壁を拠点とし、街を巡回している。この街に来たときにいた真っ白なロングコートに剣を携えていた人たちである。騎士団は国の軍隊のようなものである。……
これを数日かけて読破する。
そんな読み終わってからまた数日した頃である。
いつものように朝起きると家の外からガラガラと馬車の音が聞こえてくる。それがどうやらこの家の前で止まったらしい。
驚き、外に出てみると、二人の人がいた。
1人は真っ黒なジーンズにノースリーブの黒いシャツを着た美人な女性である。もう1人は紺のコートを着た男性で優しいそうな顔をしている。その女性がこちらに気づく。男性は荷物をいじっている。
「あら、おはようございます」
「おはようございます」
「ん?キョウコ、誰に挨拶をしているんだい」
「ご近所さんによ」
「ご近所さん?」
と、男性もこちらに気づく。
「どうも、本日引っ越してきたシノブです」
「その妻のキョウコです」
と、作業を止めて頭を下げる。
「俺はイグニスです。よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
「そうだ、荷物を運ぶの手伝いましょうか?」
「おお、助かるよ」
「指示はよろしくお願いししますよ」
「ではこれを……」
引っ越しよ荷物運びが終了した。
「イグニスは力持ちだね。冒険者でもしているのかい?」
「いや、なにもしてないですよ。今はどう働こうかと考えていたところです」
「おや、そうなのか。まぁ、ゆっくりやりたいことを見つけるといい。今回は手伝ってくれてありが……そうだ!何でも屋なんてどうかな?今思いついたことだけどね」
と、自分で行ったにもかかわらずシノブは笑っていた。
しかし、何でも屋、街で生きていくためには働かなくてはいけない。いいアイディアかもしれないとイグニスは考えた。
「なるほど、そんな仕事もあるのか!シノブさん、ありがとうございます」
今後の目標が決まったと喜んでイグニスは看板などの作成に取り掛かった。
「あなた、イグニスさん躍起になってるわよ」
「悪気はないさ。彼もやる気になってるのだからいいだろう」
「うーん……」