巣立ち
目の前には手紙がある。
イグニスはそれを手に取ると封を開ける。
イグニス、お前は良くやってくれた。何もすることがなかった時間を楽しく生きていくことができたからのう。修行は辛かったじゃろうが、役にたつはずじゃ、それを活かすも殺すもお主しだいじゃ。これからは自分の道を作り進んで行け。次に会うことが遠い日と信じて
「うっ、ぅぅ……師匠……」
手紙は一枚ではなかった。もう一枚を読む。
調理場の棚の中に箱がある。それを今すぐにとってこい
「……」
その通りに調理場に行き、棚を調べると、そこには大きな箱があった。
「こんなあったかなぁ」と思いながらも、それを運び、中身を確認する。
なんと、また手紙があった。その下には包まれた何かがある。
「また手紙か」
それを読む。
それはわしからのプレゼントじゃ、これも今すぐにつけてみろ
包みをといてみると、中からは赤を基本に白い線のある鎧兜一式であった。
それは、何かの鱗でできているらしい。
「鎧に兜……? 動きにくそうだな」と思うも、やれと言われているからにはやるのである。
それらをつけ、動いてみと、やはりというか、大きさが合わないせいもあって動きづらいし視界がわるい。
その瞬間、スッと鎧兜がぴったりとなる。
それを驚くが、試しに動いてみると、なんの障害もなく動ける。
「動きやすくなったな。と、手紙がまだ途中だった。なになに、鎧兜には魔法がかかっておるから動きやすいし身体能力があがる。か、便利だなぁって、なぜこんなに視界がいいんだ」と、先程まで視界が狭かったのが嘘のように視界が広がっていた。何もつけていないかのようにである。
「次はと、なになに、この兜をつけたままでも食事ができる。試しのそこにある玉を食ってみるのじゃ。それだな、これは一体なんなんだ」と玉を取り出し、手紙を読む。
その玉はお前の役に立つものじゃ。怪しまずに食べるのじゃ、もちろん、鎧兜をつけてじゃ。
恐る恐る口に近づけると、それは吸い取られるように消える。
すると、体の底から力が湧いてくる。さらに体が暑くなってくる。
「お、お、なんだなんだ。力が湧いてくる……!しかし暑いとおもったが、慣れてきたな、さて、手紙もあと少しだ」
その鎧兜はすぐに着脱可能じゃ、『変身』で装着、『解除』で脱げる。
「ほぉ、『解除』」
すると、来ていた鎧兜が消える。
「おおー、なら『変身』さて、手紙も最後だ」
その瞬間に自分の体が何かに包まれる。変身できたのであろう。
手紙を読む。
これは王都オルリアにある家の場所の地図じゃ、鍵はあるからそこで暮らすがいい。そっちに行けば色々と買い揃えることができるから何も持っていかなくて大丈夫じゃからな
箱には一つの鍵と、金が入った袋がある。相当重たい。
中身を確認してみると、金貨が1枚、銀貨が10枚、銅貨が沢山入っていた。
金貨と鍵をもち、家を出ようと玄関に向かう。
その時、窓ガラスにある姿が写る。
それは自分の背丈と同じ高さである。
それは人の形をしながらも竜を感じさせる。
「師匠が教えてくれた竜にそっくりだ……この姿でうろちょろするのも不自然だろうし、『解除』」
窓ガラスにはいつもの自分が写し出される。
懐かしむのもいいが、ここからは指示されているものも、自分の道を歩く。
そう決心し、小屋を出る。
「そういえば、山なんて降りたことがないなぁ、王都は南に行ってから東って言っていたっけなぁ……」