出会い
_老人はある都市に買い物をしに来ていた。
_西門から入り、南西住宅街を抜けるとサウスストリートにでる。
_サウスストリートは商業通りのはずなのだが、老人はそのまま通り抜け、南東住宅街に向かった。
_大通りは露店と人に溢れかえってた。人を嫌う訳ではない。行きつけの店があるのだ。
_しかし、そこを離れたら離れたで寒くなってきた。それもそのはずで、吐く息は白く、季節は秋から冬に移り変わっていたのだ。
「はぁ、寒いのぅ。吐く息も白くなって……早く買い物を済ませて家にかえるか」
_今歩いているのは南東の一つの住宅通りだ。そこにある八百屋に老人は着いた。そこには久しぶりに見る顔がある。あちらもそれに気づいたようだ。
「あら、おじいちゃん。久しぶりね。今日は何を買いに来たのかしら?」
「今日は鍋でも作ろうかと思ってね。野菜を少々買いに来たのじゃよ。んん?いつもは亭主もいた気がするんじゃが、今日はいないのかね」
「ええ、サウスストリートに露店を出しにいってるの」
「ほお、そうじゃったか。ほい、では、またいつか」と、野菜の代金を払う。「またきてくださいね」と言う声を聞きながら離れていく。
_また同じ道とは違うが向かうところはおなじだ。帰るために西門に向かう。
_もう少しで西門の南西住宅街であった。何かの声が聞こえる。それは何かの中にいるのかこもった音であった。
「これは赤ん坊の声かのぉって、おお!?」
気にせず歩いていたが、それはだんだんと近づき、ついには場所までわかってしまった。その音はゴミ箱からであった。
「可哀想なやつじゃ。罪もないのに捨てられ死ぬとは、人と言うのは本当に身勝手なところがあるからのう」
_そのまま通り抜けようとはした。しかし、老人はゴミ箱が空いていたのと興味があったのとで見てしまう。
_まだ産毛だが頭には赤毛、目も赤い赤子であった。そしてまた、赤子の目に映り出された老人の目も赤く、少し残った髪も赤かった。
「これも何かの縁かのう」
赤子を拾い上げ、老人は西門から街をでる。
_西門から歩いて10キロほどすると山の麓につく。更にそこから北の山奥の方に向かうのであった。