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三題お題話 パンダ フラフープ 鏡餅

今日も人がゴミのように我らに集まる

作者: HELIOS

 【今日も人がゴミのように我に集まる】の続編です。

 一年前、この動物園の新たな目玉としてやってきたのが我ら、パンダである。

 そして、その中でも、我こそがこの動物園一番の人気アイドルである。

 今日も人がゴミのように我に集まる。

 モッテモテなのだ。ほんと、困ってしまうのだ。

 しかし、そんな我に危機なのだ。

 我らパンダの園に新たな新人がやって来たのだ。

「う~」

 例の新人が動き出した。

 我のフラフープ芸を見ていた人間共は、一気に新人の方に視線を移す。

 一気にやる気がなくなたぞ。

 フラフープを腹に引っ掛けたまま、その場にグデッと伸び、新人に目をやる。


 我の後輩カップルが生んだ子だ。名前は知らない。

 

 覚束おぼつかない足取りで歩く新人。急にコテッとこける。

 その瞬間歓声が上がった。前まで我が受けていたものだ。

 なんなのだっ。ただこけただけで騒ぎよって! 新人が来るまでは我にゴミのように集まってきたではないか!

 イラつき、正面のガラスの向こうを見た。

 目の前にはガキがいた。メスのガキだ。ボールを抱えたパンダのぬいぐるみを持っている。

 ほほぅ? 我に似ておる。可愛いのだ。流石なのだ。

 おい、そこの者。我のプリティーなお腹を見せてやらんでもない。もう少し近う……。

 プリプリプリチィな白い腹を見せつけようとしたその時、ガキは新人にぶんぶん手を振った。

 なぬ……っ!??

 もともと狙いは新人だったようだ。

 納得いかぬ‼

 寝ころびながら、新人と新人に群がる人間共をジトーっと見ていた。

 別に見たいわけではない。動くのが面倒で、新人らの姿がたまたま目に入っているだけなのだっ!

「おとーさん」

 今度はオスのガキが我の前にいた。父親と見に来たらしい。

 おうおう。見る目があるな。今、我の輝く純白の腹を見せ……。

「あのパンダ、テレビの前のおとーさんみたい!」

 な……?

「ごろごろパンダー!」

 何を言っているかは分からんが、馬鹿にしているだろう⁉ そのくらいは分かるのだぞ!??

 プイッとガキから目をそむけると、新人が目に入る。その場にあったボールに乗ろうとしているようだ。

 先ほどの、パンダのぬいぐるみ似ているのだ。ハッ!? だっ、だからといって、あいつが可愛いと言っているわけではないぞ!? 断じて!!

 新人がボールの上に乗る。

 やるではないか。

 だが、安定感がなく、グラグラしている。

 おおう……。危なっかしいのだ。落ちるでないぞ?

 なんなのだ。ひやひやしてドキドキするのだ。

 そう思った矢先、新人がボールから落ちた。コロンと転がったその姿に、人間共が狂ったかのようにカシャカシャと光を新人に向けた。

 ま、眩しい……。

 助けを我に求めるかのように、よちよちとこちらへ来る。雪原のように白い新人の毛が光を反射して輝き、ブラックオパールの瞳は潤みを増している。


 きゅん。


 我は我に返る。

 み、認めん! 新人が可愛いなどと!!

 新人が徐々に近付いてくる。

 く、くるなぁぁ~!

 我は歩き出した。可愛らしい腹にフラフープを付けたまま。

 それが可愛かったのか、我の方に人間が寄ってきた。いつもなら、そこでどや顔を決めるところだが、新人が追ってくるので、止まらず歩く。よけいに歓声がうるさい。


 我の可愛さが一番発揮される食事の時間がやってきた。

 今日も笹がうまいのだ。

 すると、新人がやってきた。

 笹に夢中で気が付かなかったのだ。

「先輩、隣失礼します」

 新人は我の隣に座った。我は無視して、続けて笹を食する。

「あの……。先輩、僕ってなんなのでしょう?」

 急にぶっ飛んだ疑問をぶつけないでほしいのだ。

「僕、皆さんに嫌われているんでしょうか? パパとママはあんまりかまってくれませんし、他の先輩達も無視するんです」

「……それは、我も同じこと」

 今だって向けられる視線を我は返していない。

「いいえ。先輩は今日、僕のこと見てくれました。今だって応えてくれたじゃないですか」

「普通のことなのだ」

「それでも、うれしいです」

 なんだ、こいつ。なかなか良いヤツではないか。

「皆、貴様に嫉妬しているのだ」

「しっと?」

「うらやましいと、思っているのだ。貴様はこの中で一番人間共から視線を集めているのだ。勿論、我もその一匹」

「そうなんですか……。僕は普通にしているだけなのに。でも、僕は先輩がうらやましいです」

 なぬ……?

 つい、新人の方を見た。

 新人と目を見て話す日が来るとは思わなかったのだ。

「先輩は、この中で一番どうどうとしていて、カッコいいです」

「カッコいい? 初めて言われたのだ」

 今まで、可愛いとしか……。すごく新鮮なのだ。

「先輩は、アイドル! って感じなんです。あこがれます」

「そうだ! 我はアイドルなのだ!! とーぜんなのだっ」

「はいっ」

 むぅ……。こいつ、悪いヤツではないのだ。

「名は? 名なんと言う?」

「僕は、まだ名前がありません。今、お客さんが考えてくれているみたいです」

「遅いのだな」

「そうですね。先輩の名前は何ですか? 僕知らないです」

「キングだ! キングパンダなのだ!!」

「王様ですか! じゃあ、僕を家来にしてください!」

「なぬ?」

「僕、先輩みたいになりたいんです! 家来がだめなら、子分でも!」

 あまり変わらないと思うのだ……。

「よかろう。我の下につくがよい! まずはフラフープを教えてやるのだ! ……食事を終えたらな」

「はい!」



 一ヶ月後。


「せーの」

「「ふんっ」」

 見事にフラフープが一回回った。

 歓声と光が我らを襲う。

「ジャック、やるではないか」

「ありがとうございます!」

「決め技で決めるぞっ」

 ジャックが我の上に乗る。

「「鏡餅~!」」

 その可愛さにのたうち回る人間共の姿。

「決まりましたね!」

「うむっ。今日も気持ち悪いくらい人が集まったのだ」


 我ら二人は、この動物園の大人気アイドルだ。

 今日も人がゴミのように我()に集まる。

 【今日も人がゴミのように我らに集まる】を読んでいただきありがとうございます!

 まさかの続編ですよ~。HELIOS自身も予想外でした。

 でも、楽しかったです!


 キングの名前を決めるとき……。

 「名前何にしよ~。パンダ、ダンパ、キングパンダ。……キングパンダ!? やっべ! なんかしっくりキター!!」

 って感じでさくっと決まりました。

 ジャックも流れで。


 キング、ジャック、残るはクイーン……。いや! 続かないですからね!?

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの上から目線パンダの出現に恐れおののいています。これは…可愛い…です。 センパイなんだかんだで単純で可愛くてもふりたくなります。
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