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タイム?&異世界トリップ  作者: 歴史が苦手
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私の使命

ある山奥の古びたお寺に、眠れぬ魂が成仏せずにとどまっているという墓地があり、その中の誰かを復活させる秘宝が存在し、地下に眠っているとされる伝承がある。復活させられた魂は誰かに憑りつき、生前自分が行ったことを憑りついた人間に行わせ、満足すれば黄泉の国へと旅立つという。



私、如月(まこと)は、ある日、古き良き江戸時代の日本に近い異世界へとタイムスリップしてきた。山奥で見つけた半透明の白い犬を追いかけていたら、山奥のお寺に入り込んでしまい、墓地に立ち入ったとたん変な落とし穴にはまって、気が付いたら昔の東京、江戸の様な街の中にいて、剣を携えて武士に近い恰好をしている。さっきから武士と思われる男衆に斬られるのではないかというくらい睨まれまくっている。顔はタイムスリップする前と同じだから。

隣りには、容姿の綺麗な藍色の着物姿の女がいた。彼女は私を寺に誘導したもこもことした大きな白い犬で、髪の毛をショートカットに整えていて、そのせいで女たちの中でかなり浮いている。(かずら)という名前で、がめつい性格とは裏腹、背格好は武士の様にしっかりしていたが顔は小動物のように愛らしい顔つきをしている。自分の顔が変わっていないと分かったのはその人に鏡を見せてもらったから。

そしてさっき、白い犬だったその女に、

『自害した若き邪悪な剣士の魂の復活を食い止めるために秘宝を見つけてほしい』

と頼まれたばかりだった。

そうしてくれないともといた世界には戻せない、というのである。しかし、この女がそもそも信用できるのかが分からなかった。

応じるか応じないかはともかく。私は早い所もといた世界に戻らなくてはならない。

私はとりあえず彼女に導かれるままに行動するしかないと思い、彼女と行動を共にしていた。



「その、若き邪悪な剣士って誰のことよ?」

「今は無き戸江幕府に仕えていた勇猛果敢な精鋭剣士たちの中でも剣の腕に長けて、先陣切って幕府のために戦った剣士のことよ」

「一番偉かった人?」

「一番とは言えない。どっちかというと、剣の腕や人柄を買うんじゃなくて、買われる方だったみたい」

「幕府のために戦ったなら邪悪とは言い切れないんじゃない?」

「言い方間違ったわね。今ではすっかり邪悪になったってこと。幕府が倒れてこの世に未練を残して、墓地に棲んで、誰かを呪い殺す瞬間を待っているから『邪悪』っていったの」

「まさか、復活させてその魂を自分のものにして秘宝を悪いことに使おうなんて、思っていないわよね?もしそうなら私も黙ってないけど?」

とわざと携えている剣をちらつかしてみる。

「私は真面目にあなたに仕事を依頼してるの。助けてくれたら、あなたにも秘宝の一部を分けてあげるわ。そしたら現実に戻ってあなたも生きていけるわ」


一見ごく普通の乙女のようにも見えるが、いざとなれば常識や良識を捨ててしまうような危なっかしさがその女があるような気がした。




そのころはすっかり日も暮れていたが、彼女と一緒に歩いて向かった先は、質素で穏やかな雰囲気の小さな宿であり、蔓に頼まれておかみさんにそこに宿泊している仲の良い夫妻のいる部屋に案内してもらった。



「あ~、あなたが信さんですね?とても楽しみに待っていました」


人に好感を与えるとても穏やかな顔つきであり人当たりの良い、人に不快感を与えないそういう感じの男性で、おそらく40代くらいとみられる。

あぐらをかいてちゃぶだいの前に座っているその男の前に正座し、蔓は私の隣りで正座した。


「この人は東野(ひで)さん。戸江幕府の呪術と呪術で闘うこの地でも有名な呪術使いよ。それから、この人は奥さんの東野(さき)さん。あなたはこれから彼らの仲間として戦ってもらいます。事情があって別行動だけどね」

「私は名前も個人情報ももらさないようにしろってこと?」

「そういうこと」


奥さんの咲さんが私たちのいるちゃぶ台にお茶を運んできて、それに気が付いた蔓がお茶をちゃぶ台に移動させる手伝いをし始めた。


「我々は、この世界とこの世界に結ばれたあなたたちの世界の平和と秩序を守るために派遣され戦っている。あなたは絶対に死なない体になっている。しかし、戦いを怠ることでその可能性は生じてくる。あなたは女だから我々の敵である幕府側の剣士たちはみな油断することだろう。そこを利用して彼らを切らなくてはならない。それはすなわち死の宣告を意味する」


東野さんはどうやら世界の存亡をかけた戦いの任務遂行のために私をこの異世界に呼んだようである。私はぴりっとした神経を落ち着かせるためにお茶で一口飲んだ。

蔓と歩いている時にちょっと肩がぶつかっても感触がなかったから私が不死身なのは本当だろう。


「剣士の復活のために必要な秘宝ってなんですか?」

「我もよく知らないのだが、発電機とか化石燃料のようなエネルギー源のようなものだと聞いている。それを守っている悪党どもを、事が成就する前に成敗してきてもらいたい」

「事って?」

「あるべきところにあるものでなくなる時のことだ」

「ちょっと分かりにくいです」

「いずれ分かる」




それから20分くらいこの街のこと、異世界の歴史の話を聴いていた後であった。

気が付くと、蔓が消えていた。


「あれ?蔓?蔓がいない」

「彼女は妻の呪術によって消させてもらった。あの剣士と婚約していたからだ」

「彼の復活後、あなたを殺そうとしていたのよ」


見回りに行っていたはずの奥さんの咲さんが部屋に戻って来るなりそんな恐ろしいことを口にした。


「私を利用しようとしていたの?」

「そうに決まってるじゃない」

「すまなかった、我々が姿を大衆の前に晒すのは危険なんだ、その代わりに…」


東野さんが立ちあがって押入れを開けると、異世界にやってくる前の寺で見た白い犬が現れた。


「こいつはあいつが狂犬になる前の姿だ、ゆく宛ても貰い手もなかった白い犬の魂に呪術を施しやつの魂に似せて作り変えた、こいつが君の案内をしてくれる」



その白い犬が私に近づいて、ちょこんと座り私の顔を甘えるような目つきで見上げた。





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