第3話 生還
……ここはどこだ?
「……オレ、生きてるのか……?」
死と生の境目から脱出したオレはどこかのベットで横になっていた。
……うん生きてるって素晴らしいね。天井を眺めているだけで涙がでそうだ。
壁にかかっている時計を見ると、すでに1時になっていた。どうやら始業式は臨死体験をしている間に終わってしまったようだ。
「やぁゼロ、目が覚めたみたいだね」
幼馴染の声が聞こえ、重い体を起こす。風吹は椅子にちょこんと座っていた。どうやら看病してくれたらしい。良い友をもったなぁ。
……あれ? 体が痛く…………ない?
「目が覚めましたか?」
そんな疑問を浮かべているとガラっとドアを開ける音が聞こえる。入ってきたのは、同じ1年と思われる女の子だった。少しつり目の瞳、腰まで届きそうな黒い髪、真面目そうな人だなぁ……。属性で言うと学級委員長あたりかな。
「えっと……彼女は?」
風吹に小声で話しかける。
「あぁ、あの人は向日 葵さん、中学のころは学級委員長をしてたんだって~」
まさかの的中。
「なんでその人がオレの見舞いに?」
「私の目の前で倒れたからです」
どうやら聞こえていたみたいだ。
「それで、向日さんと僕でゼロを保健室まで、連れてきたのさ」
そんなことがあったのか……。
「そうだったんだ、ありがとうな二人とも」
「……礼を言うのは私のほうです」
「え?」
オレ、何かしたっけ。
「私は、バイクが校内に入って来たとき、あなたの後ろにいました。もしあなたが避けていれば私が轢かれていたでしょう。いいえ、私だけでなく、あなたがよけていればいろんな人が被害にあっていたはずです。あなたが身を呈してくれたおかげで被害は最小で済んだのです。」
……一応言っておくが、オレは皆の為に命を投げ出すほど、出来た人間ではない。情けない話、あの時バイクにビビって足がすくんだのだ。『逃げなかった』じゃなく『逃げれなかった』が正しい。
「いや……あの時は――」
「だから……ありがとうございました……! あの時のあなたは、その……とてもかっこよかったです。」
……理由を説明しようと思ったら、先に感謝されてしまった……。さらに真実を打ち明けにくくなってしまったぞ。
笑顔で『ありがとう』という向日さんに少しドキッとしてしまった……。
この感情はヤバい。会って5分の同級生に告白してしまいそうだ。頑張れ、オレの理性よ……!
自分が惚れやすい体質だと理解した瞬間だった。