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第1話  入学

 オレの名前はにのまえ 零次れいじ。今日のオレは、高校の入学式というすがすがしい気分で家を飛び出した。『彼女を作るぞ!』とか『リア充になるぞ!』とか、ある一点の欲だけで新しい学校に向かった……のだが。


「あちぃ……なんでこんなに暑いんだよ……」


 4月のはじめ、桜が綺麗に咲き乱れる中、その景色に相応ふさわしくないであろう汗を額に流しながら、オレは桜を眺める余裕も無く通り過ぎる。ブレザーを着ているので暑さが3割増しだ、「初日だから」とブレザーを着た5分前の自分に腹が立つが、今更どうしようもない……。


「くそ……あんな坂の上に学校なんか建てやがって……何考えてんだよ」


 そう、暑いだけならオレもここまで文句は出なかっただろう。だが、坂をのぼると言うのなら話は別だ。こんな炎天下のなか坂を上るなんて……例えるなら、夏にこたつに入ってキムチ鍋を食べながら相撲をテレビで観るようなものだ。一体どこの我慢大会ですか?


「やぁゼロ。こんなところで会うなんて、奇遇だね~」


 聞き覚えのある声に振り返る。あ、因みに「ゼロ」はオレのニックネームだ。「零次」の零からとったのだろう。正直、気にいってる。


「よう風吹ふぶき、確かに奇遇だな」


 こいつの名前は五十嵐いがらし 風吹ふぶき。オレの幼馴染であり親友、そして男だ。『幼馴染』という単語を聞くと異性を連想するかもしれないが、そんなものフィクションの世界だけだ。現実はそんなに都合よくできていない、風吹が女子だったら今頃オレはリア充生活を満喫しているだろう。

 ……おっと、話がずれているな。風吹の紹介に戻るとしよう。

 風吹は苗字こそゴツいが、身長は145cmとずいぶん小柄だ。髪は耳が隠れる位。寝癖か、セットしているのかよくわからないが、髪が猫耳のようにピョコンと立っていて、見ていると小動物を連想させる。

 そんな幼馴染を見ているとあることに気がついた。


「あれ……その制服、風吹まさか!」

「そ。僕もゼロと同じ青葉高校に入学するんだよ~」


 のほほんとした口調で喋る風吹……と、言うことは……。


「お前のところにも届いたのか? あの手紙」

「うん、きたきた~。あの噂本当だったんだね~」


 手紙とは、今オレ達が向かっている青葉高校の『入学許可証』のことだ。

 青葉高校は少し……というか、かなり変わっていて、入試試験が無いんだ。じゃあ、どうやって学生を入れるのか? ここでさっきの『入学許可証』が関わってくる。読んで字の如く、これが届いた人だけが入学出来るらしい。「こんなの作り話だ」と思っていたが、まさか真実だったとは……。

 あと、『入学許可証』が届いた人に拒否権は無く、強制的に入学させられるらしい……オレは家が近いから別にいいのだが、この許可証は全国に出されているそうなので県外の人は大変だろうな……。


~☆★☆~


「あっ、あの建物じゃない?」


 二人とも汗をダラダラとかきながら、丘を上ること約10分。たどり着いた丘の上には「入学式」と大きく書かれた看板と、オレ達と同じ制服を着た新入生と思われる人たちの姿が目に飛び込んできた。「あぁ……やっと高校生になったんだな」という実感がいてくる。

 よし! ここで彼女を作って、「はい、零次くん。今日手作りのお弁当持ってきたんだ。食べさせてあげる。ほら……あ~んして……」とかのドキドキシチュエーションを……グフ、グフフフフ……。


「ゼロ、ヨダレが出てるよ」


 ハッとなって我に帰る。いかんいかん……こんな顔誰かに見られたらオレは変態決定じゃあないか。


「と……とりあえず入学式の会場まで行こうか」

「…………(じー)」


背中に感じる風吹の視線を感じつつ、校内に入っていった……。

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