十四話 名声
四人が偵察と接触した翌日、グレンは責任者の許可がでたため、現在は赤鉄の修行を再開させている。
信念旗を優先した行動をとっていても、彼らの第一目的は刻亀討伐であった。しかし偵察の存在を確認しているため、アクアとセレスはこれまで通り警戒を続けている。
最初は炎を左腕に灯し、それを維持させる。
魔法の維持には想像や神への願いは必要なく、決められた法則に従って魔力を送れば良いだけだ。炎は放出型だから、数秒に一度の間隔でいい。
最初のうちは一々意識して造神に魔力を送っていたが、慣れてくるとこれが無意識でも可能になる。俺は両手に炎を灯す程度だから問題ないけど、火走りなんかは数が増えすぎると無意識ってのは無理だ。
宝玉具の同時魔法補助ってのにも種類がある。五秒の間隔で魔力を送らないと維持できない魔法を、十秒まで伸ばしてくれるのや、無意識魔力送りを補助するのとかが主だな。
だけど赤鉄は右腕の魔力を練りこむのに集中すると、無意識の魔力送りが曖昧になり、左腕に灯していた炎が消えちまうんだ。対処方法は右腕の極化に成功したのち、意識を左腕に戻して炎の維持をする。
身体強化魔法は常に魔力を纏わないと発動しないから共進型。対して極化は俺と変人では差があるけど、発動時間が決められているから放出型に近い。
左腕の炎を消さないように意識しながら、右腕に練り込んだ魔力を逆手重装に持っていき、長手袋の能力を発動させる。
「良し……できた」
次は全身に魔力をまとうことで、赤鉄の発動条件を満たす。
結果は失敗。グレンが強化魔法を発動させる前に、極化の制限時間が過ぎ、長手袋の効果は消えてしまっていた。
左手に魔力が到着すれば黒手が発動するんだけど、クロが極化維持の手助けをしているだけだから、俺が意識しないとその能力も効果がない。
炎を灯しながらの魔力移動に時間を使いすぎているんだ。赤鉄を発動させるだけで終わりじゃない、それで敵に攻撃をしかけなくちゃならねえ。
これは俺の予想なんだけど、赤鉄が発動すれば魔獣具形態は解除されると思うんだ。もしそうなると黒手が左腕からなくなるため、極化の維持ができなくなる。
長手袋は極化が解けたあとも、十数秒は能力の発動が続くように設計してくれている。十秒で赤鉄を発動させたとしても、敵に攻撃を加えたのち、熱を冷ますまでの秒数も考える必要がある。
三つを同時に行うことよりも、今は炎を灯しながら、より早く魔力を移動させる訓練に重点をおこう。
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・・
それから数時間は無言の時が流れる。現在一行が歩いている道幅はそれなりに広く、右側が石積みの壁となっていた。この位置からでは目視できないが、左側を下っていけばやがて沢にたどり着くだろう。
ここは山中であり木々に囲まれているが、昨日の脇道と違いそれぞれの間隔が決められており、太陽の光が周囲にも広がっていた。
脇道にそれたという理由もあるが、領域での接触とはいえ敵の存在を確認したため、一行の進行速度はかなり遅いものとなっていた。
当初デマドへの到着は今日中の予定であったが、昨夜の話し合いの結果、明日の午前ということに決まった。
グレンは修行を一度中断すると、ガンセキの背中を眺めながら。
「魔虫の生息している範囲には、まだ踏み込んでないんすよね」
責任者は振り返ることもなく。
「清水の源泉があるということは、毒をもった存在が付近に生息しているのは間違いない」
魔物と違い魔虫の生息域が限られているのは、清めの水などが関係しているのではないかと言われていた。
「一見はただの水なのに、神さまの力ってのは凄いんすね」
「でもさ、解毒水って名前じゃないってことは、毒以外にも使い道があるのかい」
言われてみれば確かにそうだ。清めるってことは、汚れを落とすって意味だもんな。
アクアの疑問に興味を持ち、グレンもガンセキの返答を待つ。
「全てではないのかも知れんが、巨大化すれば自然への害に繋がってしまう物が多い。だがそれらは生活をする上で、すでに欠かせないものとなっている」
元となる炎が魔法の場合は煙害などの問題は減るが、もし製造工程に大量の水が必要だとすれば、排水も相当なものになるはずである。
「神を崇める連中が多いんだから、汚いもんをそのまま捨てるようなことはしないでしょうね」
レンガは工業が中心だから家畜は見かけない。悲しいことだが兄者に逢うことは一度もなかった。
でもあの都市は人や馬の糞尿が毎日大量にでる。たしか再利用の施設はないけど、処分場みたいなのはあった気がする。
焼却は糞だけなら可能だとしても、馬や人間には尿もあるから難しいか。だけどレンガは馬の専用道があるからよ、掃除なんかはしやすくなっている。横切るだけなら問題ないが、馬で大通りを進もうものなら、時間帯に関係なく白い目を向けられる。
そもそも都市内で主となる交通手段は人力で動く乗り物だからよ、滞在中に馬を利用している奴は少ない。
「つまり汚染されたもんに清めの水を混ぜることで、完全ではないにしろ浄化みたいなことをしてるんすね」
「そのまま使っているのか、なんらかの加工をしているのかは解からないが、レンガは最低限の対処だけは行なっているはずだ。詳しくは俺も知らんが、清めの水だけに頼っているわけでもないようだな」
清めの水を加工するなんてできんのか。盾の力だけを濃縮させる技術でもあんのかね。
たしかに糞尿なんかに関しても、俺たちがレンガで利用していた宿のは臭かったけど、汲み取り式の便所はあった。
ちなみに勇者の村だけでなく、糞尿を加工する技術は他村にも浸透している。もっともそれが原因で、過去に病が流行った事実は完全に否定できない。
グレンは後方のアクアに意識を向けると。
俺も当時は婆さんに言われて、いくつか生活に制限をかけられた。
井戸水の使用は全面で禁止され、飲むのは当然として食器を洗うのも魔法水を利用した。それが無理なときは熱したのを冷ましてから飲む。
普段から生野菜などは滅多に食べないが、口に通す物は確りと火を通す。
俺は実際に発病者と関わったことはないが、嘔吐物や排泄物は触れるだけでも危険らしい。清めの水があれば最善だけど、衣類などは熱湯につけてから洗濯する。以上のことから症状のでた村人は、特定の場所に隔離されていた。
理由は解らねえが、空気の乾燥もできる限り避ける必要があるから、濡れた布や熱湯なんかを室内に入れおくように言われた。
これらの対処が実際に効果があったかどうかは解らねえけど、なにもしないよりは良いに決まっている。
流行病は闇の存在と関係があるという奴もいる。自然を汚したりすると、神の力が弱まるからって感じだったかな。でもこの現象は婆さんの話だと、どうもそれだけが原因でもないらしい。目に見えない微魔小物がなんたらかんたらって教えを受けた記憶がある。
あの婆さんは妖怪だけあって、その知識をどこで仕入れたのかは解んねえけど、村の一大事ではいつも中心に立っている。
勇者の村にも清めの水はあったけど、事態が静まる前になくなっちまった。
でもそれが村の不備だとは思わねえ。一定量の清水が常に置いてあるってのは、そんだけ俺の故郷が恵まれてるってことだ。
金は生きるために使う。こっちの方が世間からしてみれば、普通なんじゃねえのかな。
そこまで考えた所で、グレンは自分が修行中であったことを思いだす。
セレスは周囲の警戒を続けながら。
「ねえねえガンセキさん、デマドってどんなとこなのかな?」
「鉄工商会はここら一帯の政治を取り仕切っている。周囲に広がっている彼らの傘下組織は、清水の源泉探索にも力を注いでいることは解るな」
責任者の言葉に勇者は。
「にへへ~ わかんな~い」
ここ最近の発言から、お前の人間性を見直そうとしていた俺が馬鹿だった。
「大量の汚物をそのまま川に流せば自然だけじゃなくて、人間の身体にも影響がでるかも知れねえだろ。清水ってのはそういった被害を防ぐのに一役買ってんだ」
それだけじゃねえ。たぶん源泉の探索ってのは、知識を持っている奴が指揮をとっているだろうから、護衛を雇う必要がある。ギルドの表向きな職員は無資格の民だと思った。でもそれを管理しているのが神官だと考えれば、自然を守るためって言い分は、費用の削減にも利用ができるはずだ。
ガンセキはグレンの言葉にうなずくと。
「あの村には鉄工商会の傘下組織があるんだ。俺が崖上の情報を得た旅商人は、デマドとレンガを行き来している人物だった」
清水の性質から考えて、立派な道を造ることもできない。傘下といっても鉄工商会の人間を中心にして、そこの村人が集まってできた組織だろうから、そこまで大きなものではないんだろうな。
デマドを出発したのち、彼らは一行が通った森道を利用して清水を汲みに行く。それを終えるとレンガへと向けて旅を再開させる。帰りはわざわざ危険を犯す必要もないため、本道を使ってるんだろうな。
俺たちが一昨日渡った橋は徒歩専用だけど、慣れた力馬なら怖がることもねえか。でも馬を連れて自然道を進むのは難しいから、源泉から森道までは人間が運ぶ必要があるってとこか。
「デマド村は清水が最大の収入源なんすね。勇者の村ほどじゃないとしても、他村よりは金に余裕がありそうだ」
「刻亀の存在がなければ、今頃は町となっていたかも知れんな」
なるほどな。中核となる収入源があっても、魔獣王の領域による被害が発覚したせいで、村の発展に影響がでているのか。
清水の源泉はここだけじゃないし、仕入れ方法はほかにもある。国内どころか外国との関係が整ってんだ。魔物は確かに危険だけど、昼夜でその度合は大きく変化するし、ギルドには護衛を専門とした部署がある。
人類の黄昏。
獣や家畜の狂暴化により、各国の混乱は物凄いものとなっていた。その時を見計らったかのように、魔族が表舞台に登場した。
夜の幕開けって時代はよ、もし魔物さえいなければ、今ごろ最悪とまで言われることはなかったのかもな。
修行をしなくてはいけないのに、グレンは呆けた顔で空を見つめながら。
「始めは魔族と戦うために組織され、次は古代種族の技術を得ようとした。討伐と護衛ってのは、魔物の対処を目的とした部署なんすかね」
「風に関しては俺にも繊細は解らん。だが他四属性の神官はどれも、遠い目でみれば世界の安定を目指していると考えられる」
変化と欲望を司る属性。性欲、食欲、睡眠欲。
「だけど俺が最初に思いつくのは金欲なんだよな」
グレンの予想にガンセキは驚いた顔で振り向くと。
「さすがにそれはありえん。そんなものを国と同等の権利で取り仕切っているのなら、風の神官だけで世界を回しているようなものだ」
神官のお偉いさんが敗国人なのだとしても、それを管理しているのは国ということになっている。
「じゃあ外交とかですかね。でもそれはそれで、神官だけに頼るわけにもいかない気がしますけど」
「神官が現れる以前から、その役職を担っていた人はいたはずだ。関係はあるのかも知れんがな」
第一に敗国人なんて連中が、この時代にまだ残っている確証もない。
会話が途切れたのを確認したアクアは、グレンの修行を邪魔したいのか、別の話題を二人に提供する。
「たしか刻亀討伐にもギルドが参加しているんだよね。総勢は何人くらいなんだい」
本陣を守るだけなら、二百名の属性兵だけでも問題はない。しかしレンガ軍は物資の護衛だけでなく、他事にも兵士を割いている。
護衛ギルドは魔物と戦うことだけを目的としているわけではない。直接の戦力とはならなくとも、土の領域を上手く扱える人間が重要視されている。
対して討伐は戦いに慣れている団体が多く、強力な相手を専門に狩っている者たちもいる。
ヒノキ一帯の魔物は昼夜関係なく人を襲い、手に負えない魔物も多いため、本陣への協力は討伐ギルドへの依頼となっていた。
「今回の作戦に参加するのは、火炎団と呼ばれる者たちだ。名前の通り炎使いが主体となっているが、別属性の団員もいる」
アクアはガンセキの説明に目を輝かせながら。
「ボクはその人たちに早く逢いたいよ! メラメラ団だっけ!」
「名前を間違ってるし、意味もなく叫ぶんじゃねえ。魔物が近づいてきたらどうすんだ」
セレスもアクアと同じく嬉しそうにすると。
「参加する団体はその人たちだけなんですね。なんか気が楽になっちゃった……少しだけ」
昨日まで普段使わない頭を回していたみたいだけど、今日は上手くいってないみたいだな。別属性が所属してんのに、火炎団って名前なんだぞ。
「せっかくの機会だから、彼らについて今のうちに説明しようと思う。先に言っておくが、下手な傭兵ギルド登録団体では、比べるまでもないほどの大物だ」
セレスの表情からは笑みが消え、視線は地面へと向けられていた。
「辛いときは苦しくないように、考え方を変えろばいいんだよ」
「しらばっくれてた奴が言うのもなんだけどよ、味方は沢山いたほうが安心する。個人の力には限界もあるしな」
優しい仲間と不器用な同志の言葉に、セレスは確りとガンセキを見つめて。
「ガンセキさん……火炎団について教えて下さい」
責任者は無表情で頷くと、三人に向けて説明を始める。
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火炎団 赤火
四名からなる十五組。六十人の単独を専門に狩る者たち。
普段は国内の都市を動き回っているが、仕事の依頼は組ごとに受けている。
火炎団 朱火
二十名からなる二十組。四百人の群れを専門に狩る者たち。
普段は半数ずつ別行動をとっているが、仕事の依頼は組ごとに受けている。
火炎団 明火
新人の勧誘。強力な単独や群れの情報収集。宝玉具などの調達と分配。
赤や朱と行動を共にし、討伐報酬の一部を受け取ることで、それぞれの管理を行なっている。
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無駄にでかすぎるだろ。
「傭兵は別なんだろうけど、それ以外の一団体が大きくなりすぎると、運営の方に問題がでるんじゃないっすか。もし俺がギルドの職員なら、なんらかの方法で巨大化を防ぎますけど」
「明火の一部にはギルド関係者も所属しているらしいが、詳しいことは俺にも解からん。だが巨大化した原因なら説明できる……一部では有名だからな」
赤火を束ねるのは一名の赤火長。
朱火を束ねるのは二名の朱火長。
明火はこれら三名の下についているが、明火長が一人存在している。
グレンは苦笑いを浮かべると。
「明火長ってのが全体を仕切ってんなら、その人が一番偉いんすね」
「現状はそういうことになっているが、本来は少し異なる」
火炎団というものは正式には存在しておらず、赤火団や朱火団という名称で、それぞれが討伐ギルドへ個々に登録されている。
赤火長。朱火長。明火長。
「本来の火炎団とはこの四名を団員として、過去に魔獣討伐を達成した者たちとのことだ」
さまざまな理由で挑む連中もそれなりにいる。だけど魔獣ってのは寿命が尽きるのを祈るか、勇者一行が討伐すんのを待つしかないと考えられている。
そういった常識を覆したことで、入団希望者が殺到でもしたのだろうか。
説明を受けたセレスは苦笑いを浮かべると。
「なんか構造が複雑すぎて、よくわかんないもん」
「つまり偉い四人を纏めているのが、火炎団の団長さんなんだ! 総団長ってなんか、名前だけで格好いいじゃないか!」
セレスを元気づけるためにやってんだろうけど、俺としては山道で叫ぶのは止めて欲しい。
「作戦に参加している属性兵より、下手すりゃ多いんじゃねえっすか」
「さすがに一団の全てがヒノキに集ってはいない。たしか赤火の六十と朱火の二百。明火はその役割から中継地点にいると聞いているが……属性兵より多いな」
デマドに彼らがいないことを知ったからか、アクアが少し肩を落とす。
「二百から三百のあいだってことは、そんだけ信念旗の協力者が混ざっていると考えるべきなんすかね」
「とりあえずはデマドに到着しなければな。お前が軍での仕事のさい、世話になったボルガさんにも挨拶をしておきたい」
ボルガにさん付けはなんか気味が悪い。まあ面識がないんだから仕方ないけどよ。
ガンセキの言葉からアクアは思い出したかのように。
「グレン君と一緒に牛魔と戦った人のことだったんだね。どうりで名前に聞き覚えがあったんだ」
「奴は無駄にでかい。アクアさんは彼を目指さないと、俺を見下ろすことはできないな。それとセレス、お前にいいことを教えてやる。この世界で大きい魔物なんかは、ボルガ何個分で表現するんだ」
あからさまなグレンの嘘に、セレスは疑うこともせず。
「ふぇ~ そうなんだ。それじゃあ刻亀は、ボルガさん何個分なのかな~」
山ほどの大きさだとすれば、ボルガ千個では到底足りないが、その説は刻亀の領域って意味からきている。
「得た情報では牛魔より一回り大きいくらいだったか。ボルガ三個分ってとこじゃねえのか」
真顔で答えるグレンにセレスは微笑みながら。
「にへへ~ 私また一つ勉強しちゃった。でもグレンちゃん、嘘ばっかいってると、今に痛いめ見ちゃうんだよ」
「俺も勉強した。騙された素振りをすることで、いつか相手を痛い目に遭わせることも可能なんだな」
本来のこいつは馬鹿の演技をしているうちに、性根にそれが染みついちまっただけだからな。
「悪かったな」
グレンは早く修行に戻りたかったから、適当にセレスへ謝罪をする。
「やったねセレスちゃん」
「にへへ~ 私の勝ちだもん」
勘違いするんじゃねえ。これは負けたふりをすることで、実は相手に花をもたせるという、俺にしかできない格好よさなんだ。
やばい。自分で言ってて恥ずかしくなってしまった。
アクアは顔が真っ赤なグレンに駆け寄ると、満面の笑顔を向けて。
「ところでグレン君はさ、修行をしなくて良いのかい」
「今しようと思ってたんです!!」
あ……しまった。
「まったく。こんな場所で叫んじゃダメだよ、魔物が寄ってきたらどうするのさ。君はもう少し考えてから行動に移さないといけなんじゃないかな」
グレンは悔しさのあまり、その場から逃げだした。
本当なら言われた通り修行を再開させたい。でも気になっちまうことがあるんだ。
刻亀討伐は通常の魔物退治とは違う。本来なら護衛や討伐よりも、傭兵に依頼した方が適任だと思う。でもそいつらの仕事場は魔王の領域なんだ。
火炎団は今回の作戦に向いている。
参加を見送られている連中も合わせりゃ、五百近い属性使いの集団ってことになる。表向きは討伐ギルド登録団体だとしても、すでに一つの勢力になっちまってる。
魔獣討伐に成功しただけの理由で、この団体がここまで巨大化したとは考え難い。でもそれにより得られる名声は、俺が考えているよりも大きいのかも知れねえ。
刻亀に勝つことができたとしたら、世界がセレスに向ける期待は、どれほどまで膨れ上がるのだろうか。
俺にはどうしても、それが喜ばしいことだとは思えないんだ。