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炎拳士と突然変異  作者: 作者です
7章 デマドへの道程
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十三話 冗談

誰ひとり転倒することもなく、一行は無事に森道までたどり着いた。


信念旗と思われる四名の姿はすでに確認できなくなっていたが、しばらくは警戒を緩めずに進む。


グレンとしては赤鉄の修行をしたいところだが、先ほどの者たちが囮という可能性を否定できないため、ガンセキの指示には素直に従った。



黙々と歩き続けること一五分。責任者は周辺の木々を見渡しながら、後ろの三人に向けて。


「この道は恐らく、清めの水を汲むことを目的としている」


もし清水を近場に汲める町や村があれば、そこの大きな収入源になる。しかし人の生活できる環境を整えた時点で、清めの効果は消えてしまうらしい。


それでも時間と費用は馬鹿にならんが、交通が整うだけで得られるものは多い。


「木を倒し太陽の光を当てるだけでも、日中は魔物を寄せつけ難くすることができる。だがここはそこまで人の手は加えられていない」


この世界に存在する魔物は太陽の光を嫌うため、日中は警戒を緩めても大丈夫だという傾向がある。


グレンはガンセキと同じように周囲を観察すると。


「自然道ほどじゃないけど、確かに薄暗いですね。つまり物資を運んでいる連中が通っている道は、もっと視界が開けているってことですか」


遠距離からの一点放射は木々に邪魔されてしまうため、一行のもとまで届くのは数発だったとグレンは読んでいた。


「だがここような外れ道を通らなくては、お前の予想は成立しない」


俺たちの会話は二人にも聞こえている。本音を言えばこのまま隠しておきたいが、それをすればグレンに示しがつかん。



青の護衛は立ち止まり、しばらく責任者の背中を睨みつけると。


「もしかしてガンさん……平原を見るってのはついでで、本当はこういう道を通るのが目的だったのかい」


この場所は襲撃地点としては狙い目であり、準備不足で戦いを仕掛けるのは不可能だとしても、信念旗はなにかしらの行動を起こすのではないか。


アクアの言う通り、ガンセキはそれを確かめようとした。



俺が大地の結界で一行の存在を隠したのは、自然道へ足を踏み入れてからだ。前もって三人に全てを明かしてしまえば、守護領域でこちらの感情を読まれ、相手は偵察という行動にでなかったかも知れん。


赤の護衛は責任者を二人から護るように立つと。


「ガンセキさんは前もって俺たちに説明しただろ。こことよく似た場所で、過去に一行が襲撃を受けたって」


約束を破った責任者は、自分を護ろうとしたグレンの肩を掴むと。


「言い訳なら用意できるが、それでも事実は消せん。俺はお前らに企みを隠し、信念旗の出方をうかがった」


ガンセキの言葉に頷きだけを返すと、グレンは苛立ちを隠しながら一歩後ろへ下がる。




守護領域は発見された時点で効果が弱まり、対象に近づきすぎても、相手が土使いであれば勘付かれる。


今回は森中であったが、人の大勢いる場所となれば、ガンセキでも気づくのは困難となる。しかし町中には属性使いも相応にいるため、下手に守護領域を展開させろば、一行と関係のない土使いに怪しまれることになる。


村などなら問題はないが、町や都市で土の領域を他者から隠すということは、身柄を治安軍や兵士に拘束される可能性がある。


人通りの多いこれまでの道程でも、信念旗はその存在を俺たちには晒さなかった。


今後一切の隠し事をしない。できる限り明かしてきたが、俺は約束を破った。




勇者は自分の両手を見つめながら。


「私は勇者の村から外にでたことがありません。みんなから大切にしてもらって、大事にされながら今日まで生きてきました」


グレン以外の人間に嘘をつかれることもなければ、騙されて痛い目にあったこともない。


「今までの私にとって、それは当然のことだった」


魔物と戦うときは大人たちに護られながら。


内緒でグレンと一緒に戦ったあと、彼が大人たちに怒られていた事実をセレスは知らない。



一五歳のアクアよりも、セレスの精神年齢は幼かった。


「犬魔と戦って、魔物を始めて怖いと思った。信念旗という組織を知って、始めて勇者の現実に触れた」


父を奪った勇者という存在を、彼女は憎んでいた。だがその感情よりもずっと、勇者を恐れ、憎んでいる人たちがいる。


理想を叶えるために信念の形を変化させ、時に醜い争いを繰り広げる。


セレスは見つめていた両手を握りしめると。


「綺麗ごとだけじゃ……通れない」


「頭ではボクだって解っているさ。だけどそれじゃあ、グレン君と一緒じゃないか」


アクアの言葉にグレンは苦笑いを浮かべながら。


「なにをもって正しくて、なにをして間違いなんだ。それとも勇者ってのは無条件で正義なのかよ」


赤の護衛は実行部隊の者たちと、時計台で言葉を交していた。


「正否と善悪の違いって、アクアさんは考えたことあるか。少なくとも、今の俺には解らねえ」


「ボクは自分の王子さまと、お姫さまを守りたいだけだった。でも今は違う……君は最初に望んだ目的より、それを達成させる手段に溺れている」


流れる時間の中で、最初の理想が跡形もなく消えてしまえば、後に残るのは醜さだけ。


アクアの言葉をグレンは否定したかった。でも喉から声をだすことができない。



ガンセキは二人の会話を聞いたのち、腕を組んで考えこむと。


「少なくともあの組織は、時代を重ねようと信念は見失っていない」


戦争の終結に勇者の力は必要ない。人々の力だけで勝利を掴まなくてはならない。


「以上のことから、彼らは同盟軍に勇者が加わることを否定している」


勇者の中には旅で失敗に終わる者たちも多い。だからこそ魔王の領域に立つだけで、兵士の気力を上げることができる。


そして戦争で実績を残すだけで、多くの者がそれを心の底から喜ぶ。


「勇者という存在は、一つの活躍を通常の二倍や三倍と大きくさせる。だが裏を返せば、実績を残した者たちが消えたあと、同盟軍の士気は異常に下がる。古参の同志から聞いた話では、立て直すのにかなりの時間を必要としたそうだ」


実績を残せなかった場合も、その反動は大きい。


「つまり連中は勇者に頼るより、地道に戦っていくことを望んでいるんすね」


「だがそれだけで俺たちに剣を向けるとは考え難い」


旅中の勇者に戦いを仕掛ければ、たとえ勝利を収めようと世間の批判は大きい。



そもそもギゼルさんたちのような一行が稀に現れるため、勇者を中心とした今までのやり方が、全てにおいて間違っているとも言い切れない。


一見均衡を保っているようにも見えるが、千年戦争が始まってから今日まで、少しずつだがこちらへの傾きが見られる。


戦争の継続にも当然だが利点はある。しかし相手は人類の滅亡を望んでおり、それを下手に操作しようとすれば、痛手を被るのは同盟軍だ。


「まず彼らの考えをできる限り把握しなければ、なにも始まらんな」


そう言うと責任者は地面に片膝をつけ。


「ここはまだ安全とは言い難い。すまんが話を一度切らせてくれ」


セレスとアクアの頷きを確認したのち、ガンセキは領域を展開させる。


・・

・・


数分の時が流れ、責任者は再び三人と向かい合っていた。


「話がそれてしまったが、まだ俺の行為については終わっていない」


グレンは不器用な口調で。


「オルクが実行した策の話を聞いた時点で、ガンセキさんの真意に気づけなかった俺たちに問題があるんだ」


ここと似たような場所で、過去に勇者一行が実行部隊の襲撃を受けて壊滅している。


平原を高いところから見たいって理由だけで、責任者は危険を承知で本来の道から外れた。


「そんだけの情報があれば、責任者が信念旗に行動を起こさせようとしてるって、本当なら勘付かないと駄目なんじゃねえのか」


時計台での戦いが終わってから今日まで、連中が姿を現すことは一度もなかった。


「お前が襲撃を受けてから、まだ時間はそれほど経過していない。だが万一の可能性があるため、壊滅した一行の情報だけは伝えておいた」


奴らが未だ俺たちを狙っているかどうか。それをガンセキさんは調べたかったんだ。


「それでも第一目的は、高い位置から平原を眺めることだった。グレンの提案がなければ、崖上で夜を明かしたいと俺は考えていたからな」


目的を達成させるだけで、旅を終わらせたくない。この言葉だけは本心ってことか。


「壊滅した一行の話を聞いた時点で、ボクたちの警戒意識は強まっていたし、そこで打ち明けてくれても良かったと思うけど」


最初にオルクの話を聞いた時点で一行の警戒意識は高まる。土の領域は相手の感情を把握できるのだから、それだけで俺たちの変化を敵に気づかれるのではないか。


だけどよアクア。俺たちは今さっき、実際に偵察の連中を確認しているじゃねえか。


「オルクが旅商人から情報を得ていれば、一行が本来の道から外れて歩いているのは、高いとこから平原を見るためだって奴らは知っていることになる。だけど連中がもしそれを知らなかったら、今までと矛盾した理解不能な行動ってことになるだろ」


レンガを発ってから今日まで、勇者一行は我らをずっと警戒してきた。しかしなぜかその者たちは、危険な道から森に入った。


グレンの言葉にガンセキが続く。


「俺たちの目的を知っていたかどうかに関係なく、信念旗は何かしらの行動を起こすと俺は読んだ」


レンゲさんから聞いた話だと、領域から感じ取れる感情は敵意や恐怖といった曖昧なものだけだ。でもその強弱くらいなら理解できるらしい。


そういった僅かな違いから、相手は勇者一行の偵察を中断するかも知れねえ。


あのときガンセキさんは最後にこういったんだ。


『似ているといっても、一行が襲われたのは別の場所で、それも他国だ。もし詳しく知りたいなら、野宿中にでも教えるぞ』


警戒意識だけは確かに強まったけど、この言葉により実行部隊への恐怖は弱まっていた。俺がオルクの策を本気で怖いと思ったのは、野宿中に詳しく分析してからだ。


「崖上から自然道を通り森道へと戻る。この道程は敵の隠れている位置を予想するのが通常よりも容易となる」


セレスは責任者を確りと見つめて。


「憎しみや恐怖を感じ取る力が相手にもあるのなら、私たちに知らせることで相手は踏み込んだ偵察を避けてしまうかも知れない。だけどやっぱり、こういうことをするのはやめて欲しい」


「責任者としてお前の頼みをあのとき承諾した。だがすまん、今後も場合によっては似たようなことをするかも知れん」


二人に一切の隠し事をしないってのは、責任者が考えていたよりも、旅を続ける上で難しいことだったんだろうな。


ガンセキさんは高い位置から平原を見るために準備をしていた。その情報を得た旅商人ってのは、どこにいた奴なんだ。


数日前に泊まった旅人宿じゃなくて、レンガの夜酒街にいた旅商人だったのなら、セレスと約束をする以前のことだって誤魔化せたのによ。



そんなグレンの内心を知ってか知らずか、ガンセキはセレスとアクアに頭を下げると。


「今後もこの約束を続けていくためにも、破ったときの決まりを考えてもらいたい」


納得いかねえ。なんでガンセキさんが謝らねえと駄目なんだ。


「結果が悪かったのならまだ解るけど、信念旗は実際に踏み込んだ偵察をしてきたじゃねえか。俺にはこの人が間違ったことをしたとは思えねえ」


「正しいだけじゃ、なにもできない。そんなことボクだって解ってるよ。でもさグレン君、手段のために目的があるんじゃない、目的のために手段があるんだ」


隠すために人を騙す赤の護衛と、いつか明かすために人を騙す責任者。



セレスはガンセキに歩み寄ると。


「今回のことに不満はあるけど、私は納得しています。でも責任者としての約束は重いものだから、破ったことを簡単に許してはいけない」


「俺は勇者との約束を破った。今後もお前らの責任者でありたいと思っているから、勇者であるお前にその判断を任せたい」


勇者は相手から目をそらさずに。


「赤の護衛が言ったとおり、ガンセキさんの言葉から、それを見抜けなかった私たちにも非はある。だから問題とするのは今回だけとします」


注意して話を聞けば察することのできる内容なら、二人に全てを語る必要はない。


自分の判断に責任者が了承したのを確認すると、勇者は利き手を動かしながら、相手に向けて足を一歩進める。



セレスの手がガンセキの頬に触れた瞬間だった、予想以上に大きな音が周囲に響く。



黙ってグレンはそのやり取りを見つめていたが、しばらくすると荒い口調で。


「くだらねえ。これはなんの冗談だ」


怒りとも殺気とも少し違う、だがそれは感情のこもった嫌味であった。


「セレスがあんたを叩いた所為で、周囲の魔物が反応したかも知れねえ。さっさとここを移動したほうが良い」


赤の護衛は荷物を背負い直すと、三人をその場に残したまま、一人で道を歩きだした。



離れていくグレンの背中を、セレスは無表情に見つめていた。


ガンセキは自分の頬を擦りながら。


「気にするな。あいつが感情を向けたのはお前じゃない」


・・

・・


それからの一行は会話もなく道を進む。今までよりも空気が悪いが、それそれが決められた役割で警戒を続けている。


セレスは目視での警戒。


アクアも同じように周囲へ気を配っているが、時々グレンとセレスを交互にみて、困った表情を浮かべていた。



約束を破った責任者を勇者が叩いた。赤の護衛はそれが気にくわなかったわけではない。自分の考えと相反する行動を取ったガンセキに、グレンは苛立だっている。


自然道で敵の偵察に気づいた時点で、信念旗が未だ自分たちを狙っているとの把握ができた。そこでもうガンセキさんの目的は達成していたはずなのに、わざわざ魂胆こんたんを俺らに明かす必要はねえだろ。


高いとこから平原を見たかった、それだけで済ませときゃいいのによ。理解できねえ。少なくとも俺なら、隠しごとが知られるまでは、最後まで白を切るね。


第一に明かすとしても、こんな危険な場所でそれをする必要があんのか。




不満は次々と湧いてくるけど、だからってこのまま拗ねているわけにもいかねえか。


グレンは気持ちを切り替えるため、後方を歩いていたガンセキに振りかえると。


「勝手に歩きだしてすんませんでした」


その口調にはまだ苛立ちは残っていたが、グレンは立ち止まると、ガンセキに先へ行ってもらおうとする。


だが責任者は首を左右に振ると、赤の護衛と並んで歩くことを望んだ。



最初の言葉をしばらく考えていたが、ガンセキは意を決して。


「嘘は力で揉み消すことができる。だが嘘を誤魔化し続けるのは、それよりも難しいんだ」


「一理あると思いますが、嘘の大きさも関係してくるんじゃねえっすか」


グレンの返事に苦笑いを浮かべながら。


「どれほど密に事を運んでも、欲にまみれた嘘はどこかに必ず綻びがある。そんな話を前に聞いたことがあるな」


「欲のない嘘なんて、この世にありませんよ。自己満足や自己犠牲も、見方を変えりゃあ一種の欲です」


自分のためって言葉に酔えば自己満足で、誰かに格好いいと思われたければ自己犠牲になる。


「俺は自分が嫌いだけど、そんな自分に酔っているだけなのかも知れません。こうやって認めちまうと、これまで悩んでたのが楽になるんです」


「そうやってまた、お前は自分を憎み続けるのか」


グレンはガンセキに苦笑いを返すと。


「そんな自分が格好いいって勘違いしているだけですよ」


「上手くは言えないが、お前のそういったところは嫌いになれんな。だがグレン……楽になりたいということは、なにかに苦しんでいる証拠でもあるんだ」


図星を突かれたのか、赤の護衛は自分の足下に目を向けてしまう。



ガンセキはグレンとの共通点を宿村で発見したからこそ、自分の経験を相手に教えることができた。


「俺は逃げることが間違いだとは思わん。しかし一つだけお前に教えられることがある。不足の事態に備えながら、できる限り冷静に逃げろ」


視線を外へ向けてしまった仲間に、責任者は笑いながら。


「逃げ方にも色々あるんだ。考えることを放棄するな。それが今の自分とは無関係なことであったとしても、些細な切欠で脱出の糸口を見つけられるかも知れん」


「まあ……考えることは好きなんで、続けてはいきますが」


すでにグレンの口調からは、先程までの苛立ちは消えていた。




ガンセキさんに言われたことだし、一つ気になってたことを聞いてみるか。


「昨日の夜に分析したのだけじゃなくて、オルクは別の勇者にも剣を向けてますよね。できればその情報も教えて欲しいんですが」


もし俺の予想通りだとすれば、ガンセキさんの過去に踏み込むことになる。正直いえば避けたいんだけど、気になっちまうもんは仕方ねえ。


「多くの情報を俺が入手できたのは、魔王の領域で生き残った人物と知り合っていたからだ。ほかの襲撃を説明してもいいが、すまんが分析できるほど俺は詳しくない」


二人の会話を聞いていたアクアが、少し悲しそうな顔で。


「ガンさんたちがいたから、その勇者さんは一人ぼっちじゃなかったんだね」


「俺やカインとは戦場が少し離れていたが、一人ではなかったな」


命がけで敵地に潜入して、重要な情報を集めてくれた仲間がいた。


他国の軍という扱いだったガンセキさんたちは、侵攻戦への参加はほとんどなかったらしい。



セレスは精一杯の笑顔をまき散らしながら。


「同盟軍の同志たちだって、きっとその勇者さんの仲間だったもん」


しかし三人はゼドが勇者を失ったことを知っていたから、それ以上の詳しい話を聞こうとはしなかった。



それでもガンセキさんは、俺たちが質問すれば答えただろう。


言いたくないことは隠せばいいのによ、とても俺には真似できないし、真似もしたくない。



それからは何事もなく、俺たちは本来の道と合流することができた。


ガンセキさんの言っていた通り、そこはかなり視界が開けていて、太陽の光が周囲にも差していた。


このような道ではオルクの策は実行に移せない。壊滅した勇者一行は恐らく、なんらかの理由で外れ道を歩く必要があり、その情報が奴の耳に届いていたんだ。


それと奴は勇者を打ち取ることを第一目的としているが、護衛を始末できただけでも良しとしている。だけど赤の勇者は徹底的に追い詰められていたにも関わらず、包囲された山からどうやって生還したのか。


それを俺たちに教えなかったんだ。たぶんガンセキさんも、そこらへんの繊細は知らないってことだろう。


・・

・・

軍での仕事や魔獣具としての逆手重装。今までどれも隠し通せなかったのに、グレンは懲りることを覚えない。

・・

・・


知られなければ罪にはならない。


もはや彼のこういった性格は、人に言われて治せるものではなくなっていた。



誤魔化しきれない真実もあると知っているのに、それを頑なに解ろうとしない。


活力の根本に善悪はおろか正否すらない。


知られないほうが楽。


全てを明かしてしまえば、相手に理由やらを説明する必要があり、それをするのが面倒。



そのような言い訳をすることで、彼は現実から目を背ける。


だがグレンは薄々気づいていた。魔獣具の呪いにより、自分へかけた暗示が弱まっていると。


魔人を拒絶する勇者。


魔人を否定する世界。


魔人としての現実は、すでに彼も理解しているはずなのに、なぜ未だ己への嘘に拘るのか。



なぜ自分の本心を知っていながら、素直にセレスと向き合おうとしないのか。


嫌われるのが怖いから。


拒まれるのが嫌だから。


本人が魔人を認めていないのだから、真実は闇に包まれたままである。


だがグレンは知っていた。いつか全てを解る時が訪れると。



そのために彼の本能は、武具屋の主と関わることを望んだのだから。




正直に言いますと、今回の内容は後付です。


今後一切の隠しごとをアクアとセレスにしないってのは、ガンセキではなく、作者が想像していた以上に難しくて、何か思いついたらこの約束の条件をもう少しゆるくしたいと考えておりまして。


無理があったかも知れませんし、ご都合主義なのかもしれません。すんませんでした。

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