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炎拳士と突然変異  作者: 作者です
1章 俺の故郷
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四話 一人、剛炎に焼かれて

グレンは目を覚ます。


あれ・・・どこ、此処?


辺りを見渡す・・・ああ、オババの住処か・・・人は誰も居ないな。


妖怪が一匹、俺の隣に居るだけだ。


「若造、起きたか」


「俺を食っても美味くないぞ、そうそうに立ち去れ」


妖怪退散のお札を向ける。




強力な妖怪のようだ・・・俺の念力が聴かない、杖で殴られた。


「馬鹿な事言っとらんで行くぞ・・・全く、お主が倒れた所為で儀式が進まんわい」


「何処に行くんだ?」


痛いな、また叩かれた。


「勇者候補全員が揃わんと、勇者の儀が出来んじゃろ!!」


ああ、そう言う事か。




グレンは頭をさすりながら、オババの後を着いて行く。


うっ・・魔力切れで倒れた後は、頭がクラクラする。


しかも、まだ魔力が殆ど回復してない・・・もっと寝てたい。


「婆さん・・・駄目だ、まだ眠い・・・寝かせてくれ」


「馬鹿者、少しは我慢せんか」


「て言うか腹減った、まず飯を食べたい」


「初戦を終えるまでは飲食を取ってはならん、前にも言ったじゃろ」


「婆さんの話なんて聞いてるわけないだろ」


婆さんは呆れてる。


「ワシもそれなりに弟子を持ったが・・・お主ほどの馬鹿弟子は始めてじゃ」


「俺は師匠を持ったのは始めてだけど・・・まさか人外の類が師匠に成るとは思わなかったぞ」


「お主ほど失礼な弟子も始めてじゃ」


あ、こりゃ不味いな・・・これ以上馬鹿にすると、この婆さんマジで怒るな。


まだ怒って火を投げつけている内は、可愛いもんだ。


グレンは妖怪をおちょくるのをやめ、静かに歩き続けた。





祭壇の下方に到着すると、アクアが寄って来た。


「あれ、グレン君起きたの? まったくもう駄目だよあんな簡単に倒れちゃ、だらしないよ」


「お前の所為だろ・・・」


アクアは苦笑い。


「てへっ、ごめんね」


「お前、なんか気持ち悪いぞ」


「だめだよ!! 女の子に向かってそんな事言っちゃ」


「すまん・・・俺は正直者なんだ」



グレンは辺りを見渡す。


「ところで2人は何処に居るんだ?」


「祭壇の頂上で初戦の準備運動してるよ」


羨ましい限りだ・・・俺には戦いの前に、そんな無駄な魔力を使う余裕は無い。


「お前なんで此処に居るんだ?」


「セレスちゃんは兎も角、ガンさんは集中してるから邪魔しちゃ悪いと思って、折角だからグレン君に嫌がらせしようと思って」


「それはありがとうアクアさん、これからは夜道に気を付けて下さい」




暫くアクアと雑談していたら、オババが横槍を入れてきた。


「ほれ、喋っとらんで速く行かんか、もう始まるぞ」


「はいよ、今行きますよ」


オババの後を追って2人で歩く。


「ねえ、グレン殿」


「なんだいアクアちゃん」


「うっ、やだその呼び方・・・アクアで良いよ」


「そうかい、じゃあ俺も呼び捨てにしてくれ」


「だめ!! グレン君はくんなの!!」


「それなら俺だって、アクアさんはサンなの!!」


まあ別に良いけど。


「で、何だアクアさんよ?」


「グレン君は何で武器使わないの?」


「俺の武器は、油玉と火の玉だ」


「でもそれ消耗品だよ? 剣とか斧とか使えば良いのに」


「・・・・俺の炎は武具との合性が悪いんだよ、武器に炎を宿せないんだ」


「ふ~ん・・・でも物理攻撃を避ける事しか出来ないって、危ないと思うな」


確かにその通りだ・・・


「実際に剣と火を別々にして戦った事も有るんだ・・・でも正直、戦い難い」


「慣れじゃないの?」


「片手が武器で塞がってると、油玉と火の玉を使い難いんだ・・・知っていると思うけど、俺は遠中距離攻撃が出来ないんだよ、魔物の中にも離れた場所から攻撃してくる奴も居る」


「それに比べて、近接攻撃ならそれなりの自身が有るんだ、武器を使って長所を伸ばすより、油を使って短所を補った方が俺的には戦い易いんだ」


アクアは納得したようだ。


「でもさ、今までグレン君は一人で戦って来たんだよね?」


「まあ、そうだな」


「これからの旅は4人で戦うんだよ、グレン君の苦手な場所は他の3人で補えば良いと思うんだけどな」


「なるほど・・な」


たしかに今までは1人だったから、苦手な遠中距離を油で補っていた・・・でもPTを組む訳だから生き残る為に、武器を持って守りを固める方が良いのかも知れない。


でも正直いうとよ、俺は素手で戦うほうが好きなんだ。剣とかだって長年使ってないし、今は拳に重点を置いているしな。


でもさすがに物理を防げないのは辛いか。


「確かに、お前の言う事も一理あるよな・・・ちょっと考えておく」


アクアは嬉しそうに笑った。


「うん、考えておいてよグレン君」


まさかアクアに気付かされるとは、意外と旅に置いて頼りになるかも知れないな。


そんな話を聞いていたオババが、またもや横槍を入れる。


「アクアの言う事も確かに一理有るがの、お主が今の戦い方になって何年になる?」


「・・・6年ってとこか?」


「下手に戦い方を変えると命を落とす事に成るかも知れんぞ」


オババの言葉に二人は黙りこむ。


「それにな、油玉を使った戦方・・・珍しいが面白いと思うぞ」


おお、婆さんに褒められた。


「先程の戦いに置いて、お主は水の領域を利用して炎を広範囲に拡大させたじゃろ?」


「まあそうだけど」


「詰まりじゃ、水と火の合体魔法のような馬鹿げた事を、油の力で行ったんじゃ」


合体魔法は存在する、だけど火と水は相反する属性だから組合すことは難しかった。


そう言われると、確かにそうだな。


「それに魔力の節約にもなっとる」


そもそも油玉を考えた一番の理由は魔力の節約の為だったりする。


「お主等は意外と良いコンビになるかも知れんの」


・・・あまり嬉しくないお言葉をありがとう妖怪。


「グレン君、僕達相性が良いって・・・相棒だよ相棒」


「止めてくれ、俺は認めんぞ!!」


グレンは走って祭壇を上りだす。




最後の一段を踏み、祭壇の頂上に到着する。


意外と此処からの眺めは良い、勇者の村全体が良くみえる。


森に囲まれた田舎の風景・・・村人全員が顔見知り、はっきり言ってド田舎だ。




「あ、グレンちゃんが来た~!」


大声でセレスが近づいてくる。


「グ~ちゃん、私の戦い良く見ててね・・・きっと私に惚れ直すよ、にひひ~」


ガンセキさんも寄って来た


「よう、グレン起きたか」


「ガンセキさん、どもです・・・遅くなってすみませんね」


「気にするな、それより良い戦いを見せて貰ったからな」


「そう言って貰えると嬉しいです」


「いや、本当に凄かった。一瞬で形勢が逆転した、まさか相手の水を利用するとは、俺には思いつかない発想だ」


ガンセキさんに褒められると嬉しいな。


「もう!! グレンちゃん、ガンセキさんとばっかり話して、私の事も構ってよ!!」


「お前、歳いくつだよ」


「ぶ~!!」


セレスが俺に向けて変な顔をする・・・何なんだこいつは。




「でもガンセキさん、私の言った通りだったでしょ?」


ん? 何の事だ?


「ああ。グレンは強い」


俺がか?


「確かに魔力量は人並みかも知れんが、上手く考えながら戦っている」


「ガンセキさん、褒めすぎっすよ。そうしないと俺の場合は直ぐに燃料切れですから」


「もし俺がお前と同じ魔力量だったら、魔力奪いの雨の中で、あそこまで戦えないぞ」


「しかも雨魔法の短所を上手く利用して戦っていた、並みの火使いなら雨魔法を使われた時点でもう戦意喪失だ」


前から思っていたんだけど・・・他の連中、俺のことを高く買い過ぎだ。


「お前気付いてないようだから言うけど、剛炎を使う事の出来る炎使いは、この村でお前とオババを含めて数人だぞ」



「・・・嘘だ」


「だから前から言ってるじゃん、グレンちゃん自分が思ってる程弱くないって」


いつもオババが当たり前に剛炎使ってるから・・・知らなかった。


「もう一つ言わせて貰うと、俺が高位魔法を使えるように成るまで25年掛かったぞ」


俺は・・・17歳の時に覚えた。


「私は5歳で天雷を使えたけどね・・えっへん」


「お前と一緒にするな、この突然変異」


「グレンちゃん酷い!!」


なにやらセレスが怒っているが、調度その頃にオババ達が頂上に到達した。




「オババ、もう歳なのに大変だな」


「うるさいわい、年寄りと思って馬鹿にするな若造が」


「あ、悪かった・・・妖怪の平均寿命は1000歳だったな、婆さんなんてまだピチピチだよ」


茶化すと、オババは無言になる。しまった、マジで怒らせた。


グレンは全力で逃げ出す。



オババは両腕を天に、剛炎を造りだし俺に向かって放射する。


俺は両腕に炎を灯して、壁を造る。


だが所詮、炎では剛炎には勝てない。


「あ、熱いって・・・悪かった勘弁してくれ!! もう言わないから!!」


全身が焼ける、魔力で魔法防御を上げてなかったら一瞬で黒こげだ。


「グレンちゃん、自業自得だよ・・・フン!!」


「セレス、お前!!」


オババの剛炎放射が止んでも、俺の全身は燃え続ける。


本来こうなった時は、全身に纏った魔力を思いっきり放散されて、剛炎を消すんだけど・・・そんな魔力は俺に残っていない。



「婆さん!! 消してくれ!! 頼むよ、死ぬから俺!!」


「うるさい!! 自分で何とかせい!!」


駄目だ!! もう魔力が切れて、魔法纏いすらできなくなる。


「アクア・・さん、水で消してくれ・・・もう・・・ヤバイ・・助けて」


「いいよ!! グレン君は僕の相棒だからね!!」


「ああ、そうだ。俺はお前の相棒だ!!」



次の瞬間、グレンの頭上に水の塊が現れ、それが落下する。


しかし水などすぐに蒸発して、また俺を燃やし始める。


流石にヤバイと思ったのか、オババは消してくれた。


「いくらなんでも・・・やり過ぎだ・・・クソババア」


グレンは地面に倒れこんだ。


「お主が失礼な事を言うからじゃ!! クソガキめ!!」


婆さん・・・魔力が殆ど空の人間に、何て事をするんだ。


「オババ、俺もやり過ぎだと思うぞ。また気絶したら儀式が長引くぞ」


や~い、妖怪めガンセキさんに怒られてら。


「むう・・・確かに年甲斐になく怒りすぎた、グレン許せ」


オババが落ち込んでる。


「おう、俺も・・・悪かった」


て言うか、この婆さんが俺の代わりに、旅に出たほうが良いんじゃないか?




「さて、此処で馬鹿な事をしとったら日が暮れてしまうの、始めるか」


どう考えても馬鹿な事の責任の半分は婆さんの所為だよ。




俺とアクアと妖怪は、所定の位置に移動する。


俺は立ってるのも辛いから、地べたに座り込む。


「こりゃ神前だぞ、確り立たんか」


「立ってたら途中で気絶するぞ」


婆さんの所為で。


「しょうがないの、最近の若い者は」




オババが言葉を発する。


「雷を鳴らす者よ、前に」


セレスが前に出る。


「土を踏み締める者よ、前に」


ガンセキが前に出る。


二人は向かい合い一礼。




オババが叫ぶ。


「始め!!」



四話おわり










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