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炎拳士と突然変異  作者: 作者です
1章 俺の故郷
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二話 岩石と苦手水

挨拶に行けと妖怪に言われたグレンは勇者候補に会いに行く。




ガンセキさんって何処に居たかな・・・確か村に帰ってきてから、特にこれと言った仕事はしてないよな。


何時も修行しているって聞いてた・・・とりあえず修行場に行こう。



基本的に村内での攻撃魔法の使用は禁止されてる、銀髪女は馬鹿だから所構わず使うけど、常識的には当たり前の事だ、ちなみにオババは妖怪だから使用してもOKだ。


村の一角にある修行場では、攻撃魔法の使用が許可されている。



ガンセキさん居るかな?


・・・・おっ居た。




土属性は大柄なイメージがあるけど、ガンセキさんは平均の体格だったりする。


ガンセキさんの獲物は片手で持てる小振りのハンマー、あれ自体の攻撃力は低い。


あのハンマーで地面を叩いて、土を操る。




修行中なので邪魔しちゃ悪いな、いったん落つくまで様子を見よう。



ガンセキはハンマーで地面を叩く、すると彼の少し前方から岩の腕が現れる。


・・・うわ凄・・・。


岩の手が前方を叩きつける。


物凄い音が鳴る。


・・・この人と戦いたくないな・・・でもアクアもやだ、セレスはもっとやだ。



次にガンセキは自分の手を地面に添える。


すると彼を護るように、壁が出現。



この魔法がガンセキさんの最大の特徴だ。


土属性のランクは


低位 土・・・敵の存在を離れた場所からでも察知出来る、自身の存在を隠す。


並位 岩・・・重量と硬さで攻守する。


高位 大地・・鉄壁の護りと広範囲攻撃が多い。


神位 地神・・良く分からない。


今さっきガンセキさんが使ったのは大地の壁、高位防御魔法だ。




高位以上の魔法には神言(神への言葉)が必要になる。


例えば、大地の壁だと。


『偉大なる大地よ、その身を犠牲に我身を護れ』


これが神言だ。


だけどガンセキさんのように、大地壁の熟練が高ければ、神言を唱える必要はない。


頭の中で直接、神様に語りかけるだけで良い。




この人程の土使いですら、敗れて村に戻ってきたんだ。俺死ぬだろ、どう考えても。



グレンがじっと見ていると、ガンセキが気付く。



「グレンじゃないか、珍しいなお前が修行なんて」


「あっども」


グレンは頭を下げる。


「どうかしたのか?」


「その、なんて言うか妖怪に挨拶に行けと言われて」


「おお、お前が候補に成ったのか、それは頼もしいな」


「勘弁してください、俺はまだこの歳で死にたくないですよ」


ガンセキは笑う


「始まる前から、随分と弱気だな」


「ガンセキさんは怖くないんすか?」


しばし黙ったままグレンを見つめると。


「そうだな、怖いさ。経験して余計に恐ろしさが分かった」


「それじゃあ、何で断わらなかったんですか」


「俺だけが生きて帰ってこれた。だからこそもう一度挑戦したい・・・それだけだ」


グレンの眼つきが変わる


「ガンセキさん、俺たちは魔王を退治しに行くんです」


「そうだな。だからこそ俺は修行しているんだ」


俺の考えすぎか。


「すみません、生意気な事言いました」


「良いんだ、あながち間違ってもいない。ただ簡単に死ぬ積もりはない、生き残る為に戦うさ」


「頼りにさせて貰います」


「ああ、任せとけ。誰一人死なせないさ、俺が護ることくらいしかできないからな」


俺も、ちょっとは見習わないと。


「それじゃっ修行の邪魔する訳にもいかないんで、ここら辺で」


「ああ、勇者の儀ではお前と一戦交えたいな、前から戦って見たかったんだ」


勘弁してくれ。


グレンは苦笑いを残して、その場を後にする。





残るはアクアか・・・決めた、このまま家に帰ろう。


あの子、俺どうも苦手で。


グレンは家に向かう、その時だった。


「あっ!! グレン君だ」


声をかけられた青年は、明後日の方角を向く。


「ちょっと、無視しないでよ」


「ああ、アクアさん居たのか・・・気付かなかった」


「駄目だよグレン君、僕は何時も君を見ているからね」


「今度宜しく。それじゃ、さいなら」


グレンは一目散のその場から逃げ出そうとした。



あれ・・・足が動かない。


「おい・・・アクアさん、何の積もりだ?」


「ん? 何の事かな?」


「足が凍ってて動かないんですけど」


「あ、ごめんよ」


グレンは確認の意味をこめ。


「あの、氷溶かして貰いたいんだけど」


「なんで?」


「動けない」


「動かなければ良いんだよ」



「この野郎!! 俺を馬鹿にしてるのか!!」


「ボクは野郎じゃない!! 女の子だよ!!」


だー!! 話が噛み合わない、何がしたいんだ!!


「氷を溶かせ!!」


「グレン君、自分の炎で溶かせばいいんだよ」


「お前が溶かした方が速いだろ!!」


「良いから炎見せてよ!!」


もう訳分からん・・・なぜか目が輝いてるし。


「分かったよ、自分で融かしますよ」


「うんうん、融かして融かして」


しゃがみこんで俺の足元を見るアクア。


俺は方手に火を灯して、足元に持っていく。


「凄い凄い、燃えてるよ!!!」


そう言うとアクアは氷を厚くする。


「こら!! 融けないだろ!!」


「もっと強い炎にしたら融けるよ」


「馬鹿、これ以上強くしたら俺の足まで燃えちまうだろ!!」


「グレン君、手からしか炎出せないの?」


「悪かったな、俺は産まれつきそうだったの!!」


炎使いの中には足からしか炎が出せない奴もいる。


「もう良いだろ、そろそろ俺を解放しろ、自由になりたいんだ」


「しょうがないな~ 明後日はもっと楽しませてよ」


「まだ俺とお前で戦うって決まってないだろ」


アクアは氷を溶かし、俺を自由にする。


「じゃあな」


「え~ もう行くの?」


「今から用事があるんだ、アクアさんには構ってられないんだよ」


後ろでアクアがうるさいけど無視してその場から離れる。


あいつが何考えてるのか、俺には理解できない。


あと俺がアクアを、さん付けで呼ぶ理由は・・・あいつが俺の事を君付けで呼ぶから、それに対抗しているだけだ。





自宅に向かって歩くグレン。


ついでだから油を買ってから帰ろう。


家までの道中に店が在る。


「おっちゃん、何時ものくれ」


「おお、グレンか・・・油な、ちょっと待ってろ」


おっちゃんは店の奥から油を持ってくる。


「ほれ、お前専用だ」


「悪いな、これが調子良いんだ」


「いいって事よ、ほかの油より値が張るけど良く燃えるぞ」


「それじゃっ、あんがとな、おっちゃん」


「おう、またな」


さて目的の品も手に入ったし、さっさと帰ろう。




家に着く。


さて、明後日には候補の誰かと戦わないといけないから準備しないとな。


勝ち目は薄いけど、負けたくないからよ。でも、セレスとだけは戦いたくない。


あいつは異常なんだよ、頭が悪いかわりに魔力量と雷使いとしての才能が狂ってる。


あれはもう天才じゃない・・・突然変異だ。



グレンは戦いの準備をする。


さっき買った油を、球状の容器に流し込む。


これは俺とおっちゃんが協力して造った油玉だ。こいつを相手に投げ、ぶつかると油が飛び散るようになっている。


俺の魔力量は人並みだから、無駄な消費を抑える為に造った。


これを敵にぶつけてから火を使うと良く燃えるんだ。



後これだ、火の玉。


恥ずかしい話だが、俺は炎を飛ばしたり放射みたいなことが出来ない。


つまり俺の炎は接近戦にしか使えない。


これは一度着火すると燃え続ける、油まみれになった敵にこいつを投げて燃やす。


俺は炎を離れた場所に飛ばす事が出来ないが、自分の炎なら離れていても火力を上げることは出来る。


だから油玉と火の玉・・・この2つは敵に火を着ける事が目的で、着火さえ出来れば自分で出力を上げて敵を燃やすことができる。


おっちゃんから買ったのは油って名前だが、奴が手を加えているから正確には少し違う。着火してから数秒間だけ火力を一段回あげてくれたりする。



俺みたいな中途半端な炎使いは、工夫しないといけないんだ。


なんで他の半端な連中は、強くなる為に工夫しないのか俺には理解できない。


そのお陰で俺は・・・村人から変わり者扱されているような気がする。



まあ、やれるだけ頑張るさ、勇者候補の連中は各属性のエリートみたいな者だ。


俺の頭ではこの程度の工夫しか出来ないけど、どれだけ通用するのか興味がある。


・・

・・


・・

・・


時は流れ勇者の儀式当日となる。


手袋を両手にはめる・・・良し、準備は出来た。


「そろそろ行くかな」


扉の外から声が聞こえる。


「グレンちゃ~ん おはよ~」


なんなんだこいつは。今日みたいな日でも俺を起こしに来るのか。


グレンは無言で扉を開ける。


「うは~ グ~ちゃん今日も速いね、一回くらいお寝坊してよ」


「なぜお前の為に寝坊しなきゃいけないんだ?」


「私頑張って早起きしてるんだから、協力してくれても良いじゃん」


なんなんだ、こいつの言い分は。


「俺は祭壇に向かう、お前は遠回りして行け」


「なんで~ 一緒に行こうよ~」


「セレスと居ると馬鹿が移る」


「酷い!! 私は馬鹿じゃないもん!!」


「本物の馬鹿ほど自分が馬鹿だと気付かないもんだ。安心しろ俺が保証する、お前は馬鹿だ」


実はこの男、少し口が悪い。


「もう怒った!! グレンちゃんなんて今日、私がボコボコにしちゃうもんね・・ふんっ!!」


捨て台詞を残すと、何処へと消えていった。


どうやら俺の言い付けを護り、遠回りで祭壇へ向かったようだ。




村の一角に祭壇があり、そこで勇者候補が戦う。


俺の相手はアクアらしい。


セレス残念だったな、お前にボコボコにされる前に俺は負けるから。




さて、ここからが本題だ。初戦のアクア。


水属性の位は。


低位 水・・・ただ水を出すだけ。


並位 氷・・・物理化させて攻守、または足止め。


高位 雨・・・広範囲の敵に対しジワジワと体力、魔力を奪っていく。


神位 神雪・・良く分からない、雪が降るんじゃないのか?



水属性の特徴は、どちらかと言うと長期戦に向いている。


アクアは高位まで使う事ができる、長引くほど俺が不利になる。


一応どうやって戦うかは、考えてある・・・もっとも上手くいくかは運しだいだけど。





数分歩いて祭壇に到着する。


すでにセレス以外は揃ってるみたいだ。


ちなみに勇者の儀は、一応神聖な儀式らしく観客は居ない。この儀式を見届けるのは、婆さんと勇者候補だけらしい。


妖怪が俺に話しかける。


「セレスが居ないようじゃが、どうした?」


「遠回りして来るらしいぞ」


「あの馬鹿者・・・何を考えているんじゃ」


「さあ、あいつの考えている事は俺にも理解出来ないからな」


「まあ良い、待っておればそのうち来るじゃろ」



俺は指定の位置に向かう、そこには勇者候補が立っていた。


「残念だったな。お前と戦えると思って楽しみにしてたんだが」


「俺は誰とも戦いたくありませんよ。許されるなら、不戦敗でも良いです」


まあ俺がどれだけ他の候補に通用するのか興味はあるけど。


「グレン君、ボクと戦うのに手を抜いちゃ駄目だよ」


「抜かねえよ、ちゃんと戦うさ」


下手に抜いたら、死ぬかもしれない・・・そんな危険なこと出来るか。


「あ~ 楽しみだな、グレン君のメラメラ」


ん? メラメラってなんだ?


「そうだなグレンは何時も魔物としか戦わないから、俺もグレンの戦う所は始めて見るな」


「あまり期待しないで下さい・・・そこら辺に居る炎使いと大差ないですよ」


ガンセキが笑う


「お前は相変わらずだな。一つ言わせて貰うが、お前が任されている仕事場。南の森はここらでは一番強力な魔物の住処だぞ」


・・・・は?


グレンは妖怪を見る。


「おい、婆さん。俺はそんなこと一度も聞いてねえぞ」


「はて? そうじゃったっけ? 言うの忘れてたわい」


妖怪め・・・何時か見てろ、俺が封印してやるから。


「グレン君そんな事も知らなかったの? お馬鹿さんだね」


15歳に馬鹿にされた、俺の方が4つも年上なのに。


「大丈夫だよ、俺はアクアさんより世間の辛さを知っているからね」




儀式の前だというのに、雑談していて良いのだろうか?


普通もっと緊張したりしているもんだろ。




雑談している内にセレスが現れた。


「こりゃ、セレスお前何やっとるか!!」


や~い怒られた、と言った顔をセレスに向ける。


セレスはそれに気付く。


「だって!! グ~ちゃんが私を虐めるんだもん」


「おいセレス、自分の罪を人に押し付けちゃ駄目だぞ」


「こりゃっ!! 儀式の前に喧嘩するな!!」


銀髪女のせいで妖怪に怒られた。




セレスも所定の位置につき、妖怪が話し始める。


「これより、勇者の儀を始める・・・まずは我等の神に祈りを捧げよ」


目を閉じる、俺はあまり宗教に詳しくないけど、俺達の魔法は神様が人間に与えたものらしい。


魔王を倒す為に、神様が人に持たせた力。それが俺達人間の魔法だ。


「勇者の資格を持つ4人の者よ、神にその力を・・・勇者である事を示すのだ」


妖怪の長い話が続く。


「水を流す者よ・・・前に」


アクアが一歩前に出る。


「炎を灯す者よ・・・前に」


俺も前に出る。


「祭壇を上り、神前へ向かえ」


2人は長い階段を上がる、祭壇の頂上は広くなっており、土が敷き詰められている。


互いに中央に・・・見合わせる。



「よろしく、グレン君」


「ああ・・・よろしくアクアさん」



オババ達も上ってくる、邪魔にならない場所に立つ。


オババが叫ぶ


「始め!!」



戦いが始まる。








二話 おわり









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