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炎拳士と突然変異  作者: 作者です
1章 俺の故郷
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一話 始まりの朝

朝・・・陽が昇る。


光が窓や壁の隙間から入り込み、青年の目元を照らす。


太陽と共に目覚め、月の優しく穏やかな光に包まれて眠る。


夜はランプの輝きが弱い為、あまり好きじゃない、その代わりに朝は好きだ。


だから早起きは得意、早起きは得だと人は言うが、何が得なのか俺にはサッパイ分からないが、毎日健康的な生活を俺は送って来た。



起きると直ぐにベッドから出る。


俺のベッドは年代物だから、少し寝返りをするだけでも音が鳴って怖い。



台所に行き、薪を入れて火を灯す。


この時、俺は何時も思う・・・炎使いで良かった。


火を熾すのが楽だ。



自分の炎では火傷はしないが熱い、だから俺のような炎使いは熱さ防止の為に専用の手袋をする。


これには水属性の宝玉が仕込んであり、攻撃に使う為に炎の出力を上げた時は流石に熱さは防げないけど、こうやってただ手に灯しているだけなら熱くない。


俺は頭の中で手の平に火を想像し、それを言葉にして魔力と共に送る。


薪を燃やすと鍋でそのまま水桶から水をすくい、火にかける。


水が沸くまで寒いので、両手に火を灯す。


危険だから良い子は真似をしないように。


手袋のお陰で調度いい温度だ、魔力の無駄使いではない、これも立派な防寒対策だ。


お湯が沸くと洗面用の桶に水を入れて、熱湯を足し手袋を懐にしまい顔を洗う。


・・・ああ・・暖かい・・俺、頭良い。



さて、次は飯だ。


また手袋をして、片手にパンを持つ。


火を掌に灯しパンを焼く、どうだ・・・やっぱ炎って便利でしょ、炎使い最強だろ?


少なくとも雷使いよりは、使い道が多い筈だ。



俺は良く焼けたパンを美味しく食べながら、コップに熱湯を入れて机に持っていく。


椅子に座る前に火のあと始末をしなくては。


グレンが指を鳴らす・・・すると火は一瞬で消えた。



俺の魔力量は人並みだけど、炎の扱いだけはそれなりの自信があるんだ。


自分の炎なら一瞬で消せる。


各属性には位がある。炎使いで言うと。


低位 火・・・熱い。


並位 炎・・・とても熱い。


高位 剛炎・・異常に熱い。


神位 神炎・・言葉で表現出来ないほど熱い。



って感じだ、流石の俺も神炎は無理だが剛炎までなら使える。


もっとも人並みの魔力量しか持たない俺が高位魔法を使い続けたら、あっという間に燃料切れだ。



魔力が尽きると気絶するか、ある程度休息しないと動く事も出来ない。


まあ言いや、飯を食おう。


あ~美味くもないし、不味くもない平凡な飯だった。


だが飯を食べれる事は幸せな事だ、空腹は色々と惨めな気持ちに成るからな。



さて、今日もお仕事頑張りますか。


俺の仕事は村周辺の魔物退治だ、そりゃ魔物なんて何処にでも居るさ。退治しないと村なんかあっという間に廃墟になっちまう。


ここは勇者が生まれる場所だから、当然だけど腕の立つ輩は大勢いる。


俺に任されているのは村から少し南にある森。そこに行き魔物を退治して証拠の爪や毛皮なんかを村に持って帰り、それと交換で金を貰う。


この村周辺の魔物は基本的には強くない、だから昔はともかく、今の俺なら一人でも頑張れば何とかなる。



着替えを済ませ、仕事に行く準備を終えようとしたときだった、何者かが家の扉を叩く。


「グレンちゃ~ん 朝だよ~ 起きよ~」


とっくに起きてます。


グレンは扉の鍵を開ける。


「おはよ~」


「朝からうるさい」


それに力を入れて扉を叩くな、壊れたら婆さんに弁償してもらうからな。


「グレンちゃん、起きるの速すぎだよ。せっかく私が起こしてあげようと思ったのに」


何故か俺が怒られる。


「お前は何時も来るの遅いんだよ」


こいつは毎日起こしに来るが、俺はこいつに起こされたことは一度もない。


「今からお仕事?」


「着いて来るなよ、俺の仕事がなくなる」


「残念でした~ 今日はオババの用事で来ました~」


オババとは村のヌシだ、村長よりも偉い150歳を超える小さい妖怪のことだ。


千歳を超えると人は妖怪に変化するんだが、平均寿命を考えればありえない。ただの昔からあるお伽話だな、繊細は俺にも解からん。


俺は冗談半分の嫌がらせで、婆さんのことをそう呼んでいる。


「ん? 妖怪が俺に何の用だ?」


「またグレンちゃん、そんなこと言って。オババに殺されちゃうよ~」


「大丈夫だ、俺はお札を持ってるから」


「オババ・・・一応人間だよ」


お前こそ、婆さんに殺されるぞ。


ちなみに馴れ馴れしいこの女は、妖怪と一つ屋根の下に住んでいる。


「婆さんが俺に何のようだ?」


「何かね、勇者の儀式のことでグ~ちゃんに用があるんだって」


「・・・行かなきゃ駄目か」


「うんダメ~」


勇者の儀式。この村から勇者を選ぶ祭りのようなもんだ。


5年に一度、妖怪が4人の勇者候補を選ぶ。


その4人が1対1で戦って、最後に残った勝者が勇者と成る。




妖怪の用事が俺には分かる。多分、俺に候補に成れってことだろう。


基本勇者候補ってのは、火雷土水の4属性の代表だ。


他にも属性はあるが、この国に存在する勇者の村には、4属性を持つ者しかいない。




俺が候補になりたくないのは、いくつか理由がある。


【1】この村で炎属性の若者は俺だけ。


何故かこの村では炎の属性だけ、まったく産まれない時期がある。


炎の属性が生まれない時期に、俺が捻くれているのか一人だけ炎使いとして産まれた。


現時点で40~60歳、この間では炎使いの人は大勢いる。


最近は炎使いの子供が産まれるようになってきた。


そして、勇者候補は15~35まで・・・詰まり、炎の代償は俺しか居ない。


以上の理由から候補を選ぶさい、炎使いがいないことがあり、その時は同属性が二名選ばれる。


確か5年前の勇者御一行も属性が被ってたと思ったな。


結論を言うと・・・俺は他の代表より弱い。



【2】勇者に成れなかった候補は、勇者の仲間として旅に出る。


これは勘弁してもらいたい、俺は今の生活が結構気に入ってる。


ここら辺は魔王の領地から離れてて結構平和なんだよ、何が嬉しくて自ら望んで危険な場所に行かなくてはならないんだ。



【3】 この銀髪女にだけは、人前で負けたくない。


言い忘れてたけど、こいつの名前はセレスと言う。


ふざけた性格だけど、雷の勇者候補だ。


そして、間違いなく勇者になるのはセレスだ。


異常なんだよ、こいつの強さ。俺はこいつに勝てる気がしない。


セレスの魔力量は・・・魔獣並にある。


それだけじゃなく、最高位である神雷を使うことができる。


剣技だって俺より上だし、こいつは頭以外は完璧だ。



「と言う事で俺は仕事が忙しいので、またの機会に」


グレンは逃げようとする。


「ダメだもん! いつもグ~ちゃん、そう言って逃げるんだから」


「俺は逃げない、仕事が俺を呼んでるんだ!!」


「今日は私も逃がさないもん、お祭り明後日だよ!!」


「知るか、人前で恥かくの俺なんだよ!!」


「大体よ、勇者さま御一行になったら、俺が真っ先に死ぬ!!!」


グレンは走り出す。


「逃げるな~!!」


セレスは逃げようとするグレンに手をかざす。攻撃を感じ取ったグレンは全身に魔力をまとい、電撃に備える。


「グ~ちゃん、止まれーーー!!」


セレスの片手から電撃が放たれる、グレンは炎で壁を、電撃を防ぐ。


「馬鹿!! 怪我するだろ!!!」


「一緒に来ないと、もっと凄いの撃っちゃうよ~」


セレスは茶化すように言う。


この野郎、馬鹿にしやがって・・・。


「グ~ちゃん、打っちゃうよ~」


「ぐーちゃん言うな・・・恥ずかしい」


「良いじゃんそんな事、それより行く? 行かない?」


セレスが怖いから、グレンは肩を落とし。


「行っても断るからな」


「にへヘ~ じゃあ行こっ」


しゃくに障る笑い声と共に、手をさし出してくる。


「なぜ俺がお手てつないで歩かなきゃいけないんだ?」


断られたセレスは、満面の笑顔でグレンに手の平をかざす。


「にへへ~ 仲良くしなきゃ撃っちゃうよ」


グレンは涙目になりながらセレスの手をつかむ。




妖怪の家に向かって田舎道を歩く2人。


「ねぇ、なんでそんなに勇者に成りたくないの?」


「なんでって、俺は他の候補より弱いからだ」


セレスは首を横に傾けると。


「だれが?」


「俺だよ」


「グレンちゃん、私より戦い方上手じゃん」


「当たり前だ、お前と違ってこっちは魔力を考えながら使わんと、直ぐに空になる」


「ひどい!! 私が何も考えないで戦ってるって言うの?」


実際その通りだろ、お前。


並位だけなら問題ないが、剛炎を一度でも使えばその後は辛くなる。


「それでもお前に勝ったことは、今まで一度もないだろ」


「えっへん」


威張るなちくしょう。


「でもグレンちゃん、自分で思ってる程弱くないと思うけどな~」


慰めは結構です。



暫くして、妖怪のねぐらに到着する。


妖怪の分際で、俺より立派な家に住みやがって。


「気を付けろセレス・・・相手は化物だ」


「オババ地獄耳だから聞こえるよ」


グレンは恐る恐る扉を開ける。


「オババただいま~ グレンちゃん連れてきたよ~」


「婆さーん、死んでるかー」


入った瞬間、小さい妖怪に頭を杖で叩かれた。


「若造!! 師匠に向かってヨウカイとは何事じゃ!!」


「何しやがる! ボケたのか!! 認知か!!! 爺さんか!!!!」


「婆さんじゃ!!!」


また叩かれた。


ちなみに、この妖怪は俺の師匠だったりする、炎を操る化物だ。



グレンは頭をさすりながら


「用は何だよ?」


「言わんでも分かっとるじゃろ・・・なんど来いと言っても、逃げてたのがその証拠だわい」


だって嫌なんだもん。


「なあ婆さんよ、別に無理に炎に拘らなくても良いだろ、属性が被ったて良いじゃないか」


「大体さ、勇者に成りたい奴なんて沢山いるだろ?」


セレスが口を挟む。


「属性だけで選んだわけじゃななくて、オババはちゃんと考えてグレンちゃんに決めたんだよ」


「じゃあ何か? 俺が婆さんの弟子だからか?」


「いくら俺が可愛いからって、そりゃねえだろ」


婆さんは突然、俺に火を投げつけてきた。


「熱いじゃないか婆さん! 何しやがる!!」


「若造め、こうしてやる!! ほりゃっ!! ほりゃっ!!」


婆さんが俺に火を連続で投げつけてきた、家の中で危ない婆さんだな。


「婆さん照れるなって、意外と可愛いとこあるな」


今度は殴られた。


「悪かった、もう止めてくれ」


「もう絶対お主が勇者候補じゃ、なんといおうと絶対じゃ!!!」


お、おいマジかよ。ああ、婆さん拗ねちゃって可愛い。


「やった!! これでグレンちゃんと一緒に旅ができるね」


お前は喜ぶな・・・どうしよう。


「なあ勘弁してくれよ、俺じゃあ真っ先に死ぬぞ」


俺は魔王どころか、魔族にすら勝てんよ。


「馬鹿者、ワシだって力量くらい考えて選ぶわい」


だから何でそうなるんだ。


「ぬふふ~ グレンちゃんと一緒に旅~」


「セレス・・・遊びに行くんじゃないんだぞ、死ぬかもしれないんだからな」




実際に5年前に旅立った勇者御一行は、4人中3人死んで1人帰ってきた。


「大丈夫だよ~ だって私、強いも~ん」


一々ムカつくな、この銀髪は。


「お前が大丈夫でも俺は死ぬんだよ」


「大丈夫大丈夫~」


もう嫌、こいつと一緒に居たくない。


「グレンよ・・・そろそろ覚悟を決めんか、もう諦めろ」


「何でだよ」


「だってな、国王に勇者候補のリスト送ったから、もうお主に選択券は無いぞぃ」


「・・・取り消せない?」


「無理だな、速く来なんだお主が悪いんじゃ」


グレンは肩を落とす。


「分かったよ・・・行きますよ」


「よろしくね、グ~ちゃん」


「少しほっといてくれ、家に帰って寝る」


グレンは立ち上がり帰ろうとする。


「待たんか、馬鹿者」


「なんだよ婆さん・・・まだ用か?」


「今から他の2人に挨拶に行け、死地を共に歩むのじゃからな」


「今度じゃ駄目か?」


「駄目じゃ、今行かんとお主の事じゃから行かんだろ」


「分かったよ・・・で、誰だ後の2人は?」


「アクアとガンセキじゃ」


げっ!! アクアかよ、あいつ苦手なんだよな。



あれ? ガンセキさんってたしか。


「前回の生き残りだよな」


「そうじゃよ、奴は今年で30だから、まだセーフじゃ」


まあ、ガンセキさんなら経験者だし、頼りに成るな。


「しょうがない、ちょっくら挨拶にでも行ってくるか」


「あ、私も行く~」


「こりゃ、お主はワシと儀式の準備じゃ」


「ええ~ 私もグレンちゃんと行きたいよ~」



俺は無視して外に出る。


「あ、待ってよ~」


「こりゃ!!」


へっ、ざまみろ。妖怪に叩かれてら。


さて、どっちから行くかな。アクアは、会いたくない。


ガンセキさんからにしよ。


グレンは歩き出す。






まったく・・・俺が勇者に成れないことは、婆さんが一番良く分かってる癖に。


まあ、セレスと旅に出るには・・・候補に成るしか方法はないか。





8章の半ばあたりから、この作品は三人称になります。ごめんなさい。


達者な文章は書けませんが、読んで頂けると嬉しいです。

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