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炎拳士と突然変異  作者: 作者です
2章 黒く、誇り高き獣
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四話 俺が信じる者


夜が明けて、4人は再び歩き始める。


ガンセキにつれられて、街道を外れ薄暗い森の中に足を踏み入れる。


「いいか、此処から魔物の縄張りに入る・・・敵の存在を確認しながら進んでいるが、お前等も気を引き締めていろ」


3人は頷く、グレンがガンセキに尋ねる。


「ところでガンセキさん、俺達は何処に向かっているんすか?」


「この先に、木の数が少なくて、地面も比較的に平らな場所がある、お前の策はある程度足場が確りしてないと上手く行かないだろ」


アクアが疑問を口にする。


「ガンさんは、何でこの先にそんな場所がある事を知っているのさ?」


ガンセキは笑いながら。


「実は前回の旅でも、今回同様に4人の連係を確かめる為に、この先の場所で群れの魔物と戦ったんだ」


成る程な・・・まさかして、レンガに着く前に一度4人で魔物と戦うのは、旅の始めに毎回行っている事なのかも知れないな。


「ねえねえグレンちゃん、私達が戦う魔物って、どんな魔物なの?」


「昨日の夜に説明しただろ・・・お前寝てたから知らんか」


勇者が作戦に参加しないで寝てるって、有り得ないだろ・・・まったく。



セレスに今回、俺達が狙う魔物を説明する。


【犬魔】・・・4本足で歩行し、鼻先から尻尾の先まで大体1mの小型の魔物だ。


基本的に鋭い牙で噛み付いてくる、固体としては弱いが10~20の群れをなして行動する。


知能は其処まで高くないが、本能で連係を可能にして、強い(ボス)には服従を示す、順位制の構造社会を持っている。


ちなみに雑食らしい。




グレンの話を聞いたセレスが。


「ふえ~ 何か緊張してきたよ~ にへへ~|


緊張感の欠片も無い口調で話す。


俺はと言うと、自分の立てた作戦が失敗したらどうしよう、と言った理由で緊張しっぱなしだ・・・こう言う事があるから俺は今まで、1人で戦ってきたんだ。


まあ、ガンセキさんが俺の策に手を加えたから、少しは安心しているんだけど。


暫く無言で歩き、4人は目的の場所に到着する。


ガンセキはグレンに話し掛ける。


「どうだ、こんな場所だが走れるか?」


グレンは辺りを見渡し、靴底で地面を踏む。


湿っていて軽く足を取られそうだけど、問題ない・・・辺りは人工的に作られた広場ではなく、自然に出来た木の少ない場所って感じだ、地面も平らではなく所々に窪みや軽い傾斜はある・・・でも、森の中で走り続けるには、もってこいの場所だと思う。


やはり俺は策士として未熟だな、俺の立てた作戦はある程度走り続けられる場所が必要だった、今回はガンセキさんが予め良い場所を知っていたお陰で助かったようなもんだ。



「はい大丈夫です、此処なら走り易いですし・・・一応足場の悪い場所を魔物から逃げ切った事もあるんで」


「そうか・・・とりあえず此処の中心で魔物が現れるのを待つぞ」


ガンセキに続いて、3人は戦場になる場所の中心に向かう。


中心に到着すると、ガンセキは杭を4本地面に打ち、地の祭壇を造る。


地の祭壇から出ると、少し離れた所に荷物を置く。


「お前等の荷物も此処に置いてくれ」


ガンセキの言葉に従い3人は荷物を置くと、ガンセキは地面に手を添えて、隠し岩を召喚する。


並位中級魔法、隠し岩・・・人や荷物などを岩の中に隠す、人の気配等も隠す事が可能、長時間使用による魔力消費の為、野宿には使えない。




ガンセキが戦闘の最終確認に入る。


「良いか、俺の居る場所が今回の戦場の中心になる」


3人は頷く。


「アクアとセレスは、出来るだけ俺に敵が近づかないように戦ってくれ、俺は自分の身は守るが攻撃は基本しない、俺が守るのはグレンと自分だけになる」


「ボクはセレスちゃんと、ボク自身を護れば良いんだね」


「私は敵を沢山倒しま~す」


「セレス、アクアさんから離れすぎるなよ、あとガンセキさんに近づいた魔物を叩くのもお前の役目だ」


セレスは頷いて。


「わたし頑張るよ~ にへへ~」


大丈夫だろうか・・・。



「グレン、今回の作戦は俺がお前をサポートするが、敵から見たらお前は孤立している、実際に一番危険なのはお前だ・・・危ないと思ったらそのまま逃げるより、俺達3人の居る場所に戻ってきた方が良い筈だ、迷惑を掛けるなんて考える必要はない、自分の命を第一に考えろ」


「分かってますよ、自分の命は俺も大事ですからね・・・でもその時は、俺の引き連れていた魔物も一緒に帰ってくる事になりますよ」


セレスが笑いながら。


「大丈夫大丈夫、だってわたし強いも~ん」


なんかムカつく。


アクアは何時もの調子でグレンを茶化す。


「でもグレン君、すぐに根を上げちゃ駄目だよ、少しくらい粘ってから帰ってこないと、今度からヘタレって呼ぶからね」


「その時は魔物を引き連れて、お前の元に真っ先に帰ってくるからな」


グレンの言葉にセレスが反応する。


「だめ~!! グレンちゃんが帰ってくるのは私の所なの!!」


ああメンドクサイ・・・セレスはメンドクサイ。



ガンセキは全員を見渡して。


「良いか、魔物を呼び寄せるぞ」


3人が頷く・・・それを確認すると、闇のランプを取り出して、闇魔力を外に放出する。


闇魔力と言っても黒い訳ではなく、肉眼で確認する事は出来ないけど、何となく感覚で分かる。


「ああ!! ガンさん勿体無いよ、闇魔力はお金になるんだよね?」


ガンセキは説明する。


「この闇魔力で、奴等を誘き寄せるんだ・・・群れの魔物は基本、別の群れが縄張りに進入するのを嫌う。 群れの魔物達は、放たれた闇魔力を別の群れと勘違いするんだ」


成る程な・・・敵が現れる前にガンセキさんに聞きたい事がある。


「この場所から、群れの大きさは分かりますか?」


ガンセキは暫し考えながら。


「今は陽が昇っているから、奴等は数ヶ所に別れた(ねぐら)に篭っていて正確な数は分からないな」


「そうっすか・・・」


「だが、予想なら出来るぞ」


そう言うと地の祭壇の中に入り、地面に手を置き、集中に入る。


「そうだな・・・塒の数から判断すると・・・かなりの大所帯だ」


確かに俺達人間は、群れが大きくならないように周期的に狩っているが、群れの魔物の中には犬魔のように、ボス同士が戦って勝った方が負けた方の群れを吸収する、と言う習性を持った魔物がいる。


以上の理由から、短い期間で大きな群れが出来てしまう事もある。


・・

・・

・・


数分の時が流れる・・・ガンセキが言葉を発する。


「全員魔力を纏え、来るぞ!!」


その言葉の次の瞬間だった。


薄暗い木々の隙間から、複数の目が光る。


グレンは苦笑いを浮かべながら。


「どうやら・・・俺達を歓迎する気は無い様だな」


その魔物達の目は敵意を向き出しにしながら、喉を鳴らしている。


「なんか、数多くないかな・・・30体超えてるよね?」


アクアの声に、何時もの余裕が消える。



犬魔達は俺達を包囲するように、全方向から現れていた。


俺達の立っている、この場所の中心に少しずつ近づいてくる。


だが所詮は魔物だ・・・知能は高くない、俺達を逃がさない為に、全方向から現れたのに隙間がある、その間を俺が走り抜ける事は可能だと思う。


もし知能の高い敵なら、ワザと隙間を造って其処に誘い込む、なんて事も考える必要があるけど・・・今までこいつ等から逃げ回ってきた俺の経験上だと、そんな事は出来ない魔物の筈だ。


セレスがグレンの服を掴み、不安の表情を向ける。


「グレンちゃん、大丈夫かな・・・わたし・・・」


グレンはセレスの手を払う。


「セレス、いい機会だから言っとくけどよ、お前はどんなに周りが動揺していても、絶対に恐怖を表に出すな、常に冷静でいろとまでは言わない・・・だけどよ、周りがお前の恐怖を知れば、動揺を通り越して混乱に成る」


「グレンちゃんは何時も意地悪だよ・・・」


「どんなに怖くても、何時もみたい能天気に気持ち悪い笑顔をばら撒けって言ってんだ、そんなに難しい事でもないだろ?」


お前は何時もみたいに、ヘラヘラ笑ってろ・・・それだけで、周囲の連中は希望を持つんだ。


「ぶ~!! グ~ちゃんの馬鹿!!」


「馬鹿はお前だろ、馬鹿」


ガンセキは2人を見て。


「お前等はこんな状況でも変わらんな・・・だが、張り詰めた嫌な不陰気は解れた」


「もうグレン君の病気は所構わずだね」


嫌味な笑顔をグレンに向ける。


「にへへ~ わたし頑張るよ~」


「その調子だセレス、それこそがお前だ」



犬魔の群れは、少しずつ4人に近づいてくる。


「一ヶ所の塒に動きがない・・・其処にボスがいる筈だ」


「ガンセキさん、俺達を囲っている犬魔の数は分かりますか?」


「そうだな・・・40前後だ、行けるかグレン?」


グレンはガンセキに笑顔を向ける。


「こいつ等から逃げ切った事は何度もあるんですよ、何とかしますよ」


「グレン君、逃げ足を自慢するのはどうかと思うよ」


「グレンちゃんカッコ悪い、でも私は見捨てないからね安心して」


こいつら・・・何時か見てろよ、ギャフンと言わせてやる。



犬魔達は刻々と4人に迫る・・・。


「グレン、俺が合図するまで動くなよ」


「速くしてもらいたいです、足が震えてるんですが」


「グレン君、そんなんで大丈夫なの?」


「こうやって、ただ立っているのが一番辛いんだよ、事が始まれば落ち着くんだ」


セレスがグレンに・・・。


「グレンちゃん、神様のご加護が・・・きっと、護ってくれるよ」


勇者の言葉に炎使いはニヤケながら。


「悪いが俺は神って者を、信じちゃいないんだ」


「俺が信じるのは・・・背中を任す土使いと・・・」


ガンセキが照れくさそうに鼻を擦る。


「何時も俺を馬鹿にする嫌味な水使い・・・」


アクアが何故か嬉しそうに笑顔を向ける。




「それと・・・勇者だけだ」


セレスは黙って目前に迫る敵を・・・。




犬魔が俺達を攻撃しようと、一斉に姿勢を低くした、その瞬間だった・・・ガンセキが叫ぶ。


「今だ!! グレン、行け!!」


グレンは片足で大地を蹴る、残った片足で大地を踏み締め再び蹴る。



グレンは敵中へ・・・走り出す。





4人の戦いが、始まる・・・ ・ ・






2章:四話 おわり





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