三話 作戦会議
暗い闇の中、4人の声だけが辺りに響く・・・耳を澄ますと葉と葉が擦れた音や木々のざわめきも聞こえる。
4人は食事を終え、小型のランプを囲みながらガンセキが。
「とりあえずレンガに到着してから勇者の旅の目的を説明する」
アクアが不満を浮かべながら。
「ガンさん、もったいぶらないで今教えてくれても良いじゃないか」
ガンセキは苦笑いを浮かべて。
「そう言うな、レンガに着いてからの方が都合が良いんだ」
グレンはアクアに。
「まあ旅の掟みたいなものだろ、今は説明できないんだよ」
「分かったよ、レンガに着いてからのお楽しみだね」
アクアは渋々納得する。
「うへ~ でも後2日は歩かなきゃいけないんだよね~ たいへんだな~」
「レンガまで走るとか言ってた馬鹿は、何処の勇者だったかな」
「グレン、お前のその口が喧嘩になるんだ、野宿中は慎んでくれ」
ガンセキさんに怒られてしまった・・・セレスの所為だ。
「グレン君、ガンさんに怒られたね」
アクアが嫌味な笑顔をグレンに向ける。
「ガンセキさん、喧嘩の原因はアクアさんが俺を馬鹿にするからいけないんです」
「ボク悪くないもん!!」
「2人とも私の為に喧嘩するのはやめよ~よ」
喧嘩の原因は、セレスが馬鹿すぎる所為もある。
再び騒がしくなり始めた3人に、ガンセキが睨みを効かせる。
たちまち3人は静かになる。
グレンは恐怖を振り払って、ガンセキに問う。
「ところで、旅の目的はレンガに着いてからで良いとして、今そんな事を言うって事はレンガに到着する前に、何かする事が有るんですか?」
ガンセキは笑顔を取り戻す。
「察しが良いな」
「この中で魔物との戦闘経験がそれなりにあるのは俺とグレンだけだ」
アクアだって魔物と戦った事は有るだろうけど経験は少ない、セレスは俺の仕事を無理やり手伝って魔物と戦った事が何度かあるが、その時は危険が少ない場所で、比較的弱い敵を選んでいた、セレスに何かあったら村の一大事になるからな。
ガンセキはグレンを見て。
「だがお前も人と組んで戦った事は殆どないだろ?」
グレンは頷く。
「まあ・・・1人の方が気が楽ですし」
「つまり俺達が全員で戦うと、個々の能力を発揮できない可能性がある」
セレスはなぜか自信満々に。
「ガンセキさん大丈夫ですよ~ グレンちゃんと一緒に戦った事があるけど楽々の圧勝でしたよ~」
「セレス、魔物を甘く見んなよ・・・俺達が戦ったのは比較的に弱くて、小さい群れの魔物だ」
ガンセキが一度、場を纏める。
「それでだ・・・明日、陽が昇ったら一度魔物と一戦交えようと思う」
そう言うとガンセキは荷物の中から、小さなランプ見たいな物を取り出す。
「何すかそれ?」
「これは闇のランプといって、闇の宝玉が使われている」
宝玉の説明をする・・・宝玉とは人が造り出した物ではなく、自然界が造り出した物である。
入手方法は様々で、鉱物のような物を人の手で加工して造ったり、魔物の体内で造られたり、貝の中から出来る物もあるらしい。
宝玉はそのまま使っても意味がなく、武具や防具などに埋め込んだり、宝玉を特殊な製法で熔かして鉄やガラス等に混ぜる必要がある。
宝玉自体には魔力がなく、それを埋め込む又は混ぜ込んだ物に、使用者が魔力を注ぐ事で力を発揮する、また宝玉の純度によってその効果が変わる。
濁宝玉・・・数が多く、人の手で造り出す技術もある、弱い力しか発揮しない。
宝石玉・・・濁り玉ほど多く取れないし造り出す技術はまだない、宝石のように綺麗だが秘める力は標準。
純宝玉・・・極めて少ない、先が見えるほど澄んでおり、職人しだいで名の残る代物が造れる。
事実、歴史にその名を残す武具には、その殆どに純宝玉が使われている、しかし純宝玉自体の硬度は極めて低い為、これを使う場合は金属に混ぜ込む以外方法がない。
宝玉を鉄に混ぜ込むの際、熔かした宝玉に不純物が混ざってしまう事があり、この工程はかなりの技量を必要とする。
だが宝玉を埋め込むよりも混ぜ込んだ方が、宝玉から引き出せる力は大きい。
当たり前だが、一度混ぜ込んでしまうと二度と宝玉は取り出せない。
恐らく・・・ガンセキさんの杭は、土の純宝玉が混ぜ込んである筈だ。
宝玉の能力は、武具防具によって変わる。どんな用途に宝玉の力を利用するかは、職人が決めるってことだ。
例えばガンセキさんの杭は、土神との共鳴率を上げる。
俺の水宝玉(濁)の手袋は、熱さを防ぐ。
炎使いの俺が水の宝玉を使える理由を説明すると。
魔法・・・属性使いは神に魔力を送り、そのかわりとして神は属性使いに魔法を。
宝玉・・・属性使いは宝玉に魔力を注ぐ事で、武具が力を発揮する。
人が持てる属性は1人1属性だが、宝玉は魔力さえ注げば使うことが出来る。
ただし、炎使いは炎魔法専用の魔力、水使いは水魔法専用の魔力である。それ故に炎使いが水宝玉を使っても、引きだせる力は少ない。
だが世の中には俺みたいな例外も存在する。火宝玉は俺の魔力に全く反応しない。
俺が火宝玉の入った武具を使っても、何も起こらない。
最後に宝玉が宿っている武具・防具・道具は、宝玉具・または玉具と呼ばれている。
話が長くなった、闇のランプの説明に戻る。
ガンセキは闇のランプを3人に見せながら。
「これに使われているのは闇の宝石玉で、このランプは倒した魔物の闇魔力を吸い取る力がある。まあ、吸い取る量にも限界はあるが」
セレスが首を傾げながら。
「ガンセキさん、魔物の魔力を吸い取ってなにするの?」
お前の馬鹿な頭では分からんだろう・・・俺は頭が良いから何となく分かったけどな。
「魔物を狩った証として、そいつの素材を村に持ち帰り、金にするのと同じですよね?」
「そうだ、このランプをレンガにある軍の施設に持っていくと、溜まっている闇魔力の量に応じた金を貰える」
アクアが疑問を口にする。
「闇の魔力がなんでお金になるのさ?」
「1つは魔物を倒した報酬だ。もう1つは闇魔力を利用して、レンガの中に魔物が進入しないように出来るらしい」
どんな方法なんだ・・・逆に危険な気がするんだけど。
「確か・・・集めた闇の魔力をレンガの周辺で開放することにより、周りの魔物は別の魔物の縄張りと勘違いして近寄らないらしい。それでも寄ってくる魔物はレンガの軍が駆除する。そんな感じだったかな」
ガンセキさん、俺の心を読んだのか?
「いや、お前がそんな顔してただけだ」
「俺そんなに顔に出ますかね」
グレンとガンセキの会話を聞いたセレスが、顔をニヤニヤさせながら。
「グレンちゃん、わたしも分かるよ~ さっき私のこと、心の中で馬鹿にしたでしょ」
「今だけじゃない、俺はいつもお前を馬鹿にしているぞ」
「グレンちゃんの馬鹿!!」
お前にだけは馬鹿と言われたくない。
「馬鹿が人に馬鹿と言う行為は、自分が馬鹿と証明している大馬鹿者だぞ、馬鹿」
「馬鹿って6回も言った、グレンちゃんなんてもう知らないもん!!」
「馬鹿は5回しか言ってないぞ、数も数えられないのかお前は」
少し口の悪さが行き過ぎたようで、アクアが怒りだした。
「グレン君、さっきガンセキさんに怒られたばかりじゃないか。それに女の子に馬鹿馬鹿いっちゃ駄目だよ」
「男女なんて関係ない、俺は尊敬すべき人間にはちゃんと敬語らしき言葉を使うぞ」
「お婆ちゃんには、かなり口が悪いじゃないか」
「あの婆さんは尊敬すべき所は沢山あるが、それ以上の理不尽と身勝手と弟子に対する虐めがあんだよ」
平気で俺に向かって高位魔法を使ってくるのは、あの婆さんだけだ。
もっとも俺が婆さんに口が悪い理由は、一緒に暮らしてたからだろうけどよ。
俺の態度にアクアも諦めたのか、最後に一言。
「グレン君の口の悪さは、病気だね・・・」
「まあ、俺も言い過ぎた感がある、悪かったなセレス」
「ほえ? 何の事?」
・・・・馬鹿だ。
ガンセキは溜息をつき。
「グレン・・・一向に話が進まないんだが、そろそろ良いか?」
もはやガンセキさん、怒るを通り越して諦めに入ってる。
「すんません、続けて下さい」
「とりあえず俺が説明すると一向に話が進まないから、お前が魔物について説明してくれ」
「いいんすか、俺なんかの説明で?」
「分かることだけで良い」
魔物の説明か・・・そうだな。
魔物・・・大昔に普通の獣だったのが、闇の魔力によって力を得て、狂暴になりそのまま進化を遂げた存在。
人間のペットや家畜、または馬などは沢山いるが、野生の獣は殆ど残っていない。
魔物には大きく分けて2種類。
群れの魔物・・・単体は小型で弱いが群れを成して、縄張りを造る。
単独の魔物・・・単体は比較的に大型で強いが、群れを成したとしても2,3体って所だな、基本は単独で行動し縄張りを持たない。
一通り説明し終えたグレンは。
「こんな所で良いですか?」
「そうだな・・・補足説明をすると、群れは夜でも縄張りに進入しなければ人に危害は加えない。だが群れが大きくなると半数を縄張りに残して、近隣の村を襲うことがある」
だから群れが巨大になる前に、周期的に群れの魔物を狩る必要があるんだ。
「単独は夜になると餌を求めてさ迷い歩く、人を見るや否や襲ってくる」
群れの中には、縄張りを何らかの理由で奪われ、新たな居場所を求めて昼夜関係なく動き回る奴等も居る。
単独は一説によると、群れから追い出されたはぐれ者が必死に生き残り、長い年月を掛けて進化したという説もある。
ここまで説明を聞いたアクアがグレンに質問する。
「グレン君は仕事のとき、どうやって戦ってたの?」
「俺のなんか教えても、参考に成らないと思うけど」
断ろうとしたグレンをみて、ガンセキはすかさず。
「いや、グレンの魔物狩りには俺も興味があるな」
あんまり期待されても困るんだけどな。
グレンは思い出すように、語り始める。
まず・・・俺が狩りをする時は、群れは狙わない。
理由は俺が1人だからだ。囲まれたら戦いようがない、それに群れは縄張りを熟知してるからよ、逃げたり隠れるのが困難だ。
単独タイプは強いが、一体に集中して戦えるから俺としては戦い易い。また逃走も群れと比べると容易だ、逃げるというより隠れてやり過せる。
俺は戦いにおいて、勝つよりも逃げることを優先させている。実際に戦闘に入る前に隠れられる場所と、逃走経路を数ヶ所探してから狩りを始める、これを完璧にやっとかねえと後で痛い目に遇う。
それらの下準備を終え、次は単独の魔物と戦う場所を探し、そこの物陰に隠れて目的の魔物がくるのを待つ。
戦いの場所に予め罠を仕掛け、それに魔物を誘い込んで戦った事も有ったな。上手く行かなかったけど。俺はあんま器用じゃねえんだ。
ただこのやり方は、ある程度一定の場所に留まり熟知する必要がある。旅の道中だと魔物の方から仕掛けてくる可能性の方が高いし、戦闘場所も所々変わるからこの方法は使えない。
セレスはグレンの話しを聞いて。
「ほえ~ グレンちゃん色々考えてお仕事してたんだね」
「最近になって、やっと南の森を熟知出来きた所で、勇者候補に選ばれちまったんだよ」
大雨とかが降ると地形が微妙に変わるんだよな。
「でもさ、グレン君。なんでそんな危険なことしてまで、一人で戦うことに拘るかな?」
気が楽だからだよ、仲間に何かあったら、その家族に何て言えば良いんだよ。
「・・・報酬が多いからだ、2人で狩ったとしても半分になっちまう」
「グレン君は金の亡者だね」
「うるせ」
ガンセキはグレンを見て。
嘘だな。先ほどの話を聞くと、何日も魔物を狩れない日があっただろう。数人で魔物を狩った方が間違いなく効率も良く、報酬だってより多く受け取れるはずだ。
それに危険が大きすぎる。隠れる場所や逃走経路を探している最中に、群れと出くわし追いかけられた経験だって何度もあるのではないか。
凶暴な単独の多い南の森を仕事場に選ぶとは、オババも酷なことをする。
セレスは気付かなかったのか。グレンが重症を負ったことは、少なくとも1度はある筈だ。
その時はオババが上手く誤魔化していたのか?
恐らく・・・旅に出た経験のない村人の中では、こいつ以上の実戦経験を持つ者はいない。
ガンセキは話を本題に移す。
「明日、俺たちが狙うのは犬魔だ。それも20を超える群れを狙う」
20を超える群れと成ると、本来ならこちらも8人はそろえる必要がある。
「この人数で20を超える群れと戦うのは、正直危険だと思いますが」
「実をいうと勇者の村に退治の依頼があってな。数週間前に近辺の村が、群れの魔物に襲われている」
他の村にだって、属性使いはいる。勇者の村に頼む必要がある程の群れか。
「ますます危険なんじゃ」
「まあ、そうなんだがな。勇者の村だって、ほかに回す余裕がある訳じゃない」
勇者の村が、あんな森の中に存在するのは、それだけあの森に魔物が多いからだ。あの村は他村を護るためにある。そういっても過言じゃない。
「俺たちが狙う場所が大群れの縄張りと決まった訳ではないが、それでも勇者一行として、人々の為になるだろ」
まあ、もっともか・・・そのための勇者一行だ。
グレンは納得する、それを見たガンセキが話を続ける。
「まず群れを狩る場合の基本を教える。群れの中には必ずボスがおり、ボスを打つだけで群れは混乱して戦いが一気に有利となる。だがボスは種にもよるが基本的に攻撃は仕掛けてこない。ボスまで到達するだけで一苦労だ」
グレンが問う。
「それで、戦法は?」
「その前に3人の考えを聞かせてくれ」
アクアがガンセキに。
「ボクの雨魔法は使うの?」
雨魔法を使うとアクアは他に魔力を回せなくなる、でも今はガンセキさんがいるから、防御面は気にしないで良い筈だ。
「そうだな・・・俺の意見をいわせてもらうと、戦闘において護りに重点をおきたい。できれば雨魔法は使わずに、アクアには俺の補助をしてもらいたい」
賛成だ、こっちには味方が4人しか居ないんだ。雨魔法を使うには、少し心もたない。
セレスが手を上げる。
「はいは~い、私の天雷雲で皆纏めてドッカーン!! なんてどうかな~」
ガンセキさんにセレスを護って貰い、その間に天雷雲を頭上に造り出すことは可能だろうか?
「セレス、天雷雲で戦闘範囲を覆うのに時間はどれくらい掛かる?」
「ん~とね、2分もあればできると思うよ」
「ガンセキさん、俺たちを一ヶ所に集めて2分、20体の攻撃を耐えることは可能ですか?」
ガンセキは暫し考える。
「相手は魔物だ、雑魚でもそれなりの攻撃力を持っている。だが敵の数にも寄るが、雑魚だけなら耐えられる筈だ」
「問題はボスだな・・・大群れのボスとなると、恐らく魔法は使えなくても全身に魔力を纏い、基礎攻撃力を高める事が出来るはずだ。それを2分間くらい続けるとなれば厳しいな」
ガンセキの話を聞いて、グレンがセレスの方を向く。
「セレス、そうなると俺とアクアさんは、お前とガンセキさんに雑魚や下手すればボスを近づけないように戦う必要がある」
セレスは頷く。
「二分くらいなら護り抜けるかも知れない。だけどよ、お前は俺やアクアさんを巻き込まないように、天雷雲を放つことはできるか?」
セレスは満面の笑顔を向けて。
「にひひ~ できませ~ん」
「悪いが俺もアクアさんも、天雷雲を防げないと思うぞ」
天雷一発なら剛炎の壁でなんとかできるけど、それが複数は無理だ。
「そもそも高位魔法を使えば、俺の魔力に余裕がなる・・・却下だ」
セレスがショボクレル。
ガンセキはグレンを見て。
「それで、お前ならどんな手を打つ」
策を練る前にガンセキさんに聞きたいことがある。
「ガンセキさんは地の祭壇なしの防御魔法で、離れた場所から仲間を護ることは可能ですか?」
「そうだな、俺を中心に半径50mで岩の壁くらいなら、即座に召喚できる」
「乱戦状態でどうやって離れた仲間の危険を察知するんですか?」
「俺自身戦いながら、離れた場所に居る仲間の防御は難しいな。3人とも近くにいれば護れるが」
近くにいる仲間の護りは可能ってことか。
「地の祭壇を使えば、自らを含めた4人を護れますか?」
「敵への攻撃はできなくなるが可能だ。大地の目を使う」
高位下級魔法、大地の目・・・地面に目を造り、離れた場所の様子を脳に直接送ることができる。
祭壇をつかい一度に複数の目を造りだせば、戦闘範囲全域の把握も可能。
「この魔法を使えば、俺から半径50m以内の仲間を護る事はできるが、俺は味方の防御で手一杯になる」
どんなに把握できても結局はガンセキさん1人で、自分を含めた4人を防御するんだから・・・それ凄く難しくないか、同時に4人を護るってどんな神業だよ。
「一つ言っとくが、完璧に4人を同時に防御するなんて俺には出来ないぞ。お前らの死角からの攻撃を防ぐだけだ、視界に入る魔物からの攻撃は各自で対処してくれ。あと敵の数と強さにより、俺自身を守リ切れなくなることもあるな」
まあ、それでも充分凄いと思うけど。
以上を踏まえて、グレンは策を練る。
しょっぱなからボスを狙うのは得策じゃないな、まずは数を減らすことを考えよう。
4人を一ヶ所に集めるのは危険だ、囲まれたら不利となる。
2手に分かれるか・・・だからと言って離れすぎると分断される恐れがある。
もし分けるとするなら俺とアクア、ガンセキさんとセレスの2組か。でも戦力を下手に分散させるのは危険か。
いっそのこと、昼に考えた3人で群れと戦う策を、ガンセキさんを含めた4人で練ってみるか。
グレン・・・他の3人が敵に囲まれないように、一人離れて囮役。
セレスとアクア・・・敵の数を減らす。
ガンセキ・・・グレンとセレスの護衛、そして自分の防御。
一人離れた場所にいる俺を魔物は狙うと思う。できるだけ俺に注意を引きつけるために、離れた敵にも油玉や火玉を使って敵に注目されながら逃げ回る。
その隙にセレスは敵を撃破してもらう。
アクアには敵への攻撃と自身の守り、それとセレスの護衛だ。
ガンセキさんは最初から地の祭壇を使ってもらい、大地の目により俺とセレスの護衛を任せる。
セレスは攻撃力が高いが、護りは俺以上に不安が残る。ガンセキさんはアクアの護りをしないことで、1人分の余裕がでるはずだ。
こんな所で、勇者を失う訳には行かないしな。
セレスとアクアは、ガンセキさんに敵が近づかないように戦う必要がある。
俺もガンセキさんから50m以上離れないように逃げないとな。
次にある程度に敵の数が減ったら、ボスを叩く・・・どうやって叩くかだ。
その前にどれがボスか見分けられるのか?
グレンはガンセキに訊ねる。
「ガンセキさん、ボスって他の雑魚と見分け付くんですか?」
「ああ、大体の見分けは分かると思うぞ、何となく放つ空気が違うからな」
今までは群れに遭遇したら一目散に逃げ回っていたから、ボスとか見たことないんだよな。
まあ良いや、とりあえずここまで考えた策を一度3人に伝えよう。
・・
・・
・・
一通りの策を聞いたガンセキが。
「成る程な・・・お前のリスクが高くないか。逃げ続けられるのか?」
「群れから逃げきった経験はあるので・・・多分俺が適任かと」
ガンセキは暫し考え、グレンに幾つか質問する。
「もし、多くの魔物がお前を狙わないで、俺たち3人を囲ったらどうする?」
「あの魔物は動き回る者を追う習性が有ります、多分俺を追ってくると思いますよ」
「それでは逆に、多くの魔物がお前を狙い、俺たち3人の周辺に残る魔物が少なかったら、敵の数を減らせないし、お前自身の危険が予想よりも高くなる可能性があるぞ」
「あいつ等にとって俺達は獲物ですから、3人を残して俺1人だけを狙うってことはないと思います」
この策は俺を追ってくる魔物が多すぎても少なすぎても駄目なんだ。
「これはあくまでも俺の予想です・・・絶対に上手く行くとは言えませんが」
ガンセキは笑いながら。
「作戦が絶対上手く行くかどうかは、やってみないと分からんよ。アクアとセレスがそれで良いなら、その策で行こう」
グレンはアクアの方を向く。
その視線を受けたアクアは、グレンに訊ねる。
「グレン君・・・4人で戦う作戦を考えたの、今回が始めてなんだよね?」
「まあそうだけど、それがどうした」
「よく作戦考えられるね・・・ボクには無理だよ」
褒めすぎだ、ガンセキさんが考えた方が、もっと効率の良い作戦が立つと思うんだけどな。どうもガンセキさんは最初から俺に考えさせる積もりのようだし。
「俺はもともと、ある程度作戦を考えてから戦いに挑んでたから、こういうのには慣れてんだよ。お前と戦う前も、一応作戦は練ってたんだぞ」
かなり運任せだったけど。
「ボクもグレン君の作戦でいいと思うよ」
「上手く行かなくても恨むなよ」
グレンはセレスに語りかける。
「お前はどうだ? 俺自身あまり自分の作戦に自信ないから、嫌なら言ってくれ」
セレスは気持ち悪い笑顔を向けながら。
「大丈夫だよ~ 何とかなるよ~」
こいつ俺の言った作戦の内容を理解してないな。ほんとに良いのだろうか。
「心配するな、お前が思ってるほど悪い作戦じゃないと思うぞ、俺は」
もし俺の策が失敗したら・・・この3人に迷惑掛けちまうな。
まあ、俺のやるべきことを確りやろう。
「ガンセキさん、俺の作戦が上手く行ったとして、敵の数を減らした後にボスをどう叩くかを考える必要があります」
「その点については俺に案が有る、あとお前の策にも幾つか改善できる所が有るから聞いてほしい」
ガンセキが今回の戦いの纏めに入る・・・
4人の・・・3人の作戦会議は夜遅くまで続いた・・・勇者の寝息を聞きながら。
果たして勇者御一行の初陣はどうなるのか。
2章:三話 おわり
どうも、此処まで読んで頂ありがとうございます。
自分は仲間の居る戦闘を書くのが始めてな者で、今回は予め作戦を立てる形にしてみました。
無茶苦茶な作戦かも知れませんが、一応この作戦で実戦を書いてみました。
上手く書けているか心配ですが、五話からが実戦になっております。
それでは今後も楽しんで頂けると、嬉しいです。
刀好きでした。