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炎拳士と突然変異  作者: 作者です
8章 デマド待機
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十二話 出発式

八日目の朝。


責任者と二名の分隊長は、昨日の夜間に顔合わせを終えている。やるべきことも全て整い、あとはデマドを出発するだけとなっていた。


時刻は六時。グレンは体術の訓練を終らせると、自室へ向けて足を進める。


赤の護衛が訓練を始めたのが五時であり、荷馬車が組合を離れたのが五時半すぎ。今ごろ物資は分隊の手に移り、壁の外で待機しているのだと思われる。


組合内は所々に物が散らかり、今は数名の組合員が片づけをしている。先ほどまでの喧騒が嘘のように、そこは静寂に包まれていた。




一般兵と属性兵を合わせた二十名。ほかには救護兵が二名いるが、彼らは軍医ではない。一通りの応急処置を学んだ兵士であり、余程のことがなければ戦闘には参加しない。


護衛の対象となる二台の馬車は、ピリカを含めた五名の商会員で管理をする。


レンガからの物資が作戦の中心となっているため、デマドから中継地への輸送は、他方よりも多くの護衛が配置されていた。


これに勇者一行を含めれば、約三十名で中継地を目指すことになる。



グレンは周囲を見渡しながら、この村で学んだことを振り返る。


作戦の土台はレンガでも鉄工商会でもなく、全てを繋ぎあわせている構造であり、これが途切れると討伐実行の前に作戦は失敗する。


前線の指揮はホウド大隊長に任されていた。


通常の戦争とは違い、意識を向けるのは一ヶ所であるため、彼がヒノキ山にいるのは解る。


刻亀討伐に使うことのできる金は無限ではない。


それらをやりくりしている者たちは、レンガや中継地にいるのだと考えられる。だがその上席となれば、ホウドよりも権力をもっているのではないだろうか。


赤の護衛が任されているのは、刻亀と戦う方法だけであるため、本来はここまで考える必要はない。しかし魔王の領域を知らないグレンにとって、この作戦は確かな経験となっていた。



人が少ないからか、青年の足音が響いていた。


朝になろうとこの廊下は暗い。壁に設置された玉具で周囲を照らすと、グレンは時計を確認した。


・・

・・


窓からは太陽の光が差し、それが室内を照らしている。夜間の演出も綺麗だったが、どちらかといえば今の方が好みであった。


使われている家具は地味なだけで、安物というわけではない。もしこれが組合長の嗜好なら、赤の護衛とは気が合うのだろう。


グレンは普段着を脱ぐと、それを自分の荷物へ詰め込む。布で全身を拭いたのち、アクアに改良された火の服を着る。


今は武具を装備していないため、これらの動作に問題はない。


逆手重装の有無で彼の実力は大きく違ってくる。だがそれは戦いという一点だけであり、生活をする上では邪魔にしかならない。



グレンはまだなにも食べていない。先に朝食をすませるか、それとも武具を装備してから食堂に行くか。


悩んでいる時間はない。ガンセキの話では、七時までに組合をでることになっていた。


村での食事も今日で最後となる。グレンは急いで支度をすませると、素手のまま自室をあとにする。


彼は逆手重装よりも、食欲を優先させたのであった。




足音の間隔は今までよりも速い。廊下の先は外気に触れた通路となっており、石造りの建物へと通じていた。


草木の手入れも見事なもので、食堂の外見や渡り廊下などを、それらは美しく彩っていた。


だがグレンは気づかない。今は食べることだけに夢中である。逆手重装をまとうのに三十分とすれば、のんびり食べている時間はなかった。


食堂では献立表から注文しなくてはならないが、その点はガンセキに任せておいた。なんらかの手違いがなければ、すでに用意されているはずである。


この村は金があるぶん、美味いものを食べさせてくれる。レンガの食事所だとしたら、それなりの有名店になっているのではないだろうか。


オバハンの食事だと、恐らく検査に引っかかてしまい、都市での営業は難しいと思われる。



などと馬鹿なことを考えているうちに、グレンは木製の扉へと到着した。それには窓がついており、中の様子をうかがうこともできる。


今のところ食堂はあまり混んでいない。村人も利用することはできるが、ほとんどは個人宅で食事をつくっている。ましてや朝食をここでとる者も少ないだろう。


グレンは安心したのか、一息つくと扉を開ける。三人は食堂の隅に座っており、どうやらもう食事は終わったあとらしい。



セレスは相手の姿を確認すると。


「グレンちゃん遅い。ごはん冷めちゃったよ」


「悪かったな。まあ冷めようが、食えりゃそれで良い」


朝食はすでに用意されていた。だがグレンはガンセキへの礼を忘れ。


「おい、これはなんの嫌がらせだ」


彼の顔は引きつっていた。アクアは満面の笑みで。


「なにごとも経験さ。いつか必要なときがくるんじゃないかな」


「ふざけんなアクアさん、俺にこれを食えというのか」


宝玉具の登場により、本物の剣を造る職人は減った。しかしこの千年でその技術は見直され、剣国の一部では未だに力が注がれている。


剣の国を目指す旅人は、フスマに立ち寄る者が多い。


ガンセキはグレンから目を背けると。


「……すまん」


この国が王政になる以前は、それぞれが力を合わせ、各国に対抗していた。本来のフスマは、剣国との激戦を繰り返す場所の一つであった。


アクアの望みを断れなかったガンセキは、グレンに言い訳をする。


「現在は盾国式が主流となっているが、レンガ周辺は昔から箸の文化も混ざっている」


もともと注文できる料理は決まっているため、今日は偶然フスマ料理が定食に混ざっていた。



フスマ周辺は剣国の一部と面しており、王都は魔王の領域に近い。


大昔は内部も含め、二大国との関係だけで手一杯となっていた。かつて存在していた国の侵略に備え、それぞれが物や者を集め、連盟騎士団と呼ばれる独立組織が結成される。


だが相手は攻撃を仕掛けてくる気配がなかったため、騎士団も表向きは友好を装う。しかし千四百年前に世界は大混乱となり、気づけばその国は黒一色の旗に染まっていた。


夜の幕開けが全人類に襲いかかる。やがて人は鎧をまとい、剣を握り締めると、盾を構えた。



フスマ料理の源流は剣国であり、それを改良したことで、今も鎧国に親しまれている。


グレンは調理のオバさんに目を向けると、箸をもって歩きだそうとした。アクアはその行動に気づき、即座に対応する。


「フスマ料理にフォークなんて邪道だよ。グレン君……箸を使おう!」


「邪道でけっこう。口に入れば一緒だろ」


セレスはニコニコしながら立ち上がると。


「誰だって最初は上手にできないんだもん。私がグレンちゃんに教えてあげちゃうよ~」


「ボルガは黙ってろ。お前に学ぶくらいなら、手づかみで食った方がましだ」


学ぶ恥よりも、できぬ恥を選んだ男。


「にへへ~ グレンちゃんったら照れちゃって。もう、可愛いなぁ~」


グレンはセレスに一歩近づくと、そのまま相手の爪先を踏みつぶす。


「そんなところに俺の可愛さはない」


勇者は痛みを我慢すると、グレンの鳩尾みぞおちに頭突きを喰らわせると。


「私がグレンちゃんを可愛いと思っているんだから、それを決めるのはグレンちゃんじゃないもん」


思わぬ一撃に対処ができず、グレンは尻もちをついてしまった。


急所を打たれたせいで、呼吸が上手くできない。


「こ、このアマ」


「グレン君。ここで怒ったら格好悪いよ」


二人を交互に見つめると。


「ちっ、ちくしょう。俺は負けてないぞ!!」


赤の護衛は両目をこすると、箸を両手にもち、逃げるようにオバさんのもとへ向かう。


ガンセキは小さく肩を丸めると。


「すまん」


セレスは反撃をしただけであり、どちらかといえば悪いのは彼であった。


・・

・・


野菜の煮物にフォークを使うと、グレンはそのまま口内に放り込む。主食もそれを利用すればいいのに、わざわざ飲料に手を突っ込んだのち、握り飯にしてかぶりつく。


「グ~ちゃんお行儀が悪いよ」


「時間がねえんだよ。だいたい食い終わったのなら、さっさと部屋に戻れってんだ」


五口ほどで食べきると、指に残った粒を片づけながら。


「もし遅れちまったらすんません」


「今はゆっくり食べろ」


組合をでるのが七時であり、八時までにデマドを出発できれば良いとのこと。


「グレンちゃんって時間にうるさいんだよね。昔はそこまで気にしてなかったもん」


そう言ったセレスへ睨みを返すと。


「井戸汲みとか時間を決めてたけどよ、誰かさんが邪魔をするせいで、俺はいつも苛ついてましたよ」


「にへへ~ 誰だろ~」


アクアはその頃を想いだすと。


「でも当時のほうが、グレン君は楽しそうだったよ」


「なんでお前が知ってんだよ。まるで見てたような言い草だな」


それは図星であったため、アクアは困った顔で。


「ボクはいつだって、君たちを見ているのさ」


「なるほど。そうやって、隙あらば俺を馬鹿にすんだな」


アクアは微笑むと、自信をもって返答する。


「そうしたほうが楽しいじゃないか」


「本当に良い性格してますね、アクアさんは」


セレスのためではなく、自分が楽しいから、グレンを馬鹿にする。


「でも性格の悪さなら、誰もグレンちゃんには敵わないよ」


「探せば上には上がいんだよ。ピリカさんなんか、なんだかんだで俺よりたち悪そうじゃねえか」


責任者は周囲を見渡すと。


「どこで聞いてるか解からんぞ」


数日前の会話を振り返れば、ガンセキも彼女の恐ろしさを認識できる。


セレスは修行場での出来事を想いだし。


「アクアが蹴っ飛ばしたときは、なんだかんだで許してくれたのに、あのときはピリカさんにうんと怒ってたよ」


「もとは口数の少ない人だったからな。当時を知っている俺からすれば、今の彼は余計に気味が悪い」


二人の関係はガンセキにも解らない。しかしゼドからすれば、ピリカは厄介な相手なのだろう。


「ボクは心配だよ。そんな二人に君が加わったら、たぶん団結の輪が乱れちゃうよ」


グレンは焼魚の骨をつまむと、それを楊枝の代わりにして。


「俺はともかく、あの人たちは大丈夫だろ。人付き合いを無視すれば、商売なんて成り立たないんじゃねえか」


人を相手に金を稼いでいるのだから、ピリカとゼドはそのすべをもっている。



ガンセキはある人物を思い浮かべると、一行の三人に向けて発言する。


「集団の中に乱す者が一人いたほうが、意外と団結するのかも知れんな」


個々の意見が異なれば、調和を保つことはできなくなる。


「話し合いを繰り返す集団ほど、仲違いは連発するものだ。時に関係の修復が難しくなることもある」


「ゆっくり進もうとする者いれば、それに苛立つ者もいる。方針を決めるのは責任者だけど、それに不満がある奴も当然います」


決まった以上は黙って行動するべきか、愚痴をこぼしながら従うべきか。


アクアはグレンに笑顔を向け。


「もし意見が違ったときは、ボクだって君と対峙する。まっとうな理由で輪を乱すのなら、誰も嫌ったりしないと思うけど」


セレスはこれからのことを考えながら。


「仲よし子よしは素敵だけど、そうやっていがみ合いながら、先を目指さないと駄目なのかな」


意見の不一致は絶対に存在する。隠せば安定は保たれ、晒せば調和の崩壊が始まる。


「難しい問題だな。もし敵側がそのような話し合いを繰り返しているのなら、こちらも同じ方法をとるべきか」


互いに罵りながら、共に同じ場所を目指す。


「戦争がただの喧嘩だとしても、遊びで殺し合いをしているわけじゃない」


四人で魔王を倒し、四人で夜明けを迎える。しかし物事は思い通りには進まない。



責任者はもしものときを考えて、三色の仲間にこれだけは伝えておく。


「生き残った先の人生を、知らない誰かに委ねるな」


個人や団体に依存するのなら、まずは相手を調査して、安全かどうかを確かめる。


「あらゆる面から検討した上で、最後は自分の意思で決めろ」


いつかくる その日のために。




グレンは手拭きで顔をこすったのち、三人にだけ聞こえる音量で。


「心増水の件で交渉したとき、組合長さんに一つ質問をしてみました。彼の意見では、千年の想いってのは残るそうです。だけど勇者の村は掟を破りましたよね」


セレスが死なない限り、新たな勇者を誕生させない。


「時間の流れってのは結構な力を持っています。だから連中もよ、なんらかの変化はしてんじゃねえのか」


「ガンさんの話だと、最初に傭兵ギルドが生まれたんだよね。グレン君の予想通りなら、治安維持軍はそこから分裂した組織になる」


セレスもアクアに習い、責任者の言葉を思いだし。


「鉄工商会を成長させたのが、もし彼らだとすれば、ピリカさんもなにかしらの情報を握っているのかも」


ガンセキは立ち上がると。


「そしてお前が質問したアルカさんは、鉄工商会からデマドに出向いた人間だ」


村内にも土使いはいるため、無闇に守護領域を使うことはできない。ましてやここはデマドである。


「誰がこちらに意識を向けているか解からん。とりあえず食堂から離れるぞ」


アクアとセレスはうなずきを返し、グレンは食器を片づけに向かう。


・・

・・


数分後。自室にもどったグレンは、隣に立っているガンセキに向け。


「都合の良い操り人形か否か。彼らの存在を俺たちが勘づいているかどうかで、一行に対する扱いが変化するかも知れません」


戦争が現在も続いている。


ギルドや治安軍といった世界規模の組織。


そういった点から考えれば、敗国者ではなかったとしても、力をもった存在がいるのは間違いない。


「俺の意見としては、直接の質問は避けた方がいい。組合長に尋ねた時点で、もう手遅れかも知れませんが」


ガンセキは逆手重装の関節部を手に持って。


「こちらから動かなければ、俺たちは無知のままだ。遠回しに聞いただけでも、俺はお前を評価する」


無断で交渉したことに不満はあるが、その行動だけならガンセキも納得していた。


「壁の外へと向かうあいだ、もしそこにピリカさんがいたら、聞いてみたいことがあります」


ガンセキはグレンに微笑むと。


「内容によるな」


赤の護衛も責任者に笑みを返し。


「敗国者との関係はないかも知れませんが、確かめたいことがあります」


逆手重装がグレンの左腕を覆うまで、二人の会話は続く。



一度は断ったものの、時間がないという理由により、今はガンセキに手伝ってもらっていた。


レンゲが記した装着方法を読みながら、責任者は二十分ほどで作業を終らせる。



火の服に逆手重装。


「すまん……我慢できん」


ガンセキはその姿を見て、笑いを堪えることに失敗した。グレンは目に涙を浮かべながら、オバハンの外套で全身を包む。


・・

・・


時刻は七時五分すぎ。


組合前の通路にて、勇者一行はそろっていた。そこにゼドの姿はなく、恐らく壁の外で待機しているのだと思われる。


組合員とデマドの村人たちが、見送りとして集まっていた。



ピリカは一歩前にでると、書類をアルカに見せ。


「中継地への到着は早くて五日。今日と明日は野宿ですが、三日目の夜間は祈願所を利用いたしますので、急の知らせがある場合は、そちらでの対応を予定しております」


アルカは疲れた顔でうなずくと、やる気のない声で返事をする。


「四日目は早朝でなく、九時半ころを目安にお願いします。それ以降は遠慮なく出発してください」


本来は組合の中ですませると思うのだが、旅立つ四人がいるからか、アルカとピリカは最終確認をここで行っている。


出発式でもするのだろうか。



二人の会話が終わるのを見計らい、責任者が口を開く。


「昨日の打ち合わせで、我々も戦闘に参加させてもらうので、万が一のことを承知してもらいたい」


アルカは額をさすりながら。


「まあそういったことは、責任者の判断にお任せいたします」


勇者一行の重症により、討伐作戦が中止になったとき、こちらは関係ないものとする。これが認められるなら、アルカから言うことはなにもない。


責任者はその事柄を紙に書き、印を押したものを組合長に手渡す。


アルカは文を読み、首をたてに動かすと、自分の名と印をその場で示した。


風貌から察するに、雷の神官だと思われる。立会人が目を通したのち、それは封筒に閉じられる。



やるべきことを終えたアルカは、勇者の前まで足を進めると、片膝を地面につけ。


「旅の無事を風と共に。行く先を炎の声に。迫る恐怖は土の優しさに。夜の安全を月の愛に」


その言葉に続き、神官が両腕を天に掲げると。


「雷と水が交わるとき、太陽の導きがありますことを」


一同は祈りを捧げるが、グレンは他事に頭が一杯であり、今はそれどころではない。



出発式が終わると、周囲が賑わう。世話になった組合の若者に礼を言ったのち、組合長にも挨拶をするべきかグレンは悩んでいた。


心増水の催促をするようで気が進まないため、赤の護衛はこのままデマドを去ると決めた。


しかしアルカはそれを拒み、意思をもってグレンを呼び止める。


「心増薬を用意できるかどうかに限らず、結果はお伝えいたしますので」


「俺としては水の方でも充分なんで、無理でも気にしないでください。まあ無料で用意してもらってるんで、あれば容赦なく使わせてもらいますが」


グレンの発言にアルカは微笑むと。


「良い知らせを待ってます」


「なにをしたとしても、やっぱ結果が全てなんすよ。だからやれることは、自分なりにやってみようかと」


ここまでのやり取りで、グレンは緊張をしなかった。二人の考え方が近いのか、それとも相手が合わせいるだけか。



ピリカは一行の三人と会話をしていた。女の眼球がわずかに動き、再びセレスたちにもどる。


それは一瞬のできごとであったが、間違いなくグレンたちに意識を向けていた。


ガンセキは鼻の先をこすると。


「ではそろそろ行きましょう」


反対意見もなく、一行は荷馬車に向けて歩きだす。


セレスは立ち止まると、アルカたちに振り返り、大きく手を振った。


・・

・・


居住地には二ヶ所の大きな出入口があり、そこからしか荷馬車は通ることができない。


道の両端には村人たちが立っており、皆がセレスに向けて祈りを捧げている。


グレンは気味悪そうに。


「今までとは、ずいぶんな変りようっすね」


ピリカは横目で村人を眺めると。


「滞在中にこのような感じですと、グレンさんたちも困ったのではないですか。恐らく誰かが気を利かせてくれたのでしょう」


アクアはセレスの横を歩きながら。


「こういうのみるとさ、勇者の儀式を思いだすよ」


あのときも、全ての村人がセレスを崇めていた。


「それにしてはあの組合長さん、セレスの前でも堂々としてたっすね」


「彼は風の神官ですので、ああいった儀式には慣れているのでは」


グレンは驚いた口調で。


「あの人って、すごく偉い人だったりして」


わずかに瞼を持ち上げると、ピリカは笑顔をつくり直し。


「そうは見えないかも知れませんが、彼は清水方面の責任者ですので」


自然を穢さないための対策を怠れば、この世界では神官に裁かれる。都市政府がそれを無視しても、熱心な信者たちが黙ってはいない。



アルカに質問したことを、グレンは後悔していた。なぜなら相手は、これから出世をするのではなく。


「グレンさんの予想どおり、幹部のお一人です」


すでに鉄工商会の重役だった。



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