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第9章:ゴブリンの巣

「どうした?」俺は囁いた。


空気が重く、冷たく感じられた。俺はグロック17を構える。黒い銃身は森の闇に溶け込み、汗ばんだ手に冷たい金属の感触が伝わってくる。


前を歩いていたガレンは答えなかった。ただ片手を上げ、掌を開いて見せた。ゆっくりとしゃがみ込む。その巨体が湿ったシダの茂みに隠れていく。


俺は無言で頷き、戸惑っているディナの袖を引いて一緒にしゃがませた。


『こんな暗闇の中で、どうやって何かが見えるんだ?』


森は漆黒だ。頭上の二つの月から注ぐ微かな光は、分厚い葉に阻まれてほとんど届かない。俺に見えるのは木の幹のぼんやりとしたシルエットだけで、聞こえるのは自分の呼吸音だけだ。


ガレンが指で合図を送った。俺たちは四つん這いになって前進する。膝に冷たく湿った土の感触が伝わる。濡れた落ち葉が立てる衣擦れの音が、この静寂の中では叫び声のように大きく響く。


小さな斜面の縁にたどり着いた。ガレンが巨大なシダの葉を押しのける。その下、小さな谷底に、それが見えた。


集落だ。


ただの小屋一軒や二軒じゃない。数十軒はある。藁と継ぎ接ぎだらけの獣皮で屋根を葺いた、粗末な木造の小屋が立ち並んでいる。木の柱に取り付けられた松明がオレンジ色の光を放ち、周囲を囲む今にも壊れそうな木の柵の上で光が踊り、亡霊のような長い影を作り出していた。


「集落? こんな場所に?」


「ただの集落じゃない」ガレンの背中からトムが囁いた。「ゴブリンの巣だ。見ろ」


彼は顎でしゃくった。俺は目を細める。確かに。くすんだ緑色の小さな人影が門の前をパトロールしている。


「どうするの、ガレン?」ディナが震える声で囁いた。彼女は俺の隣に身を寄せ、土の匂いと、微かな恐怖の匂いが漂ってきた。


「戻ろう」トムが急かす。「今すぐ街道に戻るんだ」


俺は彼らを見た。遠い松明の光の下で、ディナの顔は青ざめている。トムはさらに酷い顔色だ。ガレンは……顔を石のように強張らせ、集落を凝視している。


「どうしたんだ? なんでそんなに怯えてる? たかがゴブリンだろ」俺は言った。


「一匹や五匹なら問題ないさ、リアム」ガレンはようやく口を開いたが、その声は獣の唸り声のように低かった。「だが、これだけの規模の巣だ……数は数百にのぼるかもしれん。俺たちは昨日の狼の襲撃からまだ立ち直ってないんだぞ」


俺は黙り込んだ。彼の言う通りだ。四人の中で万全なのは俺だけだ。トムは重傷、ガレンの盾は粉砕されている。そしてディナ……杖を握る手がわずかに震えているのが見える。隠そうとしているが、俺には分かる。


「ガレン、行きましょう」ディナがガレンの鎧の端を引っ張る。


ガレンは剣の柄を握る手に力を込めた。「いや」彼は静かに首を振った。「行くわけにはいかない」


「どういうことよ!?」ディナが声を荒らげかける。「正気なの、ガレン? ここで私たちを皆殺しにする気? あの集落を見てよ!」


「あの集落があるからこそ、行けないんだ!」ガレンが振り返り、我々に向き直った。暗闇の中でその目が鋭く光る。「戻っても無駄だ。これだけの規模の巣が一週間や二週間でできるはずがない。数ヶ月はかかっている。つまり……奴らの支配領域はすでに拡大しているんだ。この周辺の道は奴らのパトロール隊や罠で埋め尽くされているはずだ。今引けば、挟み撃ちにされて追い詰められるだけだ。奇襲の利がある今、攻めるしかない」


彼は一息つき、荒い息を整えた。「それに、もし成功すれば……黒い森の縁でこれだけのゴブリンの巣を潰したとなれば、ギルドからの報酬は破格だ。大金持ちになれるぞ」


「ゴブリンがこんな集落を作るのは、おかしいことなのか?」俺は尋ねた。


「おかしくはない」ガレンが答える。「だが、規模と場所が異常だ。ゴブリンは通常、洞窟や隠れ家に巣を作る。こんな開けた場所に、木造家屋まで建てて村を作るなんてありえない。つまり……奴らを統率している何かがいる。より賢く、より強い何かが」


「まさか……『ゴブリンキング』か?」トムの声が恐怖に引きつる。


「かもしれん」ガレンが答える。


「ガレン、キングがいたら勝てるわけないでしょ!」ディナが抗議する。「Cランクモンスターよ!」


「戦う必要はない」ガレンがきっぱりと言う。「作戦はこうだ。キングがいたら、混乱を起こして強行突破し、逃げる。いなければ……ここを一掃する」


トムが乾いた、絶望的な笑い声を漏らした。「その自信がどこから来るのか分からないよ、ガレン」


ガレンは答えず、俺に視線を移した。その眼差しは強烈で、突き刺すようだった。


「なんだよ?」重い視線に居心地の悪さを感じて尋ねる。


「リアム」彼は言った。「その武器だ。それでゴブリンを殺せるか?」


「殺せる」


昨日殺した三匹のゴブリンを思い出す。奴らは簡単に死んだ。


「上等だ」ガレンの唇に凶暴で薄い笑みが浮かんだ。「なら、俺の自信の源はお前だ」


「え? ちょっと待てよ!」俺は慌てた。「なんで急にそうなるんだよ?」


「それだ」彼は顎で俺の銃を指した。「それが何なのかは知らない。機械式のクロスボウの一種か? だが音もなく、威力は凄まじい。闇に乗じて攻撃を仕掛ける。お前が俺たちの切り込み隊長だ、リアム。お前が道を切り開くんだ」


俺は言葉を失った。彼の言葉の重みがのしかかる。俺はまだこの武器を完全に使いこなしているわけじゃない。これまでは運が良かっただけだ。


突然、声が俺たちの緊張を破った。


『ああぁ……』


微かな声。集落の方角から風に乗って聞こえてきた。弱々しいが、間違いなく人間の声だ。


ディナが息を呑む。「中に人がいるわ」


ガレンが振り返り、遠くの松明の光を凝視する。計算高かった表情は消え、冷たい怒りがそれに取って代わっていた。


「俺にも聞こえた」彼は言った。


「見ろ」俺は顎で指した。「あそこだ」


松明の列が、小屋の間を縫って不規則に、ゆっくりと動いている。その中心に、何かが追い立てられている。


「人間か」ガレンが低く唸る。


ここからでは遠すぎる。暗闇と雲が月を隠しているせいで、すべてがぼやけたシルエットにしか見えない。だが俺には見えた。背が高く、細身の人影が、背が低くずんぐりしたゴブリンたちの間で頭を垂れて歩いている。


「なんのために人間を捕まえるんだ?」俺は尋ねた。


「ゴブリンは普通、男の捕虜は取らない」ガレンの背中からトムが答える。声は疲労と痛みで重い。「男は……普通、食われるだけだ」


冷たい沈黙が俺たちを包む。


「じゃあ……女は?」俺は恐る恐る尋ねた。不快な答えが脳裏に浮かんでいた。今まで読んだ数々のファンタジー小説から導き出される答えだ。だが、確認したかった。


三人が俺を見た。その視線は奇妙だった。憐れみと、そして少しの……呆れ。まるで俺が「なぜ水は濡れているのか」と尋ねたかのような。


「なんなんだよ?」


「いいえ」ディナが早口で答えた。早すぎる。「ゴブリンという種族には……メスがいないの。繁殖するためには……他の種族を必要とするわ」


吐き気がした。やっぱりか。


「つまり、人間を捕まえるのは……繁殖の道具にするためってことか?」


「その通りだ」ガレンが短く答える。声は剣先のように鋭い。


俺は再び松明の列を見つめた。その光景が、先ほどより遥かに恐ろしいものに見える。


「助けないと」俺は言った。


彼らの視線を感じる。


どうでもいい。


『カチッ』という極めて小さな音を立ててセーフティを外す。深く息を吸い込み、湿った夜気を肺に満たす。ジャケットのフードを目深に被り、顔を影に隠す。


ガレンとディナが一瞬顔を見合わせる。そして、ガレンが短く頷くのが見えた。ディナが杖を握る手に力を込める。背後からは、トムの諦めたようなため息だけが聞こえた。


俺は立ち上がろうと体に力を入れた。


『ドスッ!』


世界が突然反転した。何かが横から凄まじい力でぶつかり、俺を濡れた地面に押し倒した。顔が腐葉土に打ち付けられ、土の匂いが鼻孔を満たす。


「何すんだ、ガレン!」悪態をつき、俺を突き飛ばした大男に文句を言おうと起き上がる。


だが、その時見た。


『ビュン!』


ついさっきまで俺の頭があった場所に、一本の矢が突き刺さっていた。粗削りな矢柄が震え、矢羽は露で濡れている。鋭い鉄片のやじりが、俺たちの後ろの木の幹に深く食い込んでいた。


「矢……?」恐怖で声が震える。


反射的に矢が飛んできた方向を見る。上だ。


そこには、折れた枝の上に座り、小さな弓をつがえ直そうとしているゴブリンがいた。黄色い瞳が暗闇の中で光り、真っ直ぐに俺たちを見下ろしている。


「クソッ、見つかったわ」ディナが舌打ちする。


ガレンはすでに立ち上がり、剣を抜いていた。刃こぼれした刀身が遠くの松明の光を反射する。


「見られたぞ!!!」ガレンが早口で、緊張した声で叫ぶ。「逃がすな!!!」


彼の言葉が終わる前に、弓兵のゴブリンは枝から飛び降り、茂みをかき分けて走り出した。集落の方へ、巣へ戻ろうとしている。


考えるより先に、俺は飛び出した。ガレンが並走する。その重い足音が地面を揺らす。ディナが杖を握りしめて後に続く。トムをその場に残していくという賭けに出るしかなかった。


周囲の森が流れる景色と化す。目標はただ一つ、前方を不恰好に走る緑色の小さな背中だ。


絶対に巣へ帰すわけにはいかない。


呼吸が肺を焼く。小枝が顔や露出した腕をひっかき、ヒリヒリする傷を残すが構わない。隣ではガレンが暴走するサイのように走り、その巨体で藪を強引に突破していく。


ゴブリンは素早かった。突き出した木の根を飛び越え、低い枝の下を潜り抜ける。奴はこの森を知っている。俺たちは知らない。


「速すぎるわ!」後方でディナが叫ぶ。息が切れている。


ゴブリンが一瞬振り返った。その醜悪な顔に勝利の笑みが浮かんでいるのが見えた。俺たちが隠れていた森の縁まであと少しだ。あと数メートルで、集落の監視塔から視認できる開けた場所に出てしまう。


『させるか!』


立ち止まって狙う暇はない。走りながら拳銃を持ち上げ、両手でしっかりと握り、激しい足音の振動を抑え込もうとする。頭は狙わない。


より大きく、より遅い標的――足を狙う。


意識を集中させる。一瞬、すべてが静寂に包まれたように感じる。自分の荒い呼吸も、ガレンの足音も、ディナの叫び声も遠のく。残ったのは俺と、手の中の拳銃と、動く標的だけ。流れる周囲の木々の中で、動き続ける細い緑色の足。


目が冷たく光る。


引き金を引く。


『プシュッ!』


見えた。流れるような動きが突然崩れた。右足が奇妙な方向に曲がり、奴は顔面から泥の中に突っ込んだ。甲高い悲鳴を上げ、手を使って這い進もうとする。


だが、もう遅い。


走るのを止めない。木の根を飛び越え、奴のすぐ横に着地する。奴が見上げる。黄色い目が恐怖に見開かれ、黒い銃口が顔の真正面に向けられているのを見る。


躊躇はない。


『プシュッ!』


『プシュッ!』


『プシュッ!』


撃つ。何度も。手首に小さな反動を感じる。脆い頭蓋骨に黒い穴が開くのを見る。体が一瞬痙攣し、汚れた指が土を掻き、そして動かなくなった。


再び静寂が降りる。残るのは俺の重い呼吸音だけだ。


『ハァ……ハァ……ハァ……』


足元の死体を見下ろす。脳漿と赤い血が泥と混ざり合う。まだ温かい銃口から薄い煙が立ち上る。


「死んだな」しゃがれた声で呟く。


「よくやった、リアム」


大きく重い手が俺の肩を叩いた。ガレンだ。隣に立ち、彼も息を切らせているが、その目には賞賛の色があった。「お前がいなけりゃ、逃げられてた」


ディナがようやく追いつき、膝に手をついて前屈みになり、呼吸を整える。ゴブリンの死体を一瞥し、横に唾を吐いた。「ケッ、胸糞悪い」


「死体を隠さないと」ガレンが真剣な声に戻る。「他のパトロールに見つかる」


俺たちは頷いた。ガレンが死体を最も深い茂みの中に引きずり込み、枝を被せて隠した。


俺とディナは早足でトムの場所へ戻った。彼は倒木の陰に隠れたまま、緊張した面持ちで待っていた。


「みんな無事か?」俺たちが現れると彼は尋ねた。


「大丈夫だ」俺は答え、まだ早い心拍を落ち着かせようとする。


「一人にしてごめんなさい、トム」ディナが申し訳なさそうに言う。


「問題ない」トムが遮る。「すぐに動こう。日が昇る前に」彼の視線は鋭い。


ガレンが戻ってきて、汚れた手をズボンで拭った。「片付けた」彼はしゃがみ込み、慎重にトムを背負い直した。


「行くぞ」彼は言い、俺たちは再びゴブリンの巣へと向かって動き出した。今度は、はるかにゆっくりと、警戒を深めて。

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