第21章:冒険者ギルド
赤レンガの道の突き当たりで、僕たちは立ち止まった。目の前にそびえ立つ建造物を見た瞬間、僕の頭の中にあった異世界モノの知識がすべて時代遅れで無意味なものに思えた。
アニメでよく見るような、カウボーイの酒場にあるスイングドアがついた木造二階建ての建物なんかじゃない。全然違う。
「これ……冗談だろ?」
目の前にあるのは、象牙色を基調とした巨大なモニュメントのような建造物だった。コリント式を思わせるアカンサスの葉の複雑な彫刻が頂部に施された、高さ十五メートルはあろうかという巨大な大理石の柱が、古代の戦闘のレリーフで飾られた三角形の屋根を支えている。その前には幅の広い大理石の階段が広がり、登ろうとする者を威圧するような空気を放っていた。
「まるでパルテノン神殿じゃないか」ずっと見上げていて少し痛くなった首をさすりながら、僕は呟いた。
「どうかしたの、リアム?」僕の呆然とした顔を見て、ディナが眉をひそめて振り返った。
「ううん」僕はゆっくりと首を振った。「ただ……この冒険者ギルドの建物って、荒くれ者たちが仕事を探しに来るお役所というよりは、どこかの宗教の神殿みたいだなと思って」
「ああ、それはこの建物が元々本当に神殿だったからよ」
「やっぱり」僕は相槌を打つ。「お役所にしては建築様式が宗教的すぎるよ」
ディナが階段を上り始め、僕もそれに続いた。通り過ぎる際、大理石の柱に手を触れると、冷たく滑らかな感触がした。
「昔、ルーシ王国がここまで領土を拡大する前、ヴェニンブルグの住民の多くはアンジェリス教の信者だったの」柱の間にディナの静かな声が響く。「それは多くの神々を信仰する、古代の多神教だったわ」
彼女は入り口の頭上にあるレリーフを指差した。その彫像の顔は、後からより滑らかに彫り直された形跡がある。
「でも約八百年前にルーシ王国がこの地を征服した後、地元住民に対して『エヴァ化』――エヴァ神の教えの布教――が行われたの。この建物も、三百年近く教会として使われていたわ。だけど街の人口が爆発的に増えたせいで、教会は街の中心部にもっと大きな新しい大聖堂を建てて、この古い建物は王家に返還されたってわけ」
「それから?」この建物の歴史に興味が湧き、僕は尋ねた。
「約二百年前に、冒険者ギルドが王室からここを買い取って改装したのよ。壁は厚いし、部屋は広いし、立地も完璧。私たちみたいな冒険者を収容するにはうってつけだったのね」
「なるほど……」
何千年もの間、多神教の神殿から一神教の教会へと姿を変えながら祈りの場であった場所が、今では人々がお金を稼ぐために行列を作る場所になっているとは。なんとも皮肉な話だ。
「おい! 二人とも! こっちだ!」
メインピラーの横から、聞き覚えのある野太い声がした。振り返ると、そこにガレンが気楽な様子で寄りかかって立っていた。
今日の彼の出立ちは劇的に違っていた。へこんで血まみれだった銀の板金鎧はもうない。清潔なクリーム色のリネンのチュニックに、焦げ茶色の革のベスト、そしてゆったりとした布製の長ズボンを身につけている。髪も綺麗に梳かされており、まだ少し濡れていた。
その背中には、ずっしりと重そうな大きな革袋を背負っている。
「よお、やっと来たか」彼は体を起こしながら挨拶した。
「ガレン」ディナは腰に手を当てて、わざとらしく不満そうな顔を作った。「どうして昨日の夜、うちに来なかったの? 私とリアム、寝落ちするまで待ってたんだからね!」
僕はディナをちらりと見た。
『一時間待った後、「ガレンのやつ絶対寝落ちしてるわね」って言って、僕たちすぐに寝たじゃないか』
ディナは僕の心を読んだかのように、素早く片目をウインクしてみせた。
『黙ってて』
ガレンは降参するように右手を上げ、気まずそうに笑った。
「ああ、悪い、悪かった。ディナ、リアム……実はな……」
彼は痒くもない後頭部を掻きながら、長くため息をついた。
「昨夜、トムを教会へ送り届けて治療を受けさせた後、お前の家へ向かうつもりだったんだ。だが、少し座った途端に、どっと疲れが押し寄せてきてな。お前も知っての通り、俺たちは二日間も黒の森で過ごしたんだ。ダイアウルフと戦って、ゴブリンロードとやり合って、そこから走って歩いて帰ってきたんだからな……」
彼の表情が和らぎ、父親のような優しい笑みが浮かんだ。
「だからまっすぐ家に帰ったのさ。温かい風呂に入って、手作りの飯を食って……そして何より、俺がまだ生きてるってことを、妻に知らせてやらなきゃならなかったからな」
僕はピタリと動きを止めた。
『妻?』
僕はガレンをじっと見つめ、嘘の兆候を探すかのようにその顔を観察した。
『この人……結婚してたのか?』
なぜだか今まで、僕の脳は勝手に彼とディナの間に「何か」があると思い込んでいた。旅の道中での二人の空気感、互いを信頼し合っている様子、ちょっとした口論……アニメや漫画でよくある、密かに両想いの幼馴染という王道だと思っていたのだ。
どうやら大間違いだったらしい。
なら、ガレンとディナに恋愛関係がないとすれば……相手はトムか?
『待てよ、なんで僕がそんなこと気にしてるんだ? 二人にそういう関係があろうがなかろうが、僕には関係ないだろ』
「どうした、リアム? なんでそんな顔をしてるんだ?」僕の視線に気づいたガレンが尋ねた。
僕は瞬きをした。「もともとこういう顔なんだよ」
僕は彼の背中にある大きな革袋に目を向けた。「それ……ダイアウルフの毛皮……?」
「ああ」ガレンが袋を叩くと、ドスッと中身の詰まった音がした。「お前の仕留め方が完璧だったおかげで、最高品質の毛皮が傷なしで三枚だ。そろそろ臭いがきつくなってきたから、さっさと売っちまおうぜ」
「行きましょう」とディナが促した。
僕たちはダークオーク材でできた巨大な両開きの扉をくぐった。汗、安物のエール、古い紙、蜜蝋、そして微かな乾いた血の臭いが混ざり合った、この場所特有の鼻を刺す「香水」のような匂いが、即座に嗅覚を襲ってきた。
メインホールは、元の世界の屋内ショッピングモールくらいある広大な空間だった。アーチ型の高い天井には色褪せたフレスコ画が描かれている。その下には、何百人もの人間――そして獣の耳を持つ亜人の姿もちらほらと――がひしめき合っていた。
「すごい人だな」僕は呟き、ジャケットを少しきつく合わせた。内向的な性格(インドア派)としての防衛本能が警鐘を鳴らしている。「それに、臭い」
「朝のラッシュ時だからな」周囲の騒音に負けないよう、ガレンが少し声を張り上げた。「朝の依頼を受ける奴らと、夜の狩りから戻ってきた奴らでごった返してる。はぐれないように、俺から離れるなよ」
僕は視線を巡らせ、この見知らぬ光景を目に焼き付けようとした。
右側には巨大な掲示板があり、何十人もの冒険者が群がっている。様々な大きさの羊皮紙が貼られており、誰かが乱暴に剥がし取るたびに紙の端がひらひらと揺れていた。左側には長いテーブルと木のベンチが並び、そこで冒険者たちが食事をしたり、(まだ朝だというのに!)酒を飲んだり、あるいは自分たちの武勇伝を語り合ったりしている。
そして部屋の奥、かつては神聖な祭壇があったであろう場所には、鉄格子のついた受付窓口が並んでいた。僕のいた世界の銀行の窓口に似ているが、もっとゴシックな雰囲気だ。
「素材の買い取り窓口へ行くぞ」ガレンが広い肩で人混みをかき分けながら言った。ガレンの体格を見た周囲の人々は、自動的に道を譲ってくれた。
比較的列の短い窓口の一つに辿り着いた。鉄格子の向こうには、丸眼鏡をかけ、茶色い髪をきっちりとシニヨンにまとめた若い女性が立っていた。彼女は今、何の動物か分からない牙の詰まった袋を計量しているところだった。疲れて退屈そうに見えるが、それでも綺麗な顔立ちをしていた。
「次の方!」彼女は見向きもせずに声を上げた。
ガレンが進み出て、木製の受付カウンターの上に大きな革袋を置いた。ドスン。
その重い音に、受付嬢は顔を上げた。彼女は眼鏡の位置を直す。
「ガレン?」彼女のトーンが少しだけ親しげなものになった。「久しぶりね。ダイアウルフの依頼を受けたって聞いてたけど? まさか失敗して、中身はただのゴブリンのガラクタってオチじゃないでしょうね?」
「相変わらず口が悪いな、エララ」ガレンはニヤリと笑い返した。彼は袋の紐を解いた。「自分の目で見てみろ」
ガレンが最初の一枚を取り出した。分厚い銀色の毛並みが、室内の魔術ランプの光を浴びて艶やかに輝いた。
エララはレンズの奥で目を丸くした。彼女はすぐにポケットから小さなルーペを取り出し、毛皮に顔を近づけて質感を確かめ、裏側を念入りに調べた。
「斬り傷がないわね……」彼女のプロとしてのスイッチが入った。「穴……刺し傷かしら? すごく小さい。毛並みの模様をほとんど損なっていないわ。見事ね。皮の剥ぎ方も丁寧だわ」
彼女は新たな感心を含んだ目でガレンを見た。「これ、誰が仕留めたの? あなた? あなたの剣でこんな綺麗な穴が開けられるわけがないわ」
ガレンは僕をちらりと見た後、再びエララに向き直った。「冒険者の秘密さ、エララ。で、いくらになる?」
「勝手にしなさい」
エララは鼻を鳴らし、残り二枚の毛皮も調べ始めた。
「傷なしの高品質な毛皮が三枚。合計は……」
彼女は木製のそろばんを取り出し、素早く計算を始めた。パチパチパチ。
「今の市場価格は悪くないわ。この品質なら一枚で銀貨八枚ね。合計で銀貨二十四枚。それにCランク依頼達成の基本報酬が銀貨九枚。ここまでの合計で銀貨三十三枚よ」
彼女は袋の底を指差した。「肉は? これも売るの? それとも持ち帰る?」
心臓がドクンと鳴った。『銀貨三十三枚!?』
もし銀貨一枚が銅貨千枚なら、銀貨三十三枚は三万三千銅貨だ!
ガレンが僕の方を見た。
僕は頷いた。肉は重いし、保存しておくための冷蔵庫もない。
それに、狼の肉なんて食べたくなかった。
「売るよ。加工してる暇はないんでな」とガレンがエララに言った。
「分かったわ。肉は一頭につき銀貨五枚で買い取る。三頭分で銀貨十五枚ね。総額は銀貨四十八枚よ」
エララはスタンプを手に取った。「そこからギルド税と事務手数料で十五パーセント差し引いて……手取りは……」
パチパチ。
「銀貨四十枚と銅貨八百枚。私が出せる最高額よ。どう?」
「それで頼む」とガレンが答えた。
「よろしい。冒険者カードを出して。依頼を受けたのは三人だったわね?」
ガレンとディナが冒険者カードを提出した。ガレンはトムのカードも一緒に出した。
「この人はどこ?」エララはトムのカードを手に取り、裏返して確認した。
「トム・マルティネスは重傷を負った。脚を食いちぎられかけてな。今は教会で治療中だ」ガレンが少し声を落として説明した。
「うわぁ。お気の毒に」エララは平坦な声でコメントした。「早く良くなるといいわね。ここにサインして。不在のメンバーの代理で報酬を受け取るという同意書よ。後で揉めるのは御免だからね」
ガレンは差し出された書類に、羽ペンでサインを書き込んだ。
「現金で受け取る? それとも口座に振り込む?」エララは分厚い台帳の上で羽ペンを持ったまま尋ねた。
「現金で頼む」
「了解」エララは頷いた。
エララは机の下の引き出しを開けた。彼女が硬貨を数える、チャリンという心地よい金属音が響く。彼女は銀貨の山と銅貨の山を小さな木製のトレイに並べ、新しいスタンプが押された三枚の冒険者カードと一緒に、鉄格子の隙間から押し出した。
「銀貨四十枚、銅貨八百枚。それからカードをお返しするわ。おめでとう、ガレン、ディナ。あなたたちは正式にCランクに昇格よ」エララは横の台帳に記帳しながら言った。
『依頼「ダイアウルフ三頭の討伐」、カノル・パーティーにより完了。エヴァリスト暦二千年二月十三日』
ガレンは硬貨を革袋に流し込んだ。「ありがとう」
ガレンは僕の方を向き、晴れやかな顔で言った。「さあ、出ようぜ。もっと空気の美味い場所で、お前の取り分を渡すよ」
ディナは自分のカードを受け取った。「やっとだわ……冒険者になって三年目にして」
「あなたの実力なら、もっと早くCランク、いやBランクにだってなれたはずよ。それなのに、他のメンバーが昇格基準を満たすのを待つって言って、ずっとDランクに留まってたんだから」
「それはガレンも同じでしょ? ガレンの実力なら、一人でもCランクの依頼をこなせたはずよ」ディナが皮肉交じりに言い返した。
ガレンは黙り込んだ。
ふむ、つまり彼らの本当の実力は、すでにCランクやBランクの冒険者に匹敵していたということか。それなのに、全員で一緒に上を目指したいという理由で、わざとランクを上げずにいたのだ。
確かにそうだ。昨日のゴブリンの巣で見せた二人の戦いぶりは、僕の知る『Dランクの冒険者』の域をはるかに超えていた。
もし昨日、彼らが万全の状態であれば、状況は全く違っていただろう。ゴブリンロードを倒し、あの巣を殲滅するのも、もっと容易だったはずだ。
僕と出会う前に、彼らが黒の森でどんな目に遭ったのかは知らないが、ただのダイアウルフの群れ程度で、あの二人があそこまで追い詰められるはずがない。
ましてや、あの時ディナが見せた強力な風の魔術を考えれば、僕がグロック17で簡単に殺せた程度のダイアウルフなど、彼女にとって脅威になるはずがないのだ。
「さて」ガレンが僕を見つめた。その表情は真剣になり、同時に期待を含んでいた。彼はホールの右奥にある、大きな文字で『登録受付』と書かれた窓口を指差した。
「リアム……お前も冒険者に登録するか?」
僕はその登録窓口を見つめた。そこには、緊張と興奮の入り混じった顔をした若者たちの長い列ができていた。
「少し……考えさせてよ」僕は努めて気楽な声で答えた。
ディナの肩が少し落ちた。ガレンはため息をついた。
「そうか、残念だな。トムの脚が治るまで、一時的にでも代わりにお前をパーティーに勧誘しようと思ってたんだがな」
「昨日の夜、私からも誘ったんだけど……まあ、返事は同じだったわ」ディナが苦笑いしながら付け加えた。
「ごめんね」僕は少し罪悪感を覚えながら言った。「この街の雰囲気に……慣れるための時間が欲しいんだ」
「気にするな。お前の自由だ」ガレンは僕の肩を軽く叩いた。
僕たちはギルドの建物を出て、あの騒音と汗の匂いを後にした。外の新鮮な空気がひどく心地よかった。すぐ近くにあるオープンテラスのレストランへ向かい、席につく。
ガレンはテーブルの上に硬貨の入った袋を置き、口を開けてテーブルの中央に広げた。
「あの洞窟で約束した通りだ」彼は真剣な顔で言った。「ダイアウルフの毛皮の代金からは、俺たちは一銭も受け取らない。あれはお前の獲物だからな。おまけに、お前のおかげで俺たちは昇格できた。俺たちの今後のキャリアを考えれば、この金よりもはるかに価値のあることだ」
ガレンは銀貨と銅貨の山を、そっくり僕の方へ押しやった。
僕はその硬貨の山を見つめた。銀貨四十枚と銅貨八百枚……大金だ。
僕はその山の中から、銀貨三十枚と銅貨八百枚だけを受け取った。そして、残りの銀貨十枚をテーブルの中央、ガレンとディナの目の前へと押し返した。
「それは二人で分けて」僕は気楽な口調で言った。「感謝の気持ちだと思ってよ」
ディナは戸惑っているようだった。テーブルの上の硬貨には指一本触れようとしない。
「でも……」
「受け取って」彼女が続ける前に、僕は話を遮った。
ガレンはディナと一瞬顔を見合わせた後、やがてゆっくりと頷いた。
「それじゃあ……ありがたく受け取っておく」
ディナの顔に薄い笑みが浮かび、それまで張り詰めていたガレンの肩の力もゆっくりと抜けていった。
僕は背もたれに寄りかかり、残された硬貨の山をちらりと見ながら尋ねた。
「そういえば、なんで毛皮や肉の買い取り額とは別に、依頼の報酬金ももらえたの? 普通は『この依頼を達成したらこの金額』って決まってて、獲物の素材代もその報酬の中に含まれてるものじゃないの?」
「ああ……」ガレンは小さく笑った。「そこに気づいたか、リアム」
僕は頷く。
「『魔物討伐』系の依頼は、ちょっと仕組みが違うんだよ」ガレンは胸の前で腕を組んだ。「普通なら、ターゲットの素材代も込みで報酬が提示される。だが、この手の依頼はリスクが高いんだ」
「何が違うの?」と僕はさらに問い詰める。
「黒の森の中で、自力でその魔物を探し出さなきゃならないからよ」今度はディナが答えた。
「問題は、ギルドの情報が常に正確とは限らないってこと。動物が住処を変えるように、魔物だって移動するわ」
彼女は指でテーブルを軽くトントンと叩いた。
「つまり、私たちは森の奥深くまで入り込んで、どこにいるかも分からない魔物の痕跡を追跡しなきゃならない。その過程で危険な地形を越えたり、他の魔物に遭遇したりするわ。リスクは格段に跳ね上がるの」
ディナは少し間を置いてから続けた。
「『魔物退治(駆除)』の依頼とはそこが違うのよ」彼女の声のトーンが少し軽くなった。「駆除と呼ばれる依頼の場合、たいていは魔物の正確な場所がすでに判明しているの。あるいは、ギルドが魔物の行動パターンや襲撃のタイミングを把握しているか、ね」
「つまり、脅威がより明確ってことか?」と僕は推測した。
「その通り」ディナは頷く。「森の中をあてもなく彷徨う必要はないし、どんな脅威に遭遇するかも事前に予想できるわ。もちろん不確定要素はあるけど、それでも依頼人の要求を満たすためだけに黒の森で特定の魔物を探しまわるよりは、はるかに安全なのよ」
「なるほどね……」僕は顎を撫でながら呟いた。「冒険者っていうのも、僕が思ってたほど単純な仕事じゃないみたいだ」
僕は再び彼らを見た。
「もしそういう『魔物退治』の依頼だったら、倒した魔物の死体は誰のものになるの? 冒険者が勝手に持ち帰っていいの?」
「それは依頼人の要望次第だな」ガレンが一枚の銀貨を取り上げ、テーブルの上でコマのように回した。
「もし依頼書に『魔物の死体を納品すること』という条件がなければ、たいていの場合、冒険者は自由に素材を持ち帰ってギルドに売ることができる」
「でも、もし納品条件があったら……」ディナが肩をすくめながら引き継いだ。
「当然、全部依頼人に渡さなきゃならないわ」
「まあ、たまに気前よく分け前を少しばかりくれる依頼人もいるがな」ガレンが小さく笑いながら付け加えた。




