第17話 元日、初詣へ
執筆にあたり生成AIを使用しています。
1月1日、元日。
テレビからは正月恒例の箏曲が流れている。
僕は朝から、どこか落ち着かなかった。
昨日、玲奈からメッセージが来た。
「そっち行くからよろしく」
両親と妹には、ただ「同級生が来る」とだけ伝えておいた。
どんな子かと聞かれたが、「会えばわかる」とだけ答えた。
午前9時過ぎ。
インターホンが鳴る。
——来た。
母の応対する声が、2階の自室にも届く。
続いて、玲奈のはきはきとした声も。
「和樹ー、お友達がいらっしゃったわよー!」
母が呼ぶ。
僕はサコッシュを手に取り、重い腰を上げる。
昨日のメッセージには、こんなやりとりもあった。
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和樹:「帰りはどうするの?」
玲奈:「隣町に親戚がいるから、そこに泊まる」
和樹:「OK」
玲奈:「もしかして『僕んちに泊まるかも』って期待した?」
ドキッとした僕は、慌てて“NO”のスタンプを返した。
すぐに“冗談です”のスタンプが送られてくる。
いたずらっぽく笑うキャラクターが、玲奈の顔と重なった。
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階段を降りると、玄関にコート姿の玲奈が立っていた。
「和樹、あけましておめでとう! 今年もよろしくね」
女神のような笑顔。
いや、正月だから——福の神か。
疫病神でなければいいが。
「……あけましておめでとう」
短く答える僕。
母と妹は、玲奈の登場に明らかに驚いている。
しかも、とびきりの美少女だ。
母は「お茶でもどうぞ」と言ったが、僕らはすぐに出かけることにした。
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晴れた冬空。冷たい空気が頬を刺す。
道を行き交うのは、初詣に向かう人たちと帰る人たち。
僕と玲奈は、たわいもない話をしながら神社へと向かう。
「いい町だね。活気がある」
「神社の門前町として栄えてきたんだ。今も奉賛会が活発に活動してる」
「奉賛会?」
「簡単に言えば……神社のファンクラブみたいなもんかな。お祭りや神社の掃除を主催してる」
「へぇ、知らなかった」
玲奈にも知らないことがある。
ちょっと得意げな気分の僕。
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神社に到着。
「鳳松神社」の額が掲げられた鳥居をくぐる。
明治神宮や川崎大師ほどではないが、参拝客は大勢いる。
境内も社殿も手入れが行き届き、静かな品格を感じさせる。
玲奈は物珍しそうに、あちこちを見渡している。
手水舎で手と口を清め、拝殿へ。
鈴を鳴らし、賽銭を納め、二礼二拍手一礼。
僕の願い事は——「平穏無事に過ごせますように」。
玲奈を見ると、真剣な表情で手を合わせていた。
彼女の願い事は聞かなかった。
玲奈も「何をお願いしたの?」とは尋ねてこなかった。
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参拝を終え、授与所へ向かう。
おみくじを引いた。
僕は——末吉。
願望:急がず焦らず進めば、やがて叶う。
健康:小さな不調に気をつけて。休息を大切に。
恋愛:誠実さが試される時。信じる心が鍵。
学業・仕事:努力は報われにくいが、続けることに意味あり。
金運:出費に注意。無駄遣いを控えれば安定。
旅行:近場でゆったり過ごすのが吉。
一言:石の上にも三年。忍耐が未来を開く。
ため息が出た。
「凶」よりはマシだけど、もう少し上なら……。
「末吉は、少しずつ良い方向に向かうって意味もあるんだから」
玲奈がフォローしてくれた。
彼女が引いたのは、大吉だった。
嬉しそうに笑って、読み上げてくれる。
(……すごいな、この子は。)
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おみくじはみくじ掛けに結び、お守りを選ぶ。
僕は「学業成就」。
4月からは3年生。英語のスキルを磨ける大学に進みたい。
玲奈は「縁結び」のペアお守りを選び、片方を僕に渡してきた。
その手のひらから、「絶対に和樹を離さない」という強い気持ちが伝わってくるようだった。
……僕は、この思いに応えられるのだろうか?
そんなことを、ぼんやり考えながら。
僕と玲奈は、振る舞いの甘酒をいただいてから、神社を後にした。