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第14話 過去との決着

 執筆にあたり生成AIを使用しています。

 1. ショッピングセンター・文房具店


 日曜日。


 僕はショッピングセンターの文房具店で、玲奈へのクリスマスプレゼントを品定めしていた。


 贈るのは、ボールペン。


 文房具なら実用的だし、玲奈もよくノートを取るタイプだから、きっと役に立つはず。


 ……とはいえ、どのペンがいいのかさっぱり分からない。

 ブランド? インクの滑らかさ? 書き心地?

 いまいちピンとこず、同じコーナーを何度も行き来していた。


 そんな僕に、店員さんが声をかけてきた。


「何かお探しですか?」


「……同級生へのプレゼントなんです……女の子への」


 最後の方は、つい声が小さくなった。


 店員さんはにっこり笑い、おすすめの一本を見せてくれた。


 シンプルで上品なデザインのボールペン。

 これなら玲奈にも喜んでもらえるかもしれない。


 それを買うことにした。

 店員さんが綺麗に包装してくれる。


(玲奈、喜んでくれるかな……)


 そんなことを思いながら、それをバッグにしまった。



 2. フードコートにて


 1時間ほど経ち、僕はフードコートで昼食を終えていた。


 クリスマスの買い物客で賑わうショッピングセンター。

 耳に入ってくるのは、お決まりのクリスマスソング。


(日曜ってこともあるし、混んでるよな……)


 そんなことを考えていたその時——


「……友川?」


 懐かしい、しかし嫌な声が聞こえた。


 顔を上げると、そこに立っていたのは——


 山田やまだ 彩花あやか


 中学一年の時の同級生。


「偶然だね。元気だった?」


 彩花は、笑顔で話しかけてきた。


 ——この笑顔が仮面に過ぎないことを、僕は知っている。


(……嫌なやつに会ってしまった)



 3. 過去の亡霊


「そういやさ、私、あんたのこと振ったよね」


 突然の言葉に、背筋が寒くなる。


「……」


「……あの時は本当にごめんね」


 悪びれた様子もなく、軽い口調で。

 まるで、些細な昔話をするかのように。


 その瞬間——


 腹の底で、怒りに火がついた。


 ……あの出来事を、“昔話”にしていいとでも思っているのか。


 僕は、静かに言った。


「そうだったな……」


 彩花は少し驚いたように目を瞬かせる。


 そして、僕は続けた。


「でも、今は振られてよかったと思ってる」


「え?」


「……君と付き合ってたら、おそらく死ぬほど後悔したから」


「……?」


「君に振られて、本当によかったよ」


 彩花の笑顔が、凍りついた。



 4. 因果応報


「……それ、どういう意味?」


 彩花の声が微かに震える。


「私に振られたのがそんなに悔しいの? だとしても言い方ってものが——」


「振られたことはいいんだ」


 僕は、彩花の言葉を遮った。


「問題は、その後だ」


 彩花の顔が曇る。


「……何それ?」


「まだわからないのか?」


 僕はゆっくりと息を吸い、そして——


 あの時の彼女の言葉を、甲高い声で再現してやった。


「『マジで私に告白とか何? 自分を何だと思ってるわけ? 陰キャのくせにさ。キモすぎでしょ』」


 彩花の顔から、血の気が引いた。


「……!」


「思い出したようだな」



 5. 中学一年・3月(回想)


 卒業式の前日、そして終業式の二日前。


 僕は彩花に告白した。


 家の都合で、4月から別の中学に通うことになっていた。

 転校する前に、思いを伝えようと思ったのだ。


「……ごめんなさい」


 神妙な顔の彩花。

 半ば予想通りの展開だったが、それでも僕は失恋した。


 ここで終わっていれば——


 ほろ苦い思い出で済んだだろう。


 ——だが。


 その日の放課後。


 教室の隅で、彩花が友人たちと三人で話しているところを、僕は聞いてしまった。


 彩花「友川のやつ、マジで私に告白とか何? 自分を何だと思ってるわけ?

 陰キャのくせにさ。キモすぎでしょ、ありえない。

 自分のレベルわかってほしいんだけど。

 あんなやつ好きになる子いたら、もう世界遺産レベルのバカ確定。

 ノーベルバカ賞あげたいわ」


 女子達「ノーベルバカ賞やばい、笑う」


 ——大笑いする三人。


 僕は、その場からそっと離れた。


 そして、その中学には二度と行かなかった。


 卒業式も終業式も休んだ。

 ショックで寝込んでしまい、食事も喉を通らなかった。


 彩花への怒り。

 彼女を好きになった自分への怒り。


 そして——


「僕は普通の人間じゃない。他人に好かれる資格などない」


 それが決定的になった。


 僕を心配した両親が、精神科に連れて行った。


 ——そこで、僕はASD(自閉症スペクトラム障害)と診断された。



 6. フードコート・決別


 彩花は、唇を噛みしめ、俯いていた。

 僕が当時の会話を聞いていたとは、思っていなかったのだろう。

 それとも、ただ自分の間抜けさを嘆いているだけか。


 どちらにせよ、もうどうでもいい。

 僕は冷たく言い放った。


「陰キャで悪かったな。キモくて悪かったな」


 彩花は何も言わない。


「僕には今、交際相手がいる。とてもいい子だ。僕を陰キャとは言わないし、キモいとも言わない。君とは違ってね」


 それだけでも、彼女とは決定的に違う。


「もっとも——」


 僕は一拍置いて、皮肉を込めた。


「君にとって彼女は『世界遺産レベルのバカ』で、『ノーベルバカ賞』をあげたくて仕方ないんだろうがな」


 ハッとする彩花。


「そんなことない!……あの、私、あの時……告白されて舞い上がっちゃって……冗談のつもりで言っただけで……」


 見苦しい言い訳だ。


「冗談?」


 僕は、嘲笑するように呟いた。


「冗談というのは、みんなが愉快になれるものを言うんだ。——あの時、笑っていたのは君たち三人だけだった。そして、僕は傷ついた」


 彩花の肩が、小さく震えた。

 僕はさらに続ける。


「もし、あの時、僕が君らの前に出ていっていたら、君らはどうしただろうな?

 青くなって謝ったか?

 開き直って『本当のことを言っただけ』と言ったか?

 それとも、『何も言ってない』とシラを切ったか?

 ——いずれにせよ、君らは『友川も聞いてよ。面白いから』とは言わなかったはずだ。

 なぜなら——」


 僕は静かに、しかし確実に言葉を突きつける。


「君らの会話は、冗談ではなく、ただの悪口だったからだ」


 沈黙。


 彩花の顔から、さっきまでの余裕が完全に消えていた。


「最低だな」


 彩花の指先が、小さく震えている。

 何も言い返せないらしい。


「もう一度言う。君に振られて本当によかった。騙されずに済んだ」


「……」


「謝れとは言わない」


 彩花が顔を上げる。


「なぜなら、絶対に許さないからだ」


 彩花の表情が曇る。


「二度と僕に話しかけるな」


 そう告げ、僕は食事のトレーを持って立ち上がった。


 すれ違いざま——


「……ごめんなさい」


 俯いたままの彩花が、かすれた声で呟いた。


 僕は答えた。


「もう遅い」


 そして、静かにその場を去った。



 7. ショッピングセンターの外


 今日のことで、一定の区切りがついた気がする。

 買い物に来てよかった。


 ——クリスマスイブが楽しみだ。

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