第11話 英語と僕と、変わる日々
執筆にあたり生成AIを使用しています。
(教室・昼休み)
玲奈が英語クラブの設立を進めている。
先生に申請を出し、顧問探し、活動計画の提出——彼女は着々と準備を進めていた。
僕はそれを横目に見ながら、ひとり机に座り、ぼんやりと考えていた。
——なぜ僕は、英語を好きになったんだろう。
[幼稚園時代]
最初のきっかけは、テレビ番組で流れていた英語の歌だった。
アニメや特撮の主題歌ではなく、ある番組のテーマ曲。
不思議なことに、歌詞の意味は分からないのに、僕はその曲に惹かれた。
何度も何度も聴いて、ただ「いい歌だ」と感じた。
親に頼んで、その曲のシングルCDを買ってもらった。
普通の子どもなら、戦隊モノやアニメのCDを欲しがるだろう。
僕の選択に、両親は「変わった子だ」と思ったはずだ。
それでも、僕はCDを繰り返し聴いた。
発音の意味も知らずに、ただ旋律に酔うように。
そして——気づけば、今ではその歌を完全に歌えるようになっていた。
意味も、構造も、すべて理解できる。
あの頃の僕が聴いていたものを、今の僕は、違う視点で味わっている。
それが、僕と英語の最初の出会いだった。
まもなく、僕は英語教室に通い出した。
これも、親に頼んで。
玲奈との出会いも、その英語教室だった。
でも、その記憶は薄い。
彼女が言うように、僕はずっとひとりぼっちだったのだから。
[小学校時代]
英語が楽しかった。
幼児向けの英語絵本から、少しずつ難しい本へと手を伸ばした。
辞書を引きながら、英語の学習事典を読み漁った。
読書好きだから、苦にはならなかった。
ラジオの英語講座も聴くようになった。
小さなイヤホン越しに流れる英語は、僕をどこか遠い世界へと連れて行くようだった。
ますます英語に惹かれていった。
[中学校時代]
この頃には、僕の英語力はすでに中学レベルを超えていた。
授業の内容は簡単すぎて、ほとんど内職をしていた。
それでも、テストは常に満点。
教師も、それを咎めることはなかった。
この頃から、漠然と考え始めた。
英語を活かせる仕事に就こう。
[高校生の今]
英語力はさらに磨きがかかった。
TOEICのスコアも上がり、海外ニュースを読み、英語で考えることも増えた。
そして今——
僕は、ASDである自分にできることを模索している。
英語が活かせる職業につきたい。
自分の特性を生かせる道を、探したい。
でも、それ以上に——
「僕は、人並みを超えた技能を持たなければ、生きていけない」
そう信じていた。
普通の人間ではない僕が、社会で生きていくには、人並み以上のスキルが必要だ。
だからこそ、英語を極めようとした。
……そのはずだった。
だけど。
(僕は、本当に”ひとり”で英語を学んできたのか?)
最近、玲奈がいるせいか、そんな疑問が浮かぶ。
僕の中で”英語”は、ずっと”個人の勉強”だった。
授業はつまらなかったし、周りと学ぶ意味を見出せなかった。
それが今では——
英語クラブという形で、誰かと交流する機会を得ようとしている。
……僕は、本当にそれを望んでいるのか?
自分でも、まだよくわからなかった。
(放課後・教室)
玲奈が、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「和樹、クラブの許可が下りたわ。部員募集を始めるわよ!」
満面の笑み。
これまでの努力が実ったのが、よほど嬉しいのだろう。
「……そうか」
短く返す。
玲奈には、感謝すべきなのだろうか。
でも、今の僕には、それがまだよくわからなかった。