第十八話 氷凍の破銃
ー都内郊外にあるとあるFDVR施設ー
「こんちゃーっす。」
「おお!獅白か、久しぶりだな。今日はどうした?」
「能力者認定されたし、寒冬部の依頼の時のために雪原系のフィールドで練習したくて。」
「おう、いいぞ。好きに使ってけ。帰るときはひと声かけてくれよ。」
「りょうかーい」
ーVRルームー
此処には四機ほどのカプセル状のVR機器がある。
「久しぶりに使うからなぁ。まずは簡単なのでなれないと。」
ぼたんはVR機器の中に入り、会員カードを差し込み、使用開始ボタンを押す。
《プレイヤー認証開始》
《プレイヤー名:『Botan』認証完了》
《戦闘地域を選択してください。》
ぼたんは指を動かし、寒冬部を選択する。
《戦闘レベルを選択してください。》
「う〜ん…取り敢えず7で行こっかな。」
ぼたんは7を選択し、決定を押した。
《ステージを開始します。》
ぼたんは光りに包まれ、VRの中へ入っていった。
ー雪降る雪原ー
ぼたんは雪原地帯にスポーンする。
「よっと。成功したっぽいね。」
《これより十秒後、敵がスポーンします。》
「よしっと。準備完了!いつでもいいぞ!」
《それでは開始します。》
ナレーションがそう言うと、光とともに周囲に黒染まりの魔物が三体出現した。それぞれ殺気と魔力をを放っている。
「いいねぇ。アプデで前よりちょっとリアルになったかな?」
『グギャァァァ!』
魔物の一体が叫んでぼたんとの距離を走って詰めてくる。
「おっ、向かってきた。」
『グギャァァァ!』
魔物は腕を振りかぶり、ぼたんに攻撃しようとする。
「そんなんじゃ当たらないよ。」
ぼたんはその場で足に力を込めて横にステップする。すると、ちょうど魔物の攻撃が当たる位置であったため、攻撃が当たらなかった魔物は姿勢を崩し、地面に倒れていく。
「よっと。」
ドゴォ
倒れる魔物の腹部に下から拳を突き出し、殴る。すると、拳は腹を貫通し穴を開ける。
『グギィ!
攻撃を受けて致命傷を負った魔物は光となって消滅する。
「大丈夫そうだね。そのまま、全部倒す。」
ぼたんは地面を蹴り敵との距離を詰める。
『グギィ?!』
ボゴォ
敵の内一体を殴り飛ばし、体を回転させてもう一体も倒そうとする。
「って、うおぁ?!」
雪で足を滑らせ体が空中に浮かぶ。
『グギィァァァ!』
その隙に魔物は攻撃を仕掛ける。
「っ、あっぶね」
ドゴォォ
攻撃が当たるギリギリで身を空中で翻し、魔物の頭上から蹴りを放ち地面にめり込ませる。
「氷じゃなくてもやっぱり滑るかぁ。まあ、しょうがないか。」
《第一ウェーブをクリアしました。第二ウェーブへと移項します。》
そのアナウンスの次に、目の前に人間3人分程度の巨人が二体現れた。一体は巨大な棍棒を、もう一体は3連装の弓矢を持っていた。
「あ、次に行ったっぽい。一応3ウェーブらしいし、頑張ろ〜!」
弓持ちの巨人が矢をセットし弓を構え、射る。
「う〜ん…あれって毒矢っぽいなぁ。避けるか。」
ぼたんは毒矢が到達する前に大きくジャンプし回避した。だが、そこにはもう一体の巨人が回り込んでいた。
「うおっ?!速っ!」
『グオォォォォォォォ!!』
巨人は自身の頭上から棍棒を振り下ろしぼたんを地面に叩きつけようとする。
「やれるかわかんないけど…、おぉらぁ!」
『銀影破弾』
ぼたんは両手に魔力を込め棍棒が振り下ろされるタイミングを見計らって拳を打ち込む。
バゴォォォォォォォン
『グゴォ?!』
二つが衝突すると、威力に耐えられなかった棍棒が壊れた。それに驚いた巨人は、地面に落下する。
「おっと、逃さないよ。」
『刺突銃弾』
ぼたんは右手に左手を添え、銃のような形にし魔力を込め、弾丸のように放つ。
ズシュゥゥゥゥ
放った魔力弾は見事に巨人の脳天に命中し、巨人は悲鳴すら上げられぬまま消滅した。
「よっと、これで一体。」
『……』
弓持ちの巨人は言葉を発してはいないが、怒りを発しているのはわかった。
『シュゥゥ…』
巨人は息を吐くと、弓を構え矢を放つ。それも、高速で九発。
「回避の練習に最適だぁ。」
ぼたんはそれを見ても怯まず、なんと矢に向かって駆け出したのだ。
(矢の横を通ればそりゃあ安全だけど、それだと後々やられる。それに、)
ぼたんは身を返したり素早く避けたりして一瞬にして矢の隙間を縫って巨人の懐へと潜り込んだ。
「こうしたら撃てないでしょ?」
『……』
「終わりだよ。」
ぼたんは人差し指と中指を銃のように突き立て、魔力を放つ。
『壱撃破銃』
バゴォォン
魔力弾は巨人の体を粉砕し、消滅させた。
《第二ウェーブをクリアしました。こ、、れれよよよ、、りササ最終ウェェェーブをををを、、、は、はじじじめままます》
「ん?なんかバグったか?一回でてみるか。」
ぼたんは自身の胸の前で指をスッと上下に動かすしぐさをした。通常であれば、メニューが開かれログアウトができたはずだ。しかし、ぼたんの指はただ虚空を駆けただけだった。
「ありゃ?メニューが出ない?どうしようか…取り敢えず最終ウェーブクリアすれば出れるかな?」
ぼたんはそう考え、時間のある隙に付近の高所へと移動した。
「結構吹雪いてきたな。視界も悪くなってきた。一発勝負…もしくは短期決戦じゃないとだめかも。」
そう考えていると、さっきまでいた場所が凍りつく。
「ッ?!何、あれ?」
その氷の下から、四足歩行の巨大な生き物が姿を表した。
「あれが、最後の敵?めっちゃでかいな、あれ。」
その生物は周囲を見渡し、ぼたんの方向を向いて見つめている。
(まさか気付いた?いやでも、この吹雪で見えるはずが…)
ドゴガ
(なんの音?!)
ぼたんが慌てて周囲を見ると、自信の後ろにあったはずの岩が破壊されていた。そこに残っていたのは、岩の残骸と尖った氷塊だった。
(あの氷塊が?ありえないなぁ…調べてみるか。)
ぼたんはその氷塊に近づきそれに触れた。
(この氷塊…微かに魔力を放ってる。でもほんとに微かだ。中にも魔力があるのか?)
ぼたんは少し力を入れて握った。すると、氷塊はパリンッと音を立てて砕けた。見ると氷塊の中には、白色の魔力でできた球体があった。
(衝撃には強いけど圧力には弱いか。それにこの魔力球、とても意思のない魔物が作ったとは思えない。)
(可能性としては人が作った生き物だけど…ここVRだよ?外部からの干渉もあり得るけど…考えたくはないなぁ。)
(何にせよ、アイツを倒す他ない。一回観察してみるか。)
ぼたんはできるだけ魔力を遮断して生物が観察できる場所まで移動する。
(顔は典型的な魔物みたいな異形系だけど、問題は体か。左側は氷の翼で、右側は…あれなんかの腕?ものすごい悪魔合体みたいになってる。)
(他に特徴は…背中にさっきのと同じの魔力球っぽいやつがあるな。あれ壊せば倒せるんじゃね?)
(ものは試しだ!できなかったとしても致命傷にはなるはず。)
ぼたんは足に魔力を送り地面を蹴った。空中へと飛び出したぼたんに気付いた生物は、ぼたんを睨みつけ魔力を放出する。
「来たかッ!」
瞬間、ぼたんめがけて高速で氷塊が飛んできた。
「これでも喰らっとけ!」
ぼたんは、自分で壊した氷塊の欠片に魔力を込め、飛んできている氷塊に的確に投げた。それは、見事命中し、壊れはしなかったが軌道がそれ、ぼたんには命中しなかった。
難なく地上に着地したぼたんは、生物めがけて走っていく。その間にも飛んでくる氷塊を掴んで壊したり、躱したりしてダメージを少なくした。
「喰らえッ!」
ぼたんの手から光が放たれる。それは、先程手に入れていた魔力球だった。それによって目をくらませた生物は動きを止める。
(白色は基本光属性。性質がちがくても光程度なら出せると思っていたけど、成功してよかったぁ。)
ぼたんはジャンプして生物の背中に乗り、巨大な魔力球に向けて腕を銃のようにして魔力を込める。だが、その魔力を感知した生物はぼたんの頭上に巨大な氷塊を生成している。
(氷塊よりも、こっちのほうが早い!)
「これで終いだ!」
『収点破銃』
バゴォォォォォォォン
ぼたんの魔力塊が放たれ、命中する。その部分からヒビが入り、一瞬にして割れて粉々になった。それと同時に、氷塊も崩壊していきついには生物も消滅していった。
「おっしゃ、やり〜。案外楽しかったな…ってあれなんだ?」
ぼたんの視線の先には光り輝く氷塊があった。
「魔力も放ってるし、もしかしてアイツの魂かな?おいておくこともないしもらえるならもらってこっと。」
ぼたんは氷塊を拾い上げた。すると、氷塊は浮かび上がりぼたんの体に入っていく。
「…え?なんか入ってったんだけど。能力でも増えたのかな?まあいいや。」
《全てのフェーズをクリアしました。現実世界に帰還します。》
ぼたんは光りに包まれて冬の世界から消滅した。
「おっちゃん帰るねー!」
「おぉ!また来いよ!」




