第十四話 真淵の魔神
ー魔界門ー
〜トワ視点〜
トワは現在、現世と魔界を繋ぐ魔界門の前に立っていた。悪魔ならば不思議ではないことだと思うが、トワは違う。トワが現世に来るきっかけとなったのは、掟を破ったことによる”追放”だからだ。破った掟というのが『悪魔は如何なる理由があろうと天使と関わることを禁ず』である。そう、トワはかなたと関わった事により追放されてしまったのだ。そんなトワは、指名依頼を受けてこの地に舞い戻ってきたのだが…
(呼び出し人は不明…送られてきたのは場所だけ。その場所も中途半端なんだよな。)
(魔界門の周囲半径1km内に待っているってなんだよ。広すぎだろ。)
(怪しいやつ怪しいやつ…ん?)
トワの索敵範囲内に違和感のあるエネルギーがあった。そのエネルギーは魔界では珍しいというかほとんど居ない光のエネルギーを持つものであった。
(う〜ん…悪魔じゃないよなぁ、絶対。とりあえず近づいてみるか。)
トワは怪しい人物に近づき話しかける。
「あんたが依頼人?」
「…常闇か?」
「そうだけど。」
「では、案内しよう。」
「…(へんなやつ。)わかった。」
トワは依頼人について行った。しばらく歩くと崩れているが大きめの遺跡を前に止まった。
「ここが場所?」
「そうだ。では、依頼内容を説明しよう。」
(やっとか。)
「依頼したいことというのはこの遺跡の地下深くに眠っていた古代の魔神の討伐だ。」
「ふ~ん…古代の…ねぇ、聞きたかったんだけど、あんたは何者?悪魔っぽくはないんだけど。」
「…まあいいか。俺は使者だ。天界のな。」
「やっぱりか。なんでトワなの?他にもいたんじゃない?有力候補は。」
「いや、この依頼は君が適任だったんだ。まず、これは魔界の問題だ。天使たちが干渉してはいけない。では悪魔から選出しなければいけなかった。」
「それならトワより適任は居たんじゃない?」
「それはそうだ。最初は軍に頼もうと思っていた。だがな、奴らはそれを断った。」
「なんで?あいつらならば喜んで受けると思うけど。」
(あの手柄大好き集団なら受けないはずがないと思ったんだけど。)
「俺もそう思ったんだが、奴らは声を揃えて「死ねというのか?」といってきた。」
「ん?どうしてさ。古代程度の魔神なら軍の奴らなら倒せるんじゃないの?」
「…いや、最初に伝えておけばよかったな。こいつは当時の魔界を完全崩壊にまで陥れた最凶の魔神だ。名は『ククルスコルセニクス』。」
「ククルス?!そんな奴が復活したの?!」
「ああ。」
「そんなの絶対無理だよ。命の保証はしてくれるの?」
「そこに関しては全力を尽くすつもりだ。」
「報酬は?まだ聞いてないんだけど。」
「そういえば伝えていなかったか。報酬はそうだな…右手を出してくれ。」
「?わかった。」
トワは右手を出した。使者はその手に印のようなものを描いた。すると、右手の甲には一つの紋章が浮かび上がった。
「これは?」
「魔憑の印だ。遺跡の中にはもう一柱の魔神が眠っている。討伐報酬にその魔神をやろう。」
「…それなら割に合うかな。その依頼受けようかな。ただし!ここで死んだら何とかして復活させてよね!一応、この遺跡は霊魂幽在領域だからできるでしょ?」
「そこのところはわかった。遺跡への入り方は石板の指示に従ってくれ。」
トワは外遺跡の中央に立った。中央には小さめのテレビくらいの大きさの石板が一つだけあった。
「これがその石板?にしてはなんにも書いてないけど…」
トワはそう言って石板に触れた。すると、立っていた真下の地面が光だした。
「おわぁ!なにこれ!」
光はトワの体を包みこんだ。トワは眩しく、目を瞑ってしまった。しばらくたって目を開けると、そこは外ではなく薄暗い遺跡の中であった。
「ここが遺跡ってやつ?昔のだけあって随分暗いな。」
(魔神は二体。一体は封印されてたっていうほどだから何かでかい部屋にでもいるのかな?もう一体は…多分だけど、歩いてたら見つかる気がする。)
そんな事を考えながらトワは遺跡を歩いていく。すると、目の前に二本の道が現れた。
(どっちに行くか…左かな。理由は…なんとなく?)
左側の道を歩いていくと、一つの空間が現れた。その奥には何かがいる。気になったトワがその空間に入ると、壁際の明かりが一斉に灯った。それにより、空間の奥にいた何かがはっきりと分かった。
(あれは…魔神!)
それは魔神とは思えないほどに負傷をしており、魔力も無くなる寸前であった。そのため、カプセルのようなものに寝転がっていた。
「あんたはククルスじゃないでしょ?魔力の性質でだいたいわかるもん。」
「…御名答。」
「うおっ、喋るの?」
「俺を何だと思ってやがる。はぁ…まあいい。それより、今は神魔暦何年だ?」
「神魔暦?いつのこと言ってんの?その時代の王朝は二十万年前に崩壊してるよ?」
「なっ…今は誰が?」
「テネリスって奴が魔王になって、魔界歴ってのに変わってるよ。」
「そうか…そういえば、お前はなにしにこの遺跡に来たんだ?」
「依頼でね、ククルスの討伐に来たの。」
「ほ〜ん…お前一人だと、無理だな。」
「なんでよ。」
「お前はまず、アイツのことをよく知らねえよな?」
「まあ、そうだけど…」
「アイツを倒すには俺が必要なんだ。順を追って説明するぞ。」
「お願いしまーす。」
「まず、アイツの詳細についてだ。アイツは通常の魔神、いわゆる『極神魔神』と違って悪魔の手によって作られた『偽神魔神』なんだ。」
「偽神?てことは、元があるはずだよね?」
「そうだ。アイツの元となった魔神は名は存在しないが『魂喰らい』と呼ばれていた。だから、アイツの力も魂に関係するものだった。」
「ふ~ん。それで?なんであんたじゃないと倒せないの?」
「俺は悪魔に最も近い魔神だった。故に、悪魔側からも干渉することは容易かった。奴らは言ったんだ、『もし、あの偽神が暴走したら封印でも討伐でもしてくれ』とな。そして、俺にアイツの弱点と倒し方を記す資料を渡してきた。それを知っているのは俺だけだ。」
「そうなんだね〜…でも、その方法とやらをトワに教えれば良くない?」
「それはそうなんだが、生憎実行できるのが俺だけなんだ。」
「じゃあどうにもならないじゃん。」
「そこで、だ。俺と手を組まないか?その右手の紋章、魔憑の印だろ?それを使って俺を憑依魔神にしろ。そうすればお前は力を手に入れ依頼も達成できるし、俺もアイツを倒せる。」
「…戦闘面は?」
「誰だと思ってる?魔神だぞ、俺は。」
(ここで乗ればメリットはこっちのほうが大きいかな…)
「良し、乗った!」
「おう、ありがとさん。それじゃあ右手を出してくれ。」
「はい。」
トワは右手を魔神に出した。魔神はその手に自分の手を重ね魔力を込めた。すると、右手の紋章が光だし、それと重なるように魔神の体も光りだした。
「これが…憑依の瞬間…」
「お前たち悪魔にとっちゃ、一生に一度の経験だからな。」
「あ、そういえば、名前言ってなかったね。私は常闇トワ!訳あって魔界を離れてたの。」
「その訳は追求しないでおくよ。俺の名はコルニス・ルプサエトス。二つ名は『深淵と黒の魔神』だ。よろしくな!」
コルニスは光の粒子となり、宙を舞いトワの体に纏わりついた。
「これで憑依完了?」
『ああ。正確に言えば『深部格納状態』だがな。憑依したいときは、魔神憑依:コルニスでいけるぞ。』
「わかった、ありがとう。それじゃあ、ククルス倒しに行くぞー!」
「『おー!』」




